前世の記憶を持つSRTの生徒が先生と頑張る話   作:MGFFM15

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お待たせしました第10話です!本当はこの1話で対風紀委員会戦を書き終えるつもりだったんですが予定よりも文字数が多くなりそうだったので前後半に分けることました。

そしてお気に入り登録、高評価、ご感想など本当にありがとうございます。とても嬉しかったです。そして誤字報告もありがとうございます。私の小説は文字数が多くなりがちなので確認したつもりでも見落としている場合が多々あるので本当に有り難いです。


第10話 オペレーション ヴェノムクロー(前編)

ボクが小隊のみんなに連絡をしてから15分程経過してからやっと電車が駅に到着した。この間にも状況が動いて便利屋68が柴関ラーメンを吹っ飛ばして先生と対策委員会はその爆発現場へ向かった。一方ボク達は着々と攻撃準備を進めているゲヘナの風紀委員会に対応する為に準備を進めていた。ボクは電車を降りて急いで駅の入り口に行くと既にナツキの運転するL-VATが路肩に駐車して待っていた。ボクは駆け足で近づいてドアを開けて助手席に座った。それと同時にナツキはL-ATVを発進させた。

 

「ごめんお待たせ。状況は?」

 

《風紀委員会の車両は途中で4台が車列から離れて、別れた方はアビドス市街地の空き地に行って迫撃砲陣地を設営中。プーちゃん(偵察用ドローン)の映像を見る限り重迫は無くて軽迫だけみたい。ゲヘナの風紀委員会だから多分50mm迫撃砲じゃないかな》

 

アビドス高校の校庭に駐車しているGCS(地上管制ステーション)にいるアリナが無線機越しに説明を初めて、同時にユイがボクにタブレットを渡して、プーちゃんか送られて来ているライブ映像を見せてくれた。

 

《そして、本隊の方はアビドス市街地に通っている幹線道路跡の所に止まって待機中。そして約一個中隊(200人)が先行して例の爆発地点に向かって進行中。柴関ラーメンを爆破した便利屋68は現在対策委員会と交戦中。この感じだと私達が援護しなくても対策委員会が勝てると思う》

 

便利屋68は前から引き続きブイちゃん(偵察用中型ドローン)2機による24時間体制の監視をしているから動きは全部把握出来ていた。まぁでも流石に昼飯を食べに行ったと思ったら柴関が爆発したのはボク以外の全員が驚いていたけどね。

 

「さっきの柴関ラーメンの爆発のタイミングが良過ぎるし、もしかして対策委員会を誘い込む為に風紀委員会と便利屋68が協力してやったんじゃないんだろうな?便利屋68って風紀委員会と同じゲヘナ出身の奴らだったろ?」

 

まぁこれに関しては本当にタイミングが良かっただけで、風紀委員会と便利屋68が協力している訳ではないんだよね。

 

「何の為に?」

 

「さぁね」

 

《アビドスの土地を奪いに来たとか?》

 

「ホシノとかアヤネの話だとここには砂以外地下資源とかも何もないって言ってたし、わざわざ他学園から非難されるリスクを追って侵攻して来るとは思えないけどね」

 

「まぁ向こうが何を企んでいるかは現状分からないけど、アビドスに対して敵対行為を見せたらこっちもアビドス防衛の為に攻撃する。作戦の概要はヒヨちゃん(ランチャードローン)を敵部隊の周辺に飛ばしてECMを起動。周囲の環境とECMの効果範囲的に他に影響を及ぼすことはないから全周波数帯に無差別でジャミングして。敵の通信を完全に封じるよ。そしてserval4はビジちゃん(ティルトローター式大型無人攻撃機)に搭載したCBU-103で敵本隊を先制攻撃」

 

「敵の数が多いから流石に爆撃だけだと取り零すだろうけど、別にそれで良い。serval3はserval4の攻撃後、ポイントE(エコー)から伝令に向かおうとする敵だけを片っ端から狙撃して。それ以外は無視して良いから。奴らの連絡手段を失わせるのが優先。ボクが40式フルオートグレネードランチャーを持ってポイントG(ゴルフ)に待機しつつ命令を出す。必要になればグレネードランチャーで攻撃を加える。serval3はserval4の攻撃後ポイントC(チャーリー)から敵軽迫撃砲部隊をserval-171式重機関銃で攻撃して」

 

「「《了解》」」

 

