前世の記憶を持つSRTの生徒が先生と頑張る話 作:MGFFM15
今回は正史とは殆ど関係ない箸休め回と言うか、私が書きたいと思ってた戦闘シーンを書いた回になってます。
便利屋68と風紀委員会相手に激しい戦闘を繰り広げた昨日と打って変わって、今日は特に用事も事件も今の所起きていない平和な日だった。対策委員会の人達はアヤネは教室で勉強していて、シロコはサイクリングに出かけた。セリカはバイトでノノミは教室で雑務をして、ホシノはそんなノノミの隣に椅子を並べて寝ている。
対策委員会の皆んながそんな感じで平和なひと時を過ごしている一方、ボク達SERVAL小隊の方も今日は特にやることは無くて平穏な日なんだけど、全員が半分アリナの私室みたいになりつつある
「コース良し、スピードチェック、フラップ15。風は200から約2ノット」
「次は校舎にぶつかるなよ?」
「分かってる」
ナツキの言葉にいつもとは違う、可愛い雰囲気を一才無くした真剣な声音で答えるアリナ。画面を見てみると、機体はアビドス高校に向かって高度を下げて行ってる。
「降下率良し、向きこのまま、スピードチェック、フラップ30」
アリナの操縦する無人機はアビドス高校のグランドに向けて着陸態勢に入る。直線距離で約200メートル、幅100メートルのグランドは大型の無人機が着陸するには少し心許ない広さだけど、この無人機の性能とアリナの腕があれば着陸させることが出来るとボクは思っている。
「アプローチミニマム。ランウェイ インサイト」
機体がアビドス高校の校舎の上を通過し、そしてそのまま高度を下げてグランドにタッチダウン。それと同時にアリナはブレーキを作動させる。綺麗に舗装された滑走路ではなくただの学校のグランドに着陸したせいでカメラがガタガタと揺れる。時速85キロと言う超低速で着陸した無人機は全力ブレーキによって速度を落として行き、グランドの端っこギリギリで止まった。
「・・・ふぅ〜」
無事に着陸を成功させ、息を吐きながら背もたれにもたれ掛かるアリナに、皆んな集まって褒め始めた。
「ナイスアリナ!流石!」
「やったなアリナちゃん!遂に行ったな!」
「やったじゃん!ナイスランディング!」
「でも後何回か練習しておいた方が良さそう。5回中今の一回しかちゃんと着陸出来てないから。それに離陸の方もまだまだ練習しないとだし」
「まぁそれでもこれで一歩前進だね。おめでとう」
と褒めながらボクはアリナの頭を優しく撫でた。アリナも嫌がることなく嬉しそうに笑って見せてくれた。
「ありがとうございます」
「一旦休憩すれば?」
「今休んだら上手く行った今の感覚を忘れちゃうかもだから、もっとやり込みたい」
「オーケー。でも無理はし過ぎないようにね」
「うん」
そう言ってアリナはキーボードを操作して今までやっていた飛行シミュレーションをリスタートさせた。そう、今までの着陸は本物を操作していた訳じゃなくて、レーザー測量で再現したアビドス高校とかなり細かく再現された無人航空機の飛行データを使ったシミュレーションだった。何の練習をしているのかと言うと、今リンちゃんからの許可待ちの装備増強案の中に含まれている大型
そもそもなんで現時点でもティルトローター式大型無人攻撃機であるビジちゃんを持っているのに更に大型UCAVを持って来ようとしているのかと言うと、今後起きるであろうカイザーとの戦闘に備える為。前にも言ったと思うけど、ボクはなるべく原作の流れは崩さないようにしたいと思っている。ボクが下手に歴史を改変して、バタフライエフェクトとかでどんな変化が起きるか予想出来ないから。良い方向に変化が起きてくれれば良いけど、タイムスリップ系の作品とか見れば分かるけど大体碌なことにならない。
ま、そうは言ってるけどボク達SERVAL小隊の登場と今までの行動で十分に変化は起きているだろうけど。まぁそれは置いといて、このまま原作通り行けば先生とアビドスの皆んなはカイザーと戦うことになる。
連邦生徒会に送った装備増強案の返事はまだ無い。まぁ向こうは連邦生徒会長が失踪したことでてんやわんやだろうから直ぐに返事が貰えるとは思っていないけど、対カイザーとの戦闘には間に合ってもらわないと困る。
カイザーの戦力が小火器だけしか持っていないなら現存戦力と武装でなんとかなるかも知れないけど、原作の情報だとそれなりの数の機甲戦力を持っていたみたいだし、残念ながら現時点で対策委員会とSERVAL小隊は有効な携帯式の対戦車火器を持っていない。だからもし機械化歩兵部隊とかが出て来たら苦戦する可能性が高い。更にカイザーはカヤ経由でボク達の存在を知っている可能性もある。そうなると戦力の増強を行うだろうし、となると現戦力では太刀打ち出来なくなる可能性も出て来る。
もし装備増強案が承認されず、現存戦力で戦うことになり、そしてそれが無理そうな場合は最終手段として、謹慎処分とかを覚悟した上で必要になる武器や兵器をSRTから持ち出すしかないかもね。
そもそも現段階だとアビドス砂漠の何処にカイザーの基地があるのかも分からない。ビジちゃんの最大2600キロに及ぶ長大な航続距離を生かして探し回れば見るけることは出来るかもだけど、対策委員会や小隊の皆んなになんて説明すれば言いか分からないし。
それに時系列的にそろそろ対策委員会がカイザー基地に行くことになる日だと思うから、無理にビジちゃんを飛ばして偵察しないでもその時に偵察もすれば良いかな。
現状だと機甲戦力にまともに対抗出来るのはミサイルや爆弾を搭載出来るビジちゃんだけだから、更にもう一機増やせば攻撃の幅も広がる。まぁ無人機が増え分、アリナの負担が増える訳だけど、数機増えた程度で根を上げる奴じゃないから大丈夫。
アリナも集中したいだろうし、ボク達はGCSから出て1人にさせた。朝から始めた離着陸練習は気がつくと数時間が経っていて、今はもう昼時だった。丁度お腹も空いたしお昼にしよっか、と言うユイの言葉に全員賛成して、部屋に戻ったボク達はコンビニで買って来ていたお昼ご飯を机に並べてそれぞれ食べ始めた。
ボクの今日のお昼ごはんは、生姜焼き弁当とインスタントの味噌汁。ナツキは味噌ラーメンのカップ麺とプラスでおにぎり2個で、ユイは唐揚げ弁当とハンバーグ弁当、そしてそれにプラスでサラダを食べていた。相変わらずユイは沢山食べるなぁ。
