【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
パウリーを階段の上に向かわせて、ゆっくりと左手を突き出して制空圏を築きつつ猫足立ちに構える。スパンダインは無防備に両手をポケットに突っ込んだまま、コツコツと緩やかに近付いてくる。
「ゼヤァッ!!」
「全く無駄と言っているだろう?」
「ごれなら、どうだァ゛ッ!?」
「この程度なら半歩下がれば問題ないね」
オレの右の中段正拳突きを軽やかに弾き、不可視のパンチを小刻みに放つスパンダインの足元に下段蹴りを打ち込み、強引にヤツの足場を崩しながらカチ上げるように掌底を防御もクソもねえヤツの土手っ腹に繰り出す。
だが、オレの掌底は空をなぞった。
「また焦ったようだね、ホーディ君?」
目の前には少し後ろに軽くステップして射程距離の外側に退いたスパンダインが拳を抜く光景があり、オレは最悪のタイミングで無防備に腕を振り切った姿を晒した事を理解した、そのときだった。
「ぐがあ゛ァ゛あ゛ア゛ァ゛ーーーッ!!?」
目映い閃光に視界を覆われたかと思えば全身を貫く凄まじい衝撃を受け、オレは身動きも取れずに四方八方から無尽蔵に打ち込まれる打撃に叫び声を上げ、防御も攻撃も出来ずに一方的にダメージを蓄積させる。
「ふむ、2751発にて終幕だ」
「───なら、こっちは1発だ!」
パンパンと手袋の汚れを払い落とすように手のひらを叩き合わせる僅かに戦闘の意識の消えたスパンダインの肩を掴み、型もクソもねえ滅茶苦茶な動きでムカつく顔面をぶん殴り、スパンダインをブッ飛ばす。
「あ゛ァ゛ッ、全身が痛てぇ……」
ゴキゴキと首の骨を鳴らしながら口の中に溜まった血反吐を吐き捨てて、ガラガラと瓦礫を押し退けて立ち上がるスパンダインに視線を戻して、今度は前羽の構えでスパンダインの攻撃に備える。
「何故、攻撃に耐えきった?私は確実に急所を打ち抜いて、君の意識も消えかけていたはずだ」
「オレの生まれは魚人街だ。荒くれ者の巣窟、どれだけ〝速さ〟を自慢しても芯の込もってねえパンチなんぞオレには効かねえんだよッ!!」
「成る程、ホーディ君、どうやら君は深海の水圧に耐える肉体と鋼鉄のごとき精神を兼ね備える存在の様だ。ならば、次は不可視の〝指銃〟にてお相手しよう」
「ジャハハハハッ!好きなだけ来やがれ、テメーの弱いパンチじゃあ無理だがな。オレの身体を真っ向からぶち抜きやがったのはジンベエの親分だけだ!!」
「〝
オレの何万回と繰り返した正拳は空振り、スパンダインの拳は確実にオレの急所を打ち抜く。しかし、だんだんとスパンダインの放つ〝不可視の居合いパンチ〟が見えるようになってきた。
スパンダインが遅くなっているわけでもない。
オレに見えているのは〝1秒後の未来〟だ。
「次の攻撃は、左の居合い!」
「なに!?」
「喰らいやがれ、〝鮫瓦正拳〟ッ!!」
「ゴハアッ!?」
ヨロヨロと自分の胸を押さえたままオレの前に立ち続けるスパンダインは息も絶え絶えにしながら「私の動きが、見えるのか……!?」と聞いてきた。
「実際には見えてねえが、オレの未来は見えるぜ」
「クッ、ククッ、こんなピンチの瞬間に〝見聞色の覇気〟の強さが増すなんてね。ゴホッ、ホーディ君の悪運は随分と諦めが悪いようだね」
「ジャハハハハッ、海賊だからな」
ゆっくりとオレは拳を構える。スパンダインも同様に両手をポケットに突っ込んだままオレの射程距離に踏み込んだ。今度はお互いに躱すことは絶対に不可能な一か八かの状況だ。
「〝武頼貫〟────ッ!!」
「〝
水球を掴んだオレの正拳はスパンダインの胸部に突き刺さり、スパンダインの右ストレートは惜しくもオレの頬を切り裂く程度のダメージしか与えていなかった。ジャハハハハッ、正しく紙一重の戦いだった。
「さあ、残りの奴らも来やがれ…!この世界で最も危険なサメの魚人の恐ろしさを貴様らに刻み付けて、二度と魚人に手出しできねえようにしてやる!!」