【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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ホーディ不在の新魚人海賊団は弱い?

「ヒック、つまんねえなァ~~ッ」

 

ゆらり、ゆらり、と六本の足を巧みに動かして両手に刀を握り締めた辻斬りスタイルで魚人街を駆け回る酔いどれ蛸のヒョウゾウにオレは溜め息を吐く。

 

こうなったのはルフィ達が魚人島を観光せずに抜けて、早々に次の目的に向かうというハプニングのせいだ。

 

ジャンゴいわく「多分、ホーディ不在の影響だと思う。元々は魚人島編のラスボスだったのが、今じゃ変態のクセに世帯持ちだ。神様は依怙贔屓しすぎだぜ」なんて文句をオレの真横で言いまくっている。

 

「フルボディ、目視できるのは三人だ。他の奴らは擬態や擬装を使って上手く、こっちに悟られないようにしているみたいだが、どうする?」

 

「決まってるだろ、全員まとめて確保だ!!」

 

「「「はっ!この腐れ外道どもがステキな人魚のお姉さんに手出しするんじゃねえ!!」」」

 

オレの号令に従って棍棒とシールドを構えた海兵達は「お前は新魚人海賊団かッ!?」と聞き込みつつ、何も言わずに応戦してきたり、ふつうに肯定した奴らをボコボコにしていく。

 

「じゃあ、ヒョウゾウは任せる。オレは他の雑魚を纏めて捕まえてくるわ」

 

「ああ、気を付けろよ」

 

ヒラヒラと気だるそうに手を振って敵味方の乱れ狂う乱戦状態の戦場に向かったジャンゴに激励を送り、オレはナックルを右手に嵌めて、溶解液もしくはタコの毒を纏った刀を振るうヒョウゾウに近づき、グビグビと酒を飲む彼の顔を殴り潰した。

 

「ごぶぇッ…おご…」

 

「ジャンゴに魚人島最強の剣士だって聞いてたんだが、オレのパンチも見切れない上に〝覇気〟も纏えてないじゃないか。まったくガセネタを掴ませやがって」

 

そうオレは文句を言いつつ少し手練れな魚人と戯れるジャンゴに視線を向け、直ぐにピンチに陥っている部下のところに向かって歩き出す。

 

「ガハァッ!?ば、ばかな、何故見える!?」

 

「まずお前は〝覇気〟以前に、その異様に高すぎるプライドを捨ててこいよ。ホーディですら変態の自分にプライド持ってるっていうのにだらしねえな」

 

風景と同化していた魚人をチャクラムで切り裂き、面倒臭そうに失敗しているところを告げるジャンゴ。その間も迫り来る魚人を蹴散らし、ときには催眠術を掛けて手当たり次第に眠らせている。

 

「随分と派手に暴れてるじゃないか」

 

「……何の魚だ、お前は?」

 

「オレの名はハモンドだ。あまり派手な動きで注目を集めるのは好みじゃないが。今回は長い付き合いだったヒョウゾウの敵討ちだ」

 

「そうか。オレは海軍中将のフルボディだ」

 

そう言って敵味方の乱れた乱戦の最中、オレに話しかけてきたのは中折れ帽子(ソフトハット)の似合う魚人だった。静かな闘志を宿す視線に、久しぶりに強敵と殴り合えるチャンスだとオレも笑みを浮かべる。

 

トン、トントン、とステップを刻むハモンドの動きに既視感を感じる。こいつ、まさか本格的なボクシングの使い手か?

 

それなら此方も応えるのが拳闘家の作法だ。

 

「シィッ!」

 

「うおっ!?」

 

ボッ、ビュオッ!!

 

魚人の怪力に加えて軽量級のスピードにオレは驚きながら、下手したら〝指銃〟並みに速いパンチだと再認識し、此方も最速のジャブを繰り出す。

 

混戦、乱戦、そんな場所でオレとハモンドはラッシュの速さ比べに興じている。いや、スピードに関してはハモンドのほうが速いかも知れねえな。

 

「ヌォラッ!!」

 

「……チッ、大事な帽子を」

 

オレの振り抜いた左のアッパーはソフトハットのツバを掠り、突風で彼の前髪を揺らしながら帽子を弾き飛ばす。惜しいな、もっと鋭く踏み込めばアゴは砕けてた。

 

そんなことを考えるオレを無視して、ハモンドはソフトハットを拾い、また被り直す。さては次元大介と似たようなルーティンを持っているタイプのヤツだな。

 

「フルボディと言ったか。お前も多少は拳闘を齧っているようだが、お前にはボクシングの術理を何も感じねえ。動きを真似てもスジが通ってねえんだ」

 

なんだかカチンと来る言い方だが、ハモンドの言わんとすることは何となく理解できる。要するにオレのケンカ殺法じみた動きじゃダメだってことだろ?

 

「オーケー。それならコイツはどうだァッ!!」

 

「バカが、自棄になったかッ」

 

「そんなのはなァ…効かねえんだよォ!!」

 

「なっ、にぃいぃいいぃぃぃっ!!?」

 

素早く右拳を砲丸投げのごとく後ろに引き、オレの体重その物を乗せてぶん殴るように右拳を振り抜こうとする瞬間を狙い、ハモンドはジャブやストレートを放つ。が、オレは力任せに右拳をハモンドの飛び出た顔面にパンチをめり込ませる。

 

「ペッ、白ひげやガープ中将の打撃にも耐えるオレが高々島ひとつで偉そうにしてるヤツに負けるかよ。で、特攻覚悟の意地で放つ〝皆殺しのトランペット〟の味はどうだ?」

 

そうハモンドに問いかけるも既に気絶しており、ソフトハットも脱げている。まあ、少なくともオレの本気と渡り合えるのはキングデューかガープ中将ぐらいだな。

 

 




〈皆殺しのトランペット〉

出典・堕落天使

壬生灰児の必殺技

兎に角、全体重を乗せてぶん殴る。シンプルな技だが、特攻覚悟の意地で振り抜けば大抵のヤツは殴り倒すことが出来るので単純明快であり、使いやすいパンチだ。


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