【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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〝おでん二刀流〟の錦えもん

赤鞘十人男の〝桃源十拳〟を受けたカイドウは二十年の死闘を思い返していた。心が躍り、魂が震える。己の全身全霊をぶつけても倒れない侍に、どれほど恋い焦がれ、どれだけの想いを向けただろう。

 

「…嗚呼、本当に…痛てえなァ…」

 

人に戻ったカイドウは胴の十字傷をなぞる。

 

赤鞘十人男の攻撃は、かつて受けた光月おでんの〝桃源十拳〟の様に意識を失う程の衝撃的な斬撃には至らず、古傷を開く程度───然れど。カイドウの魂に新しく十人の兵の名が刻まれた。

 

「ウォロロロロロ。光月おでん、お前の家臣は最後まで忠義を全うしたぜ」

 

そう言うとカイドウは地面を見る。そこには全身全霊の〝覇気〟を武器に込めたことで防御力を損ない、命と引き換えに近い形でカイドウに致命傷を与えて倒れ伏す赤鞘十人男が無惨に転がっている。

 

「…ま゛…まだに゛…ござる゛ッ゛…!!」

 

錦えもんが刀を杖代わりに立ち上がる。

 

「……やめておけ。動けば死ぬぞ」

 

静かにカイドウは忠告する。

 

「それ゛でも゛ッッ!!!ひげ゛ぬ゛ッッッッ」

 

だが、それでも錦えもんは吼える。

 

ベヂャッ!と血溜まりの様におびただしい量の血反吐を吐き、微弱な〝武装色の覇気〟を纏いながらカイドウを前にして、二本の刀を握り締め、構えを取った。

 

錦えもんの構えは〝おでん二刀流〟だった。

 

死んだ男の魂は受け継がれる。あの侍は、死して尚も最強の敵としてカイドウに挑んで来るのだ。その非現実的───否、夢見たものが現実に変わった。

 

「侍、名乗れ。最後にお前の名が知りてェ…」

 

「拙者は光月おでんが家臣、錦えもんにござる…!」

 

「嗚呼、しっかりとお前の名前は覚えたぞ、錦えもん。オレの全身全霊をお前にくれてやる」

 

錦えもんの死を覚悟した凄まじい気迫にカイドウの顔付きが変わる。身の丈に迫る金棒を担ぎ上げ、両手で力強く柄を握り締める。

 

「おぉおおぉぉおおおぉおっ!!!!」

 

「ウォロロロロロオォーーーッ!!!」

 

錦えもんが先に駆け出す。

 

とうに尽き果てた〝武装色〟を身体に纏わず、生身の無防備な肉体で力強く地面を蹴り、カイドウの振るう金棒を交差に組んだ刀で受け止め、そのまま切り裂くと同時に金棒を弾き退ける。

 

「〝おでん二刀流〟───〝銃・擬鬼(ガンモドキ)〟ッ!!」

 

ドン!と空を蹴って刀を十字に構えたまま高速で突進した錦えもんは更にカイドウの身体を斬り付ける。

 

「効かねえなァ…!」

 

「がはあ゛ァ゛ッ!!?」

 

───が、錦えもんの斬撃を受けきったカイドウは踏ん張るように地面を踏み締め、乱暴に金棒を振り落として錦えもんを地面に叩き伏せる。

 

「せ゛っじゃばッ……死ね゛ぬ゛ッ!!ま゛だ゛拙者は死ねぬのだアァァァッ!!!!」

 

地面を抉り進んで左の刀を振り上げ、錦えもんは血塗れの顔を歪めながら雄叫びを上げる。全ては亡きおでん様のために、ワノ国を救うために、錦えもんの身体に〝異質な覇気〟が纏わりつき始める。

 

───思わず、ソレにカイドウは笑みを深める。

 

「ウォロロロロロ、化けて出やがったか」

 

「…おでん様ッ…!…」

 

僅かに見えたものは幻か、あるいは────。

 

しかし、ソレは考える時間を惜しむ間もなく錦えもんを包むように同じ構えを取り、ゆっくりと光月おでんなのかも分からないソレの形が崩れ、凄まじい〝覇気〟が桜吹雪となって吹き荒れる。

 

「〝おでん二刀流〟───ッ!!!」

 

もはや悩むことも臆することも止めた錦えもんは二度目の〝桃源十拳〟を放つために構え直す。そんな彼を動けずとも二人の激闘を見守っていた赤鞘十人男の目に、光月おでんと錦えもんが重なる。

 

「〝降三世〟……!」

 

錦えもんの最後の一撃に応えるため、カイドウも必殺の構えを取って向かい合う。ジワリとした嫌な汗が二人の背を伝い、一瞬の隙も見せず、二人は動いた。

 

「〝引奈落〟────ッ!!!」

 

「〝桃源十拳〟───ッ!!!」

 

カイドウの金棒を渾身の力で振り下ろす一撃〝降三世引奈落〟と錦えもんの十字に刀を構えて切り裂く〝桃源十拳〟が衝突し、鬼ヶ島の地表を粉々に砕き、大地を抉るように破壊しながらせめぎ合う。

 

「「オォオオォオォオッ!!!!」」

 

二人は一歩も退かずに魂を燃やす。

 

刹那、カイドウの身体が不自然にぐらつき、錦えもんの放った〝桃源十拳〟がカイドウの身体に深く、深く、深く、食い込み、身体に十字傷を刻み付け、その背後で錦えもんは転がるように倒れる。

 

「……ゼェッ…!…ハアッ……!……」

 

もう、立ち上がるものは一人もいない。

 

「……ウォロロロロロ、良い一撃だなァ……」

 

そう言うとカイドウは満足げに微笑んだ。

 

「勝った、勝ち申したぞ、おでん様…!」

 

錦えもんが血塗れで涙を流しながら亡き君主に告げる。しかし、錦えもんはその言葉を伝えることに二十年間も掛かった事を悔いる。あのとき、あの瞬間、今の強さがあればどれほど……。

 

「……胸を張れ…お前達の勝ち……」

 

そう涙に濡れる錦えもんに倒れ伏すカイドウを語り掛ける。 

 

ふと満身創痍のカイドウが最後の力を振り絞って見つめる先にある男が、呵呵大笑の大笑いを浮かべた光月おでんが「オレの家臣はすごいだろう!」と言いたげに赤鞘十人男の近くに立っていた。

 

 

 

「なんでよ、こんなのウソだろ?あのカイドウが侍なんかに負けるのかよ。クソッ、これじゃまた『ONE PIECE』の歴史が変に狂うじゃねえか」

 

 

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