前世の記憶を持つSRTの生徒が先生と頑張る話   作:MGFFM15

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お待たせしました!第14話です。今回は早めに投稿出来て良かったです。前回も高評価とお気に入り登録、そして誤字報告ありがとうございます。沢山の人に読んでもらえて、そして高評価を貰えるのが本当に嬉しいです。


第14話 ペンは剣よりも強し

アビドス高校を出発し、電車に乗って途中から歩いてボク達はアビドス砂漠にやって来た。L-ATV(四輪駆動装甲車)に乗って移動しようかとも考えたけど、アビドス砂漠は場所によっては車も砂に足を取られて走行不可能になる場所もあるらしく、それにアヤネの話だと、ここアビドス砂漠には主人を失い壊れて暴走しているドローンや警備ロボット、オートマタなんかが徘徊している場所があるらしい。だから車に乗って移動してたら走行音に反応して襲って来ることもあるらしいので徒歩で向かうことにした。

 

《10時の方向、距離1キロ。警備ロボット確認。3時方向にも780メートル先にオートマタが居る》

 

「了解。ならこっちに行こっか」

 

普通にここを進もうとすれば、徘徊しているドローンやロボットに遭遇して突発的な戦闘が続出するんだろうけど、こっちには空の目がある。現在アリナが学園に置いているGCS(地上管制ステーション)から操作しているブイちゃん(垂直離着陸型偵察用ドローン)がボク達よりも先行して進行方向と周囲に敵が居ないか確認してくれているから、ボク達はロボットやドローンに遭遇せずスムーズに移動が出来ていた。

 

「いや〜アリナちゃん様々だね〜」

 

《強行突破しかないと思っていたんですけど、ここまで一度も遭遇せずに移動出来ているなんて凄いです》

 

と、ホシノのアヤネから褒められたアリナは「うぇっ⁉︎」って声だけでも動揺しているのが分かるくらい動揺していた。

 

《い、いえ、これは私が凄いんじゃなくてブイちゃんの性能が凄いからで・・・だってブイちゃんには高性能なEO/IRカメラとSAR(合成開口レーダー)とViDARが搭載されていて数キロ先の人間だって識別可能で、ViDARなんてレーダーとかに頼らずに目標を自動で検知して追尾したりしてー》

 

余り褒められるのに慣れていないアリナは、慌てて凄い早口で自分じゃなくてブイちゃんがどれだけ凄い性能のUAV(無人航空機)なのかを説明し始めた。前ブラックマーケットに行った時と同じ様にGCSにはアリナだけじゃなくてアヤネも居るから、今頃アヤネはアリナの早口解説に苦笑いしているかもね。

 

「にしても、砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、アビドス砂漠には初めて来ました」

 

「いや〜、おじさんは久し振りだねぇこの景色」

 

「先輩は、ここに来たことあるの?」

 

「うん。前に生徒会の仕事で何度かね〜。もう少し進めばなんと、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」

 

「え、オアシス?こんなのところに?」

 

辺り一面広野と砂しかなくて、植物も全く生えていないこの景色を見ているととてもオアシスがあるとは思えない。

 

「うん、まぁ今は全部干上がっちゃったんだけどね〜。元々はそんじょそこらの湖より広くって、船を浮かべられるくらいだったとか。ま、私も実際に見たことは無いんだけどね〜」

 

「へぇ〜そんなに広い湖があったんだ。今もあったら是非飛び込みたかったね」

 

汗を額に垂れて来た汗を拭いながらユイが言った。まぁその気持ちは凄い分かる。流石砂漠と言う感じで今結構暑いからね。それに砂が凄いサラサラだから足を踏み込む度に少し沈む。これが歩き難いったりゃありゃしない。ただ長距離を歩くだけならSRTでやった1週間ぶっ続けで行われる行軍訓練とかで鍛えているから自信はあるけど、この地面だと余計に体力を使って疲れる。今すぐ冷たい水に飛び込みたい気分。

 

「ボクも同意見」

 

《こう言う時はこの役職で良かったなって思っちゃう》

 

「良いよなぁそっちはクーラーの効いたGCSの中でドローンを操作すれば良いんだからさ〜」

 

《ナツキさんも私みたいにドローンを操作出来るようになれば?》

 

「そりゃ無理だな」

 

