前世の記憶を持つSRTの生徒が先生と頑張る話 作:MGFFM15
待たせた分さっさと投稿しよう!と思って合間合間の暇な時間に急ピッチで書いたものなので誤字や脱字が多発しているかもしれません。自分も見つけ次第修正して行きますが、皆さんからも教えて貰えると助かります。
それではお待ちかねの第4話、どうぞ!
ブチギレたアヤネのご機嫌を取る為と、朝から荷下ろしなどで体力を使ってお腹が空いたボク達は対策委員会の皆んなと一緒に柴関ラーメンに昼ご飯を食べに来ていた。流石に対策委員会とSERVAL小隊全員が座れる席は無いから対策委員会とSERVAL小隊で分かれて座って居る。
「悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるから機嫌直してよ。ね?」
「別に怒ってませんっ・・・」
「いや、どう見ても怒ってるだろ」
ボクもナツキの意見に同意する。誰が見ても今のアヤネは怒ってる。でも頬をちょっと膨らませて怒っているアヤネの姿は可愛いなっとも思う。そんなことを思いつつボクは目の前に置いてある店名と同じ名前のラーメン、柴関ラーメンを頂く。味は見た目通りの二郎系で、濃厚な豚骨醤油味。麺もうどんかなって思うくらい太くてとても食べ応えがある。SRTだとこう言うのは絶対に食べれないものだし、一仕事した後でお腹が空いていたこともあってとても美味しく感じる。
それに一杯580円と言う学生にも優しい値段設定も魅力的だね。こんなに美味しくて安いからこそ、今でも沢山の人が食べに来てくれているんだろうな。
「美味しいね」
「だね。SRTでもこう言うのが食べれたらなぁ」
隣に居たユイは美味しそうに柴関ラーメンの大盛りを食べていた。野菜もチャーシューも麺も全てが増量されているからその量はとんでもないことになっている。とてもじゃないけどボクは食べ切れない量だね。
「まぁそれは無理だろうね。そもそもラーメンが無いし。って言うかめっちゃ食べるじゃん」
「別に私が大食いなのは前から知ってるでしょ?」
確かにユイが大食いだって言うのは中学の頃に既に知ってる。私の頃に一緒に昼ご飯を食べている時に凄い量のご飯とおかずが入った大きな弁当箱を持って来たのを初めて見た時はビックリしたなぁ。
「いやまぁそれは知ってるけどさ、ただでさえ麺が太くて食べ応えがあるのにその量を食べるのは凄いなぁって思って」
「確かに麺が太いから食べ応えはあるけど、この位の量なら食べ切れるよ」
「やっぱりそれだけ食べるから身長も胸もそんだけ大きくなるんだろうなぁ」
身長も胸の大きさも、圧巻の大きさだからね。今からでも食べまくればボクも胸はそんなにいらないから身長を伸ばせないかな?まぁ多分無理だろうな。
「よく羨ましがられるけど実際は身長も胸も大き過ぎても良いことないよ?背が高いと車を乗り降りする時とか、入り口とかの色んなところで頭を打つことがあるから。
「あーあったねそんなこと。教官から『目の前だけじゃなくて周囲にも注意を向けろ!』って怒られてたっけ」
「そうそう。お陰様で常時周囲を警戒する癖がついたから前よりは頭をぶつけなくなったのは良いことかもだけど」
「それに胸も悩みが多いよ。先ず純粋に重いから肩が凝るし、気に入った服とか下着があっても私に合ったサイズが無かったりすることも多いし。胸が大きいせいで街を歩いて居ると視線を集めるし、あと胸が邪魔で足元が見えないのも結構悩みの種だし、匍匐する時に胸が凄い邪魔になって、匍匐前進しようとしたら地面に擦れて痛いし、それにー」
「取り敢えず悩みが多いのはよく分かったよ。でも隣の芝生は青いって言う通り、無いものを望んでしまうのが人間の性だからね。ユイ並に伸びなくても、せめて
このままだとユイの愚痴が止まらない感じだったから遮って無理矢理止めた。ユイはちょっとむすっとしていたけど止まってくれた。
男の僕だった頃は身長は168センチ有ったから、今のボクと比べると19センチも縮んでしまった訳で、ついつい僕の頃の感覚で高い所の物を取ろうとしたりして、結局取れなくて苦戦することがあったりして歯痒い思いをすることが多いんだよね。すると、僕の前に座っていたナツキがニヤニヤしながら話しかけて来た。
「まぁまぁ。そんなに気ィを落とすなって。ちっちゃくて可愛いから良いじゃんか」
「ボクがちっちゃくて可愛いって言われるのが嫌なのを知って言ってるよね?小隊長に喧嘩売るなんて良い度胸してるじゃん」
本気で撃つ気はないけど、箸を置いて腰に付けているホルスターに手をかけていつでもServal-8式回転式拳銃を引き抜ける体勢に入って睨む。
「別に喧嘩なんて売ってねーよ。ただ励ましてやっただけじゃんか」
「何処にニヤニヤしながら励ますヤツが居るんだよ」
溜め息を吐きながらボクは箸を持ち直してラーメンを食べる。さっさと食べないと麺が伸びちゃうしね。
「って言うか、毎度毎度馬鹿みたいな量食ってるからその分栄養がその立派な乳やら身長に行ってるんだろうから食わなければ良いんじゃね?」
「お腹が空くんだから仕方ないじゃん!それにお腹が空いたまま訓練をしてたら確実に途中でぶっ倒れる」
「お洒落は我慢って言うだろ?頑張れよ」
「と言うか、今更食事量の制限をしてもこれ以上大きくなるのは止められるかもだけど、小さくはならないから悩みの解決にはならないと思う」
綺麗な所作でラーメンを食べていたアリナがツッコミを入れた。確かにその通りだ。にしても、ボクの勝手な偏見なんだけど、アリナって見た目が可愛い系だから余りこう言う二郎系ラーメンみたいなのは食べるイメージが無かったな。クレープとかを幸せそうな顔で食べている姿の方が似合うし、想像し易い。
「そうなんだよねぇ。リナの言う通り、ナツキくらいの身長と胸のサイズが一番丁度良いんじゃ無いかなって思える」
「お?もしかして自分って皆んなから羨まれる最強のプロポーションの持ち主だって認めて貰えてるってこと?」
「つけ上がるな機関銃狂い」
「そう言えばアリナはあんまり身体的な悩みを聞かないけど無いの?」
わざわざ聞くことじゃないことかもだけど、今まで彼女が身長や胸などの話しで愚痴とかを言っていることを聞いたことが無いことに気づいたから聞いてみることにした。ボクより身長も胸も大きいと言ってもそれは何もかもが小さいボクと比べるとって言う話で、平均的に見るとアリナも身長152センチで胸は多めに見積もってCくらいだから小っちゃい部類に入る。
「うーん・・・無いかな。私は可愛いって言ってもらえると嬉しいし」
そう言って笑うアリナの姿がボクにはとても眩しく感じた。なんか、なんとか身長を伸ばせないかって足掻いているボクが情け無く感じて来る。
「ボクもアリナみたいに自己肯定感を上げないとだなぁ・・・いやでも可愛いって言われたい訳じゃないからなぁ」
そんなきゃー!カッコいいー!みたいに言われたいって訳じゃないけど、少なくとも現状の「あ、貴方が小隊長だったの⁉︎小ちゃくて可愛いね」みたいなことを言われる現状からは脱したい。
「んで、胸と身長の話は置いといて、これからどうすんの?アビドスに協力するって言っても具体的にはどうするつもり?」
ユイが話の話題を真面目な話に変えて来た。ボクとしてもこれ以上この話を広げても自分にスリップダメージが入って行くだけだと感じ初めていたから有り難い。
「基本的にボク達は荒事専門の部隊だからね。アビドスの治安維持活動をしつつ、対策委員会や先生が何か事件に巻き込まれた時に直ぐに駆けつけて援護する即応部隊として動くつもりだよ。他にも昨日話してたヘルメット団が使ってたプーマ装甲車の部品の流通ルートを分析して、そこから裏に居る存在の尻尾を掴んで、その正体と目的を知る。まぁ直近の行動予定は降ろして運んだだけの荷物達を広げて、いつでも使い易い様に組み立てたり、整理整頓したりしなきゃだね」
例えば簡易分解して専用のケースに入れて来た多種多様なドローン達とかだね。いざ戦闘になった時に組み立て始めていたら間に合わないし、弾薬とかもケースに入れたまんまだと使い難いからマガジンに入れたりして直ぐに使える様にしなきゃだし。他にも色々とやることがある。優先度の高いタスクから片付けて行かないとだね。
「一番面倒な作業きちゃ〜」
「気持ちは分かるけどこのままだとただ荷物を持って来ただけで戦闘で直ぐに使えない物だらけだからね。今後の自分達の為に用意しなきゃ」
「へいへい」
「ま、そう言うことだから今後の為にも今はお腹いっぱい食べて力をつけよう!」
「うっし、なら自分も替え玉注文しよっかな!」
「マ⁉︎お前も結構食べるね⁉︎」
そんな会話をしながら楽しくラーメンを食べ続けていると、ガララララっと店のドアが開く音が聞こえて来た。
「・・・・あっ、あのう・・・」
紫髪のオドオドした様子でショットガンを抱えた少女が静かに店内に入って来た。来た。会うのを楽しみに待ってたよ。ハルカちゃん。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「・・・え、えっと・・・こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」
今思えば店に入って初手で安いメニューは?と聞くのもなかなか勇気がいる行動だと思う。ボクも僕だった頃は陰キャだったから気持ちは分かる。もし変なことを言って店員の人に「何だコイツ?」とか思われたらどうしよう!とか色々と考えて緊張しちゃって挙句の果てには店にも入らなくなっちゃうんだよね。だからこうして言えているだけハルカは偉いよ。撫で撫でしてあげたくなる。
「えっと、一番安いのは・・580円の柴関ラーメンです!この店の看板メニューなので、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
ハルカはお礼を言った後そそくさと店の外に出て行った。ハルカの謎の行動にセリカが首を傾げていると、仲間を連れてハルカがもう一度入店して来た。
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」
遂に会えたね。ブルアカをやっているプレイヤーで彼女のことが嫌いな奴は居ない、皆んなから愛されている女、陸八魔アル!そのクールぶってる表情がいつもの白目の表情になる瞬間を早く見たいよ。
「そ、そうでしたか。流石社長、何でもご存じですね・・・」
「はぁ・・・」
尊敬の眼差しを向けるハルカに溜め息を吐くカヨコ。生の、本物のカヨコですよ皆さん!画面越しじゃなくて生きたカヨコが今目の前にいる。やっぱり顔が良いね。
「いらっしゃいませ!4名様ですか?お席にご案内しますね」
「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫」
「一杯だけ・・・?でも、どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いている席も多いですし」
「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。・・あ、わがままついでに、箸は4膳でよろしく。優しいバイトちゃん」
「え?ま、まさか一杯を4人で分け合うつもり?」
流石のセリカもビックリしている。まぁ普通一杯の並盛りのラーメンを4人で食べるとは思わないよね。その光景をイメージするだけで可哀想な感じになる。
「なけなしのお金を集めて食べに来たのかな?可哀想だし、奢ってあげる?」
お金がないことを謝っているハルカを見ながらアリナがボク達に聞いて来た。でも、そんな事はしなくても優しいセリカと太っ腹な大将の粋な計らいで特盛にしてもらえるのは知っているからこっちが奢らなくても大丈夫。
「いや、大丈夫だと思うよ。何だかんだで優しいセリカと柴大将のことだからああ言う人達のことは放っておけないだろうからね」
それよりも心配すべきなのはこの後起きる便利屋68+傭兵達との戦闘。便利屋もそれなりに強いだろうし、傭兵達が何人来るかも分からない。ゲームではアヤネが大規模部隊と言っていたから10人とかでは収まらない人数なんだろうけど。でもゲームだと対策委員会だけで守り通せていたし、そこまで苦戦する様な相手じゃないのかも?
