【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
『今宵もまたヤツがやって来る!前人未到、誰一人として成し得なかった生涯不敗を誓った豪傑。千の技で並み居る相手を受け止め、往なし、打破する!ヤツこそ最強の戦士、ジーザス・バージェスだッ!!』
「ウィッハッハッハッ!!今日もド派手に暴れるぜ。テメーら、もっとド派手にオレを崇めろ、そして称えやがれェッ!!!」
実況席の煽り文句に応えるように筋肉を見せつけるジーザス・バージェスが豪快な笑い声を上げた瞬間、会場は大歓声に包まれた。
そんな彼の傍らには頭の上部を隠すハーフフェイスを被った独特なヒゲを携えた男。云わずもがな、ジャンゴはカンフーパンツとカンフーシューズを身に付けた姿でジーザス・バージェスの近くを黙って歩く。
「はあ、マジで試合するのか」
「あんまビクビクすんなって、ジャンゴのオッサン!オレも相方じゃねえは不満だが、お前の相棒はお前を信じて送り出したんだ。折角の試合だ、思う存分に暴れまくって楽しんでいこうぜ!!」
「だあぁーーーッ!!もうやってやるよ!?」
「ウィッハッハッハッ!!その調子だァッ!!」
バージェスの激励を受けたジャンゴは覚悟を決めて、リングサイドに近づき、そのままリングロープの反動を使って跳び上がり、緩やかに四角形のリングに着地する。
その身のこなしの軽さにどよめく観客席の中にフルボディと彼の恋人のアイボリーは当然という表情でジャンゴを自慢している。が、ジャンゴは余裕綽々の表情で自分を見下ろす二人に軽く怒っていた。
「今日こそテメーをグチャグチャにしてやる」
「クククッ、覚悟しやがれ…!」
そう宣戦布告を告げる相手チームにジャンゴは映っておらず、完全に格下のように見下し、無視を決め込んでいる。その態度に「まあ、そうなるのは分かってたけど」とジャンゴは呆れ、静かに全身の筋肉を弛緩させ、いわゆる観客のいる緊張感を無くす。
ゆっくりと自軍に戻った後。先陣を切るようにリング内にはジャンゴと相手の片割れが残り、試合開始を告げるゴングを待ち望んでいる。
カァン─────ッ!!!
「ウラアッ!!」
ゴングの音が聴こえて即座に駆け出してきた相手のフロントキックがジャンゴの胸部にめり込み、コーナーポストに背中をめり込ませる。
『あぁーーーっと!!試合開始と同時にブルーギリー選手のど真ん中をブチ抜くフロントキックが助っ人Aの胸にめり込んだァーーッ!!まさかの不意討ちに助っ人Aも反応が遅れたか!?』
解説の言葉を聴いて尚も平然と動かないバージェスにブルーギリーは顰めっ面を見せ、未だにコーナーに留まっているジャンゴに向けて、ギュッ!とリングを踏み締め、しなる鞭のごとき蹴りを繰り出す。
振り乱れる左右の高速キックに成す術も無く身動きの取れていないジャンゴ────いや、彼は面倒臭そうにブルーギリーの蹴りを受け止めている。
それどころか果敢に攻めて優勢に見えていたブルーギリーの足は赤く腫れ上がり、ボタボタとリングマットに鮮血が滴り落ちる。
『ど、どういう事でしょうか?先程まで助っ人Aを攻め立てていた筈のブルーギリー選手の両足に夥しい打撲傷に加えて流血しています!』
そう叫ぶ解説。
この試合会場にやって来ていた観客の内、ジャンゴの行った行動を見えたのはフルボディとバージェスぐらいだろう。どれだけ優れた観察眼を持っていようと見えなければ意味を為さない。
「エルボーで蹴りを受け止めたんだ」
いきなり会場に響く言葉にジャンゴは思わず解説席に視線を向けてしまった。
そこにいたのはフルボディだ。アイボリーもいるが、申し訳なさそうに解説席の近くに座っているだけで、とくに話したりする様子ははない。
『あ、あなたはいったい?』
戸惑いと困惑の言葉を口にする解説を無視して「更に詳しく言えばブルーギリー殿の蹴りを受ける瞬間、脛や膝を狙ってエルボーを打ち込んでいる」と話し続けるフルボディに「どっちの味方だよ!」と思いつつ、ジャンゴは姿勢を変えてブルーギリーに突撃する。
「ヒュウゥッ!!」
「甘いぞ、小僧…!」
傷付いた右足で蹴りを放つブルーギリー。だが、ジャンゴは更に身体を深く沈め、彼の放った蹴りを掻い潜り、立ち上がるようにブルーギリーのアゴを肘で無理やりカチ上げる。
ぐらつくブルーギリーに追撃しようとした、そのときだった。突如、顔面を撃ち抜くような爆発的な衝撃を受けて、ジャンゴの身体は再びコーナーポストにぶつかり、そのままロープの間を抜けてリング外に転がり落ちた。
『おぉーーーっと!!相棒のピンチを救うためにイデオ選手の破壊砲が助っ人Aの顔面を直撃、今の攻撃は流石に効いたのか。助っ人Aもふらつきながら頭を揺さぶって、脳震盪で混乱しているようだッ!!』