この小隊の中でアリナ並みにドローンなどの操縦が上手くて、そして複数種類のドローンを手足の様に扱ってそれぞれが送って来るデータを見て分析することは出来ないよ。

 

《なんだから私達だけ楽しちゃって申し訳ないです・・・》

 

「いや、アヤネさん達にはアヤネさん達にしか出来ないことがあるので気にしないでください」

 

《そうですよ。人には得意不得意があるんですから、私達は私達にしか出来ないことをやりましょう!》

 

アリナはドローンに関する技術は突出しているけど、逆に射撃やCQC(近接格闘)みたいな体術などは苦手を通り越しているレベルで下手なんだよね。射撃の下手さはキリノ並みか下手するとそれ以上で、的の真ん中に当たらないどころかそもそも的に当たらないこともよくある。だから他のSRTの生徒から嘲笑われたり馬鹿にされたりすることも多かったらしい。特にSERVAL小隊に入る前が酷かったらしくてボクが初めてアリナと出会った時は自己肯定感を失っていた。

 

それからボクやユイ、ナツキが励ましたりして今ではこうして小隊の皆んなとタメ口で話せる様になったし、人には得意不得意なことがあると前向きに考えられる様になった。ボクとしては今にも学園を辞めそうだったアリナがこうして元気になってくれて嬉しいよ。

 

「砂祭り・・・私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、凄い数の人が集まるって」

 

「そうそう。別の学校からもお祭りを見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前のことだけど」

 

「へぇ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんな凄いお祭りが・・?」

 

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ〜。その時はこんな砂埃もなかったし。ところでアヤネちゃん、まだ目的地は遠そう?」

 

《ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間がかかりそうです。ブイちゃんで見てもこの辺には何も無さそうですが・・・取り敢えず、引き続き警戒しつつ前進して下さい》

 

「了解〜。と言うことで先導は頼んだよ、小隊長さん」

 

「お任せを」

 

引き続きボク達はアリナとアヤネからの情報を頼りにロボット達に遭遇しない様に移動しながら目的地へ向かった。道中はただひたすら砂漠を歩くだけだったから暇を潰す為と疲労を誤魔化す為に皆んなと雑談していると、先生がボクの隣に来て話しかけて来た。

 

"そう言えば、装備増強案が無事に通ったみたいだね"

 

「あ、はい。流石に要求した全部の許可が貰えたわけじゃ無かったですけどね。でも、新しいUCAV・・無人攻撃機とか新しい武器も来たのでこれでこっちの攻撃能力も上がりました」

 

"それは頼もしいね"

 

「まぁでも、これから相手にするかもしれないカイザーの戦力がまだ未知数なので油断は出来ませんけどね。向こうには民間軍事会社のカイザーPMCもありますし、その戦力はそこら辺の小、中規模規模学園の治安維持組織よりもあると言われていますからね」

 

"そんなに凄いんだ"

 

「まぁ舐めれない相手ですね。数もありますし、武器や装備もボク達SRT並みとは行かなくても高品質な物を使っている様ですし」

 

先生は一度チラッと後ろの方を確認してから、声のトーンを落としてからボクに聞話しかけて来た。

 

"じゃぁ、私は戦闘のこととかはリナ程詳しくないから聞くけど、カイザーと正面切って戦うことになったら今の私達の戦力だと勝てない可能性もある?"

 

先生がそんなことを聞いて来るなんて、ちょっと以外だった。こう言うことに関しては何とかなる!って考えている人かなって勝手に思っていたから。でもまぁ、生徒を大切にしている先生ならもしものことも考えたいんだろうね。

 

他の人に聞こえない様にボクにだけ聞いて来たってことは、嘘偽り無い本当のことが聞きたいんだろうし、ボクも嘘偽り無い評価で話すことにする。

 

「もしカイザーが実力行使でこっちに攻めて来た場合は、多少の時間稼ぎが出来るでしょうけど、数で押し潰されるでしょうね」

 

特殊部隊を潰す方法の一つとして、単純に物量に物を言わせて押し潰す方法がある。勿論、攻める側はそれ相応の被害を覚悟しないとだけど、それを無視することが出来れば結構有効な戦法。

 

「なので、最悪の場合は学校を捨てることになったとしても、皆んなのことは無事に逃したいと思っています」

 