「と言うかあの人達が着ている制服、ゲヘナっぽいけどアビドスに何の用なんだろ?」
「あー言われてみれば確かに。あれゲヘナの制服だな」
「色々と問題行動を起こしちゃって学校から退学処分を食らっちゃった人とか?」
「無いとは言えないね」
ユイ達は便利屋68の人達がゲヘナの制服を着ていることに気がついて、色々と考察をし始めた。ゲヘナの生徒がアビドスにわざわざ来るなんて珍しいからね。
「なんかあのピンク髪の人は社長って呼ばれているし、退学になってから自分達で何か会社を立ち上げた感じなんじゃね?」
「それにしては金なさ過ぎでしょ」
「仕事が上手く行ってないのかな・・・」
「世の中上手く行かない事だらけだからなぁ」
「何ホシノみたいにおじさんみたいなこと言ってんのさ」
「言う程おじさんっぽいか?今の」
そんなどうでも良い雑談をしていると、便利屋の元へ注文したラーメンが運ばれて来た。
「はい、お待たせしました!熱いのでお気をつけて!」
ダン!と重たげな音を立てて机に置かれたのは天に聳える特盛ラーメンだった。小隊内だと少食な方のボクからすると見ているだけで胃もたれしそうな量。それを見て「ほらね?」と言う意味も込めてアリナ達の方を見てみると、流石に予想外のラーメンの量だったみたいで驚いていた。
「ひえっ、何これ!ラーメン超大盛りじゃん!」
「ざっと10人前はあるね・・・・」
「こ、これはオーダーミスなのでは?こんな量分のラーメンを支払うお金、ありませんよ・・・」
「いやいや、これで合ってますって。500円の柴関ラーメン並!ですよね、大将?」
「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ」
ラーメンの美味さもそうだけど、こう言う柴大将の優しい所がこの柴関ラーメンが今でも人気を誇っている理由の秘訣なのかもね。その光景を見ていたナツキは柴大将に近づいて便利屋の皆んなには聞こえない様にこそっと話しかけていた。
「イカつい見た目に反して優しいじゃん、大将」
「若い子にひもじい思いをさせたくないからね。せめて、この店でくらいお腹いっぱいになって欲しいんだよ」
「その気持ちは凄い良いと思うけど、赤字で店が潰れない様にな」
「はははは、このくらいで潰れるほどウチは柔く無いよ。でも、心配してくれてありがとうな」
「ここのラーメン気に入ったからな。そう頻繁には来れないだろうけど、また食べに来た時に潰れていたら嫌だからね」
「そこまで言われてたら、潰れない様に頑張らないとだな!」
折角良い話をしているんだけど、この店は後数日の命なんだよね・・・。そこに居る便利屋によって爆破されちゃうから。
「ふふふ、流石にこれは想定外だったけど、厚意に応えて、ありがたく頂かないとね」
「食べよっ!」
便利屋68の皆んなが一斉に麺を啜り、そして表情を輝かせた。分かるよ。初めて食べた時の美味しさの衝撃は凄いよね。ボクもびっくりしたよ。
「お、おいしいっ!」
「なかなかイケるじゃん?こんな辺ぴな場所なのに、このクオリティなんて」
「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」
いつの間にか便利屋68の所まで来ていたノノミが嬉しそうに話しかけていた。
「あれ?隣の席の・・・」
「うんうん、ここのラーメンは本当に最高なんです!遠くからわざわざ来るお客さんも居るんですよ」
「えぇ、わかるわ。色んな場所で色んなのを食べてきたけど、このレベルのラーメンはなかなかお目にかかれないもの」
ボクはSRTの訓練が忙しいのもあって、そんなに外食をしていた訳じゃないから分からないけど、依頼やら何やらで色んな所を転々としている便利屋なら色んな物を食べて来たんだろうから、アルの言うことは嘘じゃないんだろうね。
「えへへ・・・私達、この常連なんです。他の学校の皆さんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです」
アヤネもまるで自分の事の様に喜んでいる。いつから対策委員会の皆んながこの柴関ラーメンに通っているか知らないけど、昔からお世話になって来たんだろうね。
「その制服、ゲヘナ?随分と遠くから来たんだね」
シロコも含めた他の対策委員会のメンバーも便利屋に話しかけ始めた。アルの方も嬉しそうにニコニコと笑ってそれに答えている。楽しそうに対策委員会の皆んなと話しているアルを見ていると、やっぱりアウトローには向いていないんじゃ?と思うんだよね。
対策委員会のメンバーとアルが楽しそうに話している傍らで、カヨコは対策委員会の方を相手に気付かれないようにしながら見ていた。
「ねぇムツキ、連中の制服・・・」
「あ、本当だ。アビドスじゃん」
よく見てみると事前の調べで見ていたアビドス高等学校の制服とアルが話している相手の制服が一緒だと言うことにムツキも気がついた。
「うふふふっ!いいわ、こんな所で気の合う人達に出会えるなんて。これは予想外だけど、こういう予想出来ない出来事こそ人生の醍醐味よね!」
「アルちゃんは気付いてないっぽいけど?」
「・・・言うべき?」
「面白そうだから放っておこ!」
「はぁ・・」
社長であるアルが目の前にいるのが標的だと言うことに気づいていないのは、それはそれで問題な訳だが、便利屋だと似た様な事はよくあることで、真実を知った後のアルの反応を見たがっていたムツキは今は言わないことにした。カヨコも今直ぐに言う必要は無いと判断して、相変わらずアルを弄るのが好きなムツキと、標的相手に満面の笑みを見せていて、全く気配の無いアルを見てため息を吐く。
「・・・ん?」
今は大将から貰ったラーメンを有り難く頂こうかなと思って、ラーメンを啜っていると、カヨコは対策委員会の座っている席の隣の席に座ってラーメンを美味しそうに食べているメンバーを見て、動きを止めた。そして彼女達が着ている灰色の制服に付いている校章が前に何処かで見たことあるなと考えて記憶を辿る。
あの校章って・・確かSRTじゃ?何でこんな所に?ここはたまたま来る様な場所でも無い。ラーメン好きでわざわざ遠路はるばるここに食べに来たって可能性も無くはないけど・・。
相手側に悟られない様にラーメンを食べながらカヨコは考える。そして、楽観視せずに最悪の可能性についても考え始める。
もしかしてアビドスの仲間?でもSRTがアビドスを助ける理由が無いし・・アビドスとSRT間で交流があったって言う記録も無かった。でも、個人間での交流があった可能性はある。もしアビドスの仲間だった場合、今用意している戦力だけじゃ負ける可能性もある。取り敢えず今は変な行動はせずに様子見するしかないかな。でも社長に目の前の連中がアビドスだって今伝えなかったのは結果的に良かったかも。
間違いなく伝えたら社長は驚いて、ハルカが「敵なら倒します!」とか言ってその場で撃とうとしていた可能性もあった。そうなったらSRTの生徒も参戦して来るだろうから私達に勝ち目は無かった。
「ムツキ、アビドスの隣の席に座っている連中、SRTだ」
「SRTって?」
「連邦生徒会長直属の特殊な学園で、そこに所属している生徒は犯罪者を捕まえる為なら他学園自治区に侵入して戦うことも許可されている。社長が雇った傭兵なんかよりも強いエリート集団」
「へぇ・・・それは面白そうだね。・・で?カヨコちゃんはあの人達をどうするつもりなの?」
ムツキは一瞬、好戦的な表情でSRTの生徒を見たが、直ぐにいつもの表情に戻ってカヨコに聞いた。
「こっちからちょっかいを出すのはやめといた方がいい。一応警戒だけしておく」
「了解〜」
今は下手なことはせずにアルとアビドスを楽しく会話させといた方が良いと判断したカヨコはSRTの生徒こと、SERVAL小隊のことを警戒しつつ食べ続けた。
ボク達がラーメンを食べている間、カヨコに凄いチラチラと見られてた。まぁボク達がSRTだってことは直ぐに分かっただろうし、警戒心MAXだったんだろうね。ボクも出来ればカヨコに話しかけたかったけど、あの状態のカヨコに話しかけても逆に警戒されるだけかもなと思って今は我慢した。
ラーメンを食べ終えて、便利屋68の皆んなとも別れたボク達は対策委員会の皆んなと雑談をしながら学校へ帰って来た。対策委員会の教室に皆んなで集まって柴関ラーメンの話や、そこから派生してSRTでの訓練の時に食べていた携帯食の話で盛り上がっていると、アヤネがいつも持っているタブレットからアラームが鳴った。アヤネが操作するタブレットの画面を覗いてみると、画面には地図も防犯カメラの映し出されていた。そしてカメラには大勢の生徒がここに向かって歩いて行っているのが映っている。
「校舎より南6キロ地点で大規模な兵力を確認!」
その一言で和やかだった教室の雰囲気が一変した。流石何度もヘルメット団から攻撃を受けて来たアビドスと言うべきか、切り替えが早い。全員壁に立て掛けていたり、机の上に置いたりしていた自分の武器を既に手に取っている。
「まさか、またヘルメット団が?」
「ち、違います!ヘルメット団じゃありません!これは・・・・傭兵です!おそらく日雇いの傭兵!」
「へぇー。傭兵かぁ。結構高い筈だけど」
まぁその高い傭兵をほぼ全財産吹っ飛ばす勢いで雇ったからね。あの人達は。
「傭兵とまともに戦うのは初めてだね」
ユイの言う通り傭兵とまともに戦うのは今回が初めてかもしれない。ボクが日常的に相手にしていたのはチンピラが殆どだったし。
「だね。でもまぁ対策委員会とボク達で撃退出来ると思うけどね」
「これ以上接近されるのは危険です!先生、指示を!」
“分かった。・・リナ、そっちの装備で遠距離攻撃出来る物はある?”
