東方異狂天   作:青緑んご

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小傘ちゃんはどこ住みや……。


驚かし大作戦(多々良小傘)

小傘「よーし今日も驚かすぞー♪」

 

 

 

 私の名前は多々良小傘。人を驚かせることが趣味の唐傘妖怪だ。今日も人里で呑気に歩いている村人を驚かせてやる。

 そうこうしているうちに誰かが来た。私は隠れてタイミングを見図る。やがて近づいてきた。よし、せーの…

 

 

小傘「おどろけー!」

 

 

 私は相棒のお化け傘を持って前に出た。だが、相手は全く反応をしなかった。それどころかスルーされた。少しは反応してくれればいいのに………。

 その後も驚かせようと一生懸命努力するが、なかなか成果がなかった。毎度の事ながらいつもこんな感じだ。

 

 

小傘「…はぁ、今日も誰も驚いてくれないや………」

 

 

 私は叫び疲れてしまい、道の隅っこに座ろうとした。その時、また誰かが来る気配がした。どうせ次も駄目だろうなと思い、半信半疑で見ると、人里で初めて見る顔だった。どうやら男性らしい。

 

 

小傘「あ、もしかしたら驚いてくれるかも!よーし!」

 

 

 私は定位置に戻ってその人が来るタイミングを測る。そして…

 

 

 

小傘「おどろけーーー!!!」

〇〇「うわあ!!」

 

 

 私は渾身の力を込めて男の人を驚かせた。それに反応したのか男の人はひっくり返って尻餅をついた。

 

 

小傘「やったー!驚いてくれたー!」

〇〇「いてて……びっくりした………」

 

 

 私は飛び跳ねて喜んだ。こんなに驚いてくれたのは久しぶりだ。今まで誰も驚いてくれなかった分が一気に吹っ飛んだかもしれない。

 暫くして男の人の様子を見るとなかなか起きなかった。ちょっとやりすぎたかな……。私が男の人を起こそうとした時、

 

 

 

××「ちょっとあんた、何やってんの?」

 

 

 一人の若い女性が現れた。この男の人の連れだろうか。

 

 

〇〇「大丈夫だよ…ちょっと驚いて尻餅着いただけだから……」

××「驚いたって……、あんた唐傘おばけの多々良小傘じゃない!」

小傘「ひっ………!」

 

 

 女の人の突然の叫びの圧に私は体がすくんでしまった。

 

 

××「あんたの仕業ね、何てことしてくれたのよ!こいつに怪我させるとか責任取れるんでしょうね!?」

小傘「いや…あのこれは………」

××「ただえさえこいつはビビリなのに、気安く驚かしてるんじゃないわよ!」

 

 

 女の人は私に対して怒りの表情を表した。私はただ驚かしただけなのに……。

 

 

〇〇「まあまあ落ち着きなよ。別に大した怪我じゃないし、ビビリな僕が悪かったんだから……」

××「アンタもアンタよ!何でこんなしょうもない驚かしにビビるのよ!」

小傘「え…」

 

 

 彼女のトゲのある言葉が私の心に突き刺さった。しょうもないって……。

 

 

〇〇「いや別にそれは……いいじゃないか。僕は普通にビビっただけだよ。それに人それぞれ何だしさ………」

××「良くないわよ!兎に角早く行くわよ!お団子が売り切れるでしょ!」

〇〇「分かったって…そんなに引っ張るなよ………」

 

 

 男の人の腕を強く引っ張る彼女はもう一度私を見るともう関わるなと言わんばかりの険しい表情を出して、男の人と行ってしまった。その場に取り残された私はただ黙ってるだけだった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 その日の夕方に差し掛かった頃、私は森の隠れ家の前でジッと座り込んでいた。今日の言葉が突き刺さって、自信を無くしていた。

 

 

小傘「私の驚かし…しょうもないのかな……」

 

 

 これまでも何度か純粋な驚かしをしては色々文句や愚痴などあったけどああまで言われたのは初めてだった。驚かしの日課を辞めた方がいいのかな……。私は半ば諦めて隠れ家の家へ帰ろうとした。と、その時、

 

 

 