「んで、作戦名はどうする?」

 

「あーそれはまだ考えた無かった。何か良い案はある?」

 

「うーん・・・ブレークスルーとか?」

 

「イーグルクローは?」

 

《アビドス解放作戦とか?》

 

「そうだねぇ・・・じゃぁナツキの案を元にヴェノムクローにしよっと」

 

《って言うか毎度のことだけど私達の小隊の考える作戦名って厨二病が喜びそうな名前ばっかりだね・・・》

 

「主に作戦名を決めているserval1とserval2の趣味嗜好が似通っているからね」

 

「ん?何か文句でも?」

 

「特になーし!」

 

「なら、オペレーションヴェノムクローを開始する」

 


 

SERVAL小隊が風紀委員会攻撃の為に移動と準備を始めてから十数分が経過したアビドス市街地。数分前まで柴関ラーメンがあった場所では、柴関ラーメンを爆弾で吹っ飛ばされたことで怒った対策委員会の面々とやってしまって後に引けなくなった便利屋68との戦いが繰り広げられていた。

 

便利屋68も便利屋として今までそれなりに戦闘経験を積み、そこら辺の奴らよりは確実に強い実力を持ってはいたが、アビドスの厳しい環境下で毎日の様に武装集団の相手を物資が不足している中戦い抜いて来てついた実力と、先生が指揮が合わさった対策委員会はそれ以上に強かった。

 

更に何の準備も本来用意する筈だった罠やら何やらも用意しないままのいきなりの戦闘になった便利屋68と万全の準備をして来た対策委員会との差もあり戦闘は終始対策委員会が優位に立っていた。

 

便利屋68が柴関ラーメンの瓦礫を盾にして徐々に追い詰められていた時、空から空気を切り裂く音と共に迫撃砲弾が何発も降って来た。

 

「先生危ない!」

 

降って来る迫撃砲弾を脅威的な動体視力で確認したシロコは砲弾が着弾して爆破する前に先生の元へ駆け寄って近くの遮蔽物に隠れさせた。直後、便利屋68の周辺と対策委員会の近くに迫撃砲弾が次々と着弾し爆発した。迫撃砲弾は周辺の建物にも命中し、アビドス市街地を破壊して行く。

 

「うわっ⁉︎今度は何なのさ⁉︎」

 

「これは・・!」

 

「何・・・・?」

 

予想していなかった第三者からの攻撃に便利屋68と対策委員会の双方はお互いに攻撃するのを中断して困惑する。

 

「ん、先生、大丈夫?」

 

先生に大きかぶさる様にして守っていたシロコが先生に怪我が無いから確認しながら聞き、先生は頷いて無事を知らせた。

 

“うん。シロコのお陰で助かったよ。ありがとうね。それよりも・・・”

 

「この音は・・・・」

 

「アリナさんが報告していたゲヘナ風紀委員会の擲弾兵からの50mm迫撃砲による攻撃です!標的は私達ではなく便利屋の方みたいなのですが・・・・」

 

「風紀委員会・・・!」

 

「まさか本当に攻撃して来るなんて!」

 

事前に情報があったお陰で対策委員会は第三勢力が誰なのかを直ぐに特定することが出来た。一方便利屋68も長年戦って来た相手の攻撃ということもあり、特にカヨコは直ぐに相手が誰なのか分かった。

 

「社長!ムツキ!ハルカ!早く隠れよう!奴らが来た!」

 

「やつらって?」

 

まだ状況が飲み込めておらず聞き返すムツキに対してカヨコは冷や汗をかきながら説明する。

 

「うちの風紀の連中だよ!ここまで追って来るなんて!それもこのタイミングで・・・・!いや、こんなタイミングだからこそ・・・⁉︎」

 

カヨコが考えていると、その直ぐ側に迫撃砲弾が降って来た。直撃では無かったとはいえその強烈な爆発にモロに巻き込まれたカヨコとその近くにいた便利屋68の面々は吹っ飛ばされてそのまま意識を失った。

 

「よし、歩兵、第2小隊まで突入!」

 

便利屋68が無力化されたのを確認して、爆煙の中から知らない人の声が聞こえて来た。その声の主は褐色の肌と長い銀髪のツインテールが特徴のイオリだった。その後ろにチナツの姿もあった。

 

「・・・イオリ、あの方達はどうします?」

 