「グレネードランチャーがありますよ。それにフルオートで撃てるやつが。後はドローンも使えばアウトレンジ攻撃が可能ですね」
“ならそれを使って敵を攻撃して。こっちが数で負けている以上、まともに戦ったら数で押されて厳しい戦況になるのは目に見えているから、ここに到着する前にある程度敵の戦力を削っておきたい”
「オーケー。そう言うことなら任せて下さい。・・小隊総員傾注!これよりアビドス高校防衛戦を始める。アビドス高校から半径1キロ地点の市街地を第1防衛ライン、校門前を第2防衛ライン、正面玄関前の陣地を絶対防衛ラインとして死守するよ。アリナ、敵の詳細な動きを知りたいから
今は荷下ろししただけで組み立てていないドローンだらけだから直ぐに使えるヤツが少ない。だから直ぐに用意出来て、尚且つ今の状況に合ったドローンを選ぶ必要がある。ビジちゃんはここに持って来る為に飛ばして来たばっかりだから他のと比べたら準備に手間取ることは無いと思う。プーちゃんは箱から取り出して組み立てる必要があるけど、元々分解と組み立てを簡単にして少数部隊での運搬と運用をし易い様になっているから3分以内に組み立てから離陸までが完了出来る。
「スクランブル用に搭載していた
「分かった。プーちゃんを飛ばした後はビジちゃんの発進準備を優先。飛ばした後は基本監視活動。ヘルファイアはボクの指示があるまで撃たないで。ナツキはアリナを手伝ってプーちゃんを組み立てて飛ばして。それが終わったらここに戻って来て完全武装で待機。敵が第1防衛ラインに入って来たらボクと一緒にゲリラ戦を仕掛けるよ。そして第2防衛ラインまで接近されたら対策委員会の皆んなと一緒に戦う。ユイは屋上に行って40式フルオートグレネードランチャーと狙撃の用意を。用意が出来たら40式の有効射程に入り次第アリナから正確な位置情報を聞いてグレネードランチャーで制圧射撃を実施。弾切れか、第2防衛ラインに入り込まれたら狙撃に移行」
一度話を区切って、皆んなを見渡す。こんな本格的は防衛戦をSERVAL小隊でやるのは初めてだ。前にも感じたけどちょっと緊張するし、でもワクワクもしている。
「敵は傭兵部隊。実戦経験の多さだと圧倒的に向こうが多い。その分の不足は今までSRTの訓練で培って来た知識、技術、連携を生かして戦うよ!」
「「「了解!」」」
その様子を見ていたホシノがアヤネに話しかけた。
「アヤネちゃんも何か皆んなにカッコいいこと言っとく?」
「いえ、私はそんなキャラじゃ無いので・・・」
アリナとナツキは教室を出てドローンを準備する為に武器装備類を置いている教室へ向かう。ボクの説明が終わったのを見計らって先生が話しかけて来た。
“わざわざゲリラ戦を仕掛けるまでしなくて良いのに。それに2人だけで大人数を相手に戦うのは危ないと思うけど・・・”
「大丈夫ですよ先生、それにゲリラ戦はこう言う大勢の敵相手に少人数で戦う為の戦術ですからね。そしてそういう訓練も受けてます。だから安心して下さい」
“・・分かった。ぶっちゃけすごい心配だから安心は出来ないけど信じるよ”
「ありがとうございます。それと先生、話は変わりますけど指揮をするなら下に停めている
その方が先生に危険が及ぶ可能性も低くなるし、良いと思ったけど先生の性格からして断るのは目に見えているね。
“せっかくのお誘いだけど大丈夫だよ。私は直接見て指揮をしたいからね”
まぁやっぱり断るよね。どうせボクが何を言っても前線に出て来ようとするだろうから説得は諦めよう。
「了解しました。ですが危険ですので余り前には出過ぎず、必ず何か遮蔽物に身を隠して下さいね」
“分かった。心配してくれてありがとうね”
「それと、コレをどうぞ」
そういってボクが渡したのはSERVAL小隊が使用している防弾チョッキ。これは予備として持って来ていたヤツ。ライフル弾だって防げる様に作られている新型だから、生身でいるよりも格段に生存率は上がる。
先生はお礼を言ってからその防弾チョッキを着た。元々はユイ用にサイズを合わせた物だから先生でも問題無く着れた。
「それじゃ、私の方も行ってくる」
準備を済ませたユイはそう言ってserval-23式対物狙撃銃の入ったガンケースを肩に掛けて教室を出て、階段へ向かった。ボクも本格的な戦闘に備えて銃の簡単な動作チェックと装備品の準備に取り掛かる。
ボクの準備が一通り終わってから少し経った頃、他のメンバーの準備も終わった様で無線機に報告が来た。ユイは屋上に設置していたグレネードランチャーの準備を終えていつでも撃てる状態で、アリナもGCSに入って飛ばした各種ドローンを操作して敵部隊の捜索をしている。ドローンの準備の手伝いが終わったナツキは戻って来てボクの隣で銃の動作確認をしている。一通りの確認が終わったことを確認してから聞いてみる。
「準備は?」
「いつでも!」
「よし、それじゃぁボク達も行こうか」
“気をつけてね。無茶はしない様に”
「了解です。それじゃぁ行って来ます」
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ!」
先生と対策委員会の皆んなに手を振って教室を出たボク達は校門に止めていた
「うっし、敵部隊の位置情報確認!って、おろろ?小隊長、これ見てみ?」
「ん?」
ボクの方に向けて来たタブレットの画面を見てみる。そこにはプーちゃんに搭載された高性能高倍率カメラでバッチリ撮られているアルちゃんと、便利屋68のメンバーが写っていた。
「あーさっきの」
「だよな。対策委員会の人達と仲良くラーメン食ってた連中だよな。え、もしかして対策委員会の人間を偵察する為に柴関に?」
「それにしては結構和気あいあいとしていた気がするけど」
まぁ実際、あの時アルは相手が対策委員会だとは知らずに話していたしね。
「まぁどっちでも良いか。誰だろうとやることは変わらない」
「だね。出すよ」
シフトレバーをDに入れて、アクセルを踏んでL-ATVを発進させた。敵部隊との距離が、第1防衛ラインまでは車で3分で着く。傭兵部隊の移動手段が徒歩だから第1防衛ラインに来るまでには確実に1時間以上は掛かる。それだけの時間があればゲリラ戦の用意は充分に出来る。まぁトリニティにいるゲリラ戦のプロの人並みの戦いっぷりは無理だろうけどね。でもある程度の敵を削ることは出来る。
ボクがL-ATVを発進させて少し経ってから、アリナから連絡が来た。
《serval4からserval1、ビジちゃんの離陸が完了。今全速力で敵部隊まで向かわせてる》
「了解。さっきも言った通り命令があるまではヘルファイアの使用はしないでね」
《了解。それと、アヤネさんの報告通り身なりや武装からして傭兵で間違いなさそう。乗り物は無し、武装は軽火器。人数は約60人規模》
「良いね60人!この新型で撃ちまくる絶好の機会じゃん!」
前回の戦闘で火力不足を感じたナツキが、SRTから荷物を持って来るついでに持って来たのが今持っているserval-338式汎用機関銃。最近作られたばかりの新型機関銃で、強力な超長距離狙撃用弾丸の.338ノルママグナム弾を使用する。今まで使っていた機関銃よりも全長が長くなっているけど、その分有効射程距離も長くなって砂漠が多くて土地が広いアビドスにもピッタリな銃になっている。
「高い弾使ってるんだし、撃ち過ぎない様にね。serval3、準備は?」
《いつでも》
「了解。そのまま待機。Serval4、何か敵に動きがあったら連絡を。こっちもそろそろ第1防衛ラインに到着するから歓迎の用意をする」
《了解》
リアルタイムで更新されるプーちゃんからの敵部隊の位置情報から敵の通る道は大体予想出来ている。だからボクとナツキのゲリラ部隊は敵の通過予定地点に色んな仕掛けを仕掛けておく。たった2人のゲリラ部隊だけど戦い方によってはそれなりの数の敵を倒すことだって出来るんだ。
敵部隊が通過する予定の場所に到着したボク達はL-ATVを見つからない様に路地に駐車して、持って来た荷物を持った。道路の両側に建物が建ち並ぶ市街地。ゲリラ戦を仕掛けるにはちょうど良い場所だ。
「それじゃ、また後で」
「おう!」
軽く拳同士をぶつけ合ってからナツキとボクは二手に分かれた。
ボク達が歓迎の準備を始めてから1時間を過ぎた。プーちゃんと、現着したビジちゃんからの偵察情報によると敵は予想通りの道を通ってそろそろここに来る頃だ。
「Serval2、準備は?」
《取り敢えず前菜として100は撃てるぞ》
「オーケー。敵を充分に引き付けるまで撃たないでよ?」
《自分はそんなに早漏じゃないっての》
「女の子がそんな下品な言葉使っちゃいけませんよ?」
《アンタも使ってたろ》
「え?マジ?」
《マジマジ。何週間か前に》
誰かに対してそんな会話した覚えがマジで無いんだけど。一番言いそうな相手はナツキだけども、ナツキともそう言う会話になった記憶がない。
「記憶に無いんだけど・・・え、ボクに存在しない記憶植え付けようとかしてないよな?」
《してねーよ。ほら、前に他チームとの合同演習の時に仲間のチームにキレて言ってたじゃん》
《2人ともお喋りはそこまでに。来たよ》
ユイからの通信を聞いて隠れている建物3階の窓からチラッと外の道路の方を見てみると、確かに奥の方からゾロゾロとやって来ていた。こっちに気がついている様子は無くて、傭兵達はまだ敵が攻撃して来るな?て思っていない様で特に警戒せずに喋りながら歩いている。
「敵部隊を目視。先生、始めて良いですか?」
《“うん、お願い”》
「了解。serval3、serval4に位置情報を送って。serval4は座標を確認した後に攻撃開始」
《 《了解》 》
《敵部隊座標、
アリナから敵の位置座標を教えてもらったユイは航空写真地図をタブレットで確認して、その座標の位置を地図に照らし合わせて敵の位置を確かめてグレネードランチャーの方向と射角を調整する。
《方位よーし、射角よーし、試射、撃ち方始めぇ!》
ユイがトリガーを引き、5発だけ40ミリグレネード弾が発射される。斜め上に発射されたグレネード弾は放物線を描いて敵部隊の中央に次々と着弾して行く。
《初弾命中。諸元そのまま、効力射》
《了解。効力射、撃ちぃ方ぁ始めぇ‼︎》
トリガーを長押しすると毎分400発の連射速度で40ミリグレネード弾が発射される。半径5m以内の人間を無力化させ、半径15m以内でもダメージを与える事ができる威力を持つ40ミリグレネード弾が雨の様に降り注いで来て、腹に響く爆発音が窓ガラスを揺らす。
窓から様子を伺うと、突然のグレネードランチャーの攻撃によって結構な人数が吹っ飛んで、傭兵部隊は慌てふためいている様子。でも流石戦いを生業にしている傭兵と言うべきなのか、正体不明の攻撃に対して直ぐに退避し始めた。こう言う時、慣れていない人はそのまま驚くだけで逃げるのが遅れてやられてしまうパターンなんだけどね。全員が別々の方向に逃げている様子は正に蜘蛛の子を散らす様。でも全員が散開して逃げたのは良い判断で、固まって動くよりも被害を抑えることが出来る。そして、逃げた傭兵達が行く先は当然、グレネードランチャーの攻撃が来ない建物の中になる。
《よーし、計画通り。敵は建物の中に入ったぜ》
「こっちでも確認した。3カウントでやるよ。3・・2・・1・・発破!」
《発破!》
カチッカチッと手に持っていた起爆装置のレバーを2回握り込む。すると、予め敵が逃げ込みそうな場所に仕掛けていた複数の、少量のC4をくっ付けた対戦車地雷が起爆する。元々はC4を仕掛けて吹っ飛ばそうとしたんだけど量が足りなくて、その対応としてアビドス高校の防衛用にと多めに持って来ていた対戦車地雷を使うことにした訳だけど、その威力は絶大だった。
