ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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連続投稿しています。
二話目です。


第15話

 

 

 「はぁ……」

 

 今日の清嗣君の発表……。妖怪は悪いことをして人間に退治されちゃった。

 けど、屋敷にいるみんなは、そんなことをする妖怪たちじゃないし、みんなやさしい。

 それに、じいちゃんのこともだ。

 ぬらりひょんは人の家に勝手に上り込んで、勝手にご飯を食べる子悪党って清嗣君はいってたけど、じいちゃんはそんな格好悪くない。じいちゃんは妖怪の総大将で、強くてかっこいいんだ!

 

 けど……。

 

 「どうしたんですか?元気がないですよ?」

 「うん……。ちょっとね……」

 

 振り向くと、首無しがお膳をもって立っていた。

 しかし、その姿はどこかボロボロだった。そういえば、家に帰ってきたときどこかから悲鳴みたいな声がたくさん聞こえてたけど、それかな?

 

 「首無し、ボロボロだけど、どうしたの?」

 「あぁ、いえ、これはちょっと厨房で……」

 「?」

 「そ、それよりリクオ様。今日は親分集の寄合があるのです。総大将が呼んでいましたよ」

 「じいちゃんが?」

 

 なんだろう。じいちゃんが寄合にぼくを呼ぶのは初めてだ。

 そういえば桔梗も家に帰ってきてるんだったな。

 

 「桔梗は?桔梗も呼ばれてるの?」

 「……呼ばれているのはリクオ様だけですよ」

 

 桔梗の名前が出た途端首無しの顔が一瞬ひきつったような気がするけど……そうか、桔梗は呼ばれてないんだ。

 じいちゃんは桔梗のことを溺愛してるし、呼ぶときはいつも二人セットだ。

 

 ほんと、何の用だろう?

 

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 「お前たちに集まってもらったのはほかでもない。そろそろ決めなければと思ってな。……奴良組三代目を」

 

 じいちゃんの言葉に、みんなざわついてる。

 

 「あれから三年たった。そろそろ次の総大将を決めてもいいころだと思ってなぁ」

 

 

 

 三年――――。

 

 

 背を丸める母さん。

 険しい顔のじいちゃん。

 拳を固く握る青田坊たち。

 雪女の冷たい手。

 そして、彼らが見つめる先にいるのは――――。

 

 

 

 

 「失礼いたします」

 

 

 その声にハッとしてみると、桔梗が着物姿で頭を下げていた。

 桔梗は普段巫女みたいな袴に打掛を羽織っているけど、家の手伝いをするときは、母さんみたいな着物を着る。

 前に、何で着分けるのか聞いてみたら、

 『袴の時は総大将の孫だけど、着物のときは奴良組の女集の一人として手伝いたいからですよ』

 といってたけど、どう違うのか、ぼくにはよくわからない。

 

 「暖かいお茶をお持ちしました」

 「おぉ、そうか。入れ入れ」

 「失礼いたします」

 

 桔梗は一礼すると、後ろにいた人たちにも頷いてお盆に乗ったお茶を運んできた。

 桔梗は運動神経皆無だから、つまずいてお茶をぶちまけないといいけど。

 ……なんて考えてたら桔梗に睨まれた。

 もしかして考えてることバレたかな。

 

 

 

 「それはよろしいですな」

 

 声のしたほうを向くと、フードをかぶった妖怪が大きな口を歪ませた。

 

 「いつまでも隠居した初代が代理ではおつらいでしょう。それに……」

 

 その妖怪の視線が、部屋を出ようとする桔梗のほうを見た気がした。

 

 「奴良組存続のためにも、優秀な子孫を残さねばなりませんからな。優秀なものが次の総大将になるのがふさわしい」

 「悪事ではガゴゼ様の右に出るものはおりません」

 「なんせ今年おこった神隠しはすべてガゴゼ会の所業ですから」

 「え?」

 

 神隠し?

 子孫?

 いったい、何のこと?

