【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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万国(トットランド)漫遊記、もしくは逃走中

「ハアッ!ハアッ!」

 

ガサガサと笑う草花を掻き分け、迫り来る木々の怪物を蹴り倒し、チャクラムを投げて撃退しながらオレは最低最悪の女王の治世する最多の種族が暮らすという魑魅魍魎の跋扈する魔境みたいな『万国(トットランド)』を逃げ惑っていた。

 

「探せぇっ!!ママの寝室に侵入しやがったあの魚人(・・)と落下してきた海兵の男を捕まえるまで、絶対に休むんじゃねえぞオォッ!!!」

 

そんな怒鳴り声に身震いし、オレは海岸を目指して走っている。フルボディと一緒に浮き島を捜索していたはずが、運悪く足を滑らせた結果が、これだ。

 

いつもくじ運が悪いぜ、ホントによぉっ!!

 

「居たぞ、海兵のほうだ!」

 

「だあぁぁーーーっ!!?何人いるんだよ、そのビスケット兵どもは!?さっき蹴り砕いたのとチャクラムで切り裂いたのはなんだったんだよ!!」

 

「手を叩けば幾らでもお代わりできるぜ?」

 

オレの文句にケタケタと楽しそうに笑って答えるのはビッグ・マム海賊団のシャーロット・クラッカーだ。そろそろ原作の知識が無くなりそうだっていうのに、ホントに最悪の相手だ。

 

クラッカーは「ビスビスの実」という一見すれば非戦闘員向きの能力を戦闘向きに鍛え上げ、ビスケット兵をルフィの〝ギア4〟にすら耐え得る硬度を与える程に強くしている。更に付け加えて言えば無限に増殖する全てのビスケット兵の強さは均一であり、連戦を続けていると確実にオレの体力と〝覇気〟が底を尽きる。

 

「〝ロールプレッツェル〟ッ!!」

 

「〝紙絵〟ェッ!?」

 

一点を真っ直ぐに貫く鋭い斬擊の纏う風圧を利用して、なんとかクラッカーの攻撃を躱す。が、僅かに脇腹を斬られ、ドクドクと血が流れる。

 

フルボディが居てくれたら……。

 

いや、違う。違うだろ。

 

アイツにばっかり頼るな。オレはアイツの親友で、相棒なんだ。こんなところで差をつけられっぱなしになるなんてあっちゃいけねえ。

 

ずっしりと腰を落としてクラッカーに向き合いながら、チャクラムを揺らして自分に催眠術を施す。スペックで相手に劣るならかき集めろ、今だけ最強の自分になればそれでいいんだ。

 

「もう逃げるのは終わりか。まあ、あのいけすかねえパンチ野郎の金魚の糞がオレのビスケット兵を砕いただけでも表彰もんだろう」

 

「確かに、オレは危ないときはいつもフルボディに頼っちまう、どうしようもねえバカだがなァ…オレは金魚の糞じゃねえ、オレはアイツの相棒だッ!!!」

 

「イズッ、ガアッ!?」

 

オレを格下と侮るクラッカーの間合いに踏み込み、アイツと一緒に軍艦バックで鍛え上げた渾身の前蹴りを放つ。オレの二倍はデカいクラッカーの腹や顔を蹴れるなんて思っちゃいない。

 

だからこそ、脛を蹴り抜く。

 

「ようやく沈んだな、このビスケット野郎ッ!とっておきの膝で物理的に地獄に落ちるよオォッ!!!」

 

「この、クソヒゲッ!?」

 

ぐらりと体勢を崩したクラッカーの首を掴んで押さえ付け、〝武装硬化〟した膝を何度も叩きつける。純粋な肉体の強さや精神の強さでフルボディに劣るオレに出来ること。

 

すなわち、捕まえて蹴る!!

 

アイツは間合いを潰しても数センチ隙間があればえげつないパンチを打てるが、他のヤツは彼処まで器用じゃねえから、このやり方が一番だ。

 

百、千、万、と、兎に角、オレはクラッカーの意識を仏陀斬るため、かつて憧れた優しい巨人〝裏ムエタイの死神〟アパチャイ・ホパチャイのごとき膝蹴りを連続でクラッカーの顔面に撃ち込み続ける。

 

「アパパパパパパパパパッ!!!」

 

 

 

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