【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
「お仕置きの時間だ…!」
フルボディはバキバキと拳を鳴らしながら円卓の上に立つサボに近づき、体格差的に見下ろす形になりながら全身をがら空きにするような大振りの右のロシアンフックを振り抜き、サボを殴り飛ばす。
ガゴンッ!と響く轟音に逃げ遅れた各国の王、護衛、世界政府の役人は唖然とした表情でフルボディを見上げる。それもそのはずだ。フルボディの振るう一撃は、もはや人間の拳が出せる音じゃない。
「ハハハッ、二代目の話は本当なんだな」
「オレは〝鉃拳〟だ。ガープ中将にはならない」
「それは成れないの間違いじゃないのか?」
「そうかも知れないな。だが、ここでお前を捕まえてルフィ達のところに突き出す。義兄弟の再会だ、アイツも喜ぶだろ?」
楽しそうに笑う声が舞い上がる粉塵の中から聴こえ、ガラガラと崩れる瓦礫を蹴り飛ばし、押し退けて立ち上がったサボは服の汚れを払い落とすように腕を動かし、シルクハットを被り直す。
しかし、フルボディの呟いた「義兄弟の再会」という単語にサボの表情が歪んだ。まるで欠けた誰かを思い出したかのように怒りを籠めた相貌をフルボディにぶつけ、その怒りが〝覇気〟として吹き荒れる。
「エースは死んだ。もう居ないんだ…!」
普通にエースは生きているだろ?とフルボディは若干戸惑いながらも〝竜の爪〟を模した手形に構えて飛び込んできたサボの悲しみと怒りの気持ちを受け止めるため、黒拳と成ったナックルではなく拳骨を構える。
「クアッ!!」
怪鳥のごとき声を張り上げ、怒りのままに掌低を撃つサボの動きは繊細さを損なうことなく的確に胴体に点在する人体の急所を叩き、フルボディの巨体を力任せに攻めて後ろへと押し込めていく。
「がむしゃらに打つのも良いが、こうして優雅に、ゆっくりと構えて、撃つ!!」
一撃一撃に相手を破壊する殺意を込めた打撃を受けて尚もフルボディは優雅に緩やかに左右の腕を動かし、頭上より高く振り上げ、ガッチリと両手を重ねた鉄槌をサボの脳天めがけて叩き落とし、サボを地面にめり込ませた。
百発を越える打撃をたった一撃で覆す。
正に脳筋の権化、極まれり────。
「立て。あんまり効いてないだろ?」
「…効いてるよッ。馬鹿力爺が」
「オレは三十代だ。ハナタレ」
「オレはもう大人だよッ!」
サボは苦言を申しながら立ち上がりの勢いを利用してカチ上げ掌低を放つ。縦に揺れる攻撃を受け、フルボディの身体がぐらつき、その瞬間を見逃さずにサボは更に激しく回転率を上げてトドメのラッシュを撃ち込み、二度と反撃を受けるものかと掌低を撃つ。
五分、十分、一時間は経っていないが。
サボの鋼鉄を砕くと豪語する掌低を受け続けたフルボディを心配する者、次に戦わなければならないと理解して絶望する者、そして両者の戦いを睨み付ける者が見たのは、血まみれのまま佇むフルボディだった。
「クソ、腕が上がらねえ…!」
ボタボタと血を流す両腕をぶら下げ、悔しそうに呟くサボは右足を振り上げてフルボディに攻撃を加えるが先程のように身体をぐらつかせる事はなかった。
「ちくしょう、オレの負けか」
「まず、お前をぶん殴る前に勘違いを一つだけ訂正しておきたいんだが、エースは普通に生きているぞ。一体、だれにウソを吹き込まれた?」
「え?それどぶあぁぁぁっ!!?」
なにか言おうとしていたサボの脳天に拳骨を叩き込み、今度こそ意識を刈り取ることに成功した。まったく、革命軍なら情報収集ぐらいちゃんとしておけ。