先史文明研究員がテラ人になって転生し続けている話   作:Calく

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テラ歴102■年〜:クルビア
クルビアの歴史と組織『エルデル』


 

――テラ歴990年、ヴィクトリアの探検隊が現在「クルビア」と呼ばれる地域への遠征を開始。

 

 そこで大平原の源石鉱脈、コロッサル主鉱脈を発見した。

 

 こうした源石鉱脈という思わぬ掘出し物を見つけたヴィクトリアは開拓を進めていくこととなる。

 

 その後ヴィクトリアの領土としてクルビア地域は開拓されていく。

 だが大国として君臨していたガリアとの領土獲得競争に対抗するため、ある政策が行われた。

 テラ歴1011年、ヴィクトリア議会は「開拓地の税制、治安と感染者管理義務に関する法案」を制定。  

 

 同法は開拓地への課税措置を定めるととも、開拓民からの徴税を確実にするためにヴィクトリア本国から使節が派遣されることとなった。

 

 この法律により開拓者たちは重税と自治の義務を課され、治安維持や感染者管理を自力で行わねばならなくなった。

 

「俺たちの生活が苦しいのは本国のせいだ」

 

 本国の援助を得られなかった開拓者たちは不満を募らせ、1016年に税務特使を襲撃。

 

 これが「クルビア独立戦争」の発端となる。

 

 1018年の「バベッジ戦役」で独立軍が辺境領公爵を破り、1019年に独立軍の勝利で戦争が終結。

 

 クルビアはヴィクトリアからの独立を果たした。

 

 1020年、クルビアは正式に独立し「連邦規約」を批准。

 初の大統領選挙が行われ、マーク・マックスがクルビア初の大統領に就任することとなる。

 

 

 

 開拓地に設立された、粗末な医療テントの椅子に腰掛けた男の手には、『クルビアの歴史』と書かれた真新しい本があった。

 手に取った男は、その文章を読み終えると同時に顔を上げた。

「……勃興した若い国が、多くの人手を求めることはよくある流れだ」

「かくいう私も、そうしたビジネスの匂いにつられて、この国に来たわけだが」

 男は一目見てサルカズと分かる角を生やし、荒事に慣れた威圧感を放っていた。

 サルカズ。

 魔族と呼ばれ恐れられる彼らは、往々にして非情な傭兵として知られている。

 男の周辺ではまともな人間は姿を消しており、何処か荒れた雰囲気をもつ開拓民が遠巻きに見つめている。

 かくいう男も、かつては傭兵のリーダーであった。

 だが今では、荒事に慣れたその経歴から傭兵ではなく、開拓地の治安維持の傍ら――武力を備えた医療組織のリーダーとして活動している。

 最もそれは裏の話であり、周囲ではその物々しい雰囲気からただの武装組織のリーダーだと思われている。

「ボス、どうしたんだ? んな本なんか手に取ってよ」

 お陰で、開拓民からは組織の職員達と同じ呼び方をされる始末だ。

「お前は、私の部下でも職員でもないだろう」

「おいおい、好きに呼べって言ったのはアンタが先だろ? スヴェルドフレムさんよ」

 この妙に既視感のある開拓民だが、男……スヴェルドフレムとは全く関係のない、ただの開拓移民だ。

「その呼び方は、私の下についてから言ってもらおうか、ユール」

 そう呼ばれた開拓移民は、冗談だとジェスチャーを見せた。

「けどアンタがその気なら、俺は喜んであんたの下につくぜ」

「こんな寂れた所で過ごすより、マシに見えるからな」

 ヘラヘラと力のない笑みを浮かべた開拓民。

 そうした態度はいつものことだと鼻を鳴らしたスヴェルドフレムは、再び本に目を向けた。

 スヴェルドフレムがクルビアを訪れてから、数年。

 この新興国を訪れたのにも理由がある。

 

 

 

 時を少し遡る。

 ――テラ歴101■年、カズデル。

 スヴェルドフレムはカズデルの貧民窟を中心に、小規模な「学校」を開いた。

 まともな教育施設すらないカズデルでは、子供は学ぶどころか物心つく年齢まで育つことすら難しい。

 平民ならばまだしも、貧困層である限り、その将来は傭兵の道かヒト買いに売られる道か、悪に落ちる道しか存在しない。

 傭兵団の元団員たちと共に始めたそれは、貧困層の子供たちの間で少しずつ広まって行った。

 サルカズ文字。

 簡単な計算。

 サルカズの歴史。

 地理。

 他国の「学校」に通うものからすればあくびが出るような、あまりにも簡単なそれらは、このカズデルでは上等な「教育」であった。

 ――このカズデルで「学校」を営む変わり者が居る。

 そのような噂が立ったが、それを気にするものは好奇心あふれる若者か、子の未来を渇望するヒトの親たちくらいか――。

 少なくとも、王庭関係者が興味を持つなど、天地がひっくり返ってもありえないと。

 そう考えていた。

 

 ――今代の魔王が訪れるまでは。

 

『あなたがこの学校の設立者?』

 

 今代の魔王は英雄だと聞いた。

 百年前のカズデル侵攻から国を立て直した英雄。

 一目見て、稀代の戦士だと分かった。

 同時に、魔王特有の目をしていることにも気付いた。

 スヴェルドフレムはサルカズの歴史を垣間見て、壊れた魔王を幾度も見てきた。

 だが、この魔王は……テレジア「殿下」は、サルカズの歴史に耐えた、強大な魔王の目をしていた。

 

『教育の力をよく分かっているあなたなら、このカズデルを……良くしてくれる、そう思っているわ』

『あなたの出身は気にしない。カズデルは、サルカズである限り受け入れる国だから』

『……異種族とも関われるあなたに、教育と医療を、カズデルだけではないこの大地で……同胞を救ってほしいの』

 

 そう告げた魔王に、スヴェルドフレムは今代の魔王に従うことを決めた。サルカズの本能ではなく、己の意思で。

 魔王たるテレジア殿下の理想の先を、夢見たのだ。

 

 テレジア殿下の理想の元動くと決めたスヴェルドフレムは、まず己の組織を再編した。

 曖昧だった組織のメンバーの線引きを明確にし、増えた人員を適正ごとに振り分けた。

 そして誕生したのが、教育と医療の分野だけでなく武力を備えたサルカズによる組織――"希望の家"「エルデル」である。

 サルカズの武装組織を装い、クルビアでの同胞の援助。 

 それがスヴェルドフレムに下された使命だった。

 国として誕生する以前からサルカズ傭兵との関わりのあったクルビア。

 独立戦争時にはサルカズ傭兵の姿が多く見られたクルビアでは、開拓地として拓かれた所以からか、様々な勢力が入り交じり国内情勢は混沌としている。

 どのような形であれクルビア国内勢力との繋がりを求めて、スヴェルドフレム達「エルデル」は新興国を訪れた。

 





異種族とも関われると言うのは「異族に恨みを持った上でそれを表に出すことなく冷静に接することが出来る」という意味。
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