黄金を目指して   作:一般通過流刑兵

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小説を書くのって難しいけど、でも楽しい
一番書きたいシーンに向けて頑張っていきたい


プロローグ

 

 屈辱があった。この身を焼き尽くしてなお足りぬほどの、燃えるような屈辱の記憶があった。

 なりふり構わず逃げ出して、故郷を遠く離れたこの地まで落ち延びた、忌まわしき敗走の記憶。

 赤獅子共の長に恐れをなして城の最奥に閉じこもった、唾棄すべき恐怖の記憶。

 言い訳のしようもない敗北と、乞食のように浅ましい、君主にあるまじき服従の記憶。

 

 腸が煮えくり返った。頭を搔きむしるほどの怒りに震えた。視界が血の色に染まり、思考が塗りつぶされるような心地であった。

 なんだこの不様な体たらくは。この身は黄金の血脈を引き継ぐ、狭間の地の正当なる王の系譜ではなかったのか。

 

 己の貧弱極まる肉体が憎かった。偉大なる父祖のような精強な強さが欲しかった。

 己の惰弱な精神が疎ましかった。大いなる獅子の王に相対する勇気が欲しかった。

 それがあれば、あの美しくも悍ましい剣の前に、惨めにも跪くことなどなかったろうに。

 

 だが、この身はどこまでも弱弱しく腕などまさに枯れ木のようで。

 こんな矮小な躯体には到底強き心など宿ろうはずもない。

 

 だからこそ、だからこそなのだ。

 それが禁忌であると知りながら、もはやその外法に縋るしかなかったのだ。

 

 自分自身で強くなれぬというのなら、強さを他所から持ってくるしかないではないか。

 たとえ正道を外れることになろうとも、全ては我らの悲願である帰郷のため。

 なんとしても帰るのだ。彼の地、黄金の麓へ。今もなお付き従ってくれる、我が兵士たちと。

 そのためならば、我が身を悍ましき業で着飾ることも厭うまい。

 

 屈強な腕を接ごう。逞しき脚を接ごう。

 この狭間の地に潜む、数多の恐ろしき生命から。

 力という名の肉を積み上げるのだ。いつかこの精神が黄金に届く、その日まで。

 

 我こそはストームヴィル城が主、接ぎ木のゴドリック。

 黄金の末裔たる、リムグレイブの君主である。

 

 

 

 

 

 

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 リムグレイブ、嵐丘のボロ家にある祝福にて。

 赤髪の女と鎧姿の男が隣り合って座っていた。近くではトレントが風で少し傾いた草を食んでいる。

 男は褪せ人であった。そして女は巫女なしの褪人の同行者だった。

 

 褪せ人が女に問いかけた。少し離れたところにいる金髪の女には聞こえぬように。

 今は少し弱まっているが、常に風が吹き荒れるこの場所は密談にはもってこいであった。

 

「メリナ、ストームヴィル城には何が……」

 

 メリナと呼ばれた女はトレントを撫でながら、褪せ人に己がまだ覚えている知識を語った。

 

「断崖の城、ストームヴィルには破片の君主の一人がいる。エルデンリングが砕けたとき、その一部を宿したデミゴッドの一人が」

 

「デミゴッド……」

 

「もし、祝福の光の筋がそちらを指し示しているのなら、やはり貴方は、エルデンリングに導かれている。私は、契約の相手として……貴方に、そうであってほしいと思っている。エルデンリングに導かれ、それに挑む人であって欲しいと」

 

「……あぁ、挑むつもりだ。だが、彼女が言っていた事が気掛かりだな。蜘蛛に接がれる、とか」

 

 二人がつい先ほど話した金髪の女は酷く怯えた様子で仲間たちの最期を語っていた。

 話の内容をそのまま受け取るなら、彼女の仲間はただ殺されたのではなく何かに取り込まれたとみるべきだろう。

 それが一体何なのかは、まだ分からないが。

 

 少し何かに悩むような表情を浮かべたメリナは、しかしすぐに普段通りの無表情に戻った。

 そしてトレントを撫でる手を止めて立ち上がりながら言った。見上げるほどの城壁を指さして。

 

「行ってみれば、それが何なのかも分かると思うわ」

 

「……そうだな。そろそろ出発しようか」

 

 褪せ人は同行者が自分になにかを隠しているであろうことは察していたが、今それを追求しても意味がないと判断した。

 これからの旅の道中でゆっくり互いを知ればいい、と。

 

 こうして、トレントに跨る褪せ人とその後ろで横向きに座るメリナは金髪の女に一声かけてから出発した。

 彼らの旅は始まったばかりだが、黄金に手を伸ばす者との邂逅は、もうすぐそこまで近づいていた。

 




【剣の碑:リムグレイブ、アギール湖北】

黄金のゴドリック、屈辱の戦
ミケラの刃に、散々と敗れ
ひれ伏し、許しを請う

【領主の嫡男 ケネス・ハイト】

そもそもゴドリックなど、君主の名に値せぬ余所者よ
王都から、女どもに紛れて敗走し、ラダーンに怯えきって城に引き籠り
マレニアを侮り、敗れ、その足指を舐めて服従を誓う
まったくもって惰弱な、恥ずべき男よ
いかに名家とて、黄金の一族、ゴッドフレイの血は、いかにも薄いと見える
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