【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
日の出に照らされる黄金の山に倒れるテゾーロに近づき、オレはようやく気絶したのかと溜め息を吐きつつ、テゾーロについて考える。
「あー、マジで疲れた」
オレは仰向けに倒れ伏して動かないテゾーロの近くに腰掛け、二度と戦いたくない相手とも言える彼の顔を見る。血を吐き、涙を流し、最後の最後で呟いたのはオレや世界への恨み言じゃなかった。
絶対にやり直し出来るとは言わないが、どうかギルド・テゾーロという男の未来に幸せが待っていることを祈るばかりだ。
「フルボディさあぁぁぁんっ!!!」
「あっ、ちょ、まイデエ゛ェ゛ェ゛ーーーッ!!?」
ドフラミンゴの時よりもダメージを受けすぎたオレは避けることも出来ず、アイボリーの突撃で押し倒され、抱き締められたあまりの痛さに絶叫し、続々と集まってくる部下達に笑われてしまう。
ちくしょう、こちとら重傷人だぞぉ…!
「やっと出られたと思ったら戦闘は終わりか」
「ロブ・ルッチ、痩せたな」
「フルボディ、貴様はジャンゴに感謝しておけ。アイツが催眠術を掛けなければ世界政府の役人がバスターコールを撃ち込む寸前だったぞ」
「おお、わりとピンチだったわけか」
オレの痩せた発言を無視して、スパンダムと一緒に人混みに消えるロブ・ルッチに手を振りつつ、海楼石の手錠と足枷を嵌められていくテゾーロに視線を戻す。もしかしたらオレも彼のようになっていたかも知れないな。
「ありがとう、アイボリー」
「えと、どういたしまして?」
よく分かっていないアイボリーの目尻に溜まった涙を拭き取って、ゆっくりと立ち上がった次の瞬間、グラン・テゾーロの巨大船体が大きく傾き、グラグラと船体が激しく揺れ始める。
「な、なんだ?」
「おいおい、ずいぶんと情けねえ姿になってるじゃねえかァ……テメーは目先の欲に負けるから戦局も読めずに負けるんだよ。ジハハハハハッ!!」
その独特の笑い方に身体を震わす茶豚のオッサンと桃兎の姐さん達の視線が夜明け前の向かい、オレも彼らに釣られて朝焼けの空を見上げる。
金色の長髪を揺らす剣足の男が青空の真ん中に立っている。「ONE PIECE」の映画に登場していた時とは違う、どこか若々しい外見の〝金獅子〟のシキがオレ達を見下ろしている。
なんで、ここにいるんだ。
アイツの捕獲にはガープ中将達が向かっているはずだろうと騒ぎ始める部下達の困惑を遮り、茶豚のオッサンが「お前ら走れェッ!!!」と叫ぶ。
「遅えよ、獅子威し〝地巻き〟ィッ!!」
ゴゴゴゴゴッ!!と黄金の船体が形状を変えて乗客もオレ達も纏めて押し潰さんとばかりに迫り来る。脱出経路を作ろうと拳を握り固めるが、身体がぐらつき、オレは地面に倒れ伏す。
「〝龍拳〟を使ったから体力が残ってねえ…!」
クソ、万事休すどころ絶体絶命じゃねえか。
せめてアイボリー達を逃がせたらと考えていた次の瞬間、オレ達に迫り来ていた黄金の獅子は動きを止める。いや、巨大な黄金の手に塞き止められている。
「クハッ、ハハハッ、殺らせねえぞシキィ……コイツはオレに勝った男だ、フルボディを倒すのはオレでなくちゃいけねえ…そうじゃなきゃ彼女に生かされて、ここまで生き残ったオレの人生の意味が無くなる…!〝
「……テゾーロ、お前…」
手足の海楼石の枷を無理やり引きずり抜いたのか。ズタズタに肉が裂け、血塗れの身体で立っていることが奇跡に近いテゾーロをオレは見上げる。
「ジハハハハハ。そんな小僧に絆されやがって、そんなんだから大事な女も守れねえんだよ」
あのクソ野郎、言わせておけばッ!!
「フルボディ、お前は良いヤツだ。お前達みたいに良いヤツは悪いヤツに殺されちゃいけねえんだよ」
そう言って笑うテゾーロに何かを言おうとしたが、オレはジャンゴとアイボリーに引っ張られ、彼の作ってくれた黄金のトンネルに殺到し、次々と雪崩れ込む群衆に巻き込まれながら辛くも脱出することに、ギルド・テゾーロを除いた全ての人間は成功するのだった。
「ハハハッ、これがオレのエンターテイメンツだ…!」