先史文明研究員がテラ人になって転生し続けている話   作:Calく

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②、3話ほど主人公くんは出ません



思考

フランカが肩越しに周囲を睨みつける。路地の向こう、まだ黒い影が蠢いているのが見える。

 

「近衛局の護送隊は……無事に、離脱したみたいね」

フランカの声は淡々としているが、その瞳は冷たい。 「だけど、レユニオンの連中は……まだまだ、あたしたちを見逃すつもりはない、と」

 

アーミヤは手を握り直し、顔を上げて答える。言葉は静かだが芯がある。

「そうですね。恐らく、ミーシャさんが龍門側に引き渡されたと悟るまでは、こちらを狙い続けるはずです。彼らの行動様式から考えて、撤退を許すつもりはないでしょう」

 

その言い方に、フランカは鼻で笑うように返す。

「ありがたいことに、彼らの執着があるからこそってわけね。こっちはミーシャの安全を最優先に動けるってことだ。的が一つに絞られてるってのは、戦術的にはありがたいわよ」

 

アーミヤはうなずく。冷静な分析を続ける。

「まさにそのとおりです。レユニオンが我々を追う限り、彼らの注力は分散しません」

「こちらは撤退ルートを確保した上で、護衛対象の安全を最短で達成することに注力できます」

「ただし、注意すべきは“追走を止めさせる術”が有効であるかどうか。迎撃で消耗すれば、逆に護送隊を危険に晒すことになります」

 

リスカムが小さく息を吐き、周囲の気配を再確認する。術の痕跡はまだ残っており、増援の気配もある。テキサスは先導の位置で俯瞰し、隊列がまとまって動けるよう合図を送った。

 

フランカは腕を組み、少しだけ表情を和らげる。

「つまり、やることは単純よ。無理に食い止めようなんて余計なことはしない――ただし、向こうが詰めるなら詰めさせないだけの火力は用意しておくってわけ」

 

 

ロドスは保護対象であるミーシャを龍門近衛局へ預け、都市そのものの防衛力をも利用して彼女を守ろうとしていた。

だが、ミーシャの存在に気付いたレユニオンは、執拗にその行方を追跡。

 

一度はロドスと近衛局の連携によって追っ手を振り切ることに成功する。

しかし、別動隊が龍門を襲撃。混乱に乗じて近衛局の護送車両を急襲し、ついにミーシャを奪い去ってしまった。

 

 レユニオンに攫われたミーシャは、意外な人物と再会していた。

 

暗がりの中、火に焼け爛れた壁の隙間から洩れる光に、ミーシャの頬が淡く照らされた。

 目の前の男は、かつての弟アレックス。だがその瞳には、もう彼女の知る少年の面影はほとんど残っていなかった。

 

「……お前だって、ちゃんと見てたはずだ」

 スカルシュレッダーは低く呟く。

「あの日、俺を引きずり出したやつらの顔を。あいつらにとって俺たちは……ただの病原だった。生きてる価値もない、化け物だ」

 

 ミーシャは唇を噛みしめた。目に浮かぶのは、あの寒々しい夜の記憶。

 彼の言葉は、否定できない。

 

「……でもな」

 スカルシュレッダーの声が震える。握りしめた拳が、薄暗がりの中でわずかに揺れた。

「母さんは最後まで俺の手を離さなかった。それでも――母さんは……」

 

 彼は言葉を途切れさせ、うつむいた。

 そこに迷いがあった。かつて「アレックス」と呼ばれた少年の残滓が、彼を縛っているように。

 

 だが次に顔を上げた時、その迷いは炎に包まれた鉄のように固まっていた。

 

「だから、俺は変わったんだ。憎まれても、恐れられても構わない。俺たちが生き延びるには、戦うしかない」

 

「……アレックス……」

 思わず、ミーシャの口から名が零れた。

 

「その名前は捨てた」

 彼は吐き捨てるように言う。だがその瞳の奥で、かすかに揺れる何かがあった。

 

「……けど、お前ならわかるはずだ。俺たちが背負わされたものを。なあ、ミーシャ……」

 スカルシュレッダーは歩み寄り、妹を見下ろす。

「お前も一緒に来い。俺と……レユニオンと共に」

 

ミーシャは言葉を探すように、両手を胸に抱きしめた。

「だけど、私……ほかにも、感染者を助けようとしてる人たちに会ったよ。あの人たちは……」

 

 スカルシュレッダーの眉が僅かに動く。

「それは、ロドスのことか?」

 その声音には冷たい棘が潜んでいた。

「自分たちも感染者のくせに、龍門に手を貸して、俺たちを痛めつけて――」

 

 ミーシャは言葉を失い、視線を伏せる。

 

「――その上、同胞を殺し、兄弟を傷つけるような連中のことか、って聞いてるんだ」

 怒りを含んだ声が、狭い空間に低く響いた。

 

 だがミーシャは、小さく首を振る。

「違う……そんな人たちじゃないよ」

 

「お前はわかってない」

 スカルシュレッダーは吐き出すように言った。

「そろそろ現実を受け入れてくれないと……」

 

 その言葉を聞きながら、ミーシャの胸に奇妙な痛みが走る。

――そっか……やっぱり、皆苦しい思いをしてきたんだね。

 

「……もし、レユニオンが本当に皆を守ってくれるのなら……」

 呟くように続けたミーシャの声は、彼女自身も気づかぬほどかすかに震えていた。

 

「もちろん、守るさ」

 スカルシュレッダーは即座に答えた。その瞳に宿るのは、迷いを超えてしまった者の決意。

「そして、それと同じように……俺は、ミーシャを守ってみせる」

 

 一歩、彼は姉へと近付く。

「もう二度と、お前を傷つけさせたりなんかしない」

 

 ミーシャの唇がわずかに震える。

 

「――スカルシュレッダー……」

 

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