「ん?ああ、向こう側の生徒?なんだっけ・・・・アビドス?そんなの当然、公務の執行を妨害する輩は全員敵だ」

 

「ならば、大人しくしてもらいたいものですね・・・しかしこちらの事情を説明するのが先かと・・・」

 

「説明?必要か、それ?うちの厄介者どもを取っ捕まえる為の労力が惜しい。もし邪魔するなら、部外者とは言え問答無用でまとめて叩きのめす」

 

相変わらずな好戦的なイオリの発言にチナツは小さく溜め息を吐き、これは戦闘は避けられないなと思うのであった。

 

「な、何?風紀委員会が便利屋を捕まえに来たってこと?リナさんの報告が本当に当たるなんて・・・」

 

突然の風紀委員会の登場にリナから報告を受けたユイからの話を思い出して驚くセリカ。

 

《まだ分かりません・・・しかし、私達に友好的とは判断しかねます》

 

「確かに。砲撃範囲内には私達もいた。あからさまに狙った訳じゃないけど」

 

「そんな・・・」

 

「冗談じゃないっての!便利屋は私達の獲物なんだから!いきなり来て何なの一体!」

 

「でもゲヘナの風紀委員会は、他校の公認武力集団や便利屋のような部活とは性質が異なります!一歩間違えれば、政治的な紛争の火種になるかもしれません・・・・」

 

《SERVAL小隊の皆さんも向こうから明確な攻撃の意思を確認するまではこっちから攻撃するなと言われていますしね・・・》

 

「アヤネちゃん、ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

 

《・・・・はい。普段なら、ここまで連絡が取れないことはないはずなのに・・・・》

 

「この状況・・・私達はどうすれば良いのでしょうか?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

“じゃあ便利屋をこのまま風紀委員会に引き渡しちゃう? ”

 

「それは、で、ですが・・・それにしても彼女達と戦う訳には・・・」

 

「じゃぁどうしろって言うの?」

 

《・・・SERVAL小隊からは下手にこちらから攻撃を仕掛けると風紀委員会にこちらを攻撃する理由を与えてしまうので極力しない様にと言われているので、先ずは風紀委員会の方と話し合おうと思います。皆さんも、銃を構えたりはせずに、相手を刺激しない様に戦闘態勢に入らないようにお願いします》

 

「ん・・・分かった。敵と分かったら容赦しない」

 

「分かったわ」

 

《通信機越しに失礼します。私はアビドス高等学校の一年生、奥空アヤネです。そちらはゲヘナの風紀委員会で間違いありませんか?》

 

「そうだけど、何の様だ?こっちはうちの厄介者どもを捕まえるのに忙しいんだけど。邪魔する気なら容赦しないぞ」

 

《邪魔する気はありません。ですが、便利屋68は私達の自治区内で飲食店を爆破すると言う問題を起こしています。なので、一度こちらで便利屋68の身柄を拘束しても良いでしょうか?》

 

「はぁ?そんなの許す訳ないだろ。便利屋68がゲヘナでどれだけ問題行動を起こして来たと思ってるんだ。便利屋は私達の獲物だ。何も知らない他校の奴が風紀委員会の公務の邪魔をするな」

 

《ですが、貴方達が風紀委員会とは言えここは私達アビドスの自治区内です。便利屋の皆さんがそちらで色んな問題を起こしたのは事実でしょうが、だからと言って私達の許可無く他校の学園自治区内で戦術的行動をとっても良い理由にはなりません》

 

「まだ完全に自治区に入った訳でも無いし別にこの位の戦闘行動は問題ないだろ」

 

《・・何を言っているんですか?》

 

「あぁもう面倒だ。私は警告したからな。邪魔するって言うならお前らも敵だ。纏めて倒す」

 

《ちょ、ちょっと待って下さい!こちらに貴方達と争う意思はありません!》

 

「ならさっさとそこをどいて便利屋を渡せ」

 

「嫌よ!便利屋は私達の獲物なんだから!」

 

「じゃぁ敵だ。警告は散々したからな」

 

そう言ってイオリはライフルを構えて通信機を持っていたノノミを狙っって撃った。が、イオリが撃つよりも先にシロコがノノミを押し飛ばして近くにあった車に隠れさせた。そしてシロコはアサルトライフルを構えてイオリに向かって撃った。イオリは自分を狙うシロコの存在に寸前で気づき、自慢の瞬足を生かしてギリギリその弾丸を避けた。

