偽典・女神転生 幻想郷黙示録   作:キャスディOTP

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邪教の館in幻想郷

常世国もかくやといった荘厳な造りの宮殿

 

豪華絢爛な天門や前殿の屋根には数体の龍や鳳凰といった大陸系の霊獣が施されており、多神教ならではの三清道祖、南斗星君、北斗星君、四聖大元帥等の幾多の神々を祀る像も各所にある

 

前殿前の広場には仙人志望の道教の信者たちが太極拳に興じており、そんな修行に励んでいる老若男女を横目に隠岐奈とイホリは奥の本殿へと向かっていく

 

ここは蘇った聖徳王、豊聡耳神子が創造した仙界、神霊廟。道教修行用の道場施設兼、神子に従えている豪族や信者たちの住居でもあり本来は勝手に入ってはいけない場所なのだが…

 

「あのー摩多羅神様。特に断りもなく戸から侵入してよかったんですかね。どうみても関係者以外お断りの場所に見えるんですが」

「ん?許可は得ているぞ。仙人は仙人でも邪仙だがな」

「ダメじゃないですか!せめて普通に参拝してからにしましょうよ」

「太子の関係者である事実は変わらないから大丈夫だ」

 

イホリの不安もどこ吹く風で隠岐奈は慣れた様子で、車いす姿のまま浮きながら本殿へと入っていく。怖気づきながらもイホリは前殿よりさらに鮮麗で、豪華な本殿の境内へと進んだ。薄闇の中で四神の絵や装飾、さながらブラックホールのような太極天井が迎えてくれる

 

「この奥だ」

 

隠岐奈の言葉通り、本殿の更に奥、何の灯もない誰も寄り付かないような場所にそれはあった

 

「これは?」

「太歳殷元帥。俗にいう太歳星君の絵だな。隠し扉があるからそこの神杯を陽を上にして揃えてから押すんだ」

「ただのナマズにしか見えない…。神杯ってポエ占いのやつか、初めてやるぞこんなの」

 

ぼやきながら神杯の陰と陽をそろえるとカチっという音がして扉が開いた。中は埃と黴の匂いで満たされた広大な空間が広がっており、怪しい青白い光がその場所を幽かに照らしている

 

「ここは…」

 

イホリが言葉を放とうとした瞬間、突如異音がしてその部屋の壁面に大穴が開く。何事かと目を見開くと、中から乙姫のような髪型をした妖艶な美女が現れた

 

「もう来てましたのね。河勝様ったらずいぶんお早いお到着で、お化粧の準備もさせてくれないんですもの」

「私の能力は知っているだろう。太子の仙界もすでに後戸には登録済みだ。あと私をその名で呼ぶな。思いだしたくない当時の記憶がよみがえる」

「そんな冷たいこと言わないでくださいまし。あの頃はさんざんお互いを求めあった仲だっていうのに」

「黙れ」

「もういけず!協力してあげませんことよ」

 

ぷりぷりと怒る謎の女性を歳考えろとたしなめる隠岐奈、完全に蚊帳の外なイホリ。この女性はいったい何者なのか、秦河勝(はたのかわかつ)って聖徳太子の同志だった人物だったっけと、思案を巡らせてるうちに青髪の女性の美しい顔が目の前にあった

 

「うわぁ!びっくりした」

「この子が噂のナホビノね、まぁ可愛らしい顔立ちですこと。しかも濃厚な死臭もしてたまらないわ。背中の素敵な蛇たちといい今すぐキョンシーにしてやりたいくらい」

「キョンシー?何の話ですか」

「私が死体性愛者(ネクロフィリア)だって話ですか?」

「そんな話してないです…」

 

この女性は一体何者なのだ。宙に浮いてるので仙人のようにも見えるが神聖さは全くなく、むしろバフォメットたちのような闇の理に属するもの特有の禍々しいオーラを纏っている。壁に穴をあけるし、簪代わりにのみで髪を留めているとうことといい間違いなくまともな人物ではない。この人が話に聞く邪仙なのだろうか

 

「あまりからかうな、ナホビノとはいえまだ幼いんだ。ほら自己紹介しろ」

 

隠岐奈が命ずると彼女には逆らえないのかようやく自身とこの場の説明をし始めた

 