さっきのグレネードランチャーの爆破とは比べ物にならない轟音と衝撃がボクの居る建物を揺らし、何処かでガラスが割れたり、物が落ちる音が聞こえて来た。遠隔起爆式対戦車地雷を仕掛けていた各建物の一階部分からは真っ黒な煙がもうもうと上がっている。
「Serval2、射撃開始」
《了解!》
ボクが隠れている建物の向かい側の建物の3階からナツキが乱射し始めた。ボクの方もserval-7式小銃を構えてセミオートで撃つ。フルオートで弾をばら撒いても良かったんだけど、連射速度の速さの割に装弾数が20発と少ないから直ぐに弾切れを起こすからセミオートを使う。対戦車地雷の爆発からなんとか逃げ延びた傭兵達が外に出たのを狙って撃つ。
一人一人正確に狙って撃って行くボクとは違ってナツキの方は弾切れを気にしない乱射で何人もの傭兵達を蜂の巣にして行く。
「いだっ⁉︎ちょ、どっからの攻撃⁉︎」
「爆破の次は銃撃⁉︎」
「上上!上から撃って来てる!」
流石、実戦慣れしているだけではあって混乱しつつも直ぐにこっちの位置を見つけて来た。だから2、3人無力化したら直ぐに別の部屋に移動してなるべくこっちの正確な位置を悟られないようにする。隣の部屋の窓際に来ると、同じ様に銃を構えてセミオートで撃つ。更に追加で手榴弾も投げて何人か爆発に巻き込ませる。
「serval3、serval4、敵を釘付けにする。敵が遮蔽物から出たら随時修正座標をserval3に報告」
《了解。修正座標、
《座標確認。修正する・・・・・修正完了。撃ち方始め!》
再び撃ち出されたグレネード弾達は室内から外に逃げて来た傭兵達の付近にに次々と着弾。ボクの近くに居た6人をまとめて吹き飛ばした。それからも同じ様に隠れていた所から少しでも姿を現すとグレネード弾を食らわせる戦法を続けた。するとグレネードランチャーの攻撃から逃げようとまた建物の中に入るしかなくなる。傭兵達がさっき爆発しなかった建物の中へと逃げて行くのを確認する。
「Serval2、2回目の用意を」
《準備よし!》
「また3カウントでやるよ。3・・2・・1・・発破!」
《発破!》
さっき使ったのとは別の起爆装置のレバーを2回握り込んで対戦車地雷を起爆する。また建物が地震が起きた時の様に揺れ、爆発音に紛れて「ぐわぁぁぁ⁉︎」って言う悲鳴も聞こえて来た。
計画通り!と何処ぞのデ◯ノートを持っている男の台詞を言いたくなるくらい予定通りに敵が動いてくれた。実はもう仕掛けた対戦車地雷は今ので全部なんだけど、敵は2回も攻撃を受けたんだから警戒する。でも外に出るとグレネードランチャーとボク達の攻撃を受ける。
こうなると敵は混乱して動けなくなる。逃げる先々で攻撃を受けるんだから、どうすれば良いんだよ⁉︎ってなっちゃうからね。実際、敵の様子を伺ってみると「あっちに逃げよ!」「いやあっちの方が良いって!」「そっちに行ったら砲撃で吹っ飛ばされるのがオチだって!」と言い合って居る傭兵達の姿も見える。その言い合っている奴らを撃ち倒してから更に別の部屋に移動する。
この調子で行けば敵部隊の半分程は倒せるかもしれないね。攻撃側が条件が整った防衛線を突破する為にはその3倍の戦力が必要になると言われている。つまり今ここで出来るだけ敵の数を減らせば減らす程、こっちと敵の人数差が少なくなればなる程、敵がこっちの防衛ラインを突破するのは難しくなる。更にこっちには先生も居る。
更に更に、これが僕がやっていたゲームと同じ歴史を辿るのなら、アルちゃんは傭兵達を雇ったは良いものの長時間雇えるほどの金額は出せていない。だから傭兵達の定時で戦闘をやめて帰ることになる。今の内に時間を稼いでおけば傭兵達の定時が迫ってこっちと直接戦闘する時間が無くなるって訳だね。
「これは一体どう言うことなのよ⁉︎」
待機させていた傭兵部隊を引き連れて、いざアビドスへ攻撃を仕掛けようと移動していた時に突然攻撃を受けたアルは、ひとまず隠れた車の陰でしゃがみながら叫ぶ。
別に楽に勝てる相手だとは少しも思っていなかったわよ。だからこそ有り金を全部使い果たす勢いで総勢65人の傭兵を雇った訳だし。それでもある程度の損害は覚悟していたけど、まさかアビドス高校に近づく前にこんな状況になるなんて⁉︎
「敵は正確にこっちの位置が分かっているみたいだね。多分、ドローンでずっとこっちを監視しているんだと思う」
「え、どこですか⁉︎」
周囲を警戒しながらカヨコがそう言うとハルカが空の方をキョロキョロと見回すが、そう簡単には見つからない。建物の3階から機関銃を撃って来ていた敵に対してトリックオアトリックで撃ち返していたムツキが「流石に見つかんないと思うよ〜?」とハルカに言って、ハルカはドローンを探すのを諦めた。
「まぁ今はドローンの位置よりもさっきから建物の3階から撃って来ている奴らと、砲撃が問題だね」
「だねぇ。あのちょこまか移動しながら撃って来ている連中、それなりに強そうだし。空からは砲撃が飛んで来るし、建物の中に逃げたら仕掛けた爆弾で吹き飛ばされるし」
「じゃ、じゃぁ逃げるしかないんですか?」
「ここまで来て逃げるなんて選択肢は無いわよ!大金を払って傭兵を雇ったのに何も出来ないまま逃げ出すなんて。それに、敵にやられてばっかりじゃ私のプライドが許さないわ!」
「ならなるべく早く解決方法を考えないと、今は時間を掛けれない。そもそも今回の攻撃は敵の不意を突いた襲撃の予定だった。だから時間が掛かれば掛かる程、敵はこっちを迎え撃つ準備が出来る。そうなって来るとこっちがどんどん不利になる」
「なら、先ずはあの撃ってくる連中倒さない?ちょこちょこ撃って来るくせにこっちが撃ち返そうとしたら直ぐに逃げてウザいし」
「だね。今の所対処法が殆どない砲撃と違ってアイツらなら今の戦力を使えば倒せる可能性はあるし」
「そう言うことなら社長の私が!」
敵なんて私が倒してやるわよ!とでも言いたげな自信に満ちた表情でアルが言ったが、直ぐにカヨコに止められた。
「いや、アル社長は私達の援護に回って。室内戦になるから社長は反対側の建物から室内にいる敵を狙って。室内には私とハルカとムツキ、そして傭兵達で入って戦う」
「具体的にはどうやって?」
「数で押す」
「へぇ〜いつも小難しいこと考えているカヨコっちにしては単純な作戦だね」
「今までの攻撃から考えるに敵の人数は2人。ただ、相当高度な訓練を受けたヤツ。だからタイマンで戦ったら最悪負けるかもだけど、逃走経路が限られる室内で大人数を相手にするのはヒナとかじゃない限り対応出来ないからね」
「外から狙撃するのは良いけど、砲撃されないかしら?」
「うん。だから開けた場所には行かないで、1箇所には絶対に止まらない様にして。この砲撃は多分、アビドス校舎から撃って来ているから撃ってからここに着弾するまでに数秒のラグがある。それに最初は迫撃砲かなと思ってたけど、迫撃砲にしては連射速度が早過ぎるし、1発辺りの威力が低い。だから敵が使っているのはフルオートのグレネードランチャーだと思う。それに同時に別々の所から傭兵が出て来た時に片方ずつ倒されているから、多分グレネードランチャーは一つしかない。そして、グレネードランチャーは大体秒速230メートルくらいで飛んで行くから、ここからアビドスまでの距離からざっと計算して発射してから着弾するまで約4秒。全力で走って逃げれば4秒の間に13メートルは移動出来ると思うからグレネードの直撃を受けることはなくなる」
「つまり砲撃の方は全力疾走すればギリギリ避けれるってこと?」
「そう言うこと。だから狙撃した後に直ぐに場所を移動すれば砲撃の直撃を受けることはなくなる」
「分かったわ。どうにかして窓際に誘導してくれたら私が敵の頭を撃ち抜いて見せるわ!」
「任せてください!アル様!」
「それじゃぁ先ずはあっちにいるアサルトライフルを使っている方を狙うよ。機関銃の方は最悪室内で弾幕を張られたら近づくのが難しくなるけどアサルトライフル相手ならそれは出来ないからね。それじゃぁ始めよっか」
「全員で協力して倒すわよ!今までやられた分、やり返さないと気が済まないわ!」
《serval2からserval1へ、そっちに大量の敵が行ったぞ》
まぁ攻撃を始めてから数分は過ぎているからね。敵さんも混乱から立ち直って反撃して来る頃だよね。
「こっちを先に潰しに来たかぁ。因みにこっちの援護出来そう?」
《んにぁ、悪いけど敵さんもちゃんとしててね。こっちにもある程度の人数が来てるっぽいからそれの対処で手一杯になるわ。でも人数的に考えてそっちを潰そうとしているのは確実だよ》
「了解。こっちでなんとか対処するよ。serval2は敵の対処をしつつL-ATVまで下がって撤退準備。最悪ボクのピックアップをお願い」
《オーケー。下で会おう》
ドタドタと言う足音が下から聞こえて来たからナツキとの通信はここまでにして撤退する準備をする。ただ、面倒なことにL-ATVの置いてある所の方向から足音が聞こえて来ている。つまり、車の置いてある場所に行くには敵と正面衝突するか、遠回りをして逃げるしかない。
「ここは遠回り一択でしょ・・・・・チッ。そう簡単には行かないか」
踵を返して遠回りルートで逃げようとしたら、反対側からも階段を登って来る複数の足音が聞こえて来た。完全に挟まれたね。なら激しい銃撃戦になるのは覚悟の上で最短ルートでL-ATVに向かう方が良いね!
敵がボクを挟み撃ちしようとしているからぐずぐずはしていられない。部屋から飛び出して廊下を走る。そして、廊下を走っている途中にあった階段から丁度登って来た傭兵とかち合った。
「居たぞっ!」
「おりゃぁ‼︎」
敵がアサルトライフルを構える前に、走って来ていた勢いを利用して飛び蹴りを食らわせる。
「ぐあっ!」
「ぎゃっ⁉︎」
「わわっ⁉︎」
飛び蹴りを食らった敵はそのままボクと一緒に下の踊り場まで落ちた。その際、他の傭兵達も落下して来たボク達に巻き込まれて一緒に踊り場まで落ちた。
「なっ⁉︎敵が落ちて来たぞ!」
いきなり大勢の味方と一緒に階段を転げ落ちて来たボクの姿に下の階にいた傭兵達が驚いていた。ボクは倒れた姿勢のままserval-7式小銃のセレクターレバーをフルオートに変更しつつ敵に照準を向けてトリガーを引いた。毎分700発の速度で6.8ミリ弾が目の前の傭兵に何発も当たり、そのまま階段を落ちて行く。更にボクは下の階に手榴弾を落とす。
「手榴弾だ!」
2階階から登って来ようとしていた敵は逃げるか、爆発に巻き込まれて階段を2階まで転げ落ちて行った。serval-7式小銃の残弾を一緒に踊り場まで落ちた敵に撃ち込んで、そしてリロードしながら階段を駆け上って3階まで戻る。ついでに下の階に向かってもう一個手榴弾を投げ込んでから廊下を走る。
「あ♪みーっけ!」
「ムツキ⁉︎」
なんと参考方向の廊下の曲がり角からムツキが現れた。そしてボクを見るなり大量の爆弾を投げて来た。あの見た目から察するにプラスチック爆弾っぽいけど、今はそんなことを考えている場合じゃない!あの量が爆発したらここら辺全部が吹っ飛ぶ!
「くっそ!」
流石にこのままもろに爆発を受けたら不味いから近くの部屋に飛び込んで退避する。が、数秒経っても爆発は起きなかった。
「お、お待ちしておりました!」
「やるよ!ハルカ!」
「げぇ⁉︎」
そしたら逃げた部屋の中にカヨコとハルカが待っていた。どうやら
上手いこと誘導されてしまったみたい。つまりあの爆弾はボクをここに誘き寄せる為のフェイクだったってこと?
