ばんえいウマ娘、北の大地を駆ける 作:mzk_arachne
──24──
「スノウ?ちょい待ち。このどきゅーとって、こんなデカいの?」
スマホを覗いていたグラムさんが、真顔で聞いてきます。最近はネットでマンションに置いたり車に乗せてみた写真とかありますから、そちらを見れば寸法で言われる以上にサイズ感は掴みやすいです。
そうです。この大きいのがいいんじゃないですか!
「大丈夫ですよ」
あたしは満面の笑みで請け負いました。
2メートル級のウマ娘が部屋にもう一人増えるくらいですから!
真正面からチョップを喰らいました。
「お゛っ!」
「アホか!そんなアホなことを思いつくのは、この中身かぁ?!」
「い、いたっ!ちょっと狭くなっても、ふわふわに包まれたり、思いっきり抱きつける幸せがあれば大丈夫ですよ!」
「こっちが全然大丈夫じゃないっしょや!ただでさえばんえいウマ娘二人いて狭いのに、これ以上狭くすんな!」
重種であるばんえいウマ娘が住む寮なので、普通の人間用の二人部屋よりは広いです。
だからと言って、けして広く使える部屋ではありません。部屋も広い分、ベッドや机なども重種に合わせてサイズが大きいからです。逆に、家具がデカいので部屋も大きくせざるを得なかった、が正しいのでしょう。重種ウマ娘、しかも鍛えているばんえいウマ娘ともなると身長2メートルを超えるのは普通なので、ドアも大きい仕様です。これが普通の人間仕様のままだと、生活しているウマ娘らがたんこぶだらけになるか、頭がぶつかる部分の壁が削られまくるかのどちらかです。結局のところ、私物を置くのに使える空間の割合は軽種も重種も変わりません。体感の広さはどこも似たようなものです。
でも、どきゅーとがいれば、狭さは些細な問題です。
そう言った途端、もう一発、真正面からチョップを喰らいました。
「お゛お゛っ?!」
「せめて、こっちのちっこいのにしとけ!」
グラムさんは当初はどきゅーとの事をよく知らずにいたようです。
たまたまSNSのトレンドに上がっていたので、それで調べてみたら予想外に巨大だったと。
寮の部屋が共有であることは分かっていますし、あまり好き勝手してグラムさんの迷惑となるようなことはしたくはありません。
ただ、どきゅーとタイシンの可愛さをもってすれば許してもらえるかな、と思ってはいましたが。
「買われる前に、どんなんか分かって良かったべ」
「あぁ……残念です」
どきゅーとタイシンをお迎えするのを諦め、しょげるあたしを見て、グラムさんは腕組みをしました。そのまま腕組みをしながら、目を瞑って上を見たり、俯いたり、唸ったり。
どう見ても何かを考えているか悩んでいる風で、ウンウンと唸っています。
そうして、しばらく経ってから。
意を決したように、グラムさんはあたしに向き直りました。
「六個!」
右の手を大きく広げ、そこに左手の人差し指を並べます。
「でかいのは無理でも、ちっこいのなら六個までならオーケー!」
どきゅーと一体は無理でも、小さいぱかプチなら数を揃えても良いと。
一つ一つは小さいぱかプチですが、それにしたところで六体もいれば結構なスペースは使いますが。
「まぁ最初はオーケーしてたくせに、後からダメって言うのはちょっとなーって感じはあるしさー。スノウに無駄に期待持たせちゃったのはウチが悪いのもあるっしょ」
ポリポリと頭を掻きながら、ばつが悪そうなグラムさん。
「スノウがバイト頑張ってんのは見てるし、出来るだけスノウのしたい事には協力してあげたいしさー」
「グラムさん……」
グラムさんは最大限の妥協をしてくれました。
とすれば、こちらもそれに見合った判断をするべきでしょう。友情に胡坐をかくべきではありません。あまりに我を通そうとすれば、それは単なる我がままです。一方的にやりたい事を突き通そうとするだけの行いは、友情とは呼べないでしょう。
次の言葉を出すには、勇気がいりました。
「ありがとうございます、グラムさん。どきゅーとは諦めます」
きっぱりと宣言しました。
それでも、今は何もいない分、ぱかプチタイシンをお迎えできるのは嬉しいです。サイズがちょっと足らないので、抱きつける幸せは得られないのは辛いですが。
そんなあたしの内心を、表情から読み取ったのでしょう。
「前みたく、ウチにくっついて寝てみる?」
「硬いですね」
「うるさい。レースに出てるばんえいウマ娘舐めんな。そこらへんはお互い様っしょ」
「でも嫌ではないですよ」
あたしはグラムさんの背中にくっつきます。
「……あんがと」
ふわふわは全く得られませんが、でっかい存在に身を寄せる安心感はあります。
あたしはグラムさんの背中に身を寄せて、パタリ、パタリと振られる彼女の尻尾に指をいれてゆっくりと梳いていました。
ぱかプチも巨大サイズがあるので、六体のうち二体くらいなら混ぜ込んどいても、そんなにバレないかもしれません。