「んで?練習するのは良いけどさ、連邦生徒会からの返事はまだ来てねぇの?」
「まだだね。まぁ今向こうは生徒会長が消えて、てんやわんやな状況だろうし仕方ないよ」
「こうして勝手に装備を持ち出して作戦行動しているのを黙認して貰っているだけ有り難いと思わないとだね」
「もしかしたらこうして黙認されているのは連邦生徒会長失踪で忙しくて、こっちに構っている暇がねぇから放置されているだけだったりしてな」
「まぁ・・・無いとは言えないかもなぁ」
先生もいることだし、今は忙しいから後の面倒な事は全部先生に任せてしまおう!って考えてても不思議じゃないしねぇ。
「それに
SERVAL小隊だけの話じゃ無いけど、SRTの生徒達が所持している武器や兵器、装備などは普通の生徒は持っていない様な高性能で高火力な物が多い。前回の風紀委員会との戦闘で使った汎用クラスター爆弾のCBU-103が良い例だね。たった2発で輸送トラックとそれに乗っていた戦闘部隊の殆どを戦闘不能にさせて2個大隊を壊滅させてしまう程の火力がある。こんな強力な兵器はブラックマーケットみたいな闇市でもなかなか買える物じゃない。
つまり、ボク達は余りにも強大な武力を持っているから連邦生徒会の一部の連中に怖がられているってこと。そんな考えをしている人達に、更に武力を渡しても良いかな?と聞いても反対されるに決まってる。そう言う人達を説得しようとすると時間がかかってしまうのは仕方ないよねぇ。
「政治家が平時に欲しいのは生きた英雄じゃなくて死んだ英雄だって言葉を思い出すな」
「無駄にカリスマを持った人間や、武力を持った人間は政治家から見ると邪魔者でしかないからねぇ」
「連邦生徒会と言えば、昨日の作戦報告書は出したの?」
「あぁ出したよ」
「ゲヘナの風紀委員会と戦闘したことについて何か言われた?」
アビドスを防衛する為にとは言え、キヴォトス3大校の一つであるゲヘナの風紀委員会の戦闘部隊、2個大隊を壊滅状態にさせてしまったからね。何か言われかもなぁと思いながらも嘘つく訳にもいかないから正直に報告した。更に電話でリンに詳細な状況説明を求められたから話したりもした。そして、今朝ゲヘナの風紀委員会との戦闘についての返答が来た。
「結論から言うと特にお咎め無し」
「本当に?ちょっと以外」
「まぁ小言は言われたけどね」
アビドスを防衛する為とは言え過剰防衛過ぎないですかとも言われたけど、こっちの言い訳としては戦闘前に説得を試みたけど交渉は決裂して、更に向こうは市街地も巻き込んだ砲撃を含んだ攻撃をして来たからアビドス防衛の為にこちらも反撃し、数で圧倒的に負けていたから風紀委員会の戦力を削り持続力を無くす為に後方部隊をクラスター爆弾で攻撃したと説明した。
更に幾ら便利屋68を捕まえる為とは言え、風紀委員会がゲヘナの自治区を飛び越えてアビドス内で好き勝手に戦闘行動を行ったのも問題だとも言った。僕が居た世界で例えるなら、日本国内に海外からやって来たテロリストがやって来て、そこでテロ活動をしたから日本の警察とかがそのテロ組織のメンバーを捕まえようとしていたら、いきなり海外から「それは私達の国で問題を起こしている奴だから」と言って軍隊を引き連れて日本国内で戦闘を行ったみたいな感じだからね。
更なる説得材料として先生の身柄を拘束しようとしていたと語っていたアコの説明を録音していたけど、それを使う必要は無かった。ゲヘナの生徒会である
マコトからするとヒナに嫌がらせする為の最高な状況だからウハウハ状態なんだろうなーと直ぐに想像出来た。アコの独断行動問題や2個大隊を壊滅させてしまったことの責任問題などなど、風紀委員会を責めるには十分過ぎる程の材料が手に入った訳だからね。
ここまで来るとヒナが可哀想になって来るんだよね・・・。風紀委員会の部隊の大損害に、それに伴う治安悪化。そしてマコトからの責任追求と言う名の嫌がらせなどなど。今ヒナのストレスはマッハになっているだろうなぁ。・・・今度謝りに行こう。
「まぁ1番の理由は連邦生徒会とSRTにパンデモニウム・ソサエティーのマコトから謝罪と部隊の暴走を止めてくれた事に感謝する内容のメッセージを送って来たからだね」
「マ?ゲヘナのトップから直々にメッセージが来たの?」
「パンデモと風紀委員会は仲が悪いらしいからなぁ。向こうからすると風紀委員会を責める良い材料が手に入って嬉しいんだろうさ」
「そう言うことだろうねぇ」
因みに今回の事に関して連邦生徒会から風紀委員会に対して、自治区を超えた戦闘行動は辞める様にと言う内容の注意文が送られたらしい。でも今は連邦生徒会も忙しいから注意文を送っただけでそれ以上何かするつもりは無いらしい。
「ってことは私達風紀委員会から恨まれてそうだよね」
「だね。だから今度謝りに行った方が良いなって思ってる所」
「別に向こうが殆ど悪いんだし謝らなくて良いだろ」
「変に恨まれて敵を作りたくは無いんだよ」
そんな風に話しながらお昼ご飯を食べていると、ドアをノックする音の後にドアが開き、アヤネが入って来た。
「お昼ご飯中にすいません」
「お、アヤネちゃんどうした?」
「何かあった感じです?」
アヤネがこうしてボク達の部屋をわざわざ訪ねて来る時は大体何か相談ごとや、報告することが多い。それに何か困っている感じの表情だから何かあったのは間違いなさそう。
「それが、皆さんに頼みたい事案がありまして・・・」
「頼みたいこと?」
「私達はアビドスの治安維持の為に自警団の様な活動もしているんですが、先程ほぼ同時に2つの事件の情報が入って来まして、いつもなら手分けして事件を解決したりするんですが、今回はちょっと皆んなで解決しないと厳しそうなのでもう一つの方の事件を皆さんにお願い出来ないでしょうか?」
「なるほど。そう言うことならボク達に任せて下さい」
「ここに居候させて貰っている恩もあるし、喜んで手伝うよ」
「丁度昼から予定が無くて暇だったんだ。任せろ!」
ボクに続いて全員快く了承した。ボクも含めて全員、SRTを目指したこともあって事件などは無視できないタチだからね。アヤネは「すいません。ありがとうございます」と言って頭を下げた。本当にアヤネちゃんは真面目な娘だなぁ。
「それではちょっと待ってて下さい。その事件のことを通報して来た人を呼んで来るので。それから事件の詳細を説明します」