 

「くっ⁉︎やりやがったな!」

 

「ん、それはこっちのセリフ」

 

それを皮切りに対策委員会と風紀委員会の激しい銃撃戦が始まった。

 


 

先生がわざとつけっぱなしにしていた無線機からイオリとアヤネとのやり取りを聞いていたボクは完全に交渉が決裂して、風紀委員会が戦闘態勢に入ったのを確認した。

 

「風紀委員会の完全な敵対を確認。作戦を開始する。serval4 、ヒヨちゃんの展開は完了してる?」

 

《敵本隊と迫撃砲部隊の周辺に展開完了》

 

「了解。CBU-103の命中と同時にECM起動させて。それじゃぁserval1からserval4へ、ビジちゃんによる攻撃支援要請。レディフォーナインライン」

 

9line(ナインライン)とは、CAS(近接航空支援)の時に必要となる9つの確認事項的なやつ。1 基準IP、2 方位、3 距離、4 標的高度、5 標的、6 目標位置、7 マーキング方法、8 味方の位置、9 離脱方法。の9つ。

 

《レディ》

 

「ライン1、2、3、9N/A(省略)38ASL(海抜38メートル)、幹線道路上の車列と歩兵、PC(パパチャーリー)56435-76486、マーキング無し、南東800mと北西1km。使用火器、CBU-103を2発」

 

《serval4コピー(了解)・・・準備完了》

 

「了解。serval1からserval4へ、クリアードホット(攻撃許可)

 

《serval4コピー。マスターアームオン(安全装置解除)・・・・・ボムズアウェイ(爆弾投下) ボムズアウェイ!・・・・着弾まで約20秒》

 

投下されたCBU-103は専用のディスペンサーキットを装備しているから風による誤差を補正しながら慣性誘導で目標に向かう。レーザー誘導やGPS誘導よりは精度は劣るけど、それでも数十メートルの誤差で目標に命中させることが出来る。

 

ボクは高倍率の双眼鏡で幹線道路に止まって待機している風紀委員会の部隊に向かって2発のCBU-103が落ちて行く様子を観察する。風紀委員会の方はまさか自分達が狙われているなんて思っていな様で警戒してある様子も、攻撃に気づいている様子も無い。

 

CBU-103は目標の数百メートル上空で外殻が外れて中から1発のCBU-103から202個、2つ合わせて404個のBLU-97/B子弾が空中にばら撒かれる。

 

2発合わせて約6ヘクタールの範囲にBLU-97/B子弾が広がり、道路上に駐車していた車両と車両の中や外にいた風紀委員会の部員達に404個の子弾が一斉に降り注いだ。ドゴゴゴゴッ‼︎っと404個のBLU-97/B子弾が着弾と同時に爆発して地面がまるで沸騰した様な光景になる。

 

爆発したBLU-97/B子弾は破片を半径20〜30メートルに飛散させて範囲内にいた風紀委員会の部員達の身体に銃弾と変わらない威力の破片を全身に浴びさせる。更に飛び立った破片には焼夷弾としての効果もあり、トラックに破片が突き刺さり幌を燃やし、燃料タンクに引火させて火災を発生させた。

 

更にBLU-97/B子弾にはHEAT(成形炸薬弾)としての効果もあり、上から降って来たBLU-97/B子弾が直撃したトラックは装甲車の装甲をも貫通出来るように設計されたHEATによって易々と車体を貫通させられて爆発の効果も合わさり一撃で大破した。

 

今回使用したCBU-103と言う爆弾はクラスター爆弾の一種で、数あるクラスター爆弾の中でも重装甲目標以外の色んな目標に対して攻撃出来るように作られた汎用型クラスター爆弾。相手が主力戦車とかじゃない限り今回みたいな兵員輸送トラックや歩兵はひとたまりもない。

 

「serval4、ECMは起動出来た?」

 

《起動完了。現在ヒヨちゃん全機正常に稼働中》

 

「了解。serval3は敵が動きを見せたら撃って。serval2も迫撃砲部隊に対して攻撃開始」

 

《 《了解!》 》

 

ボクが命令した十数秒後に離れたところから山彦のようにユイの使用するserval-23式対物狙撃銃の重い発砲音が響いた。

 


 

