レグルスの初恋の人脳破壊TS転生者概念 作:ノミの心臓
あーあ。
こりゃー参ったね。
多分俺の脳みそが悪さしたのは某虚飾の愛しい人の作品を昔に読んだせいだね。
今回レグルスくんあんまり出てきません。は?
もうそろそろ開墾の時期だ。固まった土を掘り起こして、土の隙間に空気を混ぜて柔らかくしないといけない。いつもはうちの家族や知り合いが何だかんだ手を貸してくれるんだけど、今年からは家族を除いて助けに来てくれる人は減りそうだ。
原因は……俺の結婚とこのノミ以下の精神性のレグルスかな。
「なんでっ、この僕がっ、こんなことをっ、しないといけないのかな! こんな知性の欠けらも無い肉体労働なんて筋肉しか取り柄のない脳みそまで筋肉でできたゴリラに任せておけばいいとは思わない?! 適材適所って言うしさぁ!」
白髪のどこにでも居そうな顔つきで、でもどこにでもいなそうな表情をしたレグルスがひょろひょろのもやしのような身体を動かして鍬を振り下ろしている。
レグルスどんくさいしなぁ、なんか不安。普段ご飯は争奪戦らしいし、ひょろひょろなのも納得。あそこの家貧乏だしね……うちもそこまで余裕あるわけじゃないけど。
「がんばれーレーくん。略してがんばレーくん」
先程まで陽魔法で身体強化しつつ私も耕していたのだが、ちょっと疲れてきたので休みつつレグルスを応援する。
この男をこうして働かせるまでどれだけ掛かったことか。レグルスはやればできるのにやらないから嫌われるんだよ。
「もし君がその下らないジョークを面白いと本気で思っているのなら僕は心を鬼にして酷評しないといけない。僕にそんな心無いことを言わせないでくれよ。それは僕にとって心無い言葉で、心にも無い言葉だ。僕は誰かを気にかけるほどの余裕なんて持たない私財を守るので精一杯なちっぽけな存在だけど、それでも君の壊滅的ジョークセンスを正すくらいはわけない」
「今のままでもかっこいいけど、もっと筋肉付けたらもっとかっこよくなるはずだよ! 剣とかどー? 白髪の剣士! 強そうじゃなーい?」
でもムキムキのレグルスも解釈不一致だな。欲を言えば細マッチョくらいでちょっと弱めの剣士くらいになってくれたら最高。
「いつも言ってるけど嫌いなんだよね、そういう争いとか、荒っぽいことはさ。僕としては平和に平穏に穏やかな毎日を君と送ることができればそれで満足なんだ。それにそんな物騒なものを持っていたらかえって危ない人を引き寄せるかもしれない。それこそ元の木阿弥だろう?」
「むー。かっこいいレーくん見たい! これ妻の要望です」
「はぁぁぁ……まぁ、そのうち考えておくよ。僕は軽い妻のわがままもちゃんと受け止めて真剣に検討する度量があるからね。ほら、たまに亭主関白気取りで妻の言葉とか何も聞かない夫って居るじゃない? ああいうのにはなりたくないからね。僕ら夫婦はお互いに好きで愛し合っているし、今更そこが崩れるとも思っていないけれど、それでも常日頃からお互いに権利を尊重し合うべきだからね」
ぺらぺら喋りつつ、それでも開墾はやめないレグルス。レーくんも成長したなぁ。涙ちょちょぎれそう。
「ほら、君もそろそろ充分休んだだろう。次は僕の番だ。休息は労働者に許されたあって当然の権利であり、それは僕にだって例外じゃない。そうだろう?」
「はいはい、まったく女の子よりもーちょっと働いてくれてもいいのになー」
「その言いぐさは酷くない? まるで僕が君よりも働いていないみたいじゃないか。男女の違いは確かにあるけど、でもそれを盾にして僕の休息の権利の侵害をさも自分が正しいかのようにまくしたてるのもどうかと思うね。それは弱者であることを振りかざす卑怯な手段だ」
レグルスがのんきに昼まで寝過ごしてる間も俺一人でこの10倍は耕してるんだよなぁ。まったくダメダメな男である。
そしてこれを指摘するといじける。被害妄想の擬人化みたいな人間だからな。
大方、俺が朝早く起きて開墾作業をしていることを知ったら、
『これ見よがしに僕よりも働いているアピールをして、僕の繊細な心に罪悪感を植え付けようとしている』
か
『お前にはできないから陰でやってあげたと頼んでもいない誰にでもできる作業で悦に浸って僕を見下してるんだろう!? ふざけるなぁ! 夫の気持ちを気遣って僕に不快感がないようにすることも家を守るお前の仕事だろう!? やって当然の義務だろうが!』
こうなると思う。まったくもって面倒くさくて可愛いやつだ。でも最近は穏やかになってきてるから、もうちょっとはマシかな?