「了解」
アヤネがその人を呼びに行っている間、ボク達は食べ終わった弁当箱などを片付けたり、GCSかはアリナを呼んだりして客人に備えた。そして1分もしない内にアヤネがその通報者を連れてやって来た。アヤネと一緒に入って来た通報者は、トリニティの制服を来た生徒だった。こうして間近でトリニティの生徒を見るのは初めてなんだけど流石お嬢様学校、制服は綺麗で可愛らしく、髪もよく手入れされてて、高そうな香水の良い匂いも漂って来た。って言うか何でトリニティの生徒がこんな所に?トリニティの生徒は部屋に入って来ると頭を下げて自己紹介した。
「トリニティ総合学園1年生、
「初めまして。SRT特殊学園1年生の
ソノカはSRTと聞いて少し驚いていた。まぁそりゃ驚くよね。しかもアビドス学園内に他学園の生徒が居るって言う謎状況だし。
「あの・・・SRTって連邦生徒会長直属の学園のあのSRTですか?」
「そのSRTですね。なので我々は様々な事件への対応が可能なので安心して下さい。それで、何があったんですか?」
「それが・・・」
ソノカはボク達に詳細に事件のことを教えてくれた。ソノカは友達の
そして、チンピラはリカを人質にして無事に返して欲しければ今日の午後6時までに金を持って来い!と、到底ソノカ1人では払えない金額を要求して来たらしい。それで困ったソノカはアビドス高校にも正義実現委員会の様な組織があるんじゃないかと思いここまで道に迷いながら何とか来たらしい。取り敢えず遭難しなくて良かったよ。
「よくここまで来れましたね。大体の人なら迷って遭難したりするのに」
「偶々住民と方と出会えたのでその方の車に乗せてもらって学園まで送って貰えたので」
「それで、そのリコさんが囚われている場所は地図のどこら辺か分かります?
ボクはアヤネが持って来てくれた地図を机の上に広げて聞いてみた。ソノカは地図をじっと見て必死に探して、そしてある地点を指さした。
「無我夢中で走って来たのである程度の場所になってしまうんですが、多分ここです。ここにあるこの建物の形が珍しくて印象に残っているので間違いないです」
「意外と近いね」
ソノカが指さしたのはここから北西に7キロほど行った所にある市街地。アヤネの話によると、そこは砂漠化の影響は少ないけど、殆ど人がおらずゴーストタウン化している所らしい。電気や水道などと言ったライフラインが生きたまま残っているらしく、そりゃチンピラとかが拠点にするよなと言う場所だった。絶妙に高校から遠いからアビドスの皆んなもそう何度も見回りに来れないからこうしてチンピラとかが住み付くことがあるらしい。
「分かりました。それで、敵の居る建物の特徴は?」
「3階建ての白色で長方形の建物です。壁にスプレーで沢山の落書きがされているので直ぐに分かると思います」
「成る程。詳しくありがとうございます」
顎に手を当てて考える。今聞いた話からすると十中八九室内戦になるだろうし、どう攻略しようかな〜。SRTで室内戦闘を想定した
訓練は色んな状況を想定して行うけど、実戦は大体色んなインシデントが起きたりして訓練通りにはならない。だから訓練で習った内容を基本にして臨機応変に戦えって言われたな。
欲を言うとその建物の構造を把握してから、それを元にした実寸代のキルハウスを作ってキチンと訓練してから実戦に挑むのが良いんだけど、犯人は今日の6時までと言う制限時間を設けているからそんな暇は無い。となるとぶっつけ本番で突入するしかないけど、どうにかして敵の位置と室内の構造を知りたいよねぇ。ならば、アレを使うか!
「久し振りの室内戦か・・・・よし。アリナ、ユイ、例のUWBを使った新戦術を試してみるよ」
「了解。マトちゃんを準備するね」
「徹甲弾を多めに用意しておく」
「よし、それじゃぁ今から15分後に出発する。その間に各員武器と装備を用意しておいて」
「「「了解!」」」
その後、きっかり15分後に全員武器と装備を準備して集まり、軽装甲車のL-ATVに乗り込んで現場に向って、約20分後に現着した。目標の建物は何処かなとL-ATVを走らせながら探していると、ユイが最初に気がついた。ソノカが言っていた通りの外観の建物だったから違いないと思う。敵にバレない様に離れた所にL-ATVを駐車して、ボクはアリナに指示する。
「よし、マトちゃんの用意を」
「了解。ちょっと待ってて」
アリナは専用のケースに簡易分解された状態で収納されていたクワッドコプタータイプのドローンを取り出す。皆んながよく知る普通のドローンの見た目のこれは、その普通な見た目とは裏腹に結構ハイテクな装置を装備している凄いドローンなんだ。手際良く4機分のドローンを組み立てたアリナはL-ATVから降りると地面にそのドローンを並べた。
そしてパソコンを操作して4機全部との接続が完了したことを確認したアリナはボクの方を向いた。
「マトちゃん全機準備完了」
「それじゃ、マトちゃん発進」
「了解」
アリナがパソコンを操作すると4機のUBWレーダーを搭載したドローンが一斉に離陸して、目標の建物に向かって飛んで行った。ドローン達は事前に設定された通りに飛行してそしてある程度建物に接近すると、4機は下から上に上昇しながらゆっくりと建物の周囲を旋回する。
「スキャン開始」
マトちゃんに搭載されている
更にUWBレーダーは人間の探知だけじゃなく、建物の構造もスキャンも出来ちゃう。材質の違いとかでレーダーの反射率が違うからそれをAIが解析して建物や部屋のレイアウトをマッピングしちゃう訳。そしてこれらのデータを統合してマッピングすればなんと!建物の内部の構造も詳細に分かる3Dマップが完成する。更にそこにUWBレーダーで見つけた人間の位置を重ねれば、建物の何処に人間がいるのかリアルタイムで分かる様になる。
とんでもなく便利な機能だけど、このUWBレーダーは金属製の壁は透視出来ないし、透視範囲もそんなに長い訳じゃないから今回みたいなアパートみたいな建物ならいいけど規模の大きい建物だとスキャンが難しくなるし、3Dマップを作るのに結構な時間が必要になっちゃう。
アリナが操作しているパソコンの画面に、徐々に目標の建物の3Dマップが作られて行く。今はまだ一階部分の半分だけど、順調にスキャンは進んでいるみたいだね。下から上にゆっくりと建物の3Dマップが作られて行く様子をボクと一緒に見ていたユイとナツキも最新技術に感心していた。