ボクも先生と同じ様にチラッと後ろを見る。SERVAL小隊の皆んなと対策委員会の皆んなが楽しそうに話している姿が見える。ボクは皆んなのことが大切だし、守りたいと思っている。だからもし、ゲームとストーリーが変わってしまってアビドスが強引に攻められたりすることがあって、もうどうしようもなくなった場合は学校を捨てることになっても皆んなだけは無事に逃がそうと思っている。その為に全力で防衛、又は遅滞戦術を展開して時間を稼ぎつつ皆んなを逃す作戦、名付けてオペレーション クロノ・ホールドを昨日から本格的に考えている。

 

「だから、もしもの最悪の場合は皆んなを逃すのを手伝って下さい」

 

"分かった。でも先ずはそうならない様に頑張ろっか"

 

「そうですね。最悪なことばかり考えてもダメですよね」

 

そもそも、ボクの考えている最終手段のオペレーション クロノ・ホールドは、最悪の場合皆んなだけでも無事に逃がそうと言う作戦。カイザーの奴らは対策委員会じゃなくてアビドスの土地に用があるから、この作戦は楽に完遂させることが出来ると思う。でも、もしこの作戦が成功して皆んな無事だったとしても、対策委員会の皆んなは大切な母校とその自治区をカイザーに奪われてしまうことになる。

 

そうなった場合、彼女達から今見れている笑顔が失われてしまうのは目に見えている。体が無事でもそんな状況は助けられたとはとても言えないし、そんな光景は見たく無い。だから最悪の状態にはならない様に頑張ろう。

 

「なーにさっきから2人でコソコソ話してるの?」

 

ボクと先生の間にユイが割り込んで聞いて来た。流石に今までの内容を知らせたくは無いから、別の私に切り替えたいなと思っていると、ユイの立派な胸が目に入った。そこでボクは笑って答えてみせた。

 

「先生は大きい方が好きなのか、それとも小さい方が好きなのかって話」

 

"ちょ⁉︎"

 

まさかの答えに先生は凄い狼狽えた。でも先生、その反応だとマジでそう言う話をしていた様に思われちゃうんじゃないかな?ユイの方はと言うとジト目で先生の方を見ていた。

 

「へぇ〜先生もやっぱり男の子なんですね〜」

 

"いや違うからね⁉︎今のはリナの冗談で、本当にそんな話をしていた訳じゃないからね⁉︎"

 

「別に気にしなくて良いですよ。私はそう言うのには理解がありますから。それで?先生はどっちが好きなんですか?」

 

"いや、別に私はどっちが好きだとかは無いから。皆んな大切な生徒なんだし"

 

「へい先生〜。やっぱ男ならデカい方が良いよな?因みに参考までに教えると、揉み心地ならユイがムニュって感じで、自分の場合はモニュッて感じだぜ」

 

ナツキまで悪ノリし始めて、本当かどうか分からない胸の触り心地のことを話し始めた。因みにナツキの胸を触ったことは無いんだけど、ユイの胸は何度も触ったり触れたらすることがある。だからユイの感触で言うとナツキの言うムニュって言うのもあながち間違いじゃ無いかもなと思う。程良い柔らかさで良い感触です。

 

「何で揉む前提の話をしてんのよ」

 

"揉むつもりも無いし、触り心地の情報も要らないかな・・・"

 

「お、デカい方が良いって言うのは否定しねーんだな」

 

"いや、そう言う訳じゃないから・・・"

 

《進行方向に警備ロボット、距離700。これは躱すよりも気付かれる前に倒した方が良いと思う》

 

アリナからの方向で先生弄りは中断して戦闘態勢に入る。ポーチから単眼鏡を取り出して、進行方向を見てみると砂埃で見え難いけど、よく見ると確かに居た。

 

「確認した。円盤型の警備ロボットが3体」

 

「私がやろうか?」

 

ユイが肩に掛けていたガンケースを下ろそうとするのをボクは止めた。

 

「いや、さっきアヤネさんが来るの後に反応する奴もいるって言ってたじゃん?とするとユイの対物ライフルの発砲音は結構大きいから、撃ったら周りにいる他の奴らにも気付かれる可能性がある」

 

「成る程ね。それじゃぁリナに任せた」

 

「外さない様に祈ってて」

 

ボクの使っているserval-7式小銃は標準装備でサプレッサーを付けているから、こう言う時に便利だね。にしても700メートル級の狙撃は久し振りだね。相手が動きの鈍いヤツだから久し振りの狙撃の的には丁度いいかな。serval-7式小銃に装備しているXM157照準システムを操作してスコープの倍率を最大の8倍に変更しながら、アヤネに無線を繋げる。