〇〇「小傘ちゃん……だよね?」

 

 

 何処かで聞いた事のある声が私に話しかけて来た。私はその声の主に顔を向けるとそこにいたのは、今日脅かしたあの男の人だった。

 

 

小傘「貴方は……今朝の……」

〇〇「〇〇だよ。ごめんね、さっきは彼女が傷つく様な事言っちゃって………」

 

 

 〇〇という人は頭を掻きながらペコペコと私に謝ってきた。驚かせたのは私なのに……。

 

 

小傘「いえ、そんな……。私の方が謝らないといけないのに………。突然貴方を驚かしちゃって……」

〇〇「いいのいいの、そんな事しなくたって。」

 

 

 彼は怒るどころか私に笑顔を見せてきた。その笑顔を見て私は少し元気になった。なんて優しい人なんだろう………。

 

 

〇〇「ああ、そうだ。折角だしこれ食べるかい?ちょうど買い過ぎちゃったんだ。」

 

 

 と、〇〇は左手に持っていた小包をあけて私に差し出した。

 

 

小傘「え、い、いいの…?私が食べても…。それ貴方の分じゃ……。」

〇〇「いいよ。お腹減ってるんだろ?」

 

 

 〇〇はまた笑顔を私に見せた。私は○○が差し出したお団子を貰って食べた。その味はとても美味しかった。こんなに食べ物が美味しいのは久しぶりかもしれない。

 

 

小傘「…美味しい!」

〇〇「あはは、それは良かった。」

 

 

 私は再び元気を取り戻した。その後、○○と時間を忘れるくらいに話した。そして私はいつの間にか○○に好意を持った。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 ここは幻想郷の外れに存在する命蓮寺。私が居候になっている住処だ。

 

 

小傘「ふんふんふーん♪」

ぬえ「あれ、小傘。今日は偉く上機嫌じゃん。」

小傘「あ、ぬえ」

 

 

 お化け傘の手入れをしていると親友のぬえが話しかけてきた。ぬえは私の事をよく知っており、時々驚かしの作戦を考えてくれている。私は昨日起こった出来事を打ち明けた。

 

 

小傘「ふふふ〜、久しぶりに驚いた人がいてね。それで気分良いんだー。」

ぬえ「へー、小傘に驚く奴がいるなんてまだこの世にいるんだねー。」

小傘「ちょっとそれは酷くない……?」

ぬえ「ま、アンタが幸せならそれで良いけど、もし何かあったらあたしに相談しなよ。それじゃ。」

 

 

 ぬえは鼻歌を歌いながらその場を後にした。

 

 

小傘「ぬえの助けは要らないよ、何せあの人がいればそれでいいもん♪」

 

 

 

 

 それからというもの、私は○○と会う日がほぼ毎日の様に増えていた。勿論、彼女さんがいるのを分かった上で距離を置いて会っている。彼女がもしいれば空気を読んでその場にはいなく、いなければその日に会っている。その時は随時驚かしたりしていた。それに対して○○は驚くが、怒るどころが逆に笑ってくれる。そんな日々が続いたある日の事だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 いつものように人里の裏道を通っているとお茶屋さんの椅子に座っている〇〇がいた。私の気配に気づいていないのか、ずっと下を向いている。

 私は〇〇に気付かれないようにそっと近づいて驚かした。

 

 

小傘「ばあ!」

〇〇「うわあ!」

 

 

 私は〇〇の前に飛び出して大声を出した。その拍子に〇〇は反応して椅子から転げ落ちた。

 

 

〇〇「ああ、何だ小傘ちゃんか…びっくりしたよもう……。」

小傘「えへへー、〇〇は相変わらずビビりだねー」

〇〇「あはは、そうだね…。ほんと情けないよ……。」

 

 

 と、〇〇は起き上がって笑っていたが何やら無理してるようだった。私は軽く謝罪して〇〇を椅子に座わし、姿勢を正して○○の横に座った。

 

 

小傘「〇〇…何かあったの?私でよければ相談に乗るよ?」

〇〇「ああ……、実はね……昨日彼女を怒らせちゃってね……」

 

 

 彼女……この前私にしょうもない驚かしって言ってた女の人か……。

 