「はえ〜話に聞いてはいたけど、スゲェなこれ。クリアリングめっちゃ楽になるじゃん」
「こんなのが登場して来たら、いよいよスナイパーの仕事が無くなって来そうだね」
スナイパーって言うのは一般の人がイメージしている感じとはだいぶ違って、基本的に誰かを狙撃したりするよりも、偵察活動の方が多い。と言うか偵察活動がメインと言っても良いくらい。だからもしこれからこう言った偵察用の高性能ドローンが登場して来たらユイの様なスナイパーの仕事が無くなってしまう可能性は確かに高い。
「偵察だけがスナイパーの仕事じゃ無いから大丈夫だって。それにドローンじゃ23ミリ口径の対物ライフルを使って狙撃するなんてこと出来ないし」
「そうそう。マトちゃんは透視が出来るけど、その透視できる範囲だってそんなに長くないし、どんな
「そう言って貰えると嬉しい。アリナちゃんも励ましてくれてありがとうね」
「まぁこんな化けもんライフル構えてぶっ放せるのはSRTの中でもそうそう居ないからな。メスゴリラのお前だから出来ることだな」
そう言いながらナツキはユイの使用する対物ライフル、serval-23式対物狙撃銃の入ったガンケースを持ち上げようとしたが、銃本体だけで62キロもある物をユイの様な怪力でも無いナツキは一瞬持ち上げたけど直ぐに下ろして、「やっぱり馬鹿みたいに重いなこれ」と言った。
「アンタは私のことを貶してるよねそれ。って言うかそのメスゴリラって呼ぶのやめろって言ってるでしょ!次言ったら殴るからね!」
「確かにこりゃゴリラじゃ無いな。ゴリラはこんなに攻撃的じゃねーし」
「アンタが攻撃的にさせているんでしょーが!」
そんなやり取りをしつつ、やがて3分ちょっとでスキャンが完了して建物の完全な3Dマップが完成した。そしてそのマップに探知した人間の位置も表示させる。これで建物の何処に人が居るかが丸わかりだ。
「うーん・・・人質を取っている割にそんなに警戒している雰囲気はねぇな」
ナツキの言う通り、人の配置を見る感じ何者かが襲撃して来ることを殆ど想定していない用に見える。廊下を歩き回って巡回しているっぽい人はいるけど、外を見張ってそうな人が居ない。と言うか玄関には誰も立って居ない状態。つまり一言で表せば
「ザルだね」
「これなら正面玄関から堂々と入ってもバレなさそうだね」
「んで?人質はどこよ?」
流石に何処に人間が居るかは分かっても、その人間が誰かは分からない。だからスキャンされた人の動きや姿勢を見てそれらしい人を皆んなで探す。
「・・これじゃない?」
「お?あー確かにそれっぽいな」
「確かに」
「部屋のど真ん中に座ってるのはちょっと不自然だしね」
ユイが指さしたのは建物の最上階である3階の右端にある部屋。そこには5人と生体反応があって、その中の1人はポーズから見て座っている様に見える。そしてその座っている人間を囲む様にして4人立っている。他にも候補が無いか探してみるけど、やっぱりここが一番怪しい。
「多分この人が救出目標で間違い無さそうだね。じゃぁ下から順に1階の廊下を歩いているこの2人組をアルファ、そしてここの部屋の中にいる1人をブラボー、2階の中央付近の部屋にいる2人をブラボー、左端のこの部屋に屯している5人組をチャーリー、廊下を歩いている2人をデルタ、3階の1番左端の部屋にいる2人をエコー、その2つ隣の部屋に居る2人をフォックストロット、廊下の2人をゴルフ、最後に人質を見張っていると思われる4人組をホテルと以降は呼称する」
「「「了解」」」
「ボクとserval2、が)突入して、serval3は向こうの建物から狙撃の用意。必要になったら援護射撃宜しく。serval4は引き続きマトちゃんを使って敵の動きを監視。大まかな動きとしてはボクとserval2が正面玄関から室内に侵入。必要なら廊下に居るアルファを無力化した後に階段を登って一気に3階へ。そして3階の廊下に居るゴルフを無力化して人質の居るこの部屋に突入。ホテルを無力化して人質を保護したら直ちに撤収する。恐らく人質を確保する際に騒ぎになると思うから脱出の際は銃撃戦になることが予想されるから、敵の増援はserval3が足止め宜しく。そしてボク達が脱出したらserval3も撤収。
ナツキが手を上げたから、そのまま「どうぞ」と言って発言させる。
「この3Dマップを見る感じ、階段はこの建物中央にあるここだけっぽいんだけどもし敵がこの階段を封鎖して来た場合どうすんだ?」
ナツキの言う通りこの建物には非常階段とかも無さそうで、建物の中央にある階段が唯一上階まで行く手段。ここを敵が封鎖したりしたらボク達は降りることも登ることも出来なくなる。
「スキャンの結果の人数の分布を見る感じ、2階と3階がにそれぞれ9人ずついるからコイツらが階段を封鎖する可能性が一番高い。1番ありえるシナリオとしては3階の連中と戦っている間に、騒ぎを聞いた2階と1階の連中が階段を塞いで来ることだね。その場合はユイが人数の多い2階の連中を狙撃で足止めして。1階のアルファとブラボーは合計で3人しか居ないからボクとナツキだけで充分に対処出来る」
「りょーかい」
「他にも質問がある人は?」
「もし建物の材質の問題や、視界不良で狙撃が出来なかったら?」
次にユイが手を上げながらそう質問して来た。それについてもちゃんと考えてるから答える。
「狙撃は諦めてカービンライフル持って建物に突入。敵はボク達の相手に集中しているだろうからユイが後ろから奇襲させることが出来るだろうし、それだけで敵の防御を崩せるよ」
「分かった」
「他に質問がある人は?」
数秒待ってみたけどこれ以上何か聞いて来る雰囲気はなかったから、質問コーナーはここまでにする。
「それじゃ、久し振りの室内戦闘だからね!全員気張って行こう!」
「「「おう!」」」
ボクとナツキとユイはL-ATVから降車して、ユイはserval-23式対物狙撃銃の入ったガンケースを肩に掛けてボク達と別れて狙撃ポイントに向かった。ボク達の方は敵が窓からこちらの方向を見ている可能性を考慮して物陰伝いに移動してゆっくり接近して行く。
《こちらserval3、ポイントに到着。狙撃準備も完了》
「serval1了解。そっちから見てボク達の方を監視していそうな奴は居る?」