 

「アヤネさん。ここら辺の警備ロボットとかってスタンドアローン状態で動いているんですかね?」

 

《詳しく調べたことは無いんですけど、その可能性が高いです。私の考えだと命令を下す主人を失って、最後に受けた命令、例えばある地点の警備をしろと言うのをずっと守り続けているんだと思います。外部のネットに繋がっていたらずっとここを徘徊し続けるとも思いませんし》

 

「分かりました。スタンドアローン状態なら進行方向の警備ロボットを倒しても、他の警備ロボットに情報が伝達されて一斉にボク達に攻撃を仕掛けて来るって可能性は無ってことですね?」

 

《あ、はい。それは無いのは前に確認しているので安心してください》

 

「了解」

 

流石にこの距離を立射して当てれる自信は無いから、その場にうつ伏せになってから狙う。このXM157にはレーザー距離測距、弾道計算、大気センサー、コンパス、可視/赤外線照準レーザー、デジタルディスプレイオーバーレイ、自分や仲間にスコープの映像を送れるワイヤレス機能などの機能が盛り込まれていて、だから単にスコープとは言わないで照準システムと呼ばれてる。

 

そしてXM157にはレーザー距離測距と大気センサー、そして使用弾薬の6.8×51mm弾の弾道データが入っているから、それらの情報から弾道計算してどこを狙えば良いのかをドットスコープに表示して教えてくれる。

 

ボクはスコープに表示されたドットに標的を重なる様に狙って撃てば良いだけ。XM157はどんな兵士でも簡単に中距離狙撃が出来る様にと開発された照準システムだからこんなことも出来てしまう。と言っても狙うのは結局自分でやらなきゃだから、そこは練習しなきゃだけどね。下手な人だとXM157のシステム的な助けがあっても当たらないし。

 

円盤型の警備ロボットに狙いを定める。距離はレーザー測距によると675メートル。それなりに遠いけど、無理な距離じゃない。セレクターレバーをセーフ(安全)からセミ(単射)に切り替える。

 

息を吐いて、狙いを定めて静かに引き金を引いた。パズッ!と言うサプレッサーで抑制された発砲音が鳴って、6.8×51mm弾が放たれる。元々この弾薬は中距離に居る新型防弾チョッキを着た生徒にも有効打を与えられる様にと開発された弾丸だから、約700メートル先の警備用ロボットなんて簡単に破壊する威力がある。

 

6.8×51mm弾の直撃を受けた警備ロボットはスパークを起こしながらおかしな挙動をした後に動かなくなった。残り2体の警備ロボットも同じ様に狙撃して破壊して行く。

 

《3体全部の破壊を確認。ナイスショット。進行方向に敵影無し。そのまま進んで大丈夫》

 

「了解。このまま進む。それじゃぁ皆さん行きましょうか」

 

立ち上がって服に付いた砂を叩いて落としながら無線に応える。他の徘徊しているロボットとかもこんな感じなら特に脅威にはならないね。大群で来られたら分からないけど、ある程度の数ならボク達と対策委員会の戦闘能力があれば全く問題なく対処出来る相手だ。

 

それからもブイちゃんの偵察情報を頼りに、遭遇しない様に回避したり、どうしても迂回出来なさそうな時は狙撃して倒したりしてボク達は特に危なげなく目的地へ近付いて行った。そして風が出始めて、砂埃が舞い、軽い砂嵐みたいになってちょっと視界が悪くなった頃に、アリナと一緒にブイちゃんから送られて来る映像を見ていたアヤネがボク達に報告して来た。

 

《・・っ⁉︎皆さん、前方に何かあります!砂埃で、まだハッキリと姿が見えないんですが・・・!》

 

《ちょっと待って下さいね。SAR(合成開口レーダー)に切り替えます》

 

ブイちゃんに搭載されているSARと言うのは、1秒間に数百回間隔で電波を照射して、今飛んだ位置、角度、時間を記録してそこからAIが全てのデータを統合して一枚の超高精度の静止画を作るシステム。例え砂嵐や煙、大雨なんかで視界が悪くても電波だから関係無し。つまりこう言う時に凄い役に立つ。少ししてから、2人の少し驚いた様な声が聞こえて来た。

 

《これは・・・!》

 

