【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
最初に動いたのは、ミホークだった。
小手調べの小刀を仕込んだ十字架のネックレスを揺らし、振るうのは世界最強の剣士に相応しい黒刀〝夜〟だ。鋭く疾い剣擊は空気を裂き、〝飛ぶ斬擊〟と成ってフルボディに迫る───。
「シィッ!」
フルボディは焦ること無く冷静にアップライトに構え、左拳を内側に捻り込んで放った強烈なストレートは〝飛ぶ斬擊〟とぶつかり、ギャリギャリと金属を打ち合わせる音を響かせ、ミホークの斬擊はフルボディを断つこと無く四方に弾け飛んだ。
お互いの力量を測る初擊は終わり。
ミホークは出会って数年の内に己の座する高みに駆け上がってきたフルボディの強さに高揚し、さらに大太刀の柄を握り締めて構える。
フルボディもまた自分より格上と認識し、いつか対等に渡り合いたいと思っていたミホークの斬擊を無傷で防げる自分のナックルに笑みを深める。
「ここまで強くなれたのはジュラキュール殿のおかげだ。ナックルを砕いて落ち込んでいたとき、貴方にオレは励まされた。だから言わせてくれ、ありがとう」
「オレは剣士だ。まだ鍛えている段階、それも己から折れようとする刀を研ぎ直し、少し己を仕上げる手伝いをしただけに過ぎん」
「それでも貴方のおかげだ。だから、オレは勝つ」
「……フッ、良かろう。我が世界最強の名を以て、お前の比類無き剛拳を迎え撃つ!」
一瞬とも言える会話を終えた瞬間に踏み出したのはフルボディ───いや、ミホークも同じタイミングで駆け出し、二人の剣と拳は肉薄し、波状攻撃のごとき〝覇気〟が大気を揺るがす。
フルボディに有利な筈の
「ヌゥンッ!!」
「うがッ!?」
───次の瞬間、ミホークの肩口を滑って骨肉を断たんと振るわれる大太刀の鎬を殴りつけて、無理やり太刀筋を変えたフルボディだが、彼の胸部には斜めに刀傷を刻まれる。
「負けッ…るかァッ!」
「ぐっ、おぉおッ?!」
僅かに出血で動きが鈍るもフルボディはフックを繰り出し、ミホークの横面に拳がめり込ませ、2m、3m、とお互いの身体を後ろに弾き、三度目の仕切り直しに焦ること無く静かに呼吸を整えて構え直す。
しかし、二人はお互いの顔を見た瞬間、自然とごく当たり前のようにニヤリと笑った。ただ、そう、純粋に強者と戦えるという、この一時に二人の熱は上がる。
フルボディは両腕を〝武装硬化〟し、ミホークは刀の柄を握り、静かに音を置き去りにして間合いを詰めた。ミホークが地面諸ともフルボディを真っ二つにするつもりで放った斬り上げを彼は諸手の下段突きで受け止めた。
だが、その程度で止まるほど世界最強の剣士の斬擊は甘くない。ミホークは黒刀〝夜〟の斬擊を受け止めた両腕などお構い無しに大太刀を振り抜き、僅かに一瞬だがフルボディに背を向けて大太刀を肩に担ぎ上げ、黒刀を振り抜き、フルボディを斬り伏せる。
「あ、危ねぇ…」
「この剣も防ぐか、フルボディ」
「オレを殺す気かアンタはァッ!?」
「ぬおっ!?」
ミホークの称賛より余裕もなく冷や汗を流すフルボディは己の背中を預けるべき地面が真っ二つに両断され、真っ暗な底無しになっている現状を打開するためにナックルで黒刀〝夜〟を挟み込むように殴り付け、ぐるりと身体を横に捻ってミホークを投げ飛ばす。
「フルボディ、そろそろオレにも見せてみろ。あのドフラミンゴを打ち破ったという黄金の龍を」
「……えぇ、ソイツが狙いなのかよ?」
「ドラゴンとは違う。彼の大剣豪の逸話をオレが見せてやるんだ、安いものだろ?」
「だから、オレが死ぬって言ってんだろ!?」
───
そう言って龍斬り宣言を告げるミホークにフルボディは怒りつつ、全身の〝覇気〟を漲らせる。既に〝武装色の覇気〟は四皇に比肩し得る強さを得ているが、フルボディは赤髪のシャンクス以外の四皇と出会った経験は皆無であり、その事実に気づいてすらいない。
「来るか…!」
「いや、やっぱり無しだ。さすがに〝龍拳〟を連発したらオレもヤバいかも知らない。それに、アンタとやるなら純粋な体術で挑みたい」
「このオレに黄金の龍と成る技は使えんか。……なら今のお前と殺り合うのは得策ではない。いずれ本気のお前と相対するときを楽しみにしておこう」
あっさりと二人は死闘を止めた。
しかし、二人の戦いの余波は凄まじくマリージョア近海どころか〝赤い土の大陸〟に巨大なクレーター、いや、巨大な切り傷、兎に角、大量の傷が刻まれ、更にトンネルが出来ているのだ。