《ちょっと待ってて・・・・・・・こっちから見た感じ、serval1の方向を警戒している様な奴は見えない。serval4の方は?》
《こちらも同じ。マトちゃんのカメラで見ているけど、そもそも外を見てる人が居ないね》
「了解。ならこのまま突入する。もしボク達の存在に気がついた様な素振りがあったら直ぐに教えて」
《 《了解》 》
そうして隠れつつ、目標の建物の玄関の前までやって来た。そして最近使っていなかった複合現実統合視覚増強システム、通称MRゴーグルを装備し、起動させる。このMRゴーグルにマトちゃんがスキャンしたデータを共有させれば、まるでFPSゲームで敵がマーキングされる様に、発見した敵の位置をゴーグルの画面上に表示してくれる。これを使えば室内戦をかなり有利に戦うことができる。そして更に室内戦闘を有利に進める為にもう1機ドローンを用意する。
「ナノちゃんを飛ばす」
そう言ってポーチからスマホより一回り大きい長方形のケースを取り出す。そのケースを開けると中にはミニマムサイズのドローンが収納されている。このナノちゃんは全長僅か10センチ、重量も16グラムしかない超小型偵察用ドローンで、SERVAL小隊が使っているドローンの中で1番小さい。その小ささを活かしてこう言う室内戦では偵察に大活躍するんだ。
室内で飛ばしてたらプロペラの音とかで敵にバレないの?と思う人も居ると思う。普通のドローンってプロペラの回転音とモーターの駆動音が凄いうるさいからね。でもこのナノちゃんは専用の静音モーターとプロペラのお陰で3メートルまで近づいても、音が聞こえないほど静か。
だからこう言う室内で、敵に気付かれずに偵察させることが出来るから結構役に立つんだよね。ボク達よりも先に先行させれば敵との不意の遭遇戦も避けれるし。ナノちゃんの操作はボクでも出来るけど、基本的にはアリナに任せる。
ケースからナノちゃんを取り出して、起動させる。そしてアリナの方と接続したのを確認すると、ナノちゃんを摘んでからアリナが操作してナノちゃんを飛ばす。まるで虫の羽音みたいな音を立ててナノちゃんは離陸した。
「
「了解。カバーする」
ボクがドアの横に立って、ホルスターからserval-8式回転式拳銃を取り出して右手に持って構え、左手でドアノブを握る。ナツキはserval-8式軽機関銃を構えてドアに銃口を向けて警戒する。ドアノブをゆっくりと回してドアを静かに開ける。
ナノちゃんが先行して中に入る。ナノちゃんのカメラとMRゴーグルはデータリンクさせているから、任意でナノちゃんの撮影した映像をゴーグルに投影することが出来る。見た感じ敵は居なさそう。
マトちゃんのスキャンで見ても周囲に敵が居ないことは分かったけど、だからと言って無警戒のまま入って行くほどボク達も馬鹿じゃない。ボクが前方180度、ナツキが後方180度を警戒しながら室内に入る。マトちゃんの情報通りさっき倒した見張り以外にはこのドアを見張っている奴はいない様みたい。serval-8式回転式拳銃をホルスターに仕舞って、代わりにserval-7式小銃を構えて室内に入る。
「serval1、serval2、室内に侵入」
《こちらでも確認。周囲と進行方向に敵影なし、監視カメラなどの存在も認められないからそのまま進んでどうぞ》
「了解」
先行するナノちゃんから送られて来る偵察情報とマトちゃんから送られて来る情報を1人で収集しているアリナからの情報を信じて進む。この建物は部屋の真ん中に廊下があって、その左右にドアが並んでいる。普段ならその部屋の一つ一つを確認する必要があるけど、マトちゃんとスキャンのお陰でその面倒なことはしなくて良い。だから普通のクリアリングよりも圧倒的スピーディーに行動できる。
《アルファは今奥に向かって歩いてるから、今のうちに階段まで行けばバレずに階段まで行けそう》
「了解」
なるべく音を立てずに、そして急いで廊下を移動して建物の真ん中にある階段に向かった。アルファの2人はお喋りに夢中になっていたおかげもあって、後ろに敵が通って行ったとは気づいていなかった。そうして無事に階段まで行ったボク達は、音を立てない様にゆっくり階段を登って3階まで移動した。階段の踊り場から廊下に出ようとしていると、アリナから待ったがかかった。
《serval1、2止まって。廊下に居るゴルフがそっちに向けて移動中》
MRゴーグルにナノちゃんが撮影している映像を投影する。すると確かにアサルトライフルを持っている敵が2人歩いて来ていた。敵の方はそんなに警戒している感じはなくて、2人で楽しそうに雑談している。
《こっちで撃とうか?》
「いや、serval3はそのまま待機。こっちで処理する。serval2、ここで騒ぎを起こしたくないから静かに無力化するよ」
「りょーかい」
ナツキもボクも銃にはサプレッサーを付けているけど、消音されているとは言ってもフルサイズの弾丸を撃つ関係でどうしてもある程度の音が出ちゃうから、人質の安全が確保出来ていない今は下手に音を出してバレたくない。姿勢を比較して、壁に隠れて敵が来るのを待つ。
「んでさ、金もらったらお前何するよ?」
「先ずは美味しいご飯を沢山食べたいなぁ。皆んなで焼肉パーティーとか楽しそうじゃん」
「お、良いねぇそれ!絶対やろう!」
ボク達の目の前を敵2人が通過した瞬間にボクとナツキは飛び出て、敵の背後に回り込んで、腕で敵の首を絞めるリコ・ネイキッド・チョークで拘束する。
「あがっ⁉︎う、ぐうっ・・・・ぁ・・・・ぶっ・・・・あが・・・・」
「むがっ・・・ぐっ・・・・ぁ・・・・」
首を絞めたまま階段の踊り場の方に連れ込む。首を全力で絞められている2人はすごい苦しそうにしているけど、ボク達は一切力を抜かない。そして暫くジタバタしていた敵2人は気絶して動かなくなった。気絶した2人から武器を取り上げて、撃てないように弾を抜いておく。そして2人を踊り場の壁際に置いといて、他に廊下に誰もいないことをマトちゃんとナノちゃんで確認してからボク達は廊下に出て人質の居る部屋に向かった。
MRゴーグルにマトちゃんか送られて来る人間の位置情報が投影されているからこうしてドア越しにも人間の位置関係が分かるのは強い。ボクは腰の大きめのポーチからスネークカメラを取り出す。これは細長くて自在に動かせるチューブの先端に超小型カメラが付いているアイテムで、これで小さい隙間にカメラを入れて向こう側を撮影出来る。今回はドアの隙間からこのスネークカメラを差し込んで中の様子を確認する。