▽
俺とレグルスが住んでいるララ村は人が少ない。それは魔獣のせいや村の立地、盗賊の存在など多くの要因がある。ここに定期的に来てくれる商人との交渉もそこそこ骨が折れた。最終的には俺の魅惑のぼでーでちょろっと誘惑して何とかしたけど。やはり男はおっぱいの前には無力なのだ。
「んー、何が良いかな~。やっぱ山菜と肉炒めて煮込んだやつでいいかな?」
レグルスはこういう悪く言えば雑な料理を出されると凄い嫌がるけど、何だかんだ見た目だけそれっぽい料理を出されるより食事の量が増えるのだ。ちなみにレグルスのお母さん直伝の調理法である。男のツンデレはもてないぞ~。
と、疲れ果てて家で惰眠を貪っているレグルスのために今日の献立を考えて買い物をしていると何やら不穏な気配を感じた。
__や、やめ__!?
__ま、魔女教!? なんでこんなとこに!
__やめ、やめてぇぇぇぇえ!!!!
村のそこかしこから悲鳴が上がっている。はっと振り向くと、もくもくと煙をあげている家屋も幾つか。
「な、なんだってんだ!? くそ、とりあえず嬢ちゃんは隠れて__」
「……魔女教、か。ごめんおじさん。私家に帰らないと」
肉屋のおじちゃんに断って、俺はすぐに家に帰ることを決意した。レグルスが危ない。
どうせ魔女教と接敵したら無駄に煽ってすぐ殺されちゃうに決まってる。そんなことさせてたまるものか。
「は、はぁ!? バカ言うな! それにお前たちの家は村の外れだ! ここからだと結構距離がある! 魔女教の狙いはわからんが、ここよりは安全だろうが! 下手に動いたら死んじまうぞ!」
「そうかもね。でも、それでもレグルスが心配なんだ。私けっこー健気なんだよ? "瞬天の下駄"」
薄く微笑んで、俺はレグルスと共に過ごした家に陽魔法で速度にバフを掛けて走り出そうとして__
「可愛いですねぇ、健気でやがりますねぇ、愛するアナタと最期まで一緒にってやつですかぁ? ほんと、くっだらねーですねぇ!」
降りかかる影。肉屋の看板に、気付けば座っていた金髪赤眼の少女。嫌な気配がする。とんでもなく機嫌が悪いときのレグルスと似たような気配だ。
「どっから来たんだ金髪! はやくそこから降り……まて、金髪に赤眼……もしかしてルグニカの王族か!? もしかして魔女教を追ってきたのか!? 良かった! 俺たちを助け」
「何か勘違いしてやがりますねぇ。アタクシは魔女教大罪司教色欲担当、カペラ・エメラダ・ルグニカ様ですよー? きゃはははは! にしてもそこの女……えっろい身体してやがりますねぇ。彼氏は? 夫は? てめーが愛するアナタは居るんで?」
興味津々と言った様子だ。コイツが魔女教か。初めて見た。
「あー、うん。大好きなダーリンは居るよ? だからさっさと帰して欲しいんだけど」
「ふぅん、そうですか、やっぱりそうでやがりますか。それはそれは……良いことを聞いてしまいましたねぇ」
くふっ♪ と邪悪な笑みを浮かべるカペラ。とここで肉屋のおっさんの堪忍袋の緒が切れたらしい。こんな緊急時に笑えない冗談を言っていると勘違いしたのか、
「あのなぁ、魔女教の名前で遊ぶのもいい加減に」
「ちょっとだけ遊ぼうかとも考えてましたが、お前よりこの子で遊んだ方が楽しそうですね。はい変貌♡」
とんっ、と肉屋の看板から飛び降り、そしておじさんに触れる。するとおじさんの身体がうねうねと蠢き、そして最後には大きな蝿になってしまった。
うっそー……? なんだそれ。バイオハザードの敵役でもそんなキモイ攻撃しねーぞ。
「え……? おじさん、?」
とりあえず怯えた振りをしてみる。
「へぇ。これを見てもビビらねーんですか。中々面白い精神性をしてやがりますね? くふっ、さてさててめーの愛する夫をキッモイ蝿畜生に変えてぇ、テメーらが愛だなんだと騒いでるきったねー肉欲の正体を教えて__」
「__あ、そう。"力天の篭手"、"瞬天の下駄"」
異世界転生した当初はとても困惑した。俺にとっての人生は既に全うされて、思い残すこともない満ち足りた人生だったからだ。
だから2度目の生は何でも良かった。女でも男でも、地球でも異世界でも。俺はもう"終わった"存在なんだから。
でも、生きてくうちに好き勝手やるのがいいんじゃないかって思い始めた。みんな人生は1度目だ。だから慎重に、丁寧に、間違えないように生きる。
なら2度目くらいは自由に生きていいだろうって、そう思った。思いつきだけで、己の感情だけで生きる。
この世界における魔法は詠唱という発動キーにイメージ、そしてマナを消費することで発動する。エルだのウルだのアルだのあるけど、俺的にはわかりづらかったので代わりに魔法を作った。