カヨコとハルカはそれぞれ別の方向に走って銃を構える的を絞らせない様にする為と、纏めてやられない様にする為だね。こう言う時の対処法はどちらか片方に突撃すること!
狙うはハルカ!カヨコは普通に
「あぐっ⁉︎」
6.8ミリ弾の強力なストッピングパワーを食らって怯んだ隙にハルカに接近して彼女の持っていたショットガン、ブローアウェイの銃身を掴んで自分の脇の下に勢い良く引き寄せる。そして引っ張られたことで前のめりになったハルカの足を払って転倒させて、そしてショットガンを奪い取る。
「うぐっ⁉︎」
ハルカから奪ったショットガンを左手に持って、転倒したハルカの頭に至近距離から散弾を何発か食らわせて気絶させた。そして、カヨコに狙いを定めて撃つ。
このショットガンがポンプアクションじゃなくてセミオートで良かったよ。じゃ無いと片手で連射なんて出来ないからね。カヨコはボクの方に撃ち返しながら1発目、2発目を華麗な身のこなしでギリギリ避けていたけど3発目で被弾。ボクの方にもカヨコが撃った弾は当たっていたけど、9ミリ弾ではボクの着ている防弾チョッキを貫通させることは出来ない。
「くっ!」
でもカヨコはショットガンの散弾を食らいながらも何とか耐えてボクの方に接近して来た。ボクはハルカを押さえ込むのをやめて、ボクがServal-7式小銃を構えようとするけど接近して来たカヨコが蹴り上げてServal-7式小銃を部屋の奥の方まで吹っ飛ばした。
武器を無くしたボクの頭をカヨコは狙う。防弾チョッキを着ている胴体を狙わずに至近距離からヘッドショット狙いとはね!カヨコが引き金を引く直前に左手でカヨコが愛用しているデモンズロアの側面を叩いて照準をずらす。放たれた弾丸はボクの真横を通過して壁に穴を開けた。
カヨコはボクの腹に対して膝蹴りをして来た。咄嗟に手でガードして、更に防弾チョッキが衝撃をある程度和らげたお陰でボクのお腹にはダメージは入らなかった。逆に同じ様にボクもカヨコの腹に向かって膝蹴りをお見舞いようとしたけど、後ろに飛び退いて回避された。
でもそうやって回避行動をしてくれたらお陰でホルスターからserval-8式回転式拳銃を抜き出して構える時間を稼げた。お互いに拳銃を構え合って睨み合う。カヨコの綺麗なご尊顔を間近に見れるなんて眼福だなぁと場違いなことを思いつつ、話しかける
「どうも。さっきぶりですね」
「さっきのドローンとグレネードランチャーを使った攻撃はアビドスじゃなくて、
「ご名答。と言うことで改めて、初めまして。SRT特殊学園1年生部隊、SERVAL小隊に所属している
「まさかとは思ってたけど、やっぱりアビドスの仲間だったんだね。どう言う関係?わざわざ連邦生徒会がアビドスにSRTを派遣するとも思えないけど」
「まぁ正式な依頼で来た訳では無いですよ。ただ偶々出会って、ボクの個人的な考えでアビドスを助けたいと思って行動しているだけです」
「成る程ね。でもSRTの部隊を相手にするのは面倒だね」
「ボクとしてもこれ以上戦わなくて済むならそれが良いんだけど、引いてくれませんかね?」
「ウチの社長がやる気だからね。こんな所で引くわけには行かない」
知ってたけど引いてはくれないよね。ボクのSRTでの
ならどうするか。盤面を崩すしか無くね?とボクは思う訳だ。
「そうですか。分かりました。貴方とサシで勝負するのも面白そうですけど、今は時間も無いので強引に終わらせて貰いますね」
そう言ってボクはserval-8式回転式拳銃の引き金を引く。カヨコはそれに直ぐに反応して身を屈めて反撃しつつ倒れていたタンスの裏に隠れた。ボクは片手で撃ちながらもう片方の手でスモークグレネードを取り出して、安全ピンを全力で噛んでそして引き抜き、カヨコの方に投げつける。
途端にスモークグレネードから真っ白な煙が吹き出し、狭い室内にあっと言う間に充満する。視界が塞がれた今の内に蹴り飛ばされたServal-7式小銃を拾って、Serval-8式回転式拳銃を仕舞う。そして、アリナへ無線を繋ぎ、Serval-7式小銃でカヨコへ制圧射撃を加えながらナツキに指示を出す。
「serval1からserval4へ、ビジちゃんによる至急攻撃支援要請!状況が逼迫しているからナインラインは省略!ボクの位置は捉えてる?」
《捉えてる》
「そこから東に3メートル地点を狙って。デンジャークロスは気にしないで。使用火器、ヘルファイア1発!復唱はしなくて良いから準備出来次第撃って!」
デンジャークロスって言うのは砲撃や爆撃する場所の近くに味方がいる危険な状況のことを言う。今回はボクから3メートル先にミサイルを撃てって言っているんだからデンジャークロスもいいところだ。
《serval4
「了解。さて、今の会話聞こえていたでしょ?ボクと一緒に吹き飛ばされたく無かったらここで伸びているハルカさんを連れてさっさと逃げた方がいいと思いますよ‼︎」
ボクが撃つのをやめてそう言うと、カヨコの方も撃つのをやめた。煙幕でカヨコの姿は見えないけど、どうしようか考えているんだろう。
「分かった。ハルカを回収するから撃たないで」
「撃ちませんよ。後6秒だから急いで」
カヨコは煙の中から走って来ると、床の上で伸びたままのハルカを抱えて駆け出し部屋の外に飛び出して行った。その際、「ムツキ!逃げて‼︎」と言う叫び声が聞こえて来た。ボクもミサイルの爆発に備えて急いで伏せて両手で耳を塞ぐ。高度約4000メートルを飛ぶビジちゃんから発射されたヘルファイアミサイルは一気に加速して約マッハ1.3の速度で飛来して来る。地上にいる人からすると、シュンッ!って言う何かが高速で飛んで来た音が聞こえたかと思ったら次の瞬間には爆発が起きている感じ。
そして今回もそう。特に妨害されることもなくレーザーで誘導されたヘルファイアミサイルは無事、ボクが指示した通りの場所に着弾した。ヘルファイアミサイルが建物に当たると同時に約9キロの高性能爆薬が爆発。これだけの至近距離でヘルファイアの爆発を体験するのは初めてだけど、凄い爆音と振動がやって来た。
爆発と同時に部屋の壁が爆圧で吹き飛び、爆風で伏せていたボクも反対側の壁まで吹き飛ばされて背中を強打した。一瞬で爆煙が部屋の中を覆って視界が塞がる。そして、何処からともなく金属のひしゃげる嫌な音と、コンクリートが崩れ始める音が聞こえて来た。
「いてて・・・・やっべ!」
急いで立ち上がって廊下に出て走り始める。元々、複合装甲でガチガチに守られた主力戦車を一撃で吹き飛ばす為に作られたミサイルなだけあって、その威力も結構なもの。だからか対戦車地雷の爆発で弱っていた建物を崩すレベルの破壊を起こしてしまったみたい。
廊下や壁、天井にヒビが入って行き、そして建物の崩壊が始まった。まるで土砂崩れみたいに建物の一部が崩壊して沢山の傭兵達を巻き込んだ。
咄嗟に走って逃げたお陰でボクはギリギリ崩壊には巻き込まれずに済んだけど、全身爆風で吹っ飛んで銃弾並みの速度で飛んで来たコンクリートの破片が当たって痛いし、コンクリートの細かい破片を全身に浴びて汚れちゃった。自慢の長い髪の毛もコンクリート片まみれになっちゃったから後で洗うのが大変になりそう。
「ケホッ ケホッ・・・・凄いことになったな」
崩壊した建物の一部を見下ろしていると、L-ATVが何人か道路に居た傭兵達を轢きながらこっちに荒々しい運転でやって来た。
「Serval1!来い‼︎」
運転席側の窓が開いてナツキが大声でボクを呼んだ。ボクは崩壊して急勾配なスロープみたいになった建物の残骸の上を伝って若干滑りながら転ばない様に下に降りて行く。
「ぐっ⁉︎」
突然、胴体に強い衝撃が来てボクは転倒して瓦礫の上を転がり落ちた。
着弾と同時に聞こえて来た1発だけの発砲音と、この威力から察するにボクは狙撃されたんだって直ぐに分かった。
アリナの偵察では傭兵にはスナイパーの姿は見えなかった。と言うことはボクを撃った犯人は直ぐに分かる。視線を弾丸が飛んで来たであろう方向にServal-7式小銃を構えてスコープで確認してみると、向かい側の建物の屋上からワインレッド・アドマイアーを構えてこっちを狙っているアルが見えた。成る程、アルの姿がずっと見えないと思っていたら狙撃のチャンスを窺っていた訳だ。
「ごほっ、げほっ・・・Serval2っカバー!」
「言われんでも!」
既にL-ATVか降りていたナツキはL-ATVを盾にしつつアルの居る方向に撃ちまくる。
「逃すな!」
「あそこだ!撃てっ!」
ボクと同じ様に建物の崩壊に運良く巻き込まれなかった傭兵達がボクを撃とうと銃を構えたのを見て腹の痛みを堪えてServal-7式小銃を構えて撃つ。でも人数差でボクが1人倒している間に数人から銃撃を受けて肩や腹、足とか次々と被弾する。結構痛い。
「ぐっそっ!」
全員を相手にしていたらこっちがやられる。多少被弾するのを前提に走ってL-ATVに乗り込むしかないか!
《Serval1、2!伏せて!》
突然のアリナの通信。突然のことでなんで伏せなきゃならないのか全く分からなかったけど、アリナの言葉を信じて四の五の考える前に言われた通りに伏せる。
すると、何かが超高速でボクの頭上を通過する音がしたと同時に目の前の半壊した建物で大爆発が起きて、ボクはまた爆風で後ろに吹っ飛ばされた。ヘルファイアの攻撃だ。アリナがボクを助ける為に撃ったんだ。
ボクは吹っ飛ばされた勢いそのままに瓦礫を転げ落ちて、L-ATVの側に着いた。ボクは全身に痛みを感じながらドアを開けて後部座席に乗り込んだ。ナツキはボクが乗ったのを確認すると撃つのをやめて運転席に戻り、アクセルを踏み込んで急発進。その場でUターンしてアビドス高校へ全速力で撤退する。
「生きてるかー?」
「撃たれまくって爆風で吹っ飛ばされたりして全身痛いけど、大丈夫。プレートが無かったら危なかった」
ボク達SERVAL小隊が着ている防弾チョッキは最新鋭のリキッドアーマーと防弾プレートの二重構造になっていて、防弾チョッキとしては最高レベルのレベルIVの防弾性能を持っている。どんだけ凄い防弾性能かと言うと、15メートル先から飛んで来た7.62ミリ口径の徹甲弾だろうが完全に受け止める程の性能。だからそこら辺のチンピラが持っている様なアサルトライフルとかで撃たれても安心!