すると画面には椅子に座った状態で縛られているトリニティの制服を着た少女と、それを取り囲む様にしてAKMやM-16を持った敵が4人写っていた。予想通り人質はここに居た。ボクはスネークカメラを回収しながら小声で報告する。ボク達が使っている無線機は小さい声は自動的に増幅されて聞こえやすい用にしてくれるから皆んなには普通の音量で聞こえる。
「人質を確認。やっぱり椅子に縛られてた。serval3、目標の部屋の窓際にいる奴は狙える?」
《窓はカーテンが掛かっているから直接姿を確認することは出来ないけど、MRゴーグルのマーキング機能で狙えてる》
今回の作戦では予備のMRゴーグルをユイにも渡していた。その理由は今みたいに直接姿が見えなくても、狙うことが出来るようになるから。と言ってもUBWレーダーでスキャンしたデータを元に狙って撃つなんてことは今までやったことがなかったから今回が初の試みだ。
「ならボクが指示したらそいつを撃って。狙撃に合わせてこっちも突入する」
《了解》
「ナツキは左側の2人を薙ぎ払って。ボクは右側の1人を倒す」
「了解」
「じゃぁブリーチング用意」
ナツキは予め用意していた超少量のC4をドアに貼り付けて、信管をセットしてボクに対して親指を立てた。
「こちらの準備良し。serval3、いつでもどうぞ」
《了解》
その数秒後、突然ガラスの割れる音と音速を突破した弾丸が飛んでくる音、そしてその弾丸を食らった人間の断末魔が同時に聞こえて来た。それに合わせてナツキが起爆装置のレバーを2回押し込んで起爆。C4の爆発でドアは木っ端微塵に吹き飛んだ。それと同時にボクは起爆装置を投げ捨てたナツキと室内に突入。
ナツキはserval-8式軽機関銃を構えて突然の狙撃とトアの爆破に驚いて固まっていた敵2人に対してフルオートで7.62×51mm弾を何発も食らわせた。ボクの方は狙撃されて吹っ飛んだ仲間に押し倒されていた敵の頭にserval-7式小銃の銃口を向けて数発打ち込んで気絶させた。
ユイの狙撃からたった4秒で部屋の中に居た敵全員を倒すことに成功した。他に隠れた敵が居ないか警戒しつつチラッと窓の方を見てみると窓ガラスが割れてカーテンが破けていて、ユイの放った23×152ミリ弾が飛んで来たことが直ぐに分かった。割れた窓からユイの居る方向に向かって親指を立てて、「ナイスショット」と言ってあげた。
その間ナツキは人質の元に駆け寄って「よお、大変だったな。怪我とかねぇか?」と話しかけながら手足を縛っていた縄をナイフで切ってあげた。最初は突然のことで驚いていた人質のリコだったが、直ぐにボク達が助けに来たことを理解したくれた様で「ありがとうございます!」と涙を浮かべながらお礼を言ったくれた。
「トリニティ学園の三藤リコさんで間違いないですか?」
「はい」
「失礼ですが本人確認の為に簡単な質問をしますね。今日一緒に来て居たお友達の名前は?」
「浅井ソノカです」
「リカさんが所属している部活は?」
「帰宅部です」
「よし、では今からここから逃げますよ。立てますか?」
「は、はい」
見た感じ特に外傷も無いみたいだし、問題無く立つこともできた。良かった。ボクは部屋の隅に置かれていたリカさんの物と思われるリュックと、可愛らしいデフォルメされた犬のキーホルダーが付いたMP5Kを拾ってリカに渡した。
「あの、助けに来てくださって本当にありがとうございます!」
「おっと、お礼を言うのはちゃんと脱出した後にした方が良いぜ」
ナツキがそう言った後に、無線機からアリナの声が聞こえて来た。
《serval1、2。騒ぎを聞きつけて同じ3階に居たエコーとフォックストロットが接近中!》
「serval1了解。ナツキ、階段に近づかせるな!制圧射撃!」
「りょーかい‼︎任せろ!」
ニヤッと笑ったナツキはserval-8式軽機関銃を構えてこっちに向かって来ていた敵合計4人に対して乱射する。シュダダダダダダダダッ!とサプレッサーで抑制された独特な発砲音と共に、大量の弾丸がばら撒かれて壁や廊下に何発も穴が開く。
流石の敵も弾丸の雨に下手に近付くことが出来なくなり、近くの遮蔽物に隠れて撃ち返し始めた。敵の動きが止まっている間にボクはリコさんと脱出する準備を手早く済ませる。
《銃声を聞いて1階と2階の人達が階段に向かってる!》
「serval3 、2階の連中が数が多いから寄せ付けさせないで」
《了解。敵さんは秒速980メートルでコンクリート壁をぶち抜いて来る弾丸を見たことあるかな?》
「まぁ普通は無いだろうね。派手にやって驚かせてやって!ナツキ、こっちはリープフロッグで前進するよ」
「了解!一旦リロードする。グレネード!」
そう叫んでナツキは敵に向かって手榴弾を投げた。敵は爆発から逃れる為に後ろに交代して、そして手榴弾が爆発した。その間にナツキは空になったドラママガジンを外して新しく50発の7.62×51mm弾が入っているドラママガジンを入れてコッキングレバーを引く。
「レディ!」
「リカさん、今から走りますから私のリュックを掴んで付いて来て下さい」
「は、はい!」
リコはボクが言った通りにボクが背負っているリュックを掴んでくれた。大人しく言うことを聞いてくれて有り難いね。
「カバー!」
ボクがそう叫ぶと同時にナツキが再びserval-8式軽機関銃のトリガーを引いて撃ち始めた。その間にボクは部屋から飛び出して階段に全力ダッシュで向かう。敵の1人が階段に向かって走っているボクの存在に気がついて、M4を構えて撃って来ようとしたから走りながらserval-7式小銃を構えてセミオートで撃つ。
数発が敵の肩や腕に当たり、敵は怯んで物陰に隠れた。その間にボクとリコは無事に階段の3階踊り場まで来ることが出来た。リコを安全な壁際に隠れさせといてからボクも壁に隠れつつ射撃姿勢に入る。
「レディ!」
「カバー!」
さっきとは逆にボクがserval-7式小銃で敵を撃っている間にナツキがボク達の元へ走って向かう。片方が敵に対して撃ちまくって敵の動きを封じている間に移動し、移動し終わったら交代してさっき撃ってた人が移動してその間にさっき移動して居た人が制圧射撃を加える。この移動方法をリープフロッグって言うんだ。
