魔女を匿う代わりに、ヤらせてもらう事にした。   作:焚火ゆらゆら

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再度ギルドに

アリアから引き出せる強力な剣は、今後はもう使わないと胸の内で決めた。

自分の生きてきた中での少ない経験で何となくそうした方がいいと思ったからだ。

 

あの剣を通して、アリアから供給される莫大な魔力。

代用して味わえる、万能感すら得られるほどの魔女の緻密な魔力操作の感覚。

無詠唱で扱える魔法。

 

恐らく敵なしだろう。

この力があれば勇者すら超えれられるんじゃないかとすら思う程だ。

 

だが強力な力というものは、本人の意識の届かない所で思い上がりを増長させる。

似たような経験を俺は小さい頃に何度もしていた。

そうして思い上がったガキの頃の俺は、同じ回数分だけ痛い仕打ちにもあった。

 

それに今回は俺だけの話じゃない。

もし俺が、ちょっとしたことで不用意にアリアが抱える剣を使って、それが周りにバレて仕舞えばアリアは俺のせいで追い込まれることになる。

そうなれば当然に詰む。

当たり前だ。

 

個がどれだけ力を持ったところで大勢の敵意には、例えどんな相手だろうと絶対に叶わない。

明確な悪意を持った人間の集団は、怖いのだ。

恐らく、魔族よりも。

 

だからあの剣は使わない。

冒険者に関することについてはアリアと会う前と同じように変わらず過ごす。

 

そう決めた。

 

それはそうと今日は早朝から依頼達成の報酬を貰うべく、俺は魔物からとれた素材を持って冒険者ギルドの元までやってきた。

 

少し緊張する。

いやダメだ、逆に怪しまれる要因になる。

扉の前で何回か目を瞑って深呼吸。

いやこの仕草がそもそも怪しいか。

結局、この事についてはなるべく考えない。

それが今は最適解だ。

頭を振って少しでも雑念を振り落とす。

 

「昨日はとっても凄かったね…エリクくん」

「そうだな…確かにあれはとても幸せな時間だった……」

 

あれは本当に凄かった。

ほんとに生きててよかったと心の底から思えるぐらいに気持ちよかった…。

でも思い出しすぎると危ないな。

姿勢が保てなくなって座り込まないといけなくなる。

 

「わたしも。実はまだ感覚が少しだけ残ってるから、君の隣に立ってるとどきどきする…」

「分かる、俺もそんな感じだ。でも、そういう話を外でするのはやめ………なんでついてきた」

「?妻が夫の用事に付き添うのは普通のことだよ?」

「なんでも妻だからを理由にするのは良くないと思いますよ奥さん」

「なるべく好きな人と一緒にいたいの。いつ居なくなっちゃうかもしれないから」

 

それを言われたら強く出れない。

大魔女に襲われて死にかけて、そこをアリアに助けられたばっかりなだけに。

 

「…………じゃあ換金ついでに、中で朝食も食べてこうぜ」

「ッうん!」

 

言いながら手を握ろうとしてくるアリア。

咄嗟に避ける。

 

「手は繋げないからな?」

「……うん」

 

言葉では従いながら、俺の手の甲にひんやりとした冷たい自分の手の甲をさすりとするアリア。

それとなく自身の細くて滑らかな小指を俺の小指に絡めようとしてくる。

あ、諦めが悪い……。

手を離して、繋がない意思を伝える。

「だめ」

「…いじわる」

「いじわるじゃない。中で変に目立って面倒くさい奴に絡まれでもしたら困る」

 

恋人がいようが人妻だろうが関係なく声を掛ける奴も、冒険者の中には当然いる。

てか冒険者に道徳がある奴のほうが少ない。

俺含め、悪いことを企んでいる奴は居るのだ。

 

アリアの事抜きにしても、目立たないようにする理由としてはそれだけの事で十分。

兎にも角にも、このままここに止まってはいけない。

 

不満げな態度なアリアを横目に扉を押して中へ入る。

中は……どこもいつもと変わらない様子。

しかも今日は運が良く当たりの日だ。

比較的落ち着いていて、柄の悪そうな連中がいなくて治安がいい。

良かった。

 

「俺は受付で依頼達成の手続きしてくるから、食堂の方に行って先に並んどいてくれ」

「……………わかった」

 

拗ねてる。

ほっぺが膨らんでいて、海に棲息している生き物を連想させる。

可愛い、なんて感想が出てきてしまうくらいには俺も大概だ。

 

食堂の方に向かうアリアの背中を見送った後、俺も受付の方に向かう。

受付にはこの前とは別の女性がいた。

朝が弱いのか、やや眠たそうにしている。

 

机の上に討伐報酬の証拠になる素材を出してから換金を依頼すれば、静かに手続きが進む。

いや本当に眠そうだな……お疲れ様です。

最後に報酬を受け取ろうと硬貨を手に取ろうと伸ばした瞬間に、不意に受付の女性に声をかけられる。

 

「そういえばですが冒険者様」

「なんですか?」

「いえ。丁度一昨日、黒狼の棲息している場所に………いえ、やはり何でもありません、お気になさらず。失礼致しました」

「?そうですか……」

 

