先史文明研究員がテラ人になって転生し続けている話 作:Calく
「学校」を開いて一年と経っていないある時、スヴェルドフレムは野暮用で荒野を抜けなければならなくなった。
元傭兵団員の護衛を数人連れていた所で、ふと目についた。
襲撃された商隊の残骸に目を向ける。
「ボスー! そっちはどうだー?」
「いや、無駄足だった。……どうやらここを襲った奴等は、めぼしいものは奪い尽くしたらしい」
そう言って死体を探っていた手を離した。
軽く埃を払い、乾いた血を拭う。
破壊尽くされた残骸は、人か物かすら分からないほど損傷が酷く、元の種族さえ分からないそれは、襲撃相手の残虐性を感じさせた。
「……酷いな」
「……ここまで破壊に徹するとは」
襲撃された商隊は不運と言えた。
恐らく本当に突発的な、互いに想定外の遭遇戦だったのだろう。
だが結果的に商隊は全滅し――襲撃相手の懐を温めることとなった。
「手掛かりも何も無い以上、ここから引き上げ……」
言葉を続けようとした刹那、スヴェルドフレムは……小さな音を捉えた。
それは、弱々しい呼吸。
消えかけている命の灯火。
「……まさか、生存者が居るのか――?」
「どこだ? 何処にいる――」
あらゆる残骸をひっくり返し、疑わしい場所は団員のアーツを使い掘り返し、そうしてようやく見つけたそれ。
「……リーベリの……子供か?」
前頭部を覆うような独特な羽耳の形をしたそれは、衰弱したリーベリの少年だった。
まだ幼さが残る少年からは、血の匂いが漂っている。
明らかな衰弱――放っておけば荒野に呑まれて死ぬだろう程に。
「……キャプリニーならば見かけたことはあるが……リーベリとはな」
同時に、厄介なことになったと舌を鳴らす。
キャプリニーならば、リターニアの商人どもに伝手を辿らせ送り返すこともできよう。
角を削らせ偽装させれば、まだマシだ――同胞にはバレるだろうが。
だが……リーベリは隠しようがない。
……そもそも、この異族を救う義理もないのだが。
戦災孤児など、このカズデルでは溢れている――その殆どが荒野に呑まれて死ぬ。
或いは、幼い身で傭兵となって荒野で散るか。
この地は、子供が伸びやかに生きれるほど優しくはない。
「ボス。んな異族のガキなんぞ拾うつもりか?」
「……」
冷徹な傭兵としての己が見捨てろと囁く。
サルカズの孤児ならば、見習いという体で団員にもまだ示しがつく。
異族を、カズデルは受け入れない――サルカズに比べればはるかに短いその生涯を、奴隷として過ごすか。
見捨てれば良い。ただ見なかったことにして、その生命が終わるのを待てば良い。
何故そうしない? 今までも――見かけた異族共にはそうしてきただろう?
俺は、何故こんな異族のガキの命に拘っているのか。
脳裏によぎる記憶は、その答えを示していた。
「(小声のサルカズ語)……親と言うのは、一度なれば他の子供にも弱くなるものなのか」
「年齢がもう少し上であれば、見捨てたんだがな」
「*サルカズスラング*……こいつを拾う」
「まじかよ?」
「俺が嘘を吐くか?」
「もう決めたことだ。……それに、異族のガキがカズデルで育てばどうなるのか興味がある……ただの気紛れにすぎん」
「へーへー……んな事言って、また拾ってきたりしてな」
「……分かったのなら口を閉じろ。それと、今の俺はボスじゃないと言っただろう。ただの放浪者だ」
「この旅の間だけだろ? 取り敢えずこのガキを、何処に持ってけば良いんだ?」
「……野営地に運ぶ前に、医療アーツで応急処置を行う」
そうして拾った異族の子供は、結果的に孤児と見なされた。
スヴェルドフレム所有の奴隷となったリーベリの子供は、瞬く間に成長し大人となる。
気紛れにスヴェルドフレムが教育を施した所、語学と数字の才能を見せたので、
「ボス。あん時の言葉はナシだ」
「こいつのお陰で大助かりだ。クソッタレなリターニア人共の焦る顔が見れて最高だぜ」
と部下達も認めるようになっていた。
奴隷の中にはスカーモール出身のサルカズ奴隷もいるが、ごくわずかに存在する異族の多くは捕虜としてカズデルを連れ回されている。
サルカズの武装組織が、奴隷を連れて行くのは当然だった。
「……ボス。本当に良いんですか? 僕がクルビアに行くなんて」
「問題ない。クルビア行きは私個人の考えではなく――テレジア殿下の意向だ」
「それに、異族との交渉役にサルカズではまともに相手をしてもらえんだろうしな」
「お前も、肩身が狭いカズデルよりも、クルビアのほうが良いだろう」
「どういうことです?」
戸惑うリーベリの若い男に、スヴェルドフレムは目を向けた。
「……今のお前ならば、カズデル以外でもやっていけるということだ」
もともと、スヴェルドフレムはこのリーベリを手放すつもりだった。
ただ思いの外有用で、つい手放すのか惜しくなった。
たった数年、されど数年。
サルカズからすれば随分と短い時間は、リーベリの少年を若い男にまで成長させた。
端的に言えば情が湧いた。
我が子のようにとは言えないが、スヴェルドフレムなりに、拾った子供のより良い未来を願っている。
だからこそ、リーベリの良さを生かせる環境が少なからずあるクルビアへと連れてきた。
時間が許す限りスヴェルドフレムの教えを詰め込む。
来るべき時が来れば、スヴェルドフレムはクルビアを離れるつもりだ。
同時に、この若いリーベリの男に、「エルデル」組織クルビア支部の管理を任せたいと……そう考えている。
不意に扉が開き、その中からリーベリの若い男が顔を出した。
「……どうしたんですか、ボス。」
僕の顔になんか付いてますか、などと呑気なことを宣うリーベリに、薄く笑みをこぼす。
「いや。……お前も随分と成長したと思ってな。……そろそろ、クルビア『支部』を任せてやっても良いぞ」
「本当ですか? ……先週まで、まだまだ甘ったれとか言ってたくせに」
「私が嘘を吐いたことがあるか?」
「……貴方が人を褒めるなんて。明日は槍でも降るんでしょうか」
「前から……褒めているだろう、お前のことを」
「はぁ……イマイチ実感が湧きません」
「そうか。支部の話は強制ではない。……お前の好きにすると良い」
そうスヴェルドフレムが告げると、リーベリの羽角が震えた。
「いえ。……その時は宜しくお願いします」
尻尾太なイケメンサルカズが追加されたと思ったら
大陸版の医療でくたびれ系エッッな不老イケオジが来てしまったので早くグロ版に来て欲しい。
ミトムくんの明らかに君なんかただのサルカズじゃないよね感……腕の紋様と言い目と言い尻尾と言い……何処のサルカズ部族なのか早く掘り下げて欲しい。
と言うか、あのしっぼの太さ加減がヴィーグルっぽいな……まさかヴィーグルもサルカズだったりするのか?(疑心暗鬼
アークナイツくんはほんとに性癖に刺さるものをお出ししてくれて感謝祭