【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。 作:SUN'S
ガープ中将と戦っていたフルボディの気配を感じなくなった瞬間、オレの目の前に飛び込んできたのは身の毛も弥立つ〝殺意の塊〟に支配されたアイツだった。
基本的に蹴り技を使いたがらないフルボディが、当たり前のようにキックとパンチを巧みに使い、ガープ中将を翻弄し確実に命を刈り取るために攻め立てる。
「やめろ、そんなのお前じゃねえだろ」
オレの呟きを聞いていた海兵が一斉に此方に視線を向ける。そりゃあ、そうだ。いつもアホみたいに元気で敵の海賊にも酷い致命傷を与えないアイツが、今は本気で相手を殺そうとしているんだから。
「嬢ちゃん、止めてくるわ」
「…お願いします、ジャンゴ氏……」
「おう」
力強く空気を蹴って無人島に飛び込み、オレはフルボディと殴り合っているガープ中将の後ろに着地しながら威力を殺さず、そのままフルボディに突撃する。
「さっさと起きろ、このパンチ野郎がッ!」
「ぐっ、があっ!?」
オレのニー・ドロップを胸部に受けたフルボディは後ろに吹き飛び、ほんの少しだけガープ中将と話し合える僅かな猶予を得る。
「ガープ中将、後はオレがやります」
「……やれるのか、お前に?」
その言葉の重みも意味も分かっている。
純粋な強さで言えばオレはフルボディには到底敵わないし、大事な昔を語り合える唯一の親友だ。今だって〝殺意の波動〟に呑み込まれたフルボディを見るだけで怖くて、逃げ出したい気持ちになる。
───だけど。
「オレはアイツの親友なんですよ」
「…分かった。フルボディの事は貴様に任せる。じゃが、もしも危険と判断すればワシは直ぐに飛び込み、あの暴走しとるフルボディを倒す」
そう言うとガープ中将は後ろに下がり、両腕を組んだまま地面に座り込み、オレとフルボディに静かに闘志の衰えぬ視線を向ける。
「ジャンゴ、お前にオレは倒せん」
「知ってるよ、それぐらい」
ゆっくりと地面に落ちていたフルボディのナックルを拾い上げ、オレはナックルを右手に嵌める。今回だけお前の武器を使わせてもらうぞ、フルボディ。
「ケンカしようぜ、親友!」
「ならば塵に還してやろう、来い…!」
「ウオオォオオォッ!!!」
オレはがむしゃらに突撃する。
コイツに小細工なんて通じない。やるなら真っ向で殴り合って、フルボディの意識を取り戻させることだ。バケモンみたいなコイツのパンチを受け続けたら、ホントに死ぬかもしれねえけど。
「〝ライダーパンチ〟ッ!!」
「効かん!」
「げがっ、ぐうっ、だあぁぁっ!」
「グガッ、おのれぇ!」
フルボディのラッシュを受けながら返せるのは一発か二発のパンチだ。もっと、強くなるからよ、お前だけに押しつけたりしねえから、帰ってきてくれよ…!
「〝マッハ・パンチ〟ッ…!」
だんだんとラッシュの速度が弱まり、オレの拳がフルボディに届くようになる。届け、届いてくれ、なんのために鍛えた〝覇気〟だ、全部一緒に肩を並べて戦えるようになるためだろうが!!
「〝八門遁甲〟───〝三門・開〟ッ!!」
「貴様の無駄な足掻きに程々呆れる。……たかが三門を開いたところでオレの力の半分にも満たない!」
「知ってるよ、オレは弱いからな。でも、オレはお前の親友で、この世界で唯一本気で笑い合える相棒なんだ!だから、だからよォ……そんな殺意に呑まれるんじゃねえよ、この大馬鹿野郎オォォーーーーッ!!!」
すべての力を込めて、フルボディの顔を殴った。
ただの大振りなパンチだ。
避けようと思えば簡単に避けられるパンチを〝殺意の波動〟に呑まれていたフルボディは避けなかった。ゆっくりと倒れたまま動かないフルボディに近付き、なんか悔しそうにしている親友を見下ろす。
「よう、起きたか?」
「ああ、起きたよ。ありがとな…」
「礼とか要らねえよ、馬鹿野郎。いきなり〝殺意の波動〟なんか発症しやがって、どこで貰ってきたんだよ。そんな物騒なもん」
「あー、ちょっと前にバーソロミュー殿にオレの中には『意志』が宿ってるとか何とか言ってたけど。たぶん、それじゃねえかな?」
「お前、そういうのは話してくれよ」
そんなことを言い合いながらフルボディに肩を貸して、立ち上がらせる。まあ、なんとかフルボディの意識は取り戻せたし、今回は万々歳だ。
「フルボディさあぁぁぁんっ!!!」
「あっ、ちょ、うぎゃあぁぁぁっ!!?」
半泣きで飛び付いてきた嬢ちゃんを避けられず、全身ズタボロのフルボディは情けない悲鳴を上げながら倒れた。結局、こうなるのね。
やれやれ、と呆れながらオレはナックルを外してイチャイチャしているフルボディに投げ返しておく。しっかし、なんでガープ中将達は男泣きしてるんだ。
センゴク元帥も大将達も他の海兵も「えぇんじゃ、これは汗なんじゃあ」とか泣きわめいてるし、ホントになんなんだ、この状況は?
「イテテ。まあ、何はともあれ。よろしくな、
「おう。此方こそよろしくな、
そう言ってオレはまたま号泣している嬢ちゃんに抱きつかれて半泣きのフルボディと挨拶を交わして、ゆっくりとセンゴク元帥達と一緒に軍艦に戻る。
〈殺意の波動〉
出典・ストリートファイター
フルボディの侵食された波動
どんな達人だろうと宿してしまえば恐ろしい〝殺意〟に呑み込まれ、やがて自我を喪失して強者を求め続ける悪鬼に成り果てるだろう。