【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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この〝憧れ〟は止められない

「やはりお前と戦うのは楽しい」

 

「……ああ、オレも楽しいぜ」

 

緩やかに剣に纏わりつく海水を払いのけ、そのまま担ぐように構え、片手ではなく両手で剣の柄を握り締めたミホークはフルボディに話し掛ける。

 

フルボディは集中力を研ぎ澄ましながらも彼の問いかけに応えつつ、ミホークに勝つために第八門を開くべきかと本気で悩み、左胸に手のひらを押し付けそうになる。が、すぐに手のひらを逸らして拳を握り固める。

 

「何かしようとしていたが、やめるのか?」

 

「この〝とっておき〟を使えるのは一生に一度っきりなんだ。ミホーク殿に使いたいという気持ちもある。だけど、アンタを相手するのはコッチだ…!」

 

そう言うとフルボディの纏う〝青い蒸気〟は消え去り、今度はジワジワと噴き上げるように、ゆらゆらと〝白い気〟が炎のように舞い上がり、フッと消えた次の瞬間、色鮮やかな〝赤い気〟がフルボディを包み込んだ。

 

「〝界王拳〟……5倍だァーーーーッ!!!」

 

ビリビリと大気を吹き飛ばし、飛び散った瓦礫が弾け、大海原が荒れ狂う。刹那、ミホークの知り得ない筈の男の幻影がフルボディに重なる。それはジャンゴや他の転生者ならば誰もが憧れ、尊敬し、かつては目指した最強の主人公の幻影───孫悟空の姿だった。

 

例え世界が変わろうと憧れは止められない。

 

「さあ、いっちょやってみようぜ!」

 

「クッ、ハハハハハッ!!素敵なサプライズだ」

 

グッと純然と拳だけに殉じた構えを変えて、手足を自由に思うがまま最適の姿勢に構えるフルボディに対して、ミホークは呵呵大笑の大声を上げ、全身の〝覇気〟を迸らせ、神速の速度で駆け抜ける。

 

「ダリャアッ!!」

 

───だが、フルボディはその動きを上回った。

 

拳だけに固執した動きではなく、己の全てを懸けて目の前に立つ強敵を打ち倒すためにフルボディは〝足技の枷〟を解き放ち、ミホークの横腹に左のミドルキックを打ち込み、身体を逆側に捻って続けざまに二発目の蹴りを叩き込んでいく。

 

「この程度でオレは倒れんぞ…!」

 

「ソイツはお互い様だァ!!」

 

ミホークは首の力のみでフルボディの蹴りを受け止め、ほぼ水平に宙に浮くフルボディを背中から切り裂かんと剣を切り上げるも、フルボディは素早く両手を背面に回し、ミホークの剣を挟んで受け止める。

 

「なんと器用な事をする。だが、嘗めるなよ?」

 

「おっ、おおっ!?」

 

形こそ違えど世界最強の剣士を相手にして真剣白刃取りをやってのけたフルボディに称賛の声を上げつつ、ミホークは身体を反転し、一気に剣を担ぎ上げるように振り抜き、フルボディを地面に叩きつけ、そのまま地面を切り裂きながらフルボディを攻撃する。

 

全身を突き抜ける凄まじい剣圧を受け、フルボディの身体は縦に真っ二つに切り裂かれ───否、あと僅かな寸前のところで回避することに成功していた。だが、逃げるときに斬撃を避けきれず、彼の右腕と右肩には壮絶な刀傷が刻み付けられていた。

 

「全くお前を仕損じたのは何度目か…」

 

そう言って己の剣を見つめるミホークに「ハアッ、ハアッ…!」と血まみれの肩で息をするフルボディは本気の本気の両手両足の使用を解禁して尚も届いているのかも怪しい世界最強の剣士に自然と笑みを浮かべてしまう。

 

「ハハ、やっぱりこの世界は最高だ…!」

 

どうしようもなく、ワクワクしているのだ。

 

まるでオモチャをプレゼントしてもらえた子供のように大はしゃぎしながら〝界王拳「4倍」〟の上限を無理やり底上げする事を繰り返し、既に「8倍」に到達した〝界王拳〟の負荷にフルボディの身体は悲鳴をあげている。

 

それでも彼の心は闘志で燃え上がる。

 

「もっと戦ろうぜ、ミホークッ!」

 

「ああ、良かろう…!」

 

その言葉を最後に二人の動きは苛烈さを増していく。

 

マリンフォード近海で戦う二人の起こす震動や大気の爆発する音に集まり始めたマリンフォードにいる民間人、新兵から元帥まで二人の戦いに魅入っていた。

 

次々と限界という鎖を引きちぎり、限界すらも置き去りにして戦う二人の戦いに応援を叫ぶ者が出始め、それは海軍も民間人も関係なく、たまたま搬送されていた海賊の囚人さえも声の続く限り叫び声を上げている。

 

「ダアッ!!」

 

「ゼェアッ!!」

 

フルボディがジャンプしてキックを繰り出し、ミホークは棒高跳びのように剣を海面に突き立て、ぐるりとフルボディの頭上を滑るように躱し、そのまま強引に体勢を立て直しながら身体を捻って剣を振り抜く。

 

だんだんと二人の身体が岩肌ではなく、海面を蹴って、空を浮くように戦いのステージを変えていく。その光景は神話の1ページのように神々しくもお互いを倒すべき相手と見据えた死闘の熱を感じさせる。

 

ふと、フルボディの脳裏に予感がした。

 

「(今なら撃てるかも知れねえ…!)かぁ……」

 

それは、半信半疑の気持ちではない。

 

「めぇ…」

 

「何をする気だ…!」

 

「はぁ…」

 

どこか神聖な啓示のように頭に浮かんだソレを行うためにフルボディは〝界王拳〟の身体能力で底上げした〝剃〟を用いて、ミホークの視界から次々と外れ、一瞬にして岸壁の一つに着地していた。

 

「何処だッ!!?」

 

「めぇ…」

 

だが、ミホークは視点では突如としてフルボディが消えたように映っていたのか。背後と頭上を見上げ、フルボディを探すそぶりを見せる。

 

「そこか────ッ!!?」

 

それでもミホークは吹き荒れる大気に気付き、自分の下で両手を腰に溜め込み、なにかとてつもない攻撃を生み出そうとするフルボディを見つける。

 

「サンキュー、これでまたオレは強くなれた」

 

「まだだ、まだこのオレと戦えェ…!」

 

そう叫んで巨大な〝「飛ぶ」斬撃〟を放つミホークに向かって、フルボディは左右の手のひらでかき集めた最強最大の必殺技を繰り出した。

 

「波アァァーーーーーーッ!!!!」

 

その青白い輝きはミホークの斬撃を撃ち破り、ミホークの身体を呑み込んだ。

 

そして、誰もが見惚れ、食い入るようにソレを放ったフルボディを記憶に刻み付けようと注視する。かつてフルボディと名乗ることになる、彼がまだ日本人として生きていた。

 

前世の子供の頃から憧れた〝かめはめ波〟だった。

 

「へへッ、やっぱりかっこいいぜ」

 

 




〈界王拳〉

出典・ドラゴンボール

孫悟空の必殺技

パワー、スピード、防御力を数倍から数十倍まで引き上げる特殊な全能的な能力に見えて、この技を扱うに値する純粋な身体能力を身に付けていないと、まともに使いこなせない。

〈かめはめ波〉

出典・ドラゴンボール

孫悟空および複数の必殺技

全身の気を最大まで高め、両手首を揃えて放つ。最強最大の必殺技にして、フルボディが前世から憧れ、使いたいと願っていた必殺技のひとつ。


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