【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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〝鷹の目〟の男

サンジ達の介抱と手厚い料理によって満腹になったパールは大急ぎで連れてきたボロボロの船員達とタラコ唇の男──首領・クリークを「バラティエ」に運んでくる。

 

すでに彼の自慢の黄金に輝く武具には鋭く滑らかな刃物で〝斬った〟痕跡が無数に刻まれ、惜しみ無く身に付けていた鎧の重ね着のおかげで、辛うじて生き残ったと考えるべき傷ばかりだ。

 

「ジュラキュール殿に斬られたのか。クリーク?」

 

「チッ、オレもここまでかよ。クソ、あんな化け物に襲われた挙げ句の果てが〝鉄拳〟のいる海上レストランなんてなァ…!」

 

「騒ぐな、傷が開くぞ」

 

「クソがァッ」

 

そう悔しそうに叫ぶクリークの肩をオレは抱きあげ、さっきまでオレとアイボリーが座っていた席に彼を座らせる。パールも他の船員も客もオレの行動に困惑しているが、オレは無視して傷の手当てを進める。

 

確かにクリークは極悪人だろう。

 

──だからと言って見殺しに出来るほどオレは正義に陶酔している訳じゃない。助けられる命には手を伸ばす、届かないなら更に手を伸ばせば良いだけだ。

 

そんなことを考えていた次の瞬間、オレの脳裏に〝黒刀を構えるジュラキュール・ミホークの姿〟が浮かび上がり、アイボリーに外套を押し付けて窓を突き破ってテラスに着地する。

 

「〝昼虎〟アァーーーッッ!!!!」

 

メキメキと鈍い音を立てるほど全身の筋肉を総動員し、一点に集中させた〝武装色の覇気〟を〝飛ぶ拳圧〟として大海を斬り進んでくる斬撃を迎え撃つ。

 

大気はオレの拳打によって高圧縮されて、巨大な虎の顔を象って斬撃に噛みつき、粉々にジュラキュール殿の斬撃を噛み砕くと同時に霧散する。

 

「どういうつもりだ、ジュラキュール殿」

 

「…………」

 

ゆらりと棺桶を模した小舟に乗ったジュラキュール殿はクリーク海賊団の軍船の瓦礫の間を優雅に進み、ちょうど戦える程度に残った甲板の近くに止まる。

 

「貴様は随分と仕上げた様だが、未だ見つかりもしない壊れた鉄拳(えもの)を求めているか」

 

そう座してオレに問い掛けるジュラキュール殿の視線は鋭く気を抜けば即座に首と胴体が切り裂かれる可能性もある状況だ。ホントに今日は厄日過ぎるな、アイボリーにも巻き込んで申し訳ない気持ちだ。

 

しかし、あの時の話をまだ覚えてるのか。ジュラキュール殿の質問に「いや、もうナックルは見つけた」とオレは答えて、ズボンのポケットに仕舞っていたナックルを掲げる。

 

「相も変わらず海楼石のナックルとは熟拘る男のようだな、貴様は」

 

「そりゃあ、当然だろ?コイツはオレのポリシーだからな」

 

いつものように構えようとした瞬間、オレの真横に刀を三本持った青年が並ぶ。確かルフィと一緒に「バラティエ」に来店していた仲間のひとりだったな。

 

「海軍少将には悪いが、アイツとはオレが戦る」

 

「だそうだが?」

 

「べつに構わん。直ぐに終わる」

 

ゆっくりとクリーク海賊団の甲板に乗り移ったジュラキュール殿は黒刀を背負い直し、十字架を模したネックレス型の小刀を引き抜き、静かに構える。

 

「テメェッ!背中の刀を使いやがれ!!」

 

「…………」

 

そう勇ましく吠える緑髪の青年は器用に二刀流の上に口で噛んだ三本の刀を巧みに操ってジュラキュール殿と〝渡り合っているように見える(・・・・・・・・・・・・・)〟が、実際にはジュラキュール殿は手加減した上に利き手ではない不馴れな逆の手で戦っている。

 

その事実に気付いているのはオレと〝赫足〟の異名を持つオーナー・ゼフだけだろう。クリーク海賊団のように〝偉大なる航路〟から直ぐに戻ってきた海賊と違い、彼は本物の強さを備える海賊だ。

 

「フルボディ、貴様は判断を見誤ったぞ。この様な弱き者にオレの相手が務まると本当に思っているのか」

 

「ふざけるなァ!!」

 

「ふざけているのは貴様だ。オレと対峙して尚も向かってくる気概は買おう。だが、己の力を過信した挙げ句の果てが、ちっぽけなプライドのためにがむしゃらに剣を振るうな」

 

スルリと三本の刀を一瞬の内に三本まとめて上空に弾き、ジュラキュール殿は青年の心臓に当たる左胸を小刀で貫いた。まあ、ジュラキュール殿を相手に、よくあれだけ頑張ったものだ。

 

「まだ、だァ…!」

 

「ぬうっ!?」

 

しかし、ジュラキュール殿とオレの予想を裏切るように青年は深々と突き刺さる小刀も無視してジュラキュール殿に頭突きを叩き込み、僅かに彼を退かせる。

 

「オレは負けねェ…負けられねぇんだ!!」

 

そう言って青年は血反吐を吐きながら左胸の刺し傷を塞ぎもせず、地面に落ちた刀を拾いあげ、再びジュラキュール殿を相手に三本の刀を構え直す。

 

「先の非礼は詫びよう。名乗れ、小僧」

 

「ロロノア・ゾロ…!」

 

「ロロノア、貴様の気迫に敬意を表し、世界最強の黒刀で相手をしてやる」

 

ゆっくりと巨大な大刀を引き抜き、ジュラキュール殿はそう宣言した。ああ、そうか、あいつがロロノア・ゾロだったのかとオレは前世の記憶を少しだけ思い出しながら二人の勝負を見つめる。

 

「〝三刀流奥義〟───」

 

グルグルと両手の刀を回転させ、前方の敵を切り裂くように特攻を仕掛けるロロノア・ゾロに、ジュラキュール殿は大上段に黒刀を構える。

 

「〝三千世界〟ッ!!!!」

 

二人は擦れ違い、ロロノア・ゾロの刀が砕ける。

 

やはり、競り勝ったのはジュラキュール殿だ。

 

ロロノア・ゾロは砕ける二本の刀を捨て、白い刀を鞘に納めて後ろに振り返った。なにかを呟いたようにも見えるが、小さな声ゆえにオレ達のところに彼らの会話は聴こえてこなかった。

 

「次は貴様だ、鉄拳」

 

「当然、今回は受けてやる」

 

そう言ってジュラキュール殿はオレに黒刀を突きつけ、血まみれのロロノア・ゾロを回収に行くルフィ達を無視してオレに視線を向け続ける。

 

 

 




〈昼虎〉

出典・NARUTO

木の葉の里の第3班隊長マイト・ガイの必殺技。

純粋な鍛え上げた剛拳による拳圧。絶対無比の破壊力を持つ正拳は空気を圧縮し、大気は虎の顔を象って相手を打ち砕く。


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