便利屋68とアビドスと言う辺境の地にある全校生徒がたった5人しか居ない田舎の学園が相手と言うことで風紀委員会はぶっちゃけて言うと油断していた。

 

こっちには風紀委員会の擲弾兵部隊と実働部隊総勢1500人。過剰戦力とも言えるこの戦力で負ける可能性は殆ど考えられなかった。だから後方の待機を命じられていた風紀委員会の部隊は油断していた。敵と戦う前線ならいざ知らず。数の少ない敵は先行した予備部隊も含めて1個中隊(200人)もある部隊相手に手一杯になるだろうから、そんな敵が後方まで進攻して来るとは考えられなかった。

 

だからイオリやアコ行政官からの命令があるまではゆっくり待っていようと考えて待機していると、突然の空爆が後方待機をしていた部隊を襲った。

 

「いた、痛いっ・・・!」

 

「う・・・つぁ・・・・・」

 

「大丈夫⁉︎凄い血が・・・・」

 

「ごほ、ごほっ・・・・わ、たしより、あっち、を助けて・・あげて・・・」

 

「救護班!こっちに早く来てくれ!」

 

「こっちにも負傷者がいるんだからちょっと待ってて!救護班もやられて人数不足なんだから!」

 

「あ、足、足がぁ!」

 

「消火器をこっちに!中にまだ人が!」

 

「くそっ、クラスター爆弾だと⁉︎便利屋かアビドスのどっちかは知らないけどこんな物を持ってるなんて・・・!」

 

「第2大隊長!第1大隊長が爆撃に巻き込まれて意識不明!なので貴方に指揮官を移行します」

 

部下と話し合う為に少し車列から離れた所に居たお陰もあり、運良く爆撃の影響を受けていなかった第2大隊長の元に服がボロボロになった部下が駆け寄って来て報告して来た。

 

「くそっ・・・・分かった。状況は?」

 

「まだ混乱状態で詳しくは把握出来ていませんが車両の6割が撃破か大破。他にも中、小破して走行不能になった車両が幾つかありますが、後方にいた車両は被害が無いようで20台程は無事です。ですが部隊の方も殆どがやられて重軽傷者が多数!救護班にも被害があり、動ける人が少なく、負傷者が多過ぎて救護活動が間に合っていない状態です!」

 

周囲には撃破されて燃え上がる車両。その近くにはBLU-97/B子弾の爆発と四散した破片によって負傷した風紀委員会の生徒達。一瞬の内に部隊は壊滅と言って良い状態になっており、運良く爆発から免れた人達は仲間の救助をする為にあちこちを走り回っていた。

 

「動かせる部隊の数は?」

 

「後方の部隊はトラックと共に無事だったので2個中隊(400人)は動かせるかと。どうしますか?」

 

「なら残りの部隊も負傷者の救助と介抱に回せ」

 

「ですがそれだと戦闘行動が出来ません!残りの部隊だけでも前線に送り込んだ方が良いんじゃないんですか?」

 

「800人以上いる重軽傷者を今動ける救護班だけで全員捌ける訳ないだろ。今は戦闘よりも仲間を助けることが優先だ!それと、敵はクラスター爆弾を使って来た。と言うことは敵は飛行機を持ってる。多分大型の無人機で投下したと思うから対空監視を厳として!通信兵はアコ行政官に攻撃を受けたこととこれ以上の前線への兵力投入は不可能ってことを報告!救援要請も出して!」

 

「了解!・・・アコ行政官!聞こえますか⁉︎アコ行政官!・・・・・ん?・・・・あれ、何で⁉︎」

 

命令を受けた通信兵は長距離用無線機を操作して通信を行おうとしたが、直ぐに異変に気付いた。

 

「どうした?」

 

「通信が出来ません!風紀委員会の使用するどの周波数も民間用の通信も全部!」

 

「何で⁉︎通信機の故障?」

 

「いえ・・・・通信機には問題は確認出来ません。ですが、独特なノイズが聞こえて来るので恐らく・・・」

 

「通信妨害・・・・?ジャミングされているってこと?」

 

「はい。ジャミングされているとしか考えられません・・・」

 

「クラスター爆弾とかならまだ分かるけど、ECM(電波妨害装置)まで持ってるってどう言うこと⁉︎相手は便利屋と過疎っている学園じゃないの⁉︎」

 

