先史文明研究員がテラ人になって転生し続けている話 作:Calく
源石との接触。
それは幸運でもあり不幸でもあった。
我らティカズの栄光と絶望の歴史が紡がれることとなる。
【1097年度記録:あるサルカズ将校について】
フローガ。
サルカズ語で炎を意味するその名前は、かつて一人のカズデル将校を指していた。
フローガ・シューズペル。
王庭炎魔の末裔――その混血と噂されていた彼のアーツは、まさにかの強大な炎魔の、古き一族の力を思わせる炎のアーツだったからだ。
炎魔。
かつては強大な力を誇り、サルカズの種族で古く強大な一門。
中でも強い力を持つのが「王庭炎魔」であったが、最後の純血炎魔が死んだことで、王庭からは姿を消した。
炎を自在に操り、かつての伝説を再現するかのような将校の姿は、多くの耳目を集めた。
炎の巨人を従え、灰すら遺さず焼き尽くす業火によって、幾度の戦場を乗り越えた歴戦の戦士。
しかしその逸話も、200年前――ヴィクトリア、リターニア、ガリアといったテラの大国で構成される連合軍の侵攻によって途絶えることとなる。
カズデルが灰燼と化したこの侵攻で、フローガ・シューズペルの消息は途絶えた。
その遺体が確認された訳では無いが――生き延びた兵士によれば、敵の軍勢を押し留めるため、フローガはアーツを酷使していた。しかし限界を悟ったフローガは、こう告げたという。
――奥の手を使う。お前たちは逃げろ。……崩壊現象に巻き込まれたくなければな。
留まろうとする部下を半ば強引に逃がしたフローガの姿は、兵士の目に焼き付いた。
その後、戦場となった荒野一帯を覆い尽くす光が眩いた。あまりの輝きに誰もが目を瞑った刹那――。
当時の戦場跡には、荒野一帯を抉るように残る巨大なクレーターと、消えずに燃え盛る火種があるという。そしてその範囲内は、大小様々な源石で埋め尽くされているとか。
カズデル侵攻の影響で多くの戦争資料が喪失したが、フローガの死と栄光はその後も受け継がれていく。
歴戦の戦士であり前時代の英雄と呼ばれたフローガの死だけでは無く、カズデル侵攻で多くの英雄が命を散らした。
カズデルという国はこの侵攻で灰燼となった。
ある人は語る。
「多くのサルカズ人は信念と勇気を完全に失ってしまいました」
「そして彼らは逃げることを選びます。故郷に積み上がる瓦礫、そして自身の運命から逃げるため、異国を目指したのです」
「ガリアからヴィクトリアへ、そして今のクルビアへ」
カズデルという形ある故郷を失ったサルカズ達は、かつて二千年近くさまよった先祖と同じように、四方へ散った。
それから二百年経ってようやくカズデルの復興の目処がたち、繁栄しようとした矢先、内乱が起きる。
サルカズという種族には、多くの苦難が待ち構える運命なのか。
【あるサルカズの歴史学者】
かつて存在した、スヴェルドメルターと呼ばれた譴罰族の将校が最後の炎魔として知られている。敵の総攻撃を受けながらも、王の亡骸を三日三晩守り続けた炎魔を知るサルカズは多い。
近年、将校フローガが最後の炎魔では無いかと主張する学者が多くいる。
しかし将校フローガ自身、最後の炎魔だと語った逸話も資料も存在しない現状では、根拠に乏しいロマン溢れる主張に過ぎない。