 

 「子どもを地獄に送るのが、わしの業ですから」

 

 地獄?

 子どもを?

 そんな……妖怪が……そんな悪いことをするなんて……。

 

 「相変わらず現役バリバリじゃのう。ガゴゼ」

 「じいちゃん!?」

 「お任せくだされ」

 

 ガゴゼは恭しく頭を下げ、にやりと笑った気がした。

 その視線が、じいちゃんではなく桔梗にむいた気がした。

 「だが、お前ではだめだ。三代目は孫のリクオを据えようと思っておる」

 

 「なんと!!」

 「まだ子どもではありませんか!」

 

 「……じいちゃん」

 「リクオ、お前がほしがっていた三代目の座だ。お前にくれてやるぞ」

 「……だ……」

 「ん?」

 「いやだ!」

 

 悪い奴らの仲間になんてなるもんか!!

 

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 「これ、リクオ!」

 

 おじい様がリクオを呼び止めるも、リクオは出て行ってしまいました。

 ガゴゼさんの所業を聞いて、初めていい妖怪だけではないと知ったのです。

 そして何より、英雄視していた大好きなおじい様が、悪い妖怪の総大将だと知ったのが、何よりもつらいのでしょう。

 

 

 ……そして私ですが、完全に部屋をでるタイミングを失ってしまいました。

 

 「うぅ、桔梗や。リクオが反抗期になってしまった」

 

 おじい様が私に泣きついてきたので、とりあえず頭をなでておきます。

 ツルツル。

 

 「総大将。失礼ながらリクオ様は本当にあなたのお孫様なのですが」

 「あん?」

 

 めそめそと泣いていたおじい様がその言葉を聞いて鋭い目を向けました。

 これには私も少しムッとします。

 

 「姿かたちはもちろん、考え方もまるで人間です。桔梗様は、おばあ様である珱姫の能力を多少なりとも受け継いでおられますが、リクオ様にはその兆しも見られない……」

 「こまったものですな。どうやら若はまだまだ遊びたい盛りの子どものようですな。それに比べ、桔梗様は落ち着いてらっしゃる」

 

 私は一礼をするだけにとどめておきました。

 リクオがまだまだ子どもなのは仕方のないことです。なんせまだ八歳なのですから。

 妖怪の成人は十四歳といいますが、まだまだ遊んでいていいと思うのです。

 もっと遊んで、いっぱい学んで大人になっていけばいいと思うのです。

 私の精神年齢が異常なだけなのですから。

 

 「……とりあえず、採決は延期じゃ。皆の者、ご苦労だった」

 

 おじい様のその一言で、集まった妖怪たちはそれぞれの場所に帰っていきました。

 おじい様は最後の一人を見送ると、深いため息をついて脇息に肘をつきました。

 私は疲れた様子のおじい様に近寄り、お茶を差出まします。

 

 「おぉ、すまんのぉ」

 

 受け取ったお茶をすする姿は、どこにでもいる余生を過ごしているおじいちゃんです。先ほどの、妖怪の総大将たる威厳はどこにもありません。

 

 「心配いりませんよ」

 「ん?」

 「心配しなくても、リクオは三代目になりますよ」

 「……桔梗は本当に聡い子じゃのぅ」

 

 おじい様は苦笑して私の頭をなでてくれました。

 えへへ。

 

 「ま、リクオに関してはその心配はあまりしておらん」

 

 ふと、おじい様が真剣な表情で私を覗き込みました。

 

 「リクオはわしに似ているが、お主はばあさんにそっくりじゃ。その能力も受け継いでおる。……じゃが、確かにお主にもわしの血が流れておるのを忘れるな」

 

 それは、忘れることはないと思いますよ、おじい様。だって、その妖怪の血が原因で、私は今まで――――今でも、倒れてばかりなのですから。

 でも、おじい様はそれとは少し別のことを言っている気がします。

 

 

 「ガゴゼに気をつけよ」

 

 

 そう言って、おじい様は私の頭を少し強くなでました。

 

 

 

 

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