ふざけたことを抜かす魔女教に全身全霊のパンチをお見舞いする。陽魔法による身体能力の強化を部位ごとに分けて効果の増強を行い、俺の拳撃は見事に色欲の顔面を凹ませながら吹き飛ばし、肉屋の壁をぶち破った。
音速は越えないけど、そこそこの火力はあるはず。魔女教だか何だか死んねーけど流石に死んだろ。
レグルスに会いたい。死んでたら困る。普通に後追いするくらいには放っておけない存在なのだ。
初めての殺人に目もくれず、俺はレグルスの元に行こうとするが、背後から無数の黒い棘のようなものが飛んできた。足に数本刺さり、思わず転倒してしまう。
「っごほ、痛ってぇですねぇ。まさかこんな辺鄙なところで、それもメス肉風情にこんな痛手を負わせられるなんて思ってもねーです。でもでもでもでもぉ、それ全部むーだ♡」
マジで? てかクソ痛てぇし。
「……あはー、きっつ! なんで生きてんの。いや、そっか。おじさんの変化、あれ自分にもできるんだ。要は呪術廻戦の真人ね?」
なるほどねー。勝てなくね? 俺。魂……オドに触れるような攻撃手段なんざ開発してねーんだけど。
「アタクシ様の権能を即座に見破るその脳みそ。悪くねーですが、分かったところでどうしようもないのがアタクシ様なんで。でもまぁ、その傷じゃもう逃げられねーですねぇ! アタクシの問いに答えられたら、少しくらいは延命してやってもいいですよ」
「ふん? 本気? でもいいねそれ。やります」
こういう強者特有の驕りイベント大好物です。
「……てめー、本当に口が減らねーですね。それに本気で言ってるみたいですし。まぁいいや。てめーはどうしててめーのダーリンを愛するんです?」
「そんなのレーくんがレーくんだからに決まってるじゃん」
即答。ほぼ脳死のノータイムで反射的に言葉がこぼれでる。
「あー出た出た出ましたてめーらメス肉オス肉問わず出してくるキラキラワード。頭沸いてんじゃねーですか? どいつもこいつも馬鹿の一つ覚えみてーに同じことばーっか言いやがります。あなたがあなただから私は好きになったの! 僕はなにより君の心を愛している! 本当にそうでやがりますか? 本当の愛って綺麗事を抜かすなら、愛する人が蝿になっても、蛆虫になっても変わらねーはずですよねぇ! でも実際はちげーってんですよ! てめーらが愛だの恋だの惨めに綺麗なラベル貼りをしてる感情は肉欲だろーが! オス肉にムラついてんじゃねーですか? 綺麗な横顔に見蕩れてんじゃねーですか? そうだよなぁ!? 結局人間なんて見た目しか見てねーんですよぉ! 触り心地のいい肉に魅了されて、快感を求めて腰振って、それができりゃ誰だっていいんでしょーがよー!」
__っは。
「……っ、危ない危ない……やるね君。危うく浮気になるところだった……!」
「はぁ? 何言ってんです?」
レグルスほどじゃないけど、それでもコイツもくっそ可愛いじゃないか……! 中身からこぼれ出るコンプレックスの香りが俺の脳みそに直撃するぅぅぅ……!
「こほん。いやー、でも私はレーくんがどうなろうと愛してられる自信あるよ?」
「……てめー、うぜーですね。ああ、こんなにうぜー人間初めてかもしんねーです。そんなに言うなら試してあげますよ! 蛆虫か? 蝿か? 呼吸する肉塊ですかぁ? どれにするのか、今から楽しみで仕方ねーですねぇ! 今のうちに大好きなダーリンに謝っておいたらいーんじゃねーです?」
流石に足潰された状態で逃げるのもきついな。
詰みか。えー、俺何にされるんだろ。できればタマミツネとかナルガクルガとかそういうカッコ可愛いのがいいね。
「なんで?」
「そ、れ、はぁ♡ ま、今からのお楽しみ♡」
蝿に変えられたおじさんがまた蠢く。色欲の権能を受けて、おしりの当たりに突起が増えて__
「あー……ほんき? 私まだ処女なんだけど」
「くふっ、それは良かったですねぇ♡ てめーが中古品だろうが何だろうが、てめーらが散々言ってきた通りの人間ならてめーを愛するはずですよねぇ!」
いや、むしろアイツならめちゃくちゃ気にするぞ。色々今まであって、捨てられないように頑張ってきたけど流石に無理かなぁ。
あー。
ごめんね、レグルス。
私、君に愛される私じゃなくなっちゃう。でも、でもね。私どうなったって、あなたのこと愛してるから。
ちなみに割とショック受けてます。1週間くらいぼーっとするくらいのショックです。
流石にこれにはレグルスくんも人生で初めてのバチギレですね。魔女教ルート壊滅のお知らせ