「ようこそ、お越しくださいました。邪教の世界へ、私はここの支配人兼悪魔合体の第一人者である霍青娥と申します、」

「悪魔合体の第一人者?」

 

隠岐奈の話では、彼女が悪魔合体を取り仕切る形ではなかったのか

 

「確かに悪魔合体を行うのは私だが、方法を思いついたのは彼女だ。私の生命力と精神力をあやつる力があれば、悪魔同士を合体させ更に強き悪魔に転生させることができると」

「なんか騙されてません…?大丈夫ですか」

「私も疑問には思ったが、理論には問題ないし、何度も実証を重ねて成功している。安心しろ」

 

眉唾な話だが、秘神たる隠岐奈がいうには間違いないのだろう

 

「魔界由来の悪魔は、妖精のように生命力の塊であるがままに生きています。神話由来の悪魔に堕とされた古き存在達は、精神を支柱に生きています。どちらも操作できる河勝様の素晴らしい能力であればこの程度の奇跡どうとでもありませんわ」

「うむ。なら早速取り掛かろう」

 

隠岐奈が指を鳴らすと後戸からイホリが連れていた悪魔達が落ちてきた

 

「ここはどこー」

「sjfsjfjjjjj」

「うわー空が落ちてきた」

 

ピクシーにツチグモ、チン達である。なんだか会うのが久しぶりな気がするが、三日間鍛えに鍛え上げたイホリの仲魔である

 

「…」

「どうした。彼らが惜しくなったか」

 

隠岐奈に悪魔に情を持っていることを指摘され、イホリは苦虫を嚙み潰したような顔をした

 

「悪魔合体でひき継ぐのは能力だけで、この子達の性格や外見は変わっちゃうんですよね」

「そうだ、転生とはいえ全く別の存在になるわけだからな、だが悲しむことはない。悪魔も人もお互いを利用しているだけだ、真の共存とはお互いを道具だと思うこと。どの陣営に属そうがそれに与している悪魔に利用されることになるように、人も悪魔も同じ立場に立っているのさ」

「いいこというじゃん!」

 

隠岐奈の言葉に感心しているピクシー。対等とはなんなのだろう

 

悪魔が無差別に人を殺したり、人が悪魔を道具扱いして合体を繰り返したり、本質は人も悪魔も同じ、そもそも悪魔会話というお互いの利用価値を確かめる意思疎通をしている時点で、最初からどちらもそれをわかっていたのかもしれない

 

 

「わかりました。じゃあ合体させます」

「誰と誰を合体させる?」

「ツチグモとチンで」

「『地霊 ツチグモ』と『凶鳥 チン』だな。あい、わかった。合体について少し注意事項があるんだが、それは後で教えよう」

「始まりますわ~命と命を意のままにする驚異の奇跡が。あ言い忘れてましたが、もし仲魔の悪魔が死んだら私に言ってくださいまし、道教の秘術で復活させてあげますわ」

 

なんだそのアフターサービスはと困惑しているイホリを横目に、青娥は部屋の中央に置かれたやけに生化学的な仙術の装置を起動させると二体の悪魔をそこに押し込んだ。ツギグモもチンも何の抵抗もなくそこに佇んでいる。

 

隠岐奈が鼓を鳴らすとその二体の悪魔は球体状の生命力の塊へと変換されていく。マガツヒは出ていないので悪魔達は全く痛みを感じていないのだろうが、見てて気持ちの良いものではないのでイホリは思わず目をそらしてしまう

 

しかし、合体の際に隠岐奈に頼まれた仕事があるのでそれをしなければならない。しぶしぶイホリは言われた通りに緩やかな舞楽風の舞を踊った

 

これは稚児(ちご)舞といい神にささげる芸能の中でも子供が行うものだが、他の能は、田楽躍(でんがくおどり)は人数が10人以上必要。路舞や祝詞(のりと)は台詞中心なので覚える必要がある。老女や若女の舞は面が必要で、なおかつ男は不可能とイホリにできる舞はこれしかなかった

 

しかし、本来は稚児たちが桜の枝を肩にして向かい合い、桃花のいわれを語り、先年の春をことほぐ必要があるのでメイン季節が春なイホリには相応しいのかもしれない

 

「吾は是れ天台山の傍に年来住める仙人にて候」

 