《工場・・・?いや、駐屯地・・?とにかく大規模な施設です!》

 

《駐屯地で間違いない!しかも中には戦車や装甲車も複数確認!》

 

「こんな所に駐屯地?何かの間違いじゃなくて?今の所、こっちからは干からびたオアシスしか見えないけど・・・・」

 

風で砂埃が待っていて視界が悪いせいもあって、こっちからじゃそんな大きな施設があるのかどうかは肉眼で確認は出来ない。でも、ブイちゃんのSARが捕えたってことは確かにあるってことだね。

 

《いえ、確実に前方にあります。取り敢えず、肉眼で確認出来る距離まで近づいてみて下さい。気をつけて下さいね》

 

「了解」

 

全員、いつ何処から攻撃されても良い様に警戒しながら先生を守りつつ歩いていると、砂埃の向こう側に明らかに人工物がと思われる壁の様な物がが見えて来た。そして更に近づくとそれがハッキリと見えた。

 

「これは・・・・城壁?」

 

見た感じ、鉄筋コンクリートで作られている感じのする目測で4メートル程の高さのある城壁だった。しかも壁には容易に近づかない様に有刺鉄線が設置してある。これは専用の道具を用意しないと壁を登ったりすることも出来なさそうだね。

 

「何これ・・・」

 

「城壁に、張り巡らされた有刺鉄線・・・まるで要塞みたい・・・」

 

「こんなの、昔は無かった・・・・」

 

砂漠のど真ん中に突然現れた大規模な軍事施設を目の前にして唖然としていると、壁にロゴマークが描かれているのに気がついたら。そのマークはボクは良く知っていた。

 

「カイザーPMC・・・」

 

遂に出会ったな。出来れば会いたくなかったよ。

 

《えっ、カイザーPMCですか⁉︎》

 

「・・・・」

 

ボクがそう呟くとアヤネは驚き、そしてホシノは何も言わずにカイザーPMCのロゴマークを睨んでいた。

 

「カイザーって・・・こいつらもカイザーコーポレーションってこと⁉︎」

 

「はい、カイザーの系列会社で・・・」

 

「もうどこ行ってもカイザー、カイザー、カイザー!一体なんなの⁉︎」

 

「それにPMCってことは・・・」

 

「え、何?何かマズい言葉なの?」

 

「民間軍事会社のことですね。 Private Military Company(プライベート・ミリタリー・カンパニー)を略してPMCと呼びます」

 

「ぐ、軍事・・・⁉︎」

 

《ヘルメット団の様なチンピラとはレベルが違います。本当に組織化されたプロの・・・文字通り、軍隊の様なものです!》

 

「軍隊ぃ⁉︎」

 

「武器や装備も軍隊と遜色無いレベルですから、舐めて戦わない方が良い相手ですね。」

 

「何でそんな奴らがここにいるのよ⁉︎」

 

「退学した生徒や不良の生徒達を集めて、企業が私設兵として雇っていると言う噂がありましたが、まさか・・・」

 

ノノミが話していると、突然基地中に響き渡るレベルの大音量で警報音が鳴った。これは不用意に近づき過ぎたな。ボクが命令しなくても、瞬時に小隊の皆んなは全周囲警戒態勢に入って銃を構える。対策委員会の皆んなもそれに合わせて銃を構えて襲撃に備える。

 

「これ、何だか大事になりそうな予感なんだけど・・・」

 

《み・・・包囲・・・・h・・退k・・・・・が・・・・接近・・・・》

 

突然アヤネからの通信が聞き取り難くなり、そして最終的には何も聞こえなくなってしまった。

 

「通信妨害か・・・serval4、感度チェック」

 

《感度良好》

 

SERVAL小隊の無線通信は無事ってことは、どうやら対策委員会が使っていた通信の周波数だけが狙われて妨害されたみたいだね。まぁ何年も前からアビドスを手に入れようと画策しているカイザーなら既にアビドスが使用する無線の周波数とかも特定していても不思議じゃ無いよな。

 

「対策委員会の皆んなはこっちの無線の周波数に変更して!」

 

《それよりも早く撤退して!敵が包囲しようとしてる!》

 

「クソッ、嫌に早い!全員一時後tー」

 

