黄金を目指して 作:一般通過流刑兵
憧憬があった。始まりに、ただ純粋な、幼子の如き憧れがあった。
羨望があった。この身を焦がしてやまない、焼け付くような狂熱の願いがあった。
憶えている。
幼少の頃、父に手を引かれて見上げた、狭間の地を統べる偉大なる父祖の姿を。
王都の中央で、遥かなる黄金樹の光を浴びて金色に輝く、戦士の面頬を。
耳が遠くなったのかと錯覚するほどに重く轟く、人々の歓声と万雷の拍手による大合奏の音色を。
今も、憶えている。
まさしく子供のように興奮に頬を赤く染め、握ったままの父の手を振り回し、音の濁流の中でも聞こえるようにと声を張り上げ、不敬にも父祖を指先で指し示しながら見上げた、父の顔を。
その、痛ましい幼子を見るように僅かに歪んだ表情と、確かな憐憫を湛えた眼差しを。
なにより、父自身も気づいていなかっただろう、キツく握り締められた手の感触と、じんわりと残った、鈍い痛みを。
今も、よく、憶えている。
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褪せ人が去り、その場にはゴストークとゴドリックが残った。
勝者の背を見送ったゴストークは、足元の敗者へと視線を下ろす。
「蛮地の風を纏う戦士、巫女なしの褪せ人か。これが結末とは、因果なものだ……」
誰に聞かせるでもなく呟くと、よく手入れの行き届いた短剣を両手で握り締め、ゴドリックの首の横に膝を突いた。
その細く頼りなくなった首筋に刃をあてがうと、押し付けるようにして力を込めていく。
「虚しいものだな。人を散々こき使って、接ぎに接いでこのざまとは」
非力な両腕の、弱弱しい筋肉が盛り上がり、ゆっくりと刃が肉を断ち切っていく。
「だが、あんたは俺を貶めなかったし、笑うこともなかった」
刃が硬い骨に食い込み、少し止まる。
「怒りはあった。だが、それはあんたに対してのものじゃない」
全体重をかけた刃が、骨の切れ目を少しずつ押し広げていく。
「醜い姿、醜い心。その醜い業に、矮小な人間は夢を見る」
やがて、刃から硬い手応えが消える。
「まぁ、相応しい終わりだったと思うぜ」
そして、ゴドリックの体が二つに分かたれた。
黒ずんだ首から下と、皺だらけのもう片方に。
しばらくして、腰を反って体を伸ばしたゴストークは両手の土をはたいて落とすと、首のないドラゴン越しに、空を照らす黄金樹を見上げた。
眩しそうに目を眇め、頭の後ろで手を組んで歩き出す。褪せ人が向かった方とは、反対の方向へ向かって。
「俺は自由になったわけだが、さて。これからどうしようかねぇ……」
振り返らず歩くゴストークを、少しだけ盛り上がった土と、それを守るように突き立った短剣だけが見送った。
この日ストームヴィル城から、一人の門衛と、一人の君主が消えた。
しかしそれは、これから狭間の地で始まる大いなる物語において、なんともあっさりとしか語られない、序章の一幕である。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
初めての執筆活動でしたが、いかがでしたでしょうか。
拙い部分も多々あったかと思います。読みづらいと思われた方はすみません。
ですが、私の書きたかったことは表現できたな~と思うので、作者としては満足です。
本作を読んで「接ぎ木のゴドリック」というキャラクターの魅力を少しでも感じていただけたなら、これ以上の喜びはありません。
それでは、またどこかで!