クラスター爆弾などの特殊な爆弾は金さえあれば買うことは出来る。だがECMは特殊な装備と言うことあり、そもそも売っている企業も少なく値も張るのでそこら辺の小規模な学園や便利屋の様な組織が持つ装備じゃない。

 

「どうします?」

 

「・・・仕方ない。無事な人を何人か集めて伝令分隊を編成。先行した部隊と迫撃砲部隊の所に行って状況を報告。そして撤退とこっちの救援を要請して」

 

「了解!リカ、ノノ、メル、行くよ!」

 

使い物にならなくなった通信機を置いて通信兵は仲間を呼んで、他の場所にいる仲間の所へ向かおうと走り始めると、先頭を走っていた通信兵に23ミリ弾が直撃して、そのまま横に吹っ飛ばされて道端に倒れて動かなくなった。

 

「え・・・?」

 

「・・は?」

 

「ちょ⁉︎」

 

前を走っていた仲間が突然横に吹っ飛んだことに驚き、残り3人が走るのをやめて棒立ちしていると遅れて遠くから銃声が聞こえて来た。

 

「ッ‼︎狙撃だ!全員隠れろ!」

 

第2大隊長がそう叫んだと同時に、驚いて立ち尽くしていた1人の脇腹に先程と同じように23ミリ弾が直撃して吹っ飛ばされた。続け様に2人も狙撃されたことで他の人達もやっと自分達が大口径の狙撃銃で狙われていると言うことを理解して、慌てて近くの壊れたトラックに隠れた。

 

「隊長!リカちゃん!」

 

「何処から⁉︎」

 

「9時の方向からの狙撃だ!全員気をつけろ!」

 

第2大隊長が周囲の部下達に聞こえる様に声を張り上げる。爆撃の後のまさかの狙撃に風紀委員会の部隊は動揺していたが、直ぐに対応する為に動いた。

 

 

「1発しか飛んで来なかったってことはスナイパーは1人?ってこと?」

 

「なら同時に動けば撃たれないでしょ!」

 

「おい、下手に動くな!」

 

「でもこのままここにいたら他の部隊の人達に状況を説明することも、助けを呼ぶことも出来ません!行くよ、メル!」

 

「うん!」

 

ノノとメルと呼ばれていた2人は頷き合うと隠れて居たトラックから同時に飛び出して走り始めた。

 

「おい待てバカ!」

 

次の瞬間、一緒に走っていたノノとメルの足元に23ミリ弾が着弾。普通の狙撃銃の銃弾なら近くに弾が当たってもビックリするだけだったが、飛んで来たのは23ミリと言う大口径を活かした榴弾。着弾と同時に弾丸が爆発し、足元で23ミリ弾が爆発したことにより2人は短い悲鳴を上げながら爆発と破片をモロに食らってその場に倒れた。一撃で2人同時に倒される瞬間を目撃した第2大隊長は驚いた。

 

「全員物陰に隠れて動くな!敵はバカみたいにデカい弾を使ってるぞ!至近弾でもやられるぞ!」

 

直ぐに敵の弾丸の性質を理解した第2大隊長は部下に命令する。命令された通り部下達はトラックやその残骸に隠れて動かずじっとする。あれだけの大口径弾ならトラックの車体なんて簡単に貫通する可能性が高かったが、敵は必要以上の狙撃はする気が無い様でトラックを貫通させて撃って来ることは無かった。

 

「あ゛あぁあ!・・・あづい゛・・・・熱いよぉ‼︎助けでェ‼︎」

 

「サナ!」

 

大人しく隠れてじっとしていると撃たれることは無かったが、そうなると救助活動は勿論出来なくなる。目の前で燃え上がるトラックの下敷きになって動けないまま焼かれて助けを呼ぶ友達の姿に、悲痛な表情をしながら名前を呼ぶしか出来なかった。

 

「助けてよぉ!ミキぃ!」

 

「くっ・・・サナ!今行く!」

 

「おい!動くな!それこそ敵の思う壺だぞ!」

 

わざと動けなくなる程度に痛めつけて放置して、別の仲間を呼ばせてそいつを狙撃させる。スナイパーがよくやる卑劣で有効な罠だ。第2大隊長は次の瞬間のことを想像して顔を顰めた。

 

「今助けるからね!」

 

「・・えっ?」

 

しかし、その予想に反してミキと呼ばれていた風紀委員会の生徒は撃たれることなく友達の元に駆け寄って救助活動を始めた。その様子を見ていた他の生徒達も長を助ける為に恐る恐ると言う感じで動き始めるが、撃たれることは無かった。

