【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
巨大カジノ豪華客船『グラン・テゾーロ』のカジノ区域に突撃していく茶豚のオッサンとお目付け役として追いかけるジャンゴを放置し、フルボディは金網デスマッチを彷彿とさせる八角形の巨大リングの上に立っている。
「ムフフフ。まさか〝鉄拳〟のフルボディと殴り合える日が来るなんて想像もしていなかった。テゾーロ様には感謝しなくてはなァ…!」
「オレはデートしたかったんだが?」
ムキムキと己の分厚く引き締まった筋肉を誇示するようにポージングを決める〝VIPエリアのディーラー〟ダイスにフルボディは嫌そうに顔を歪め、武器の所持を禁じるというルールに従ってナックルをアイボリーに預ける。
『さあさあ、今宵もまた大一番だ!!カジノエリアの支配人ダイス主催の〝格闘カジノ〟の対戦相手は、あの〝拳骨〟の二代目と言われる現役海兵において最強格の海軍将校フルボディだ!!』
アナウンスの呼び掛けに集まる観客の視線と野次馬のあまりな騒々しさにフルボディは驚きつつ、アイボリーにジャケットと帽子を預け、ゆっくりと靴を脱ぎ、軽くステップを踏んでリングの感覚を確かめる。
普通のリングより硬く感じるものの。
問題ないと断じたフルボディはボクシングの様に両手を持ち上げ、反対側のコーナーに立つダイスのネットリとした笑みにゾワゾワしたものを感じていた。
『始めェッ!!!』
「ムホオォーーーッ!!!」
ゴングの合図と共にダイスは闘牛のごとき荒々しさでショルダータックルを繰り出し、僅か数歩の歩みでフルボディの眼前まで迫り来る。
鍛え抜いたパワーによる重戦車の突撃だ。
「……おい、この程度か?」
「なんッ!?」
しかし、フルボディは構えを解いてダイスのショルダータックルを真っ向で受け止め、静かに問いかける。だが、それは嘲笑や侮蔑ではないフルボディの純粋な疑問なのだ。
グラン・テゾーロに到着する数時間前にジャンゴから「ダイスってヤツはゾロを追い詰めるぐらいには強い」と聴いていた分、明らかにフルボディは萎えている。
「はあ、次は此方の番だ」
ゆっくりとスローモーション再生しているのかと思えるほど緩やかに拳を握り固めるフルボディは右半身を後ろに引き、思いっきり右拳を振り抜いた。
バガアァァ─────ンッ!!!!!
巨大な船体の揺れと轟音に観客の野次も応援も止まり、たった一発のパンチで終わりを迎えたグラン・テゾーロの〝格闘カジノ〟に誰もが目を見開き、大口を開け、宛ら〝神・エネル〟のごとき変顔で唖然としていた。
「アイボリー、デートの続きをしようか」
「はい!」
早々にリングを降りたフルボディはリングの中央にめり込んだままピクリとも動かず、恍惚とした笑顔で昇天しているダイスの異質さに溜め息を吐く。
二度とやるか、ギャンブルなんて。
「ところで。なぜ避けなかったんですか?」
「なんでって、タックルを避けたら君に当たるだろ?」
「…………そういうところです、まったく」
思わず、赤面するアイボリーに「やっぱり可愛いなあ」と惚気を言ってスロットマシーンに食らいつかんばかりに張り付いている茶豚のオッサンとジャンゴ、バーの酒を全て飲み干すつもりの桃兎達に苦笑いを向ける。