先史文明研究員がテラ人になって転生し続けている話   作:Calく

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ダイジェスト版


変革と希望

――テラ歴1031年、ガリア滅亡。

 四皇会戦時にコルシカ一世が死去。同時に皇帝の座を皇后が引き継ぐも、首都リンゴネスの陥落により皇后は自死。

 たった三日程で大国ガリアは滅び、輝かしい都市は更地と化した。

 ガリア帝国が、いわゆる「中核国家」の地で百年にわたって築き上げた秩序が、ウルサス、ヴィクトリア、リターニアの猛攻により、完全に瓦解する光景を目の当たりにした。

「世界の首都」と謳われたリンゴネスが、テラの地図上から永遠にその名を消し去られる瞬間を見届けた。

 

 大国ガリアを呑み込まんと降り注ぐあらゆる大火は、見る者の脳裏にある光景を過ぎらせた。

 

 それはある意味、新たな「戦争」の定義が成された瞬間でもあった。

 その光景を、魔王の力を介して王庭の主達――ブラッドブルードの大君、ナハツェーラーの王、バンシーの女王は『視た』。

 議事堂に集いし者たちは、カズデルを塵にした戦争を思い出した。

 だが、まだ終わってはいない。

 遥か遠い未来、遥か遠い幻想、遥か遠い可能性――。

 そこに映るのは、もはや具体的な物語の回想ではなく、推測と臆測、そして予言と判断に他ならなかった。

 だが、それを疑問視する者はいない。すべての可能性が等しく尊重されるべきものだからだ。

 

 そして、その結末もまた平等であり、無限に広がり、もはや議論の余地すらなかった。

 変革の時。歴史の転換点。運命の岐路――。

 

 かつてないほど重大な戦争が、今まさに幕を開けようとしている。

 その影響は、遥か遠い未来へと繋がり、サルカズに、そしてテラ全土にまで及ぶことになるだろう。

 

 あらゆる者が、その渦中で自らの居場所を見出す。

 己が求める居場所を――。

 

「カズデルは逃れられないわ」

「リンゴネスを滅ぼしたあの戦いの光景を、変形者が共有してくれたの」

 

 新型アーツによって実現した高効率の指揮システム、戦線を突き破る高速戦艦、軍団規模での作戦行動……新たなものが絶え間なく戦場に投入され続けている。

「『滅ぼす』ことにかけて、彼らの才能は私たちの血の奥深くに眠る本能を今まさに超えつつあるわ」

 混血の魔王が語る言葉の中には、双生の魔王二人の懸念が表れている。

「ガリアが雇った王庭術師とリターニアに身を隠すリッチとの交戦は凄惨を極め、かのウェンディゴは戦場において同族の血でもって皇帝に己が忠誠を示した……」

 その中には王庭術師だけでなく、同族たる傭兵の姿も当然のように存在している。

 だが戦線を埋めるために用いられたサルカズ傭兵などは、各国の死傷者統計に計上されてすらいない。

 

「サルカズは他者の戦争の中で殺し合うばかりで、戦争の主導者たちには使い捨ての消耗品と見なされている」

 新たな『戦争』の中でも、サルカズは使い捨て――使い潰される末路を辿っている。

 しかし、変化の波に呑み込まれぬ為に、我々は変わらなければならない。

「変革の足並みに追いつくために、サルカズは必ずや炉火の下に再び集わねばならぬのだ」

 

 テラ歴1031年、双生の魔王による旧王庭派の粛清、及びカズデル軍事委員会の設立。

 同時期、魔王テレジアはケルシーの協力を得て『バベル』の活動をより広げることを決意する。

 

 

 

 カズデル地区「バベル」事務所にて、テレジアは待ち人とようやく再会を果たした。

「はぐれた仲間たちはみんな連れ帰ってきた?」

 その問いに、緑髪のフェリーンは淡々と答える。

「ああ、皆問題ない」

 旅の間で使い古した外套から、「バベル」の制服に身を包んだ緑髪のフェリーン。

「バベルが現在建設中の各施設も順調に作業が進んでいる。君が最も気にかけていた学校も完成した」

「サルゴンとレム・ビリトンの『関係者』の方は順調に進んでいる。クルビアも……技術交換を提案してきた科学者がいる」

 ケルシーがもたらした吉報に、テレジアは笑みを浮かべた。

「こうした勢力と対等な会話をするために、私たちはすでに百年の時間を費やしたわ」

 百年。それほどの月日をかけて、ようやくテレジア達は『対等な』相手を手に入れることができた。

「いずれも素晴らしい成果だと言えるだろう。君は今まさに歴史を転換させているんだ」

 簡素な言葉の裏には、ケルシーなりの激励が隠れていることに気づいたテレジアが、薄く笑む。

「ありがとう、ケルシー。でもあなた、最近悩みが尽きない様子ね」

 

「……軍事委員会が正式に成立したのでな」

「バベルの存在は、相容れない矛盾を再びカズデルに突きつけることとなるだろう」

「異なる種族、異なる国家の仲間たちは、いかにしてサルカズと共に暮らすべきなのか?」

「恨みと偏見を調和しようという希望が……新たな導火線となってしまったらどうするつもりだ?」

 ケルシーの語る懸念。それはこのカズデルで真っ先に挙げることのできる「問題点」だった。

「間もなく軍事委員会の人員がバベルに加入するわ。彼らがみんなの安全を確保してくれるはず」

「そしてこれは、一部の人への警告でもある」

「バベルの背後には私とテレシスがいる、という警告よ」

「……」

 テレジアは慈愛と善意を持つサルカズだが、同時にサルカズ達を束ねる「魔王」であり「英雄」でもある。

 そうした一面からは、テレジアの英雄像と冷酷さが垣間見える。

 何処か張り詰めた空気を変えるように、テレジアはあるサンクタに出会ったのだと話した。

「……川辺で水を汲んでいるのを見かけたから、話しかけてみたの。たくさんのことを話したのよ。歴史だったり、平和についてだったり、憎しみのことだったり」

「そして、彼の心の中には……彼自身が自覚さえしていない言葉が隠れていた」

「だから……」

 

「サンクタに魔王の力を使ったのか?」

 

「彼との縁が一体何を意味しているのか、見てみたかっただけよ」

 

「そうか……それで答えは?」

 

「現時点ではまだ何とも。ただ彼の魂に目を向けて、もしかすると……私たちはそんなに孤独じゃないのかもしれないって思ったの」

 

「ケルシー、この大地には、大なり小なりの、美しい、善なる希望を追い求めて努力している人がたくさんいるのよ」

 

 

 





サルカズローグでようやく援護戦術分隊を解放できてうれぴぃ!ウィシャデルで全てを破壊します!
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