 

〇〇「僕の家で……食事をしてたんだけど…、僕が作った料理を持って行った時に…転んで料理を溢しちゃって…。それが彼女にかかってしまったんだ…。その後、彼女の衣服にかかったから弁償したんだ。」

小傘「そう…なんだね…」

〇〇「ははは……、僕は何で…こんなにどうしようもなく…情けないんだろうね…。この間もとある男性にぶつかってケガさせちゃったし…ホント…」

 

 

 〇〇は激しく自暴自棄になった。その顔は笑ってはいるが目には涙が溢れそうになっていた。無理して泣くのを我慢しているのだろう。私はそんな彼を励ます。

 

 

小傘「〇〇は情けなくないよ!」

〇〇「………え?」

小傘「〇〇はかっこいいよ!ちょっとビビりだけど優しいもん!だって私に励ましてくれたし、いつも会ってくれるじゃん!」

〇〇「小傘ちゃん…」

小傘「だから…自分を責めないで!何なら私も協力するから!」

〇〇「………」

 

 

 私は〇〇の手をしっかりと握って励ました。今度は私が○○を助ける番だ。○○を悲しませないようにしなきゃ。

 すると〇〇は少しだが今まで我慢をしていたのか涙を流した。余程辛かったんだろう。そして、○○はいつものように優しい笑顔になった。

 

 

〇〇「ありがとう小傘ちゃん。おかげで元気になったよ。」

小傘「よかった。どういたしまして!」

 

 

 私も〇〇と同じ笑顔になった。その後〇〇と一緒にご飯を食べに行ったり、おしゃべりをしたりといつものように楽しんだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 そして何日か経ち、夕方に差し掛かった頃、人里から少し離れた杉並の道で私は日課である驚かしを練っていた。

 すると人里の方角から2人の人間がやってきた。どうやら男女のようだ。

 

 

小傘(よーし、あのカップルにしよう!)

 

 

 作戦を考えた私は草むらに隠れて、2人が来るタイミングを待った。と、私は不意に一人の顔を見て気づいた。

 

 

小傘(あれ…あの人、どこかで…?)

 

 

 よく見ると1人は〇〇の彼女の様だ。相手は〇〇ではなく別の男性だった。何でその彼女がこんな所で別の男性と……?

 

 

 

 

××「どう?凄い金額でしょ?」

男「ホントだな……。こりゃたまげた……。」

 

 

 

 2人は何やらこそこそと話をしていた。最初は聞き取れなかったが、草むらを通って少し近づくとこんな会話をしていた。

 

 

 

××「当たり前じゃない、当然よ。アイツに弁償しろって言っとけばいくらでも手に入れられるんだもの。アイツはお人好しだから私のベタな芝居でも気づかないわよ。私がワザと料理にかかろうとしてた事もね。」

男「ホント悪い奴だなお前……。」

××「それはお互い様よ。アンタも同じ事してたじゃない。アイツにワザと当たりに行ってカツアゲしてたんでしょ?アハハハハ」

男「ああ……、そう…だったな……。アハハ……」

 

 

 ××は〇〇を嘲笑うかのように高笑いしていた。そうか…彼女は〇〇を金づるしか考えていない女だったんだ。〇〇に金目当てとして近づいて、○○を困らせたんだ。

 そう思うと腹が立ってきた。あの女は〇〇が堕落するまで徹底的にやるつもりだ。

 

 

 

小傘(ゆるさない………!!)

 

 

 

 今すぐにでも報復しに行きたいが、1対2だといくら妖怪の私でも負けてしまう。それよりも私は怒りを抑えてあの女にとっておきの驚かしをする事に決めた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 その日の夜、××は男と夜遊びをして満足したのか誰もいない人里の外れで座っていた。

 

 

××「さてと、そろそろアイツの所に行きましょうか……」

 

 

 ××は背伸びをして○○の家へと向かった。勿論○○の彼女……という演じた形の慰謝料請求だ。次はどんな方法で困らせてやろうかと考えていた時、

 

 

 

 

グサッ!

