【完結】ごきげんよう、オレは海軍〝大佐〟のフルボディだ。   作:SUN'S

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〝竜を斬った侍〟

「クソっ、どんな馬鹿力してんだよ…!」

 

巨大な城の外壁をぶち破って床に叩きつけられる。あのCP9の鼻野郎でもここまでふざけたパワーはしてなかったぞ。そんなことを思いながら立ち上がった瞬間、背後に凄まじい殺気を感じ、刀を構える。

 

カラン、カラン、と───。

 

下駄の音が反響し、影を抜けて侍が現れる。

 

よく見ればガイコツを引き摺っている。

 

オレ達と別れるときに「私は〝影〟と決着を付けるために準備しているんです」とは言ってたが、まさかその〝影〟ってのは、この侍か?

 

「……ヨホホホ、貴方が私の相手ですか?」

 

「……ああ、そうなるな」

 

威圧感はさっきのオッサンより上、強さは経験則で言えば鷹の目並みの気配だ。さっき下で言ってやがったオッサンの言葉も気になるが、今はただ斬ることに集中すれば良いだけだ。

 

バンダナを頭に巻き、二本の刀を抜き、構える。

 

「……二刀流、して三本目は?」

 

「悪いな、三本目は折れてるんだ」

 

「それは残念」

 

オレの言葉に残念がる侍が左腰に佩刀した刀の柄に手を添えた瞬間、五倍、いや、十倍は威圧感が跳ね上がる。コイツは何とも斬り応えの有りそうな相手だッ!

 

「〝二刀流〟───〝鷹波〟ッ!!」

 

「ヨホホホ、随分と荒々しいそよ風を」

 

カチン…と鍔鳴りが侍から聴こえた一瞬、オレの作り出した風圧の剣戟は霧散し、わざと刀の柄に手を添えるヤツの姿が見える。

 

煽ってやがるな、あの侍野郎…!

 

「ならば、今度は此方の剣を」

 

そう言うと侍は佩刀を止めて、大手を振って全身を晒すように鞘と刀を抜き、刀を順手に鞘を逆手に持って大股に踏ん張るように構える。

 

それは、黒い刀だ。

 

異様な存在感を放つ星すら呑み込んでしまう闇の夜を彷彿とさせる刀身に浮かぶ独特の乱れ刃、鷹の目並みなんてもんじゃねえ。

 

この侍はアイツと同等の強さを持ってやがる。

 

「〝夜明歌(オーバード)・クー・ドロア〟ッ!!」

 

「なっ、突き技だと!?」

 

「ヨホホホ、驚く暇はありませんよ!」

 

神速の刺突技(つきわざ)を刀の峰を利用して、受け流しながら侍の動きとは思えない剣戟に戸惑う。しかし、オレの戸惑いを遮るように黒刀を宛ら錐のように捻り、オレの防御する腕を無理やり巻き込み、螺旋状の斬撃を放つ。

 

こうなりゃ後ろ、いや前に跳ぶしかねえ…!

 

「おわっ、とと!?」

 

激しい破壊音を聴きながらガラガラとネジ巻きの形に削れた壁の傷に苦笑いを浮かべ、再び黒刀を鞘に納めてオレを見据えるために侍は後ろに振り返った。

 

「さっきの剣戟を避けるために後ろに跳べば全身を円錐形に刻まれていましたよ。善き観察眼をお持ちのようで。ああ、これならば少し本気を出せる…!」

 

「ソイツは何とも面白そうだ!」

 

「ヨホホホ」

 

オレは両手の刀を更に強く握り締めて〝弐斬り〟の連続剣戟を繰り出す。だが、侍はオレの攻撃を寸分も違わず間合いを見切り、斬る技より突き技に特化した剣戟を繰り出して、オレの間合いを簡単に突き抉る。

 

下段を突く剣戟を地面に刀を突き立てて防ぎ、オレの振るう逆薙ぎを半歩ほど後ろに退いて躱す。何処かオレの習った流派の歩法に近い動きで詰め寄り、一瞬でも意識を抜けば確実に心臓を貫く通す鋭く刺突技を身を翻して受け流し、そのまま威力を殺さずに無防備な侍の(うなじ)に左手の刀で切り返す。

 

「そう簡単に私の首級(くび)は渡しませんよ」

 

ニタリと筋肉の削げた顔で笑う侍に自然とオレも笑みを浮かべて、更に剣戟を交わし合う。なんだ?さっきからアイツの動きが遅く見える───。

 

いや、違う、これは先手を察してるのか!?

 

今度は中段に右薙ぎが来る。

 

「(まだ、原理は分かれねえが。オレはアイツの〝先の先〟を感覚で感じるようになってるのか?)」

 

さっきと同じように刀を突き立てれば侍の右薙ぎを感じた通りに防ぐことに成功し、さらに追撃を加えるようにオレは刀を振り上げる。

 

僅かに着物の袖を刀の切っ先が掠める。

 

「ようやく当たり始めたな?」

 

「ヨホホホ、これは何とも恐ろしき速さで」

 

ゆらりと侍の身体が左右に揺らめく。

 

「────〝奇想曲(カプリチッオ)ムジュール〟」

 

トン、トト、トン、独特の歩みだ。

 

そう感じた次の瞬間、オレの眼前に黒刀の切っ先が現れ、慌てて身体を真横に逸らして剣戟を避ける。……いや、完全には避けきれなかった。わずかに額を掠めた切っ先を警戒するように後ろに退がる。

 

「ヨホホホ、この技を躱しますか」

 

「完全には躱せたわけじゃねえ。ただ辛うじてお前の太刀筋を見えただけだ」

 

鷹の目を越えるために打って付けの相手だが、コイツにオレの三刀流を使えねえのがホントに残念でしょうがねえな。それなら、もっとこの侍とも互角以上に渡り合えるってのによぉ…!

 

あの錆野郎、もっと強く斬っときゃ良かったぜ。

 

 

 

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