ボクが言い終える前に、ボク達の退路を防ぐ様にして砲弾が飛んで来て地面に当たり、派手に爆発した。そして基地のゲートから続々と歩兵とIFV(歩兵戦闘車)、そして挙げ句の果てには戦車まで出て来てあっと言う間にボク達を包囲して全ての砲口と銃口がボク達を向いた。ボク達も銃を構えて臨戦体制に入るけど、もしいま撃ち合ったら確実に負ける。と言うか病院送りになるレベルの大怪我をするだろうね。

 

「・・・絶対絶命?」

 

「包囲されちゃったかー・・・」

 

「おーおー、熱烈な歓迎だねぇ」

 

そしてボク達の目の前に止まった一台のIFVの後部ハッチが開き、沢山の歩兵に護衛されながら出て来たのは、カイザーの理事だった。

 

「侵入者と聞いていたが・・・・アビドスだったとは。そして、まさかSRTの小隊員も居るとは驚きだ」

 

そうは言っているけど、全く驚いている感じでは無い。やっぱりカヤからボク達のことは聞いているんだろうね。

 

「な、何よこいつ・・・」

 

「まさかここまで来るとは思わなかったが・・・・まぁ良い。勝手に人の敷地に入ったことに関して金を請求して、借金に加えても良いんだが、まぁ、対して変わらないな・・・」

 

「あんたは、あの時の・・・」

 

「・・・確か、例のガマトリアが狙っていた生徒会長・・・・いや、副会長だったか?・・・ふむ、面白いアイディアが浮かんだ。便利屋やヘルメット団を雇うより良さそうだ」

 

「便利屋・・・?な、何を言っているの?」

 

「あなた達は、誰ですか?」

 

「皆んなが借金をしている相手、カイザーコーポレーションの理事だよ」

 

ノノミの問いに理事本人が答えるよりも先にボクが答えた。それを聞いた対策委員会の面々はホシノ以外驚いた。

 

「えっ⁉︎」

 

「嘘っ⁉︎」

 

「流石SRTで小隊長を務めているだけはあるな。アビドスの連中と違って良く知っている」

 

「アビドスが、借金をしている相手・・・」

 

「か、カイザーコーポレーションの・・・・」

 

「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ。今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている」

 

「それはどうでもいいけど、要は貴方がアビドス高校を騙して、搾取した本人ってことで良い?」

 

シロコが理事を睨みつけながら聞いた。それに対して理事は余裕そうな表情を崩さずに「ほう?」とだけ言った。

 

「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕掛けて、ここまで私達をずっと苦しませて来た犯人があんたってことでしょ⁉︎あんたのせいで私達は・・・アビドスは・・・‼︎」

 

セリカが怒りを露わにしてアサルトライフルを構えて銃口を理事に向けた。

 

「やれやれ・・・最初に出てくる言葉がそれか。勝手に私有地に入り込んで、そして今も何もしていない私に対して銃口を向けておいて・・・。くくっ、面白い。だが、口の利き方には気をつけた方が良い。ここはカイザーPMCが合法的に事業を運営している場所。まず君達は今、企業の私有地に対し不法侵入しているのだと言うことを理解すべきだ」

 

「っ!」

 

「そう言えば、さっきからうるさいハエが飛んでいるな。こちらの許可なく領空を飛んで貰っては困るよ」

 

カイザーPMC理事がそう言ってフィンガースナップで指を鳴らすと、基地の中の方からバッジユュュュュッ‼︎と言う音が聞こえて来た。この音はSRTで何度も聞いたことがある。ミサイルの発射音だ!

 

「まさかッ⁉︎」

 

探さずとも直ぐに見つけることは出来た。基地の中から白い煙の尾を引いて、真っ直ぐ天空へ向かって飛んで行くミサイルの姿が。そして、そのミサイルが何を狙っているのかも察したボクは急いでアリナに無線を繋げた。

 

「serval4ブレイク(回避)‼︎SAM(地対空ミサイル)だ!」

 

《えっ⁉︎ちょ、ブイちゃんでミサイル躱わすのは無理っ!》

 

咄嗟に回避しろと言ったものの、アリナの言う通りだ。今ブイちゃんは巡航速度の98キロで飛んでいる状態。そんな速度だと幾ら逃げ回っても超音速で飛んで来るミサイルを回避出来る訳がない。そしてブイちゃんにはフレアやチャフとかの対抗装置も無い。つまり何も出来ない。

 

必死に回避行動をしていたブイちゃんに向かってミサイルが追いすがり、そしてブイちゃんに直撃して爆発した。空中に黒色の花が咲き、数秒遅れて爆発音が聞こえて来た。

 