ボクの銃はナツキの機関銃みたいに何十発も撃てないけど、その代わりにMRゴーグルとserval-7式小銃の搭載しているXM157多機能照準システムを利用した精密射撃が得意。
だから敵が物陰から出てこようとした瞬間に狙い澄まされた数発を打ち込んで敵が下手に顔を出さない様にする。でもserval-7式小銃の装弾数は20発しかないから幾らセミオートでも撃ちまくっていたら直ぐに弾切れになっちゃう。
serval-7式小銃が弾切れになった瞬間に、ホルスターからserval-8式回転式拳銃を取り出そうとしていたら、リコが飛び出して両手でMP5Kをしっかり握って構えて敵に向かったフルオートで撃ち始めた。
「今の内に!」
どうやらボクの銃が弾切れになったことを察しての行動だったみたいで、ボクは素早くリロードを済ませてserval-7式小銃で制圧射撃を加えつつリコの服を掴んで引っ張り、物陰に再び隠れさせた。
「援護ありがとうございます。でも、余り無茶はしないで。貴方が怪我をしてしまったりしたら元も子もないですから。戦闘はプロに任せて下さい」
「は、はい。すいません」
「謝らなくてても良いですよ。さっきの援護が有り難かったのは事実ですから」
安心させる為にニコッと笑って見せてから再び撃ち返した。
リナ達からブラボー、チャーリー、デルタと呼ばれていた合計9人のチンピラは、上の階から突然聞こえて来た銃声から侵入者が来たことにやっと気がつき銃を持って階段へ急いで向かっていた。
「って言うかいつの間に来たの⁉︎廊下の見張りは何してたの!」
「ちゃんと見張ってたったっての!誰も見なかったわ!」
「窓から入って来たんじゃね?」
「良いから早く行くよ!人質を取り返されたら金貰えなくなるんだからな!」
あと少しで階段に着く、と言う時にチンピラ達から見て左側の壁がバガゴオォォォォン‼︎と言う破壊音と共に爆ぜた。そして先頭を走っていたチンピラが「ガハッ⁉︎」と短い断末魔を上げて右側に勢いよく吹っ飛んで壁に激突してそのまま倒れて動かなくなった。
「えっ⁉︎」
「は?」
「な、何だ⁉︎」
何が起きたのか全く分からず、足を止めてオロオロとするチンピラ達。するとチンピラの1人が穴が空いて外からの光が差し込んで来ている壁を見た。そして数秒考えて何が起きたのかやっと理解した。
「狙撃dー」
叫び終える前にチンピラはさっきのチンピラと同じ様に、壁をぶち破って飛んで来た23×152mm弾の直撃を食らって、体をくの字に曲げながら壁まで吹っ飛ばされた。それを見ていた他の連中もやっと自分達が何に攻撃されているのかを理解した。
「狙撃⁉︎」
「外と部屋の壁を全部ぶち破って当てて来たってこと⁉︎」
「あり得ないだろ!向こうからこっちは絶対見えてないだろ!」
チンピラの言う通り窓なんて一切ないこの廊下を見ることは不可能。普通に考えたら廊下を走っていた人間を狙い撃つなんてことは出来ない。
「穴から離れろ!撃たれるぞ!」
狙撃で開いた穴から慌ててチンピラ達は離れて壁に隠れる。が、隠れたはずなのに壁を背にしてしゃがんでいたチンピラの背中にまたしても壁を貫通して来た23ミリ弾が直撃して、撃たれたチンピラは一撃で意識を失ってそのまま反対側の壁まで吹っ飛ばされた。
「どうなってるの⁉︎」
チンピラ達が壁越しの狙撃に混乱している頃、その建物から約100メートル離れた所にある建物の最上階の部屋にその狙撃を行っていた犯人のユイは居た。
「タンゴダウン。これで3人目」
ボルトを後ろに引いて薬莢を外に排莢する。152mmと言う手首から中指の先っぽまでの長さくらいの、規格外に大きい薬莢が床に落ちて転がる。ユイが愛用するserval-23式対物狙撃銃は少し珍しいシングルショット式のボルトアクションライフル。つまりマガジンが無くて1発ずつ手動で弾を薬室に入れる必要がある。
なので普通のボルトアクションライフルと比べると連射速度は劣るが、その代わりに得られるのがこの圧倒的な火力。マガジン式に出来なかった理由でもある規格外に大きい23×152mmB弾は、本来対空機関砲に使われる為に開発された弾丸で、おおよそ人間が扱って良い口径では無い。
その威力も規格外で目標を確実に倒せる距離を現す有効射程は4キロにも及び、徹甲弾を使えば1.2キロ先の30度に傾斜した10ミリ厚のRHAを貫通する性能がある。もっと分かり易く言い直すと1.2キロ先に居る装甲車の装甲を貫通することが出来る。
今回ユイが使っている弾種も徹甲弾で、しかも距離は100メートルと狙撃距離として超至近。外壁と部屋の内壁を貫通し、そして廊下に居る目標に当てることはこの条件下ではそこまで難易度の高いことではなかった。
更にアリナが操作しているマトちゃんと呼ばれているUWBレーダー搭載のドローンによるスキャンで、探知した人間の位置をユイが装着しているMRゴーグルに表示しているのでユイはそのゴーグルに表示されている目標に対して狙い撃てば、例え直接見えていなくても狙って撃つことができる。
SERVAL小隊が保有するハイテク機器とユイの強力無比な対物狙撃銃があったからこそ可能な壁越しの狙撃だった。
次弾を装填したユイは構え、MRゴーグルに表示されている壁の向こう側の敵に狙いを定める。そして壁越しの狙撃に驚いて右往左往している敵の胴体を狙い、引き金を引いた。
銃声と言うよりは砲声に近いけたたましい発砲音と同時にマズルブレーキから勢いよく発射ガスが吹き荒れ、部屋の中にあったゴミなどを撒き散らしカーテンを乱舞させた。
一直線に飛んで行った23mm弾は建物の外壁を貫通し、そして部屋の中を通過。そして内壁を貫通して廊下にまで達するとそのままあわあわしていたチンピラの脇腹に命中。直撃弾を食らったチンピラはそのまま吹っ飛んだ。
《命中を確認。残りは狙撃を警戒して階段から離れてる》
「また敵が階段に近づこうとしたら狙撃するから、引き続きマトちゃんで2階を監視させて敵の動きが見えるようにしといて」
《了解》
無事に全員で階段に辿り着いたボク達はユイが狙撃で2階の敵を足止めしている内に1階まで降りようとしていたけど、その途中の1階と2階の間で足が止まっていた。理由は簡単で1階に居た敵とかち合ったから。ボクが対応しても良かったんだけど、撃ちたいからってことでナツキが前に出て1階に居たアルファとブラボーの3人と階段での撃ち合いが始まった。