 

「どう言うこと?撤退した?」

 

狙撃されなくなったことに首を傾げる第2大隊長。敵の狙いがイマイチ分からない状態だった。

 

「今の内に伝令に行こう!」

 

別の人達が改めて先行した部隊と擲弾兵部隊の元に報告しようと走り始めた。そして、車列から離れ始めた瞬間、先程と同じ様に先頭を走っていた人が狙撃された。残りの人達は慌てて戻ってトラックの陰に隠れた。だが、救助活動をする為に動き回っている人達は撃たれなかった。その光景を見て第2大隊長は敵と意図を理解した。

 

「くそっ、他の部隊と連絡を出来ない様にするつもりか・・・」

 

敵の狙いは分かっても現状この状況を打破出来る方法は無かった。今自分達が居るのは市街地から少し離れた位置にある幹線道路。周囲には道路と砂しかない。だから離れた仲間の所へ向かおうと走ったら遮蔽物の無い道を何百メートルも走ることになる。そんなのスナイパーからしたら良い的だ。例え複数人で行ったとしても移動している内に1人ずつ撃たれて行って全滅するのがオチだ。

 

つまりは下手に伝令に行こうとせずに、今動かせる人員で救助活動をするしか無い。どうすることも無くなった事に第2大隊長は舌打ちをするしか無かった。

 


 

風紀委員会本隊への攻撃の数分前。先行して対策委員会と戦っている部隊から少し離れた所にある空き地に風紀委員会の擲弾兵部隊は簡易的な迫撃砲陣地を作って支援砲撃を行っていた。

 

「ふん、ふふんふ〜ん♪」

 

その空き地を一望出来る廃墟になった5階建ての建物の5階の部屋にやって来ていたナツキはご機嫌に鼻歌交じりに準備を進めていた。

 

「おいしょっと」

 

ゴトン、っとserval-171式重機関銃を窓側に置いた机の上に置く。このserval-171式重機関銃はナツキの持っているマシンガンコレクションの中でも2番目に大きい口径の機関銃であり、お気に入りの一つだった。名前の通り今までナツキが使って来た汎用機関銃や軽機関銃ではなく陣地防衛様などに使われることが多い、対物ライフルでも使用される12.7ミリ弾を使用する大型機関銃。

 

本来、こう言った重機関銃は三脚などと合わせるとその総重量は60キロ程になる。ユイならまだしもSRTとしては平均的な筋力しかないナツキだと1人でそんな重い銃は運用不可能だが、このserval-171式重機関銃は少数精鋭のSRTの部隊で汎用機関銃の様に最低1人で持ち運びと運用が出来る様にと開発された超軽量型重機関銃。その重量は専用の二脚と合わせてもたったの10.8キロ。

 

普通の軽機関銃や汎用機関銃と変わらない重量に抑えられている。流石に重機関銃なので汎用機関銃並みまでの小型化は無理だったが、極限までの軽量化には成功しているこの銃は1人で重機関銃を運用出来る銃と言うことでナツキのお気に入りだった。

 

「どれどれ〜?」

 

ポーチから双眼鏡を取り出して敵の様子を伺う。前線にいる観測員からの報告を元に修正しつつ砲撃を続けている擲弾兵。息の合った連携で装填と発射を繰り返し連続砲撃を加えていた。その統率の取れた動きは風紀委員会の練度の高さを物語っていた。

 

「居るねぇ。ふひひひ♪」

 

悪役がしそうな笑い方をするナツキ。訓練時でもこのserval-171式重機関銃を使用する頻度はそんなに多く無かった。大き過ぎる銃の全長から来る取り回しの悪さと、遠距離戦を得意とするこの銃の相性が中、近距離戦を主とするSERVAL小隊と悪かったからだ。だから初めての実戦運用で、しかも久しぶりにserval-171式重機関銃を使うと言うことでナツキのテンションは上がっていた。

 

早く攻撃命令が来ないかとソワソワしながら待っていると、ナツキとアリナの通話が通信機から聞こえて来た。

 

《serval4、ECMは起動出来た?》

 

《起動完了。現在ヒヨちゃん全機正常に稼働中》

 

《了解。serval3は敵が動きを見せたら撃って。serval2も迫撃砲部隊に対して攻撃開始》

 