だけど、弾が当たった衝撃はある程度緩和されていると言ってもある訳で、特にアルが撃って来たみたいなフルサイズの弾丸だとその衝撃も強い。だから普通に痛い。
「Serval4ありがとうね。助かった」
《怪我は大丈夫?》
「防弾チョッキのお陰で何とか」
《良かった。でもごめんなさい。私の判断で残りのヘルファイア使っちゃった》
「別に良いよ。本当にいい判断だったし。ありがとうね」
《小隊長を助けれて良かった。その先に敵は居ないからそのまま撤退して大丈夫》
「了解。直ぐに戻るよ」
逃げるL-ATVに向かって何発も弾丸が飛んで来るけど、コイツの装甲なら重機関銃の徹甲弾で撃たれない限り貫通することはないからそのまま逃げ仰ることに成功した。
ナツキが車を飛ばしてくれたお陰で1分程でアビドス高校に戻ってこれた。出迎えてくれた対策委員会の人達、特にセリカやアヤネは全身汚れと傷まみれになったボクを見て驚いていた。
「ちょ、大丈夫ですか⁉︎」
「どうしたの⁉︎そんな全身傷だらけで・・・」
「いや〜ちょっと面倒な敵とかち合っちゃって、自爆覚悟の方法で何とか切り抜けて来た」
「じ、自爆⁉︎」
「大丈夫大丈夫。見た目の割に怪我は酷く無いから」
「前にユイちゃんが言ってたけど本当にリナちゃんって無茶しがちなんだねぇ」
「あははは・・・」
ホシノの話を聞いて、あーまたユイに無茶するなって怒られちゃうんだろうなぁと思って苦笑いする。
《はぁ〜。・・Serval1、色々と言いたいことがあるけど、任務が終わった後にね》
「・・了解。Serval3」
視線を上に向けて校舎の屋上の方を見るとジト目でこっちを見ているユイの姿が見えた。ボクは謝罪の意味を込めて手を合わせた。
「さて、SERVAL小隊と対策委員会の皆様。遅くても後20分程で敵がここに来ます。少なく見積もっても敵部隊の3分の1位の戦力は削れましたが、それでもこちらが数で劣勢なのは変わりません。でも全員で力を合わせて防衛すれば守り切ることは不可能は話ではありません。なので、全員頑張りましょう!」
「
「ん!」
「お〜!」
「はい!」
「やってやるわよ!」
「頑張りましょ〜!」
校門前で準備を整えて待っていると、便利屋68とボロボロになった傭兵達がやって来た。対策委員会は銃を構えて撃とうとしたけど、目の前に居るのが柴関ラーメンで仲良くなった相手だと分かり撃つのをやめた。ボクの方からもSERVAL小隊の皆んなに撃つのを一旦止める用に命令する。
「あれ・・・ラーメン屋の・・・・?」
ノノミにそう言われるとアルは誰が見ても分かるくらいに、バツの悪そうな顔をした。ボクは本編を見たことがあるから知っているけど、彼女も色々と悩んだ末に攻撃の命令を出した訳だもんね。
「誰かと思ったらあんた達だったのね‼︎ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず‼︎」
セリカからそう叫ばれると、アルは本当に申し訳無さそうな表情になる。やっぱりアウトロー向いてないよこの娘。そんなアルに変わってムツキが言い返す。
「あははは。その件はありがと。でもそれはそれ、これはこれ。こっちの仕事でさ。それに今まで散々好き勝手に撃って来た仕返しもしたいと思っているんだよね」
「悪いけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」
「・・・なるほど、その仕事ってこのことだったんだ」
「もう!学生なら、もっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」
「ちょ、アルバイトじゃないわよ⁉︎れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!」
「私は社長!
「はぁ・・社長、ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ・・」
ニッコニコで紹介するアルにカヨコがため息を吐く。まぁ普通敵に肩書きを紹介することなんてないよね。ハルカの方を見てみると、1人だけ紹介されていないハルカがそわそわしていた。このまま1人だけ省かれるのは可哀想だから指摘してあげよっと。
「あの〜そこの子の役職は?」
「ん・・?あ、ごめんなさいハルカ!この子は平社員よ!」
「えへへ・・」
自分も紹介されたのが余程嬉しかったのか、ニコニコしているハルカ。可愛いなぁ。喜ぶハルカの姿を微笑ましく思っていると、カヨコと目が合った。さっきは撤退するのに必死でカヨコ達の安否を確認出来なかったけど、全員無事で何よりだよ。
「どうも。また会いましたね。ご無事でなにより」
「さっきはどうも」
「それで、さっきの繰り返しになりますけど、ここで引いてくれませんか?一緒にラーメンを食べた仲ですから今引いてくれたら見逃しますよ?まだアビドス側の物や人員に被害らしい被害も出ていませんしね。それに少数精鋭の対策委員会と、高度な訓練を受けているSRTの小隊員を相手にするのは厳しいと思いますが」
ボクがSRTと言った瞬間、傭兵達がざわつき始めた。まぁそりゃそうなるよね。と言うか士気を低下させる為にわざと言った訳だし。傭兵隊からすると全校生徒が5人しかいない学校への攻撃って言う楽そうな仕事だと思っていたら、SRTの小隊と戦う事になるんだから少なくとも士気が上がることはない。
「それは無理な注文ね!依頼云々を抜きにしても、やられっぱなしは性に合わないわ」
多分、アルちゃんがこんな自信満々に啖呵を切っているのはSRTがどんな組織なのか分かっていないから何だろうなぁ。
「誰の差し金・・・?って、言えるわけ無いか。力ずくで口を割らせるしか」
銃を構えて戦闘態勢に入るシロコ。他の対策委員会のメンバーも同じ様にいつでも戦える様に準備する。
「ふふふ、それは勿論、企業秘密よ?」
交渉は決裂。ぶっちゃけ便利屋の皆んなとは戦いたくはないけど、さっきカヨコが言っていた様に公私はハッキリしないとね。それに、カヨコ達とはさっき戦っちゃったし、一SRTの生徒としてちゃんと戦って勝ちたいし。だから今からやる戦法も卑怯とは言うまいね。
「serval3、shoot」
「っ⁉︎社長ッ‼︎」
「へっ?」
ボクの発した言葉からやろうとした事に気がついたのか、それともアルを狙うユイの存在に気がついたのかは分からないけど、カヨコはボクがユイに命令した直後に叫びながらアルを突き飛ばした。
アルの左側頭部を23ミリ弾が掠めて、後ろの地面に着弾して小さな爆発を起こして地面に小さなクレーターを使った。ユイの狙いは悪くなったけど、カヨコがアルを突き飛ばしたことで射線からズレてしまったね。
「許さない許さない許さない許さない‼︎よくもアル様をォォ‼︎」
「ダメよ!戻ってハルカ!」
「まぁそりゃ怒ってこっち来るよね」
アルが撃たれたことでハルカは大激怒。アルの制止も聞かずにボクの方に向かってショットガンを構えた全速力で突っ込んで来た。その表情は女の子がしない方が良い顔をしてる。serval-7式小銃を構えてハルカの胴体に狙いを定めたフルオートで撃つ。
「あがっ、ご、ぐっ⁉︎ごはっ!」
ただ真っ直ぐに突っ込んで来るヤツほど狙い易い的もない。互いの距離が近かったこともあり、全弾がハルカの腹に命中した。超強烈な腹パンを食らった様なものだから流石のハルカも唾を垂れ流しながら咳き込んで、その場にしゃがみ込む。トドメを刺して無力化しようとしたけど、ムツキがこっちに向かって軽機関銃を乱射して来たから隠れるしかなくなり、その隙にカヨコに回収されてしまった。
それが開戦の合図となって、便利屋68&傭兵部隊VS対策委員会&SERVAL小隊の本格的な銃撃戦になった。遮蔽物に隠れて銃撃をやり過ごしていると、ホシノが撃ちながらやって来て隣に隠れた。
「いやぁ、リナちゃん容赦無いね〜。まさか交渉が決裂した途端に敵の指揮官を狙いに行くとなんて」
「避けられちゃいましたけどね」
「でもお陰様で場が乱れたから戦い易くなったよ」
そう言っているホシノはジッと目の前の傭兵部隊の方を見据えていた。あー多分、ホシノの戦い方から考えて敵中に突っ込んで更に掻き乱そうとか考えているのかも。そして、そのホシノの考えを感じ取っていたのはボクだけじゃ無かった。ボク以上に人の動きをよく見ている大人の人が後ろに居る。
“ノノミ、ナツキ。前方に弾をばら撒いて敵を牽制して。ホシノ、その間に敵に突っ込んで引っ掻き回して。でも無理は禁物だよ。危なくなったら直ぐに引いて。ユイとリナは敵に突っ込むホシノを狙う敵を倒して„
「「「《「了解!」》」」」
「全弾発射~!」
「フルファイア!」
ノノミがリトルマシンガンⅤを、ナツキがserval-4式軽機関銃を敵の居る方向へばら撒く。2丁のミニガンと軽機関銃の猛烈な銃撃で敵は思わず物陰に隠れた。そうして敵からの銃撃が弱まった瞬間、ホシノは身を隠していた物陰から飛び出して敵の隠れている方へ走って行った。
走って来るホシノに気がついた敵の1人がホシノを撃とうとしたから、それを撃とうとserval-7式小銃を構えると、引き金を引く前に敵の頭に弾丸が当たって敵は倒れた。射角的にユイが撃ったので間違いない。
「ユイちゃんナイスショット〜」
ホシノもそれは分かったみたいでお礼を言いながら敵陣に突っ込んだ。傭兵は文字通り飛び込んで来たホシノを撃ったけど、ホシノは盾を構えていたから全弾防がれた。ホシノは飛び込んだ勢いのまま盾を構えて敵にタックル。転倒した傭兵の頭に至近距離からショットガンを食らわせて一撃で意識を奪った。
ホシノの後ろに居た傭兵の1人が背後からホシノを撃とうとしたけど、ホシノはノールックでショットガンを後ろに構えて傭兵を撃った。散弾を至近距離で胴体に食らった傭兵は、続け様に3発食らって倒れて動かなくなった。
「このっ!」
「おりゃぁ!」
また別の傭兵2人が左右からホシノを挟撃しようと銃を構えて撃つ。ホシノはしゃがんで2人の弾を回避する。2人の傭兵は対角線上に居たせいで、ホシノが避けたことで互いに撃った弾丸がお互いに命中した。そうして2人が怯んだ隙に、ホシノは先ず右側の敵の方にフリスビーを投げる様にして盾を投げ飛ばして傭兵の頭に当てた。そうして怯んでいる隙にもう1人の傭兵に腹に2発と頭に1発ショットガンを食らわせて無力化。
直ぐに盾を当てて転倒していた傭兵の元に駆け寄って、頭に撃ち込んで丁度弾切れになった。すると弾切れになったことに気がついたショットガンを持った傭兵の1人が今ならと思ったみたいで攻撃を仕掛ける。ホシノは盾を拾って銃弾を防ぎ、傭兵がポンプアクションしている隙にまた盾をフリスビーの様に投げて、傭兵の首に命中させた。思わず首を押さえた隙にホシノは一気に接近して、咳き込みながらも反撃しようとしていた傭兵に弾切れになったショットガンをバットの様に振りかぶって側頭部を思いっきり殴った。そして拾い上げた盾をまた傭兵の首に牙突みたいな感じでぶち込んで、そのまま倒れた傭兵を起き上がれない様に首に当てた盾を更に首に押し付ける。
「こゅ・・か・・こはっ・・・ぁ・・う・・・」
勿論そんなとされたら幾らキヴォトス人と言えど呼吸が出来なくなる。首を抑えられた傭兵はなんとか首を圧迫している盾をどかそうとしているのか、必死に盾の表面を掻きむしっている。
そんな傭兵のことなんて気にせずにホシノは、周囲を警戒しながらショットガンに2発づつ弾を入れていくクワッドリロードで体感3秒も経たない内にショットガンのリロードを終えて、やっと首を押さえていた盾を退かした。
「ごほっ!ゲホッゲホッ!ごf」ダァン!