ボクはリカさんを守りつつ、2階から敵がユイの狙撃を突破してこないか警戒しておく。
「オラオラオラァ‼︎お前ら3人も居るのに薄い弾幕だなぁ⁉︎」
「うるせぇ!お前がバカみたいに撃ち過ぎなんだよ!」
「機関銃は撃ちまくってこそだろうが!」
「限度ってのがあるでしょ!」
何故か敵と言い合いながら撃ち合い始めた。概ね敵さんの方が言っていることは正しいんだけど、それで乱射をやめてたらとっくの昔にナツキはやめてる。
《serval2、口論して遊んでいる暇があったらさっさと倒したら?》
「別に遊んでる訳じゃねーよ!」
お互い階段の陰に隠れつつ撃ち合っているから、どっちも有効打を与えることが出来ずに派手に撃ち合うのが続いていた。かと言って攻め込もうとすると狭い階段だから敵に蜂の巣にされてしまう可能性があるからどっちも一気に攻め込むことも出来ない。
《手榴弾投げ込めば終わりでしょ?さっさと倒しちゃいな》
「おいおい、マシンガンナーの自分に機関銃じゃなくて手榴弾で倒せって言うのかよ?」
ユイにそう言い返しながら弾切れになったserval-8式軽機関銃に新しくドラムマガジンを入れてコッキングレバーを引き、そしてまた下の階段に居る敵に向かってフルオートで撃ち始めた。
《マシンガンナーは機関銃縛りって訳じゃ無いってしってる?SRTなら柔軟に対応して戦うべきでしょ》
「うるせぇ!マシンガンが最適解なんだよ!見てろッ!」
そう言ってナツキはなんと手すりを乗り越えて敵の居る下の階段に向かって飛び降りた。流石にまさかそんな行動をするなんてボクも思ってなかったらから凄い驚いた。
「ちょ⁉︎」
止めようとしたけど、ボクが驚いて振り返った時にはもう下に向かった飛び降りていた。しかもナツキは落ちながらもserval-8式軽機関銃を撃ちまくっていた。落ちながら敵の1人を蜂の巣にして、そのまま敵にライダーキックの様なポーズで落下の勢いを利用して頭に蹴りを入れた。撃たれまくった挙句頭に蹴りを入れられた敵は、壁に頭をぶつけてそのまま昏倒した。
「いってぇ〜っ!」
流石にまぁまぁな高さから飛び降りて転倒したナツキは、痛がりながらもserval-8式軽機関銃を構えて、驚いて固まっていた残り2人の敵に対してフルオートで7.62mm弾を浴びせて纏めて倒した。
2人が倒れたのを確認して少しふらつきながらも立ち上がり、倒れながらもまだ意識のある敵に近づいて銃口を額に向けた。
「げほっ・・・やっぱり・・・・お前バカでしょ・・・」
「それは自分にとって褒め言葉だよ」
不敵に笑って見せてから頭にフルオートで弾を食らわせて敵を無力化した。全員を倒したのを確認したナツキは上を向くとボクに出してニッと笑って親指を立てた。それを見たボクはリコを連れて階段を降りた。
「ナイスガッツ。でもなかなか無茶したね」
「いつも無茶する小隊長程じゃねーよ」
「それを言われちゃうと何も言い返せ無くなっちゃうなぁ」
笑い合ってからボクはナツキとハイタッチをした。その後、リコを連れてORPまで向かい、ユイと合流した後にアリナが運転して来たL-ATVに乗ってその場を離れた。因みにアリナが運転しているのが珍しいと思った人も居ると思うけど、SERVAL小隊は全員車両は運転出来る。まぁその中でもナツキが1番運転は上手いんだけど、いつもドローンを操縦しているからなのか、アリナも普通に運転は上手い。
まぁそう言うことで無事に人質を救出したボク達は、リコの友達のソノカが待つアビドス高校へ戻った。リコがL-ATVから降りるとソノカが目に涙を浮かべつつ駆け寄ってリコに抱き付いて、「良かった!無事で本当に良かった!」と声を震わせながら喜んでいた。
その光景を見て何事も無く無事に彼女を助けることができて、本当に良かったなぁと心の底から思えた。こう言う生徒を守る為に、ボクはSRTに入ったんだ。
その後、2人から滅茶苦茶感謝の言葉を貰ってからトリニティに帰って行く2人を見送った。そして今回使った武器や装備の点検と片付けをしていると、ボクのスマホにメッセージが来たことを知らせるバイブレーションと音がなった。ポケットからスマホを取り出してそのメッセージ内容を見たボクは思わず声を出した。
「お、遂に来た!」
「ん?どうしたの?」
ユイの質問に対してボクはその画面をみんなに見せながら話した。
「装備増強案が通った。許可が出たよ」
今回の戦闘シーンはマトちゃんのUWBレーダーを使った戦闘シーンを描きたくて書いちゃったヤツでした。後悔はない。因みにUWBレーダーは手持ち型、設置型もあったりしますね。これらも今後登場させたいなーと画策中です。
それと、RynzFrancisさん(https://www.pixiv.net/users/28516182)に今回も活躍していたアリナのイラストを描いて貰いました!
【挿絵表示】
キャラ紹介の方にも貼らせて貰っているので良ければ見て行って下さい。
今回新たに登場した装備品の解説をしますね。
・
リナが使用した超小型のドローン。見た目は凄い小さいヘリコプター。現実ではノルウェーが開発し、アメリカやイギリスなど様々な国に採用されているマイクロUAVと言われている物で、実際にはブラック・ホーネット・ナノと言う名前です。恐らく今軍隊などで使用しているドローンの中で1番小さいドローンですね。
・マトちゃん《UWBレーダー搭載型ドローン》
アリナが使用したドローンで、見た目は普通のドローンなんですが壁を透視して建物の中にいる人間を見つけることが出来るUWBレーダーを搭載しているのが1番の特徴。現実では中国のDJI社が開発したMatrice 350と言うドローンに実際にUWBレーダーを搭載したモデルがあり、まだ軍用としては使われていませんが救難捜索用に使われていたりしています。
最後まで読んで下さりありがとうございました。それと、アンケートや高評価、感想なども沢山下さりありがとうございます。誤字報告なども本当に助かっています。不定期更新が続いてしまっていますが、それでよろければこれからもよろしくお願いします。
感想などありましたらお気軽に書いて行って下さい。次回もお楽しみ!