《・・ブイちゃん、シグナルロスト・・・・・》

 

「・・了解」

 

本来のシナリオだとそもそもここのPMC基地に対空装備なんて無かった筈だ。基本的に地上目標に対する脅威に備えた兵器や武器しかなかったよね?いや、カヤがボク達の装備増強案を見て兵器の情報を知ってるなら勿論カイザーの方にもその情報を送ってボク達がUGV(無人機地上車両)UAV(無人航空機)を運用しているってことは分かっているだろうし、それに対抗する為の兵器を用意しててもおかしくないって言うのは考えてた。

 

にしても既に対抗手段を用意しているなんて思っていなかった・・・畜生、完全にボクの考えが浅かった・・クソが。油断していた。それに貴重なブイちゃんを失っちゃった・・・あと1機あるとは言っても、貴重な1機がやられたのは痛い。

 

でも、ビジちゃんとかを飛ばしてなくて良かった。もしビジちゃんやモベちゃん、ロンちゃんとかが撃ち落とされていたらアレにスペアは無いから手痛過ぎる損失だったよ。本当に。

 

カイザーPMC理事の方を見ると、とても嬉しそうにしていた。今直ぐそのニタニタ笑っている顔面に弾丸をぶち込んでやりたいけど、グッと我慢する。

 

「わざわざSAMで撃墜して来るなんて、手厚い歓迎ですね」

 

「企業機密な部分もあるからな。勝手に基地内を見られては困るんだよ」

 

さてはカヤから聞いて慌ててSAMを用意しやがったな?ボクが装備増強案を提出して、そして許可を貰って今ここに来るまでには約4日かかっている。流石にボクが装備増強案を提出して即カヤがカイザーに情報を流したとは考え難いから、1日飛ばして3日間の間に準備したと考える。

 

となると、そんな短期間の間に発射装置、管制装置、レーダー装置とかの複数のユニットを持って来て防空システムを構築するみたいな大規模なことは出来ない。ならコイツらが用意したのは迅速な展開が可能なタイプのSAM。恐らく、システム全部を車両に搭載して自走出来るようにしているヤツかな?まぁ、これに関しては後で考えた方が良いね。

 

「さて話を戻そうか・・・アビドス自治区の土地だったか、確かに買ったとも。だからどうした?全ては合法的な取引、記録もしっかりと存在している。まるで、私達が不法な行為でもしているかのような言い方は止めてもらおうか。わざわざ挑発をしに来た訳ではないのだろう?ここに来たのは、私達がここで何をしているのか気になったからか?どうしてアビドスの土地を買ったのか、その理由を聞きたいのか?それならば教えてやろう、私達はアビドスのどこかに埋められていると言う、宝物を探しているのだ」

 

「へっ、一企業の理事様が宝探しとはねぇ」

 

「そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!」

 

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私達の自治区を武力で占領する為。違う?」

 

シロコが問い詰めるけど、SRT出身の身からするとこの戦力はアビドスの自治区を占領する為にしてはやり過ぎだと思ってしまう。

 

「・・・合計数十両もの戦車、歩兵戦闘車、装甲車。数百名もの選ばれし兵士達。数百トンもの火薬に弾薬。たった5人しかいない学園の為に、これほどの用意をするとでも?冗談ではない。あくまでこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時の為のもの。ただそれだけだ。君達の為に用意したものではない。君達程度、いつでも、どうとでも出来るのだよ・・・例えばそう、こう言う風にな」

 

防衛用にしても過剰戦力だと思うけどな、と考えていたら理事は懐からスマホを取り出すと、何処かに電話をした。

 

「・・私だ・・・そうだ、進めろ」

 

「な、何?急に電話・・・それに『進めろ』って、なんのこと?」

 

「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

理事がそう言ってかは、アリナの無線機越しにアヤネが急にかかって来た電話に出る音が微かに聞こえて来た。そして、その電話の内容を聞いてから、今度はハッキリと聞こえる声量でアヤネが驚きの声を上げた。

 

《はい⁉︎利子が9130万って一体どう言う・・・!ちょ、ちょっとそんな急にどうして⁉︎》

 

《・・・serval1、今の聞こえた?》

 

「あぁ。聞こえた」

 