これにて舞を終え、轟音と共に悪魔合体が完了する。二つの生命が重ね合わさり、混淆の果てに同化する。雷鳴と共に降り立った悪魔は赤紫色の体躯に、傲岸を体現するような顔、携えた双刃はいかにも凶悪でいとも簡単に肉をそげそうな得物だ

 

それはヒンドゥー教における悪鬼、仏教における羅刹、悪魔の中でも無類の戦闘狂なるその者の名は…

 

「オレは邪鬼ラークシャサ。コンゴトモ、ヨロシク」

 

『邪鬼 ラークシャサ』 lv 22

 

《ユニークスキル 水先案内》

 

HP MP 攻撃回数 マッカ0 NEXTEXP 640

66 40 1            

物 火 氷 電 衝 破 呪

- - 弱 - - 耐 耐

 

力 魔 体 速 運

33 13 29 25 20

 

所持スキル

ベノンハント 反撃 グラムカット チャージ

 

「よしこんなものだろう」

「これが悪魔合体…さすが摩多羅神様ですね」

「そうだろう、私は悪魔合体の神でもあるのだよ。ついでだ、お前の潜在能力も解放してやろう」

「潜在能力?」

「本来は部下がいるとスムーズなんだが、この程度なら支障もない」

 

そういって隠岐奈が鼓を鳴らすと瞬時にイホリの春度が増し、力が湧きがってくる

「この力は…!」

 

《火炎耐性を得た!専用スキル【無双たる毒牙】を得た》

 

『合一神 樹島イオリ』 lv 25

 

《ユニークスキル 最後の怪物》

 

HP MP 攻撃回数 マッカ5000 NEXTEXP 700

83 130 1            

物 火 氷 電 衝 破 呪

- 耐 - - - 弱 吸

 

力 魔 体 速 運

40 48 37 27 35

 

所持スキル

アギダイン ザン ブフ ムドオン

狂いかみつき 毒の液 無双たる毒牙

 

「次の神意解放は、lv45といったところだ。さて、合体も無事成功したことだし休憩しようか」

 

***

 

神霊廟の客庁の中。イホリと隠岐奈は飲茶休憩として青娥の従者であるキョンシー、宮古芳香が入れたプーアル茶を飲んでいた

 

「(まずい…)」

「(まずいな,..)」

「あら美味しい。あの娘ったら腕を上げたわね」

 

茶葉も脳も腐っていたが客人の立場のためイホリは全部飲み干した。口に拡がる不快感よりも、ある疑問が頭から離れなかった

 

(都芳香(みやこよしか)だと?なんで天満天神様、菅原道真公の師である貴族がここにいる?)

 

キョンシーとは聞いていたが、平安時代からその肉を朽ちさせることなく存在してきたとは思えない。そもそもなぜ大陸の仙人に日本の文人が僵尸として使役されることになったのか経緯も不明だ。聖徳太子とその同志である豪族が、ここ神霊廟に住んでいることは隠岐奈から聞かせていたが、飛鳥時代と良香がいた平安時代とでは年代が違いすぎるだろう

 

同姓同名か、性別が変わっているし、そう結論付ける。しかし、薄気味悪い話ではあった。この目の前の青髪の仙人を名乗るものはまさか1400年近く今の今まで暗躍を続けてきたのではなかろうな、イホリは肝が冷えるのを感じた。呑気な物で、窓から見える景色では道士が炉で寿金を焚いていて、ピクシーがその様子を興味深そうに見つめている。その様子を見て、彼はこれ以上青娥について考えるのを辞めた

 

「先ほどはびっくりしましたわね。イホリ君がいきなり舞い始めるんですもの、若い子なのに芸能なんてできたの?」

「まぁシンセサイザーはできませんけどね」

「?」

「悪い、私が短時間で覚えてもらったんだ。その方がやる気出るからな」

 

ハハハと少し好色そうに笑う隠岐奈

 

「やる気が出るですって。河勝様ったらあれは子供用の舞でしょう?二童子といい館の吸血鬼、妖精達といいあんまり若い子ばっか手籠めにしていると罰が当たりますよ」

「お前にだけは言われたくないわ!」

「そういえば」

 

隠岐奈が怒りのあまり机をたたき、天心をひっくり返したところでイホリは疑問を浮かべた

 