「《了解!》」

 

「さぁーてっと!」

 

折り畳み式のコッキングレバーを力を込めて引く。ジャゴッっと言う重々しい金属音を鳴らして初弾が装填される。

 

「ふぃ〜コッキングレバーのこの重さ!良いねぇ!テンション上がるわ」

 

serval-171式重機関銃をしっかり構えて狙い、そしてニヤッと笑ってトリガーを引いた。ドドドドドドッ‼︎と腹に響き、自分の叫び声も聞こえなくなり、鼓膜が破れるんじゃないかと思う程の重く、うるさい発砲音を響かせて毎分450発の速度で12.7×108mm弾が発射される。

 

発砲時に発生する強烈なガスの噴射によって部屋に積もっていた埃が中を舞うがナツキはそんなの気にせずに撃ち続ける。

 

「ヒャッハー!最高だぜェ‼︎速射 連射 高射 応射 乱射ァ‼︎」

 

500メートル離れた迫撃砲陣地に12.7ミリ弾の横殴りの雨が降り注ぐ。ユイの使用する23×152mm弾よりは1発の威力は低いが、そもそもユイの使用する銃が規格外の威力の弾丸を使っているだけでこの12.7×108mm弾も普通に一撃で敵を無力化する強力な威力を持っている。

 

擲弾兵部隊は逃げ惑い近くの廃墟や瓦礫などに身を隠すが、軽装甲車両の装甲をも簡単に貫通する高い貫通力を持った12.7×108mm弾は建物の壁などの遮蔽物を貫通してその裏側にいた生徒達を襲う。

 

他の部隊と違って彼女達は迫撃砲を主に使う擲弾兵。こう言った攻撃には弱く、そして対応能力も高くは無い。約8秒間のフルオート射撃が終わり、100発もの弾丸を全て撃ち尽くす頃には総勢100人居た擲弾兵部隊の内十数人が倒れて、数人が怪我をした。残りは自分達が撃たれないように祈りながら隠れるしか無かった。

 

「Foooo‼︎気持ちぃぃねぇおい‼︎最高だよマジで!」

 

新しく100発の弾が繋がったベルトを給弾して、またコッキングレバーを引いて直ぐに撃ち始める。

 

50(フィフティ)キャリバーカーニバーールッ‼︎ハッハー‼︎」

 

機銃掃射に耐えかねて一部の敵が走って駐車していたトラックに向かった。その様子を見ていたナツキは止めてあったトラック4台全てに向かって弾丸を叩き込んで蜂の巣にして行く。折角運転席に乗り込んだ敵は車体とエンジンを易々と貫通して来た12.7×108mm弾を何発も食らって意識を失った。

 

「エクスタシー‼︎もっと!もっとだ!もっと快感をくれよ171式ィ‼︎」

 

テンションが上がり過ぎてよく分からないことを叫び散らかしながらも、一切トリガーの引く指を離そうとはしないナツキ。擲弾兵部隊にとっては悪夢でしか無い重機関銃による乱射はまだまだ始まったばかりだった。




今回風紀委員会の数を2個大隊、つまり1500人と言う人数設定にしたのは本編でのアコの台詞、「第8中隊。後方待機をやめて、突入してください」って言う台詞から少なくとも8個中隊は風紀委員会の部隊があると想定して、一個中隊で約200人なのでそれが8個で1600人。でも兵員輸送トラックの数とかと整合性を合わせる為に少し減らして1500人と言う設定にしました。

そして、次回の投稿は少し遅くなってしまいそうです。申し訳ありません。


それでは今回登場した武器の説明をしますね。

・serval- 171式重機関銃
今回ナツキが風紀委員会の迫撃砲陣地に対して使用した重機関銃ですね。元ネタは中国で開発された超軽量型重機関銃のQJZ-171、別名171式重機関銃。どんな銃なのかは本編で説明した通りですね。歩兵1人で運用出来る重機関銃って他には無い珍しい銃なので前から登場させたいと思っていました。

・CBU-103
ビジちゃん(V-247)から投下されて後方待機中だった風紀委員会の本隊への攻撃に使用された汎用型クラスター爆弾。現実ですと同じ名前でアメリカ軍が使用していますね。軽装甲車両から歩兵までなんでも攻撃対象のなかなか強力なクラスター爆弾になります。

それでは、今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。次回もお楽しみに!

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