咳き込む傭兵の頭にホシノは容赦無く弾を撃ち込んで無力化してしまった。
「ん?」
足元に手榴弾が転がって来たのにホシノが気がついて下を見た瞬間、爆発した。
「どーだ!見たかこの野郎!」
手榴弾を投げた犯人と思われる傭兵の1人がガッツポーズをしていたけど、次の瞬間、その頭に爆煙の中から飛んで来た散弾を食らって後ろにのけ反ったけど、なんとか倒れずに踏ん張った。お返しにともう一個手榴弾を投げようとピンを抜いて投げた瞬間、ホシノが盾を構えて傭兵にタックルして、転んだ傭兵を地面と盾でサンドした。更に傭兵にとっては最悪な事に自身が投げた手榴弾が自分と盾の間にサンドされていた。
「ちょ、このっ!どけっ!」
なんとか手榴弾を遠くに投げ飛ばそうとしたけど、盾を抑えるホシノの力に敵わず、ジタバタしている間にゼロ距離で手榴弾が爆発した。爆煙の中から出て来たホシノは、側面からの銃撃を盾でガードしつつ、反対方向にいた敵を撃って倒し、盾を振り上げてもう片方に居た傭兵が持っていたアサルトライフルを吹き飛ばして、無防備な腹にショットガンを何発も食らわせて無力化した。
盾を立ててそこに隠れて、敵の銃撃を防ぎつつクイックリロードで素早くリロードを終わらせて盾を持つと、盾の裏に隠れているホシノを倒そうと近づいて来た傭兵が持っていたアサルトライフルの銃身を掴んで引き寄せる。
「わっ⁉︎」
引っ張られた傭兵は前のめりになり、そしてホシノは無防備な下顎にショットガンの銃口を突き付けて撃った。強烈なアッパーを食らった様な状態になった傭兵はそのまま倒れた。
《・・ホシノって結構エゲツない戦い方するね・・・・》
一部始終を見ていたユイがドン引きした様子でボクに話しかけて来た。ボクもドン引きしている。確かにホシノは敵には容赦や無い戦い方をするって言うのは知っていたけど、まさかここまでとはね。
《普段うへうへ言って眠たげにしている姿からは想像出来ないね》
アリナもドローンからホシノの戦いっぷりを見ていたみたいだ。ホシノが大暴れしてくれているお陰様で敵陣は混乱状態。でも、流石に数の差があり過ぎてホシノの攻撃が及んでいない箇所もある。そこら辺をボクは攻撃して行く。
《serval1、11時方向の敵が側面から回り込もうとしてる》
「了解。対処する」
アリナの言われた方向を見てみると、中央で派手にドンパチ撃ち合って注意が向いている間に、こっちの側面に回り込もうとしている集団がいた。数は5人だけだからボク1人で充分に対応出来る。場所を移動してからserval-7式小銃を構えて狙いを定めてセミオートで撃つ。1人目が倒されると、残り4人が一斉に撃ち返して来た。すかさず身を潜めて銃撃をやり過ごす。
ゴーグルを操作してスコープの映像をゴーグルに投影出来る様にして、銃だけを物陰から出して撃ち返してまた1人倒す。銃だけを出して正確に撃ち返して来るとは傭兵の方は思っていなかった様で、頭に食らって倒れた味方とこっちを交互に見て驚いている。でもこっちが正確に撃ち返して来ると分かると、敵は直ぐに物陰に隠れた。
「そうやって固まって隠れない方が良いよ」
こうして纏めて吹き飛ばされるからね。ポーチから手榴弾を取り出して、安全ピンを引き抜いてから敵の隠れている所に投げ込んだ。
「手榴弾だ!」
「逃げろー!」
「ちょ、まっ!」
狙い通り敵が隠れていた物陰の裏に転がった手榴弾は直ぐに爆発。先に手榴弾の存在に気がついた傭兵はギリギリ爆発と破片を食らわずに済んでいたけど、残り2人は逃げ遅れて意識を失っていた。手榴弾から逃げ延びた残り1人もボクがserval-7式小銃で胴体と頭に食らわせて倒した。
“リナ、そのまま敵の側面に回り込んで攻撃して。今そこは手薄だから簡単に回り込めると思うから。ある程度引っ掻き回したら戻って来て”
「了解」
《無茶し過ぎない様にね》
「分かってるよ。serval3」
なるべく目立たない様に中腰の姿勢で移動して行く。中央で戦っているホシノはどうしているかなって思ってるチラッと見てみると傭兵の1人を蹴っ飛ばしつつ別方向に居た敵をショットガンで倒している最中だった。ホント、アクロバティックな戦い方をするね。ちょっと憧れるな。
周囲を警戒しながら進んで行くけど、先生の言う通りここは手薄みたいで特に敵から攻撃を受けることもなく、あっさりと横に回り込めてしまった。ボクの存在に気づかずにこっちに横っ腹を見せている傭兵達に対してserval-7式小銃と手榴弾を使って攻撃を仕掛ける。
手榴弾が爆発して、3人ほど吹き飛ばしたのを確認してからserval-7式小銃をフルオートで撃って更にその奥に居た傭兵も倒して行く。敵の反撃が来ると直ぐに物陰に隠れる。そんな感じで撃ち合っていると突然後ろから叫び声が聞こえて来た。
「よくもアル様をぉ‼︎死んで下さい‼︎」
「おろ?」
いつの間に回り込んで来てたのか、ハルカがボクの後ろからショットガンを撃ちながら突っ込んで来た。ドローンで監視していたアリナや先生、アヤネから何の報告も無かったってことは上手く物陰に隠れながら近づいて来たのかな?
反射的にボクは転がってショットガンの攻撃を回避。そしてserval-7式小銃を構えてフルオートで撃ち返えす。残弾が少なかったから10発程しか撃ちなかったけど、その殆ど全弾がハルカに命中した。
「ぐふっ・・・・うわあぁぁぁぁ‼︎」
「えぇ⁉︎」
でも怒りの力なのか、ハルカは怯みつつもこっちに突っ込んで来た。足は止まるだろうと思ってたボクは驚いた。しかもその驚いている隙にショットガンを1発右肩に食らってしまった。続け様に左足と腹部にも食らって痛みで思わず膝を突いてしまう。更に撃ち込まれるか前に痛む身体に鞭打って頑張って立ち上がって突っ込んで来たハルカの持っていたショットガンの銃身辺りを握って、明後日の方向に銃口をずらす。
そしてショットガンを握ったままハルカの腹を思いっきり蹴りを入れる。何度も6.8ミリ弾を腹に至近距離から食らっているから更に全力の蹴りを入れられたら流石に効くでしょ。
「ぐうっ!」
そしてやっぱり痛むらしく、ハルカが苦痛に顔を歪めたいた。そして、その痛みからショットガンを持つ力が弱まった隙にボクがハルカのショットガンを奪って残りの弾をハルカの腹と頭に撃ち込んだ。流石に至近距離で複数の6.8ミリ弾とショットガンの12ゲージ弾を食らい続けたハルカは膝から崩れ落ちて動かなくなった。
一度近くにあった路駐してあった車の陰に隠れてServal-7式小銃のリロードをしながら息を整える。まさかこんな短時間の内に2回もハルカの相手をすることになるとはね。そんで、2回ともハルカからショットガンを奪って戦ってるし。
《Serval1、2時方向から敵部隊増援接近中》
「了解。こっちでも目視した」
パッと見る感じ人数はそんなに多くはないからそんなに脅威では無いね。
《こちらserval3、援護する》
「別にあれくらいの増援なら1人で対処できるけど?」
《何度そう言ってやられて来たのやら。いつも通りそっちの動きに合わせるから》
「了解」
“リナ、1人で大丈夫?”
「大丈夫ですよ、先生。それに
チラッと物陰から傭兵部隊の様子を伺う。するとボクの姿を確認するなり撃ちまくって来た。1番先頭との距離は20メートルもない。
「Serval3、先頭の奴を」
《了解》
ボクが指示してから数秒後、相変わらずボクの方を撃ちまくって来ていた傭兵達の先頭の一人が側頭部に23ミリ弾を叩き込まれて横に吹っ飛んで行った。突然横に吹っ飛んで倒れて動かなくなった仲間の姿に、他の傭兵達が驚き一瞬動きが止まる。
「っし!やるか!」
先生や対策委員会の皆んなも見て居るんだから、ホシノに負けない大立ち回りを見せてやろうじゃないか!そう心の中で決めたボクはServal-7式小銃を構えて物陰から飛び出す。
敵が突然の狙撃で呆気に取られている隙に一気に距離を詰める。すると流石にボクの存在に気がついた傭兵の1人がこっちにショットガンの銃口を向けて来た。
「くっ!」
咄嗟にスライディングして銃撃を避ける。そしてスライディングしながら胴体から頭にかけて弾丸をフルオートで撃ち込んで敵を無力化する。
「あっぶね〜、っと!」
ギリギリ弾を避けれたことに安心していると、直ぐに別の敵がサブマシンガンを持った傭兵がこっちを撃とうとして来たから左手で敵の銃を掴んで、そして右手に持ったserval-7式小銃で敵の腹に弾丸を浴びせた。
「ごはっ⁉︎」
死角からボクを撃とうとしていた敵が居たみたいだけど、ユイがserval-23式対物狙撃銃で傭兵の脇を撃って、傭兵はそのまま吹っ飛んだ。ユイにお礼を言いたいところだけど、今は目の前に居る傭兵の相手に忙しいから後にする。
中学の頃から困って居る人を助ける為に散々1対多数をして来た経験から学んだのは、状況によっては敵集団のど真ん中に突っ込むのも有効だってこと。突っ込んで来た敵に驚いて統制が乱れ、連携が出来なくなった敵はバラバラに反撃して来ようとする。
更に相手は手が届くレベルの至近距離での相手は慣れていない人が多いから、
「このっ!」
「遅い!」
傭兵の1人がアサルトライフルを構えて撃とうとして来るけど、動きが遅い。懐に潜り込んで腹に銃口を押し付けて撃つ。
「がふっ⁉︎」
腹に何発も撃ち込まれて倒れようとする傭兵の後ろ襟を左手で掴んで、持ち上げて肉盾にする。
「ほらほら!仲間に当たっても良いなら撃って来れば?」
「くそっ!仲間を盾にしやがって!」
「卑怯だぞ!」
「卑怯もラッキョウもあるかよ!っ、後ろ!」
ボクの背後から撃って来ようとして来る敵の存在に気がついたから、振り返りつつ右手に持ったserval-7式小銃を構えて撃つ!後ろの敵は倒せたけど、今の射撃でserval-7式小銃の弾切れになってしまった。
左手は肉盾を持っていて塞がっているからserval-7式小銃を太ももに挟んでマガジンを交換する。リロードの間に正面の敵が近づいて来ていたから肉盾の肩にserval-7式小銃を置いて支えにしつつ撃つ。
「ごめん!」
流石に撃たれっぱなしはダメだと思った様で謝りつつ撃ち返して来た。でも弾丸はボクには当たらず肉盾にしている傭兵に当たってしまう。ボクはなるべく敵に姿を現さない様にしながら撃ち返す。やっぱり仲間を撃つのは気が引ける様で、撃っては来るけどその攻撃は控えめ。
《serval4からserval1へ、
アリナからの報告を聞いてチラッと後ろを見てみると、確かに回り込んでボクを撃とうとしている傭兵の1人が居た。でも、銃を構えようとする前に、大口径弾が頭に直撃してそのまま横に吹っ飛んで行った。ユイの援護射撃だ。背後の処理はユイに任せてボクは前方に居る残り3人の傭兵の相手に専念する。
敵はこのまま撃ち合うのは難しいと判断したみたいで、撃ちながらこっちに近づいて来た。こっちとしては近づいて来てくれるのは有り難い。ある程度まで敵が近づいて来てから、肉盾にしていた傭兵の上着のポケットに安全ピンを外した手榴弾を入れてから敵の方に蹴飛ばした。
「うわっ⁉︎」
敵は突然吹っ飛ばされて来た仲間を咄嗟に受け止める。そして、その数秒後に仲良く爆発に巻き込まれた。これで残り2人。仲間が爆発したことに2人が驚いたいる隙に1人に狙いを定めてフルオートで撃って倒す。そして、残り1人がサブマシンガンを構えて撃つよりも早くボクが撃って倒した。
近くの物陰に隠れてserval-7式小銃のリロードをしつつ、状況を把握する為にアリナに聞く。
「serval1からserval4へ、状況は?」
《ホシノさんとserval1が大暴れしたお陰で敵の両翼は崩壊状態。中央はまだ戦力は結構残ってて、serval3と対策委員会が交戦中。それと、陸八魔アルがserval3を狙い始めた》
ボクよりも先に、ボクを援護している腕の良いスナイパーを先に排除すべきって判断したのかな。
「了解。serval3はそのままアルを狙って。倒せなくても良いから押さえ込んで」
《最初からそのつもり!スナイパーとして負けられないねっ!》
“リナ、ホシノ。こっちに戻って来て。2人が強いのは分かってるけど、そのまま中央に殴り込むのは流石に人数不利だから。今なら両翼は崩壊している状態だから追撃されたりすることも無いと思うから”
「了解。下がります」
「おじさんもそろそろ疲れて来た所だったから下がるね〜」
ホシノは先生に言われた通り敵の追撃が来ない内にそそくさと撤収して行くのが遠目に見えた。ボクもさっさと撤退しようと思って走り出そうとした時に、アリナからの通信が来た。
《serval1右方向から増援!》
その声の焦り具合から結構近くに敵が居るか、ボクを直ぐにでも撃とうとしている状況なんだなと予想が付いた。スコープの映像をゴーグルに投影させて、右方向の索敵をしてみると、傭兵5人がこっちに向かって来ていた。ついでに銃弾も飛んで来る。
「孤立したボクを倒すつもり?」
今ボクが撤退してしまえば、便利屋達はボクを倒すのは難しくなる。なら、撤退する前のほとんど孤立している状態のボクを倒してしちゃおうってことなんだろうね。でも5人だけなら問題ないかな。さっき戦ってみた感じ傭兵1人1人はそんなに強くないからまぁ何とかなると思うけど、あんまり時間はかけない方が良いだろうね。敵に囲まれたりしたら流石のボクでも負けるしね。
「すいません先生。今すぐ撤退するのは難しそうです。ボクを倒そうって考えている人達が来ちゃったので」
“分かった。今は他に手が空いている人がいないから悪いけど援護は出来ないんだよね。1人で大丈夫そう?”