 

 

××「ぐふっ?!」

 

 

 

 突然、背後に何者かが包丁で刺され、××はその場で崩れる様に倒れた。××は痛みに苦しみながら恐る恐る振り返るとそこにいたのは××の返り血を浴びた小傘だった。

 

 

 

小傘「ふふふ、やっと驚いたね。お姉さん♪」

××「アンタ……多々良小傘……!」

 

 

 小傘はにこやかに笑っていたが、その笑顔は恋人を傷つけた復讐鬼のようなオーラを漂っていた。

 

 

小傘「驚いたでしょ?これでもうしょうもなくないでしょ?」

××「ぐっ………!」

小傘「ねー何か言ってよー」

 

 

 小傘は子供のようにグイグイ突っ込む。その行動に××は激高する。

 

 

××「ふざけんな………!アンタ……たかが下級の…妖怪のくせに………!こんな事して…ただで済むと…思ってんの………!」

 

 

 ××は死に物狂いで小傘につかみかかる。その拍子に小傘の肩にべっとりと血がついたが、小傘は全く動じなかった。

 

 

小傘「関係ないよ、私は弱小妖怪だから。」

××「はあ……?!」

小傘「そもそも悪いのはお姉さんじゃん、〇〇が…〇〇がお姉さんのせいで酷い目に遭ったんだよ………。○○は何も悪い事してないのに…あんな事になっちゃってさぁ……!」

××「はぁ……?アンタには…関係ないじゃない…!だいたい何で……妖怪のアンタが…アイツの肩代わりに……なってんのよ…!アンタも……アイツを無意味に…驚かしてる癖にっ…!?」

 

 

 ××が反発を言い終える前に小傘は××の腹を包丁で突き刺した。

 

 

××「ぎゃあああああ!!」

小傘「もういいよお姉さん、黙って死んでよ。」

××「この……ちび妖怪……!!」

 

 

 ××は最期の力を振り絞って小傘に掴み掛かるが、小傘に軽くあしらわれ、その場で仰向けになる。そしてとどめとして小傘は××の腹をさらに突き刺した。やがて動かなくなった××を小傘は冷たい目でキッと睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 翌日、人里にて××の遺体が発見された。里の人々は色んなリアクションをとっていたが、決して悲しむ人はいなかった。

 ××は詐欺師として人里では有名であり、実際多くの被害が数人出ていた。その為、寧ろ死んでよかったと心の中で思っている人々もいた。ちなみに××の男の方も詐欺師だったのだが、実はただの一般人であって決して悪い奴ではなかったのだ。実は男も被害者であり、脅されて仕方なくやっていたという。男は解放されて喜んではいたが現在取り調べとして牢屋にいる。

 そしてその場には被害者の一人である〇〇もいた。当然悲しむことはなかったが………、

 

 

 

〇〇「……喜んでいいのか、悲しんでいいのか……」

 

 

 〇〇は心の中で罪悪感を持っていた。確かに××は憎かったが、自分から復讐する勇気はなかった。元からお人好しで優しい性格であるため、そこまでやる必要はないだろうと思っていたのだ。

 そして現場がひと段落し、○○が帰ろうとした時、

 

 

 

小傘「〇〇」

 

 

 小傘が心配そうな顔をして〇〇に話しかけた。

 

 

〇〇「……小傘ちゃんか、今日は驚かさないのかい?」

小傘「だって……人里であんな事件が起きたじゃない……。いくら私でも空気ぐらいは読めるよ。」

〇〇「………だよね」

 

 

 〇〇は頷き、ため息をついた。

 

 

小傘「元気出してよ!今日は私がお団子ご馳走してあげるから!」

〇〇「ああ、ありがとう小傘ちゃん」

 

 

 小傘の励ましに元気になった〇〇は元気を取り戻して小傘と手を繋いだ。過ぎた事は忘れてまた一から歩みだそうと思い、○○は小傘と一緒にお団子屋へと向かった。

 

 

 

 

小傘(ふふふ、〇〇。いつでも私が守ッテアゲルネ)

 

 

 小傘は〇〇が見えない所で小さく黒い笑みを浮かべた。




小傘ちゃんの能力って妖怪相手じゃ無意味じゃね?
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