やりやがったなこの野郎。馬鹿みたいな桁の金額をふっかけやがって。同じ様に無線を聞いていた小隊と対策委員会の皆んなは驚いていた。

 

「きゅ、9000万⁉︎」

 

「嘘だろオイ」

 

「そんな金額・・・」

 

「・・・くっくっくっ。これで分かったかな。君達の首にかけられた紐が今、誰の手にあるのか」

 

「ちょ、嘘でしょ⁉︎本気で言ってんの⁉︎」

 

「あぁ、本気だとも。しかしこれだけでは面白みにかけるか・・・そうどな、9億円の謝金に対する補償金でも貰っておくとしよう。1週間以内に、我がカイザーローンに3億円を預託してもらおうか。この利子でも借金返済ができると言うことを、証明してもらわねばな」

 

《そんな・・・!》

 

「クソが。あんた良い性格してるよ」

 

《ふざけてる・・・》

 

《そんなお金、用意できるはずが・・・今、利子だけでも精一杯なのに・・・》

 

「ならば、学校を諦めて去ったらどうだ?自主退学して、転校でもすれば良い。それで全て解決するだろう。そもそも君達個人の借金ではない。学校が責任を取るべきお金だ。何も君達が進んで背負う必要は無いのではないか?」

 

「そ、そんなこと、できる訳ないじゃないですか!」

 

「そうよ、私達の学校なんだから‼︎見捨てられるわけないでしょ!」

 

「アビドスは私達の学校で、私達の街」

 

「ならばどうする?他に何か、良い手でも?」

 

「ヘイお前、なかなか人をイラつかせるのか得意だなオラ」

 

ボクもこんなにイラついてる姿は見たことないんじゃないかな?と思うくらいナツキは苛立っていた。でも手に持っているserval-8式軽機関銃の銃口を理事に向けよとしているのを抑えているのは偉いと思う。

 

「別に私は事実を言ったまでだが?」

 

「・・・皆んな、帰ろう」

 

「ホシノ先輩⁉︎」

 

「これ以上ここで言い争っても意味が無い。弄ばれるだけ」

 

「ほう・・流石副生徒会長、流石に君は賢そうだな。・・・・あぁ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな」

 

最後のユメ先輩を馬鹿にする言葉を聞いたホシノが、怒りを露わにしてショットガンを理事に向けようとするけど、その前にボクがショットガンを掴んで止めて、左手に持っていたserval-7式小銃を片手で構えて理事の頭に向ける。本当ならボクはこんな行動をしない方が良いんだろうけど、ホシノの辛く悲しい過去を知っている身からすると、どうしても我慢出来なかった。

 

「おや、君がそんな反応をするのは意外だったな」

 

「・・ボクはそのアビドス生徒会長のことも、ホシノさんのこともよく知らないけどさ、そんな風に生徒を馬鹿にして来る奴は大っっ嫌いだ。今直ぐお前のニヤついた気持ちの悪い笑顔の張り付いた顔面に弾丸を食らわせてやっても良いけど、そうしたら挑発に乗ってしまったボクの負けになる。だから撃たない。でも次チャンスがあった時は必ずぶち込むから覚悟しろクソ野郎」

 

「ふっふふふ・・・・では、来月以降の返済の件、宜しく頼むよ?お客様。ふはははは!存外悪く無い時間だったな。さぁ、お客様を送り届けて差し上げろ」

 

湧き上がる怒りを抑える為に息を吐いてからボクは銃を下げて、理事に背を向けて帰ることにした。その途中、ホシノから小声で「代わりに怒ってくれてありがとうね」と言われた。ボクとしてはそう言うつもりじゃなくて、思わずやっちゃった行動だったから苦笑いするしか無かった。

 

どうしようもない不満と怒りを抱えながら、ボクはアビドス高校へ帰った。




アニメで理事にユメ先輩を馬鹿にされたホシノがキレてショットガンを向けるシーン。好きなんですよね。息づかいだけでホシノのキレている感情を表現してるのが素晴らしいなと思って。でも今回は主人公のリナにその役を譲って貰いました。

それとブイちゃんが撃墜されるシーンで、理事が指パッチンをしてミサイル発射の指示を出すシーン、アレも実は自分が書いてみたかったシーンなんですよね。昔見た洋画のシーンのオマージュです。

今回の最後まで見てくださりありがとうございました。次回もお楽しみに!ご感想などありましたら、お気軽に書いて行って下さい。
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