「あの合体についての注意事項っていったいなんだったんです?そこそこ重要そうでしたが」

「その話か。あー神様に気をつけろってことだ」

「どういうことです?」

「悪魔合体は文字通りなんでも組み合わせ次第では造ることができる。どんな強大な神だろうとその力を我が物とすることができる。だから邪教の秘術なんだ」

「死神や破壊神、邪神等には気を付けて、誠意をもって接しろってことですか?」

「いや、それはもちろんなんだが。この場合気を張るべきなのは日本の神様なんだ。天津神とか国津神等のな」

「?」

 

話が見えなかった。仲魔の契約は強力とはいえ神様を敬わず、あまり不遜に扱いすぎると不敬として殺されるという話なら、日本の神様に限定する必要はないはずだ

 

「おほん、少し話を変えよう。そろそろ日没だが、イホリは夜に浮かぶ月が偽物だということは知っているか?」

「え、偽物なんですか!?」

「偽というか表側というか、本来の裏側の月は、月の民が地上の民に見つかることを嫌って結界によって隔たれているんだ。本来の月は人智を超えた繁栄を誇る神の都だ」

「へぇそれはいいですね。行ってみたい」

「お前が行けば間違いなく大惨事になるな。まぁそれは置いておいて、この月の都に住んでいる存在が問題なんだ」

「誰が住んでるんですか?」

「天津神だ」

「え」

「天津神だ」

 

青天の霹靂だった、天津神が月に住んでいるということは高天原は月ということになる。我らが主神天照大御神様や、彼女が籠った天岩戸も月ということになる。月夜見尊様が月の神様であるからおかしな話ではないはずだが、太陽神様である天照大御神様が月に住んでいたとは驚きだ

 

「そんな高貴な方たちが月にいたんじゃ。もう月見酒だの月見バーガーだの下賤な真似はできませんね」

「そしてその天津神だが悪魔合体にて作成することができる」

「おそれ多すぎる」

「さすがに天照大御神様や伊弉諾尊(いざなぎのみこと)様、伊邪那美命(いざなみのみこと)様、武御雷(たけみかづち)様などの主神、創造神クラスは作れないが天鈿女命(あめのうずめのみこと)様、八意思金神(おもいかね)様なら素材次第だが作れるはずだ」

「怒られますね。それは」

「あぁ怒られる。呼び出された神様はお前はナホビノだし普通に仲魔になってくれるだろうが他の天津神はそんな横暴は許さないだろうな。最悪第三次月面戦争が起こる」

「わかりました。天津神様は作りません。というか恐れ多すぎて悪魔呼ばわりできません」

「そしてかといって国津神の作成にも問題がないわけでもない。今ほとんどの国津神は月の民によって封印されていてな。大国主命(おおくにぬしのみこと)様や建御名方神(たけみなかた)様、猿田毘古大神(さるたひこおおがみ)様といった神々をお前は作成できるが、もし仲魔にした場合神霊の依り憑く月の姫が須佐之男命(すさのおのみこと)様の力でお前を八岐大蛇よりも惨い末路にするだろう」

「でしょうね。というか分霊扱いじゃないんですか?私の半身である神もおそらく封印されていますが、分霊体なら出せてますよ」

 

肉体を持つ神が分霊体を生み出すにはまず自身の神霊を作成し、そこから分割していく必要がある。当然数を生み出すごとに分霊の持つ神力や能力は弱くなっていくので、イホリは国津神でも分霊体であれば然したる力もないので問題ないと考えたのだ

 

「うんにゃ、それが日本の神様の場合、少し事情が違うんだ。日本の神はほとんど神霊といってもいいぐらい、精神に支柱を置いていてな。だから性質上どれだけ分霊を増やそうと何分割しようと元の神と同じ力を持つんだ」

「えぇそんなの反則じゃないですか。無限に分身できるってことですよね」

「そうだ。それに仮に分霊体が弱い存在だとしても、月の民が手中に置いている国津神をどこぞの地上の穢れた蛇が勝手に持っていったときたらプライドの高い連中だ。絶対に許さないだろう。今は聖地ヤマンバの地のような月と地上をつなぐ通路もある、どこぞの毒蛇みたく首切られた上に岩の下敷きにされたくなかったら辞めておくんだな」

 