「敵の数はそんなに多くないので、なんとかなると思います」
“ごめんね。無茶だけはしない様に”
「了解」
ユイと同じ様なことを言うな〜とか考えつつ先生に返事をしたボクはserval-7式小銃を構えて遮蔽物から飛び出して、直ぐに傭兵1人を狙って撃って倒す。更にそのまま銃口を横に移動させながら、隣の傭兵に狙いが定まった所で引き金を引く。1マガジン分、全弾を撃ち尽くして一気に3人の傭兵を倒した。
残りの傭兵達の方に手榴弾を投げて時間稼ぎをしつつ、遮蔽物に隠れてリロードをしようと空になったマガジンを抜いた時、後ろから誰かが接近して来ているのに気配と足音で気がついた。にしても嫌なタイミング。いや、このタイミングを狙ってた?この感じだと結構近くまで接近を許しちゃったからリロードをする暇は無いね。
「おらっ!」
振り返り様にserval-7式小銃を敵の居るであろう方向に投げる。投げながら敵の姿を確認してみると、そこに居たのは拳銃のデモンズロアを構えてこっちに向かって来ていたカヨコだった。顔面に向かって飛んで来たserval-7式小銃を反射的に腕でガードする隙に、ボクはホルスターからserval-8式回転式拳銃を取り出して構える。
ボクの後ろでさっき投げた手榴弾が爆発するけど今はそれは気にしていられない。
serval-8式回転式拳銃を構えてカヨコを狙おうとしたけど、ボクが構えた瞬間にさっきボクがしたみたいにスライディングして射線から逃げた。ボクは撃つのをやめて反射的に後ろにのけ反ると、鼻先を弾丸が数発掠めて行った。
「あっぶな⁉︎」
カヨコの足首の辺りを狙って自分の足で払う。カヨコは足を払われて転倒するけど、上手く受け身を取って仰向けの状態で撃って来た。.40S&W弾が3、4発胴体に命中するけどライフル弾だって防げるこの防弾チョッキを貫通させることは出来ない。
「チッ、やっぱり硬いね」
「40口径じゃ絶対に抜けなっ⁉︎」
ボクが喋っている間にカヨコはボクも転倒させようと足払いして来た。ボクはそれを後ろに飛び退いて回避する。お返しにボクも3発撃ち返すけどカヨコはボクが撃つよりも前に横に転がって駐車してあった車に隠れていた。ボクもカヨコが隠れた車の前に駐車してあった銃撃で壊れた車に隠れる。
「喋っている間に撃つなんて酷く無い?」
「手加減しない方が良い相手だからね」
「お、そんなにボクの評価が高いのは嬉しいね。毎日厳しい訓練を頑張って受けて来た甲斐があるよ」
喋りながらメインウェポンのserval-7式小銃の落ちている場所を確認する。今カヨコいる車から斜め右辺り。ボクからの距離は多めに見積もって1メートル前後。拾いに行くにはカヨコが邪魔だし、このリボルバーで戦うことになりそうだね。拳銃同士の撃ち合いって合うのもなかなか無いから面白そう。
「にしても、傭兵達を囮にして後ろに回り込んで来るなんてね。ビックリしたよ。それに気配を消して近づくのも上手かったし、そっちもなかなかナメれない相手だね」
カヨコがどれくらいの実力を持っているのかちょっとしか戦っていないボクはその全容を知らないけど、今までの傭兵みたいに楽に勝てる訳ないって言うのは充分に分かる。でもブルアカで人気のあるネームドキャラとサシで勝負出来るのは個人的にちょっと嬉しくもある。
「さぁて、さっきは撤退する為に自爆覚悟の爆撃をしましたけど、今度は正々堂々戦いましょうか!鬼方カヨコさん!」
そう言ってボクは車から飛び出して銃を構えた。
本来このアビドス防衛戦は上・中・下の3部作にするつもりだったんですが、上・中を分けずに合体した結果が今回の35000字と言う大ボリュームになった原因ですねw
今回どうしても書きたかったシーンが2つありまして、1つがドローンとグレネードランチャーを使った遠距離攻撃シーンでもう一つがホシノの近接戦闘シーンですね。特にホシノの戦闘シーンは私のホシノはこんな風に戦って欲しい!と言う願望を込めて書きました。
そして、今回2回もリナに銃を奪われて倒されたハルカちゃん。別にハルカちゃんが嫌いな訳でなく、近接戦闘が得意と思われるハルカとカヨコで比べたらカヨコの方が強そうだよなぁと思って今回被害担当になって貰いました。ごめんね。ハルカちゃん。
それと、前から言っていたSERVAL小隊のキャラ紹介を書くという話ですが、それに合わせて主人公のリナのイラストを現在絵師さんに頼んで描いてもらっています。本当だったらSERVAL小隊全員分を描いて貰いたいんですが、それをやろうとしたら私の貯金が底を尽くのでリナだけですね。完成をお楽しみに!
それでは、今回新たに登場した武器や装備品の解説をしますね。
・
アリナがアルちゃん率いる傭兵部隊の偵察と着弾観測に使用した無人航空機。元ネタはPuma LEと言う名前のドローンで、作中でもリナが言っていた様に簡単に分解と組み立てが出来る様になっています。更に離陸も簡単で、専用の機材は必要とせずに紙飛行機みたいに手で投げて飛ばせます。なので描写はしませんでしたが、ナツキが投げて飛ばしています。
ドローン自体の性能も良くて、大容量バッテリーを使えば6時間以上よ飛行が可能。カメラも最大6倍ズーム機能と赤外線機能付きのカメラもあるので昼夜関係なく偵察活動が可能です。
・40式フルオートグレネードランチャー
ユイが傭兵隊を吹き飛ばす為にプーちゃんの支援を受けつつ使用したフルオートグレネードランチャー。元ネタはAGS-40と言うロシアで開発されたグレネードランチャーです。毎分400発の速度で連射して撃つことが出来て、短バースト(5発)と長バースト(10発)の2つを選んで撃ちます。有効射程は2.5キロにもなり、敵歩兵部隊に対して一方的にグレネードランチャーの雨を降らせることが出来る武器になっています。現実でも作中の様な簡易的な迫撃砲の様な運用方法で戦っていますね。これを登場させるに至ったきっかけは、元々は迫撃砲を使う予定だったんですが、それだとありきたりなので何か珍しい物を使いたいなと思ってこれにしました。
・serval--338式汎用機関銃
今回ナツキが持って来て使用した新型機関銃。元ネタはアメリカの特殊部隊用に開発されたREAPRと言う名前の汎用機関銃で、1キロ先の目標を狙撃する為に作られた.338ノルママグナム弾を使用します。なので、この機関銃の有効射程は1.5キロにもなり、重機関銃並みの射程を持っています。銃の全長は約1.4メートルと長いので取り回しはそんなに良く無いですが、その長い射程を生かした遠距離戦を得意とする銃ですね。個人的に近代的で、細長い見た目が好きな機関銃です。
・ヘルファイアミサイル
ビジちゃんに2つ搭載されて、傭兵部隊に対して使用された空対地ミサイル。元ネタはアメリカを中心に西側諸国で使われているAGM-114ヘルファイア。創作で空対地ミサイルを登場させたい時に困ったらこれ選んどけって感じのポピュラーなヤツですね。ポピュラーだから平凡な性能だろって思う人もいるかもですが、結構高性能なミサイルでマッハ1.3で飛翔し、射程は8キロと長く、1メートルの誤差で命中する優れ物です。
対策委員会3章でカイザーがホシノに対して使っていましたね。効いていませんでしたけど。でもアレはホシノがヤバいのであって、ヘルファイアが弱い訳ではないですからね?主力戦車だって一撃で破壊する威力があるんですから。
・SERVAL小隊正式装備防弾チョッキ
今回先生に渡したり、撃たれまくったリナを守ってくれた高性能な防弾チョッキ。これに関しては明確な元ネタがある訳でははいですね。作中で言及したリキッドアーマーと言うのは皆んな大好きダイラタンシー現象を利用した防弾チョッキで、現在アメリカやイギリスなどで研究中の物で、上手くいけば軽量で高い防弾性能を誇る物が出来るんじゃないかと期待されている物ですね。
それでは、ご感想などありましたらお気軽に書いていってください。今回も最後まで読んで下さった皆様、本当に有難うございます!