【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
「もっと、もっとだァ…!!」
そう吼えるダイスは半狂乱状態のままカジノ区域で暴れ狂い、楽しそうにアイボリーと話し合っているフルボディめがけて二度目のショルダータックルを放つ。
だが、〝格闘カジノ〟のほぼ密室に近いリング上と違ってダイスは足場の良い長距離を駆け抜けており、ダイスの繰り出す渾身のショルダータックルの破壊力と突進力は、先程の十倍近く上だ。
「アイボリー、離れててくれ」
「もっとすんごいキモテイィーーーッ!!!」
「はは、こりゃすげえな!」
異様な気配を察知したフルボディは全身を余すところなく〝武装硬化〟して迫り来る重戦車の突撃を受け止め───いや、先程まで圧倒していたパワーを上回る突進力にガードを押し破られ、グラン・テゾーロの区域を切り分ける黄金の外壁を突き破ってバー区域を通過し、ホテル区域まで押し込まれて、ようやく一方通行の突進攻撃を行うダイスの動きを止めた。
ガラガラと崩れる瓦礫を押し退け、黄金の土煙の上がる煙幕を切り裂くようにフルボディはダイスを放り投げ、グラン・テゾーロに上陸して初めて彼は両手にナックルを嵌める。
賭け事抜きの正真正銘の真剣勝負だ。
「ぬおぉおぉーーーーーっ!!!」
ダイスは狂喜的な笑みを浮かべて吼える。
何十年と戦っていた彼の人生でフルボディの打撃を越える〝快感〟は無く、たった一度の攻撃を受けて、このまま無様に気絶する等という選択肢はもうダイスの中にはないのだ。
今の彼にあるのは、本気の一撃を受け止め、勝つという闘争本能じみた〝被虐願望〟による衝動のみ。巨体を活かした猛攻に〝全身武装硬化〟という鉄壁の防御も合わさり、その動きは更に苛烈さを極める。
「ゼリャアッ!!」
「ぐふぉっ!?これもキモティーッ!!!」
フルボディはダイスの放つ大振りな右のロングフックを受け止め、ガードすると同時に左拳を土手っ腹にめり込ませる。何の細工もない真正面を貫く連続の正拳突きを食らわせ、ダイスの巨体を殴り飛ばす。
しかし、黄金の街道を削ってダイスは踏み止まる。
「キモティ…キモテイィーーーッ!!!!」
「お前ら、もっと遠くに離れてろ!!」
またしても感情のまま荒ぶり極上の〝快感〟に吼えるダイスの異様な筋肉の膨れ上がりにフルボディは怪訝な表情を浮かべ、二人の場外乱闘を見ようと集まっていた野次馬に注意を叫ぶ。
「最高級!極上!至福のキモティーをおぉぉ!!!」
〝武装色の覇気〟が爆発した。
ダイスの纏う〝武装硬化〟は恐ろしい密度を帯び、フルボディもかくや〝武装色〟は段違いに、桁外れのスピードで成長を遂げる。ギルド・テゾーロに仕える間、彼の抑圧されていた〝欲〟が弾けたのだ。
「サイヤ人かよテメーはッ!!」
ドガガガガガガ─────ッ!!!!
堪らず悪態を吐くフルボディは錯乱した状態で迫り来るダイスのパンチを躱して、遠心力を利用して放つ裏拳を頬肉に叩き込み、宛ら炎を纏った尾を荒々しく振り乱す孔雀のごとき超高速のラッシュ〝朝孔雀〟をダイスの身体に浴びせる。
普通の人間であれば余りの激痛に気絶してしまう打撃と火傷のラッシュを受けて尚も立つダイスの押し寄せる暴力的な〝覇気〟の波に大気は震え、遂にフルボディも両手に〝武装硬化〟を纏う。
「こっからが本番だぜ、ダイス…!」
「ぬおおぉりゃあっ!!」
一瞬の瞬きすら追い付かない速さで踏み込みで間合いを詰めたフルボディとダイスの拳が衝突し、凄まじい衝撃波を放って巨大カジノ豪華客船『グラン・テゾーロ』の船体を激しく揺さぶる。
追撃のフックが互いの腕を弾き、しのぎを削る。なおも攻撃しようとパンチを繰り出すダイスに、フルボディも即応してカウンターぎみにパンチを放ち、再三再四にも及ぶ至近距離の間合いで殴り合う。
「デェエヤッ!!」
「があ゛ァ゛っ!?」
ダイスは裂帛の気合いを込めた両手を握り締めた振り下ろしのスレッジハンマーをフルボディの脳天に打ち込み、地面にフルボディを叩き伏せ、更に連続の踏み付けを繰り出してフルボディの身体を黄金の大地にめり込ませる。
「ふうっ、ふうっ、ぬおぉぉぉーーーーっ!!!」
「おい、なに勝った気になってやがる。……ペッ、まだまだオレは元気満タンだぜ。オラァッ!!」
「あ、あんなに踏みつけたのにまだ動けるのか!」
黄金に埋もれたフルボディを見下ろしながら勝利の雄叫びを上げる。
───だが、フルボディは身体を黄金に埋めたままダイスの片足を掴み、身体を起こす勢いを越せて引きずり倒しながら反撃を試みるダイスの蹴りを躱して、煌びやかな黄金の光で彩られた夜空に投げ飛ばす。
「〝奥義・空烈パンチ〟ッ!!!」
フルボディは全身の〝覇気〟を右拳に集束して、煌びやかな黄金の空に照らされたダイスめがけて渾身の全身全霊の気迫を纏ったアッパーを繰り出す。
「き、キモテイィーーーッ!!!」
そう言ってダイスは夜空に打ち上がる。
「ONE PIECE」の世界に於いて『獣電戦隊キョウリュウジャー』に登場する桐生ダンテツの至高にして究極のパンチを知るものは転生者以外に居らず。
なによりフルボディの『奥義』という言葉に二人の戦いを監視していたギルド・テゾーロは目を見開き、あまりにもかけ離れた実力差に歯を食い縛り、己に無いものを全て持つ男に苛立ちを露にした。
〈空烈パンチ〉
出典・獣電戦隊キョウリュウジャー
桐生ダンテツの必殺技
生身の人間の放てる至高にして究極のパンチであり、その破壊力は凄まじく大気を切り裂き、大地を叩き割り、大海を吹き飛ばす。まだ、〝地球のメロディー〟が聴こえないフルボディには十全に使いこなせていない。
フルボディをして「奥義」を冠するパンチだ。