魔女を匿う代わりに、ヤらせてもらう事にした。   作:焚火ゆらゆら

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劇的な展開、は特に起こりもしない日々

魔王を倒すというのが、俺の昔からの目標だった。

動機というのはまぁ有名になりたい、偉業を成し遂げたいという周りからみれば浅薄で不純で、多くの人がイメージする勇者とはかけ離れたものだったが、当時の俺はそれなりにかなり真剣に欲していたものだった。

冒険者として日々過ごす金を稼いで、鍛錬を積み重ねた。

身の丈あってない夢だという自覚は、当然あった。

勇者として選ばれるには、勇者の資格を認められる必要がある。

選定方法はいたってシンプル。

 

預言者が発現した、勇者が現れるという日に、勇者の剣を鞘から抜くこと。

資格は剣自体が選ぶらしい。剣に意思があるというのは不思議なもんだ。

俺が勇者として選ばれる可能性が、限りなく低いのはわかっていた。。

人間性を一つ取ってみてもそうだ。

とても剣に選ばれるような人格ではない、と自分でも思う。

だが、

それでも俺は当時、自分の中には何かがあるという感覚を持っていて、それが俺を最後まで支えた。

期待できるほどの明確な根拠があるわけではない。

ただ身に余る自分への底なしの万能感を頼りに、自分ならもしかしたら、という淡い期待を抱いていただけだった、と今になって振り返り思う。幸い、期限まではまだ時間があった。

 

予言の日。

当たり前のように、俺は剣を引き抜くことができなかった。

余りにも呆気ない最後だった。

周りの、つぎ、と言う淡々と事務的に進めて行く声がやけに耳に響いた時。

俺はそのタイミングで、完全に、自分が特別な人間なんかでは決していないということを悟った。

世界だって変えられるんじゃないかという思い違いすら引き起こせる全能感は綺麗さっぱりなくなり、現実が一気に押し寄せて来て、その日はただひたすら虚無感に陥った。

後で知った話だが、

予言通り、その日のうちに勇者の剣を抜くことが出来たものが現れたらしい。噂であるが、16歳の少女が抜いた、と言うことだった。

立ち会う場面にも出くわせず、人伝でその事を知るというのが、

俺は物語の主人公ではなく、只々現実を生きているだけなんだな、というのをより実感させた。

ただ、この時の俺はまだ知らなかった。

魔王が倒されようがいまいが、凡人の生活というものには劇的な事は何も起こらず、

淡々と魔王に怯えながらも、日々の生活は続いていくものなんだと言うことを。

 

それからまた数年が経った今でさえも他に生きていく方法を探す気力もなく、確かな野心も持たずに冒険者を続けている。

たが、おれは思うのだ。

 

危険と隣り合わせの冒険者を引退せずにこの日まで続けていたのは、人生のこれといった目的も希望も持たずに凡庸な絶望に耐えられないから、世界とオサラバするきっかけを欲していただけなんじゃないのか、と。

 

 

 

 

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