恐らく半身の本体は岩よりもはるかに大きく重い物の下敷きになっているが、自身の未来をさらに暗くするようでイホリは言葉にはできなかった

 

「おい、おぬしらそこで何をしておる」

 

そして気が付くと夜も更けていたようで、神霊廟の主人である豊聡耳神子とその門弟たる豪族たちが帰ってきていた

 

「え、もうこんな時間なの!大変あの娘のお化粧直しをしなくっちゃ」

 

退屈な話ですわと茶を飲んだら今まで寝ていた青娥は、迅速に壁抜けし何処かへ行ってしまった

 

「おい壁を壊すなと言っておろうが!全く、お化粧直しっていつもの防腐処理の更新ならそんな焦らなくてもいいだろうに。相変わらず台風みたいなやつである」

 

二童子といい隠岐奈といい目の前の少女といい、幻想郷では狩衣が流行っているのだろうか。それとも平安時代からタイムスリップしたのだろうか。光沢が強い銀色の髪をポニーテールにまとめた少女は烏帽子とスカートという時代がごちゃ混ぜな奇妙な格好をしていた

 

「布都か、太子には何も言わないでくれ」

「おぉ誰かと思えば河勝殿ではないか。太子様に報告はせんでいいと?なぜです?久闊を叙するちゃんすだと思うのだが」

「昔の話になると長いんだよ彼女…。じゃ私はそういうわけだからお暇させてもらう」

「え、摩多羅神様帰っちゃうんですか。じゃあ私はどうやってここから出れば」

「太子、神子に頼めばすぐ元居た場所に戻してくれる。この神霊廟はありとあらゆる場所に出口を繋げられるからな」

それではまた会おう、と隠岐奈は後戸から帰って行ってしまった。彼女が言うにはあくまで二童子の立場でないと後戸は使わせたくないらしい

 

「そんなー」

「で、おぬしは何者ぞ」

「ナホビノです…」

「ナホビノ…ナホビノっていうとあのナホビノ!?実在したんだな、失敗作のミマンしか見たことないから我びっくり」

「最近禁が解禁されたんですよ。それよりここから出たいんですが…太子様というお方はどこに」

「まぁ待て。おぬしがナホビノだというのなら、太子様と同じく龍穴が使えるはずだ。試してみてほしい」

「龍穴!?龍穴ってあの龍脈から湧き出る龍穴?」

「そうだ。何がおかしい」

 

なぜ、布都なる少女は龍穴が移動手段かつ、神性が混ざったものしか使えないということまで知っているのだ。その疑問を素直に口にすると驚愕の返答が帰ってきた

 

「そりゃ龍穴は我が開けたからの」

「幻想郷全土の龍脈を?」

「うむ、太子様の仙界なら冥界だろうと天界だろうと一っ飛びである」

 

布都の苗字は物部といい風水を操る程度の能力を持っているとのことだった。確かに龍穴を開くのにこれほど適した人物はいないだろう

 

「しかし何のために、龍穴を?この神霊廟からどこにでも行けるのなら通路なんて必要ないのでは」

「阿呆。龍脈は大地の血管、龍穴はそのエネルギーを噴き出す気功のようなもの。そんな場所一介の風水師として押すのが当然だ。現に移動手段だけではなく回復にも使えるからの」

「なるほど。じゃあ早速使ってみますけど、いまいち使用方法がわからないんですよね、時間をかけて触れれば傷が癒えるのはわかるんですが、移動の方のカラクリがいまだにわからなくて」

「そんなの行きたい場所の方位を向いて触るだけだ」

 

確か方位とは、北、東北、東、東南、南、南西、西、北西からなる八つの方角のことのはずだ。イホリと布都は神霊廟の鐘楼近くにある龍穴に移動すると最後の確認をした

 

「えーと俺が行きたい場所は玄武の沢だから、今神霊廟はどこにありますか?」

「現在は東南だな」

「(よしならばおそらく北東だ)」

 

その方位に体を向けて龍穴に触る

 

「あ、言い忘れたけどもちろん鬼門には向いちゃダメだぞ。未来が険しくなるどころか、文字通り鬼がいる場所に飛ばされるぞ」

「え」

 

瞬間、仲魔も含めてイホリ達の姿が一瞬で龍穴に吸い込まれて消える。時すでに遅しであった

 

 

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