そのまま報酬の硬貨を手に取って受付嬢に背を向ける。

 

今ので分かったが、近くに大魔女が来たという情報をギルドは伏せている。

恐らく混乱を防ぐためだ。

そして、今は手がかりが他にないか探っていてる段階で、

同じ日に討伐依頼を受けた俺にも聞くか迷っていた。

 

緊張を解いた瞬間、背中には冷たい汗が流れくる。

 

まさか自分の階級の低さに助けられる日が来るなんて。

相手は第四等級冒険者。

対した情報を得られないと思ったのだろう。

そして、情報を不用意に外部に漏らされるリスクのほうが高いと踏んで、途中で聞くのを辞めた。

情報を聞かされている相手がいるとするなら………第一等級、二等級冒険者……それと、信用がある第三等級冒険者数人てところだろうな。

 

アリアと一緒に来たのは正解だった。

俺一人だけだったら、事情を聞かれてたかもしれない。

剣も握ったことも無さそうな見た目の女子が連れ添いでいた事が判断材料に入れられていた可能性が高い。

 

先程の欠伸を噛み殺している受付嬢の様子を思い浮かべる。

……眠そうにしていたのはもしかしなくても俺のせいでもあるな、多分。

 

心の中で謝りながら、俺はアリアの元へ向かった。

俺が歩いて近づくのに気がついたアリアは、笑顔でこっちをみる。

よかった、機嫌は戻ってるみたいだ。

 

「もう決めたか?」

「うん、日替わりの朝食セットにする」

「じゃあ俺も同じやつにしよっかな………アイスは付けなくてもいいのか?」

「アイス?どうして?」

「あ、あーー……まぁまだ朝だけど、外は暑いし丁度いいかなと。それにアイス好きだろ?ここのデザートも美味いからな、頼みたかったら、遠慮なく頼めよ」

「……機嫌取ろうとしてる?」

「…………………」

 

図星を突かれた俺の反応を見て、アリアは薄く笑う。

 

「エリクくんはこの中だとアイスはどれが好き?」

「え?あー…この中だと…ブルーベリーのやつかな」

「じゃあ私それにする。エリクくんは?」

「俺は別に」

「私のと分け合いっこする?」

「……やっぱりそれも同じやつ頼もうかな」

 

いたずらが成功した子供のように両手で口元を隠してくすくす笑うアリア。

それを見て俺は苦笑いを浮かべる。

俺はこの先もこうして手玉に取られ続けるんだろうかと、遠い目をしながら、

仕方がないので気にせず料理長に二人分の注文を頼んでいると、料理長からも一言だけ軽口を言われる始末。

 

奥の方の空いているテーブルに並んで座り、そのまま朝食を取る。

 

おまけとしてフルーツも多めに入れてくれた料理長には感謝だ。

……てかなんか最近よくおまけで付けてくれるな。

多分、隣にいる子のお陰なのだろうけれど。

アリアは社交的で、店先の人に話しかけられた時なんかは愛想良く接していたりする。

人当たりがいいと、見てて思う。

さっきも料理を受け取るときに料理長から声をかけられていたようだが、笑顔で応対していた。

魔女……なのは間違いないはずなのに。

 

「そういや最近また勇者様が一人魔女を倒したって聞いたか?」

 

何処からか、魔女に関しての話をしている集団の声が耳に入り、思わず耳を澄ませてしまう。

俺たちが先日倒した魔女とは別の、勇者が倒した魔女のことは俺も知っている。

「聞いたよ、これで残りも後少しだな」

「なぁ、勇者さまさまだよ全く。この調子ではやく全員やっちまってほしいわ」

「だな」

「でもちょっと勿体ない気もしねぇか?」

「なんでだよ」

「だって魔女つったって全員美女揃いだろ?抵抗できないようにして気持ちのいい思いをさせて貰わせてからでもよくね?あいつら俺たち人間を何人も殺してきたんだから、ただ殺すっていうのもなぁ…」

「はん、回してる最中に何人かは一物噛みちぎられそうだけどな」

「はは!ちげぇねぇな」

朝から、下卑た笑いで盛り上がっている。

 

俺は無意識に、テーブルの下でアリアの手を握っていた。

無意識だったからすぐに手を放そうとした。

だがその前に、それに気が付いたアリアが掌を返して優しく繋ぎ直してきた。

若干の震える俺の手とは対照的に優しく包み込むようなアリアの手。

 

「ん、どうしたの」

「いや………」

「手、このままでもいい?」

「………アリアが食べづらくないなら」

「私は大丈夫だけど、エリクくんはいいの?」

「俺は両利きだから、左手でも食べれる」

 

多分、聞かれてることはそういうことではないんだろう。

決めたのに俺は自分でそれを破っている。

 

「エリクくんって器用なんだね。かっこいい……」

「大袈裟だよ」

「ふふっ」

 

そういいながら薄く俺に笑いかけてくる。

あれだけ人目も憚らずに盛り上がっていれば、当然アリアの耳にも届いている筈なのに。

アリアはいつもと変わらない様子のまま、ただスープを口に運んだ。

 




因みにアリアちゃん主人公が全力で剣を振ったとしても指二本で余裕で止めてしまうぐらいには強いです……
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