【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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〝雷鳴八卦〟

〝鬼ヶ島〟の天井の更に上、鬼の髑髏を象った歪な岩山の上に移動したフルボディはメリケンサックを左右の拳に嵌めて、軽く身体を揺らし、最大限のポテンシャルを引き出すためにウォーミングアップを開始する。

 

対して、カイドウは鉄筋と見紛う程の巨大な金棒〝八斎戒〟を右肩に担ぎ、普段の世界を揺るがす荒々しい〝覇気〟は鳴りを潜める。だが、カイドウの鋭い眼光は目の前に立つ、強敵足り得る海兵───フルボディを射貫き、その業火のごとき闘気を滾らせる。

 

「ウォロロロ。合図は要らねえなァ…」

 

「ああ、いつでも構わない」

 

二人が短い会話を終えたその時、フルボディの姿がカイドウの視界から消えた。

 

いや、正確には違う。肉眼では捉えきれぬ速さで地面を蹴り、カイドウの懐に一足飛びで踏み込み、不敵な笑みを浮かべて7メートルという規格外な体格を誇るカイドウの顔面を殴り付け、力任せに殴り倒す。

 

が、カイドウが倒れ際に振り抜いた八斎戒がフルボディの身体を弾き、ほぼ同時に彼らは鬼ヶ島の天井に叩き伏せられ、苦悶の声を漏らす。

 

「があ゛ァ゛ッ!?」

 

「ぐうッ…?!」

 

しかし、苦痛に呻く間もなく二人は競うように立ち上がってナックルと金棒を照らし合わせたかのように振りかぶり、凄まじい気迫と圧力が衝突する。

 

一時的にフルボディとカイドウの攻撃は拮抗していたが。精々2メートル程度のフルボディではカイドウの圧倒的な巨体から生み出されるパワーを上回ることは出来ず、強烈無比な金棒の打撃によって、ガゴォンッ!と鈍く歪な音を出しながら彼の身体は宙を舞う。

 

「ゴフッ…」

 

血反吐を吐いて地面に落下していくフルボディを狙いすまし、野球のバッティングのように八斎戒を両手で握り、そのまま金棒を振り抜いた。

 

────だが、カイドウの手にはフルボディの身体を打った時に感じる鈍く爽快な衝撃は伝わってこず、それどころか彼の目の前には空中で逆さに停止し、右拳を引き絞るフルボディの姿がある。

 

思わず、カイドウはニヤけてしまう。

 

「テメーも飛べるのか!?」

 

「飛ぶなんぞ余裕だァ!!!」

 

歓喜の雄叫びを上げるカイドウの顔面が潰れたようにひしゃげ、何十、何百メートルと地面や隆起した岩石を破壊して後ろに向かって吹っ飛ぶ。

 

「ウォロロロロロ────ッ!!!!」

 

暴竜の咆哮が吹き荒れる。

 

もはや人間の肉体を超越したカイドウの皮膚の一部が青く染まり、如何なる武器も通さぬ竜の鱗を纏い、何百メートルと遠くで生意気に手招きするフルボディの姿を睨み付け、荒々しく地面を踏みつけ、カイドウは雲が一つも見えない青天の空を蹴る。

 

カイドウが大上段に構えた八斎戒を握り締める。その動きと構えは幾度となくフルボディは映像電伝虫を通じて見てきた、正真正銘の〝百獣〟のカイドウという最強の男を象徴する最大最強の破壊力を持った必殺技だ。

 

「良いぜ、来いよッ!!」

 

避けることは可能だが、フルボディは避けない。

 

「ウォロロロロロッ!!最高だぜ、フルボディ!!オレの渾身の〝とっておき〟をその身体で受け止めてみやがれ!!!」

 

むしろ、それは面白くないとフルボディは満面の笑みを浮かべ、今まさに必殺の攻撃を繰り出そうとするカイドウの一撃を受け止めるために地面を踏み締め、〝武装硬化〟した両腕を交差させてガードを固める。

 

「〝雷鳴八卦〟ェ……ッ!!」

 

刹那、フルボディに雷鳴が迸った。

 

 

 

 

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