【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
マリンフォード近海の無人島。
オレはガープ中将のリハビリという名目の単純な殴り合える機会を得てしまった。メリケンサックの調子を確かめるように軽くジャブを放ち、フットワークを確認しながら拳骨を鳴らすガープ中将に意識を集中させる。
もしもの事態を想定してアイボリー、ジャンゴ、そしてセンゴク元帥達は百キロほど離れた海域でオレ達の鍛練を監視しているけど。そこまでガープ中将って信用がないのかと内心で思う。
「よぉうし、いつでも行けますよ」
「ブワァーッハッハッハッ!!ワシも久々に本気で戦えるんじゃ、そう簡単にくたばったら許さんからな……覚悟せえよ、フルボディっ!!」
「おいおい、こっちも本気だぜ?」
ゆっくりとオレ達は間合いを詰めるように近付き、メキメキと拳を握り固める。果たして、オレのパンチは今のガープ中将に何処まで通じるのか、本気で試すには持って来いの機会だ。
「〝ギャラクティカ・マグナム〟ッ!!」
「もっと腰を入れんかァッ!!」
「痛てえじゃねえか、この野郎ッ!?」
「誰がこの野郎じゃっ!!」
全身の〝覇気〟を右の拳に集めてガープ中将のボディを打ち抜いた瞬間、打ち下ろしの左を受け、オレは頭は斜め下に弾けるが直ぐに起き上がる反動を利用して、ガープ中将に殴り返す。
殴って、殴られて、殴り返して、殴り返されて、オレの鉄拳が土手っ腹にめり込んでもガープ中将は怯むことなく拳骨を放ってくる。クソが、どこまでオレより上なんだよ、この人は……!
オレは「まだだ」と踏ん張って地面に両足を固定し、摩擦熱によって炎を帯びる拳〝朝孔雀〟を放つ。しかし、ガープ中将は一発の拳骨で炎を掻き消し、オレの顔面を殴り潰す。
「貴様は小手先の技に頼りすぎなんじゃッ。いくら大それた名前を付けようと所詮は〝ただの強いパンチ〟にしかならんッ!!もっと全身に力を込めろ、お主の拳も肉体も全ての悪事から平和を守るために鍛えた矛と盾じゃろうがッッ…〝
「がはあっ!?」
オレの顎を捉えたガープ中将の拳骨によってオレの意識は一瞬途切れ、そのままぶん投げるように殴り飛ばされ、オレは全身で岩肌を削って地面を転がる。
「(ああ、全身が痛てぇ…強すぎるだろ……)」
ボンヤリと意識の薄れる身体を起こしながら岩石を押し退け、ゆっくりと立ち上がる。きっと、まだガープ中将は本気の五割も出してないな、これ。
「……ハアッ…ゼェッ…!…」
「なんじゃ、もう息が上がっとるのか?」
「まだ、だ、まだ、戦える…!」
ペチンッ…!とオレの拳はガープ中将の腹に当たるが、さっきまでのように激しい衝撃を生み出すことはなかった。ああ、頭が痛い。〝覇気〟も上手く練れない。
───それでも、まだ……!
「かッ、はあっ、うおぉ…ッ…」
「やめんか、もう終わりじゃ」
「い、やだ、まだ、オレは…オレはッ」
ペチンッ、ペチンッ。
柔らかい肉を押しつける程度のイモムシよりも遅いパンチを繰り返し、ガープ中将に攻撃を放つ。こんなんじゃあ、ガープ中将のリハビリにもならない。
オレを支えてくれるアイボリーやジャンゴが見てるっていうのに、なんでオレはこんなに弱いんだよ。もっと、強く、いつもみたいにパンチを打ち込んで。
「まともに〝覇気〟も練れん。いつものように拳にも力は乗っとらん。意識も薄れかけの状態でワシと戦えると思っとるのか?」
「あ、ぐぅ…」
浮いた、違う、頭を掴まれてるんだ。
そのときだった、オレの中で何かが蠢き始める。
「ア゛ァ゛ッ、なに、が、ぐる?」
これは、オレの〝覇気〟じゃない。
「フルボディ?どうしたんじゃ、しっかりせい!?」
まずい、意識…が…飛ぶ……。
「我は拳を極めし者なり」
「ヌウゥッ!!?」
オレじゃない、誰かが……。
ガープ中将に殴りかかった。
〈朝孔雀〉
出典・NARUTO
木の葉の里のマイト・ガイの必殺技。
八門遁甲の六門まで解放して放つ〝摩擦熱〟の炎を帯びる無数の拳。美しく扇状に拡がる炎の拳は一瞬にして相手を焼き尽くし、打ち砕く。