魔女を匿う代わりに、ヤらせてもらう事にした。   作:焚き火ゆらゆら

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朝ごはん

いつもだったら朝は雑に適当なものを食べるか、もしくはそのまま朝は抜いてから外出するのだが、今回はそうもいかない。

久々に丁寧な食事でもするかとキッチンに立つ。普段からマメに手入れはしているから使える状態だ。

少しだけ日頃の自分に感謝をした。

だが、丁寧な食事と言ってもせいぜい作るのは簡単なものぐらいだ。

苦手というほど下手ではないが、得意と言えるほど作るのが上手いわけではない。

でも平凡であるから特にクセも出ないのが逆に強みだ。向こうも平均的な食事が得られるなら文句は言わないだろう。多分。

 

小声で初級の火属性の魔法を唱えて火をつけ、そのまま火力を調整する。

魔法を使用するのは俺に限って言えば神経を必要以上に使うし、それに別に道具を使って火を起こしてもいいのだが、それでもそれを加味しても魔法で火をつけたほうが任意で消すこともできる分、後始末が何かと楽なのだ。

 

「エリクくん、火の魔法使えるんだね……すごい」

「まぁ、初級魔法だけどな……って」

 

いつの間にかアリアが隣りに来ていたようで、まじまじと手元を覗き込んでいた。

 

「なんでこっち来たんだ」

「気になるから来た……嫌だった?」

「別にどっちでも」

「じゃあ、このままいるね?」

「お好きにどうぞ」

「ふふっ……照れてる」

「横で顔をまじまじと見られてたりしたらそりゃな……危ないから、あんま近づくんじゃないぞ」

「うん、ありがとう」

 

言ってから、魔女相手に何言ってるんだと自分に呆れた。

 

アリアにできた飯をテーブルに運ぶのを手伝ってもらいながら互いに席について朝食を取る。

ベーコン、エッグとサラダを二つのパンの間に挟んだ簡単なものだったが、俺はこれが好きだった。

手で食べれるし、アリアにも都合がいいだろう。

 

そう思いちらりとみると、ほほぅ…とキラキラした顔でアリアはまじまじと食べ物を見ている。

それから一口、小さくぱくっと口に含む。

 

「…………美味しい」

「そりゃよかった」

 

そっけなく返しながら、俺はコップに入っている冷たいミルクを一口飲む。

スカしてはいるが、内心何処かほっとしている自分がいるのが分かった。

そういえば誰かに、たとえ簡単な物でも自分の手料理を振舞う、なんてのはこれが初めてだった。

にしても、

 

「………………?どうしたの?」

 

じっと見つめる俺を疑問に思ったのか、食事を中断して素朴な表情でこっちを見る

 

「いや、服。どうにかしないとな」

「…………確かに、言われてみれば少しすーすーするかも」

 

昨日アリアに貸した布のローブ一枚を羽織っているだけで、今のアリアはほとんど裸の状態だ。意識してしまえば一瞬でその気になれる状態は、俺が常時落ち着けることがないのもあって、流石によくない。

それにあの黒いドレス、似合いはするが如何せん目立ちすぎる。もし昼にあのドレスを纏って外に出かけれどうなるかは想像するまでも無いだろう。

 

あと外に容易に出れなくてほとんど部屋の中にいるとしても、何着かはあった方が良い。

 

「もしかして買ってくれるの?」

「まぁ、それぐらいはな」

「……じゃあ、そうだね。エリクくんが選んでくれる?私が着る服」

「……要望があればそれに沿うものを買ってくるけど、何かないのか?」

「ううん。私は、君が選んでくれた服が着たいの」

「…………あとで文句言うなよ」

「うん」

 

微笑みながらもう一口ぱくっとかわいらしく食べるアリア。

どうにも話してると肩の力が抜けてしまうというか。

それは、アリアと出会う前からあった、謎の焦燥感。

俺の身体にまとわりついてたそれは俺がどうあがこうが解けることはなかったのだが、そういう、緊張感みたいなものが無くなってしまう。この銀髪魔女を相手にしてると。

印象……ジト目なのも少し関係してたりするのか?

なんて適当な事を考えてみる。

 

「にしても、なんで昨日はあんなとこいたんだ?」

 「……うーん、説明が難しいかも……」

「まぁ、単に疑問に思っただけで尋問とかじゃないから、答えないことでお前が不利になることはなにもないし、別に言いたくなければ、言わなくてもいい」

「言いたくないわけじゃないよ?ただ、きちんと伝えるためにもちょっとだけ時間が欲しい、かも」

「そ」

「あとで必ず、全部おしえるね」

 

別に律儀に教える事は無いのにな。

誰にだって秘密はある。一つや二つ。

ああいけない、嫌なこと思い出しちまう。

頭を軽く振って考え込みそうになったのをリセットして、その後は無言で朝食を取った。

食べ終わった後、最後の一口のミルクを飲んで空になったコップを食器と重ねて持ちながら席を立つ。

 

「……じゃあ、俺はこれからギルドにでも行こうかね」

「出掛けるの?」

「ああ。部屋の中のものは、特に困るものとかないし好きにしていいから」

「いつかえってくる?」

「多分、夕方ぐらい?日が落ちるまでには」

「分かった。…じゃあ、戸棚にある本を借りてみようかな」

「気にせずどうぞ。………じゃ」

 

言いながら扉の前まで向かい、取っ手を掴む。

「あ、待って」

「?まだ何かあった……か……」

 

まだ何か言い残したことがあったのかと振り返ると同時に、急にアリアが抱き着いてくる。豊満な胸、鼻腔をくすぐる謎のいい香り。くすぐったくなるほど小さく背中を擦る細く滑らかな指、脇に当たる細い二の腕の感触。

 

それらが一気に押し寄せてきて、何も構えずにいた分、一瞬頭が真っ白になった。

 

「…………すぅ」

 

そんな俺のことはお構いなしに数回、アリアは俺の匂いを深く刻んで覚える為のように、俺の胸元に顔を沈めて深く、深く吸って、吐いて、深呼吸をする。

 

「……うん、行ってらっしゃい」

 

満足したのか、ぱっと身体を放して今度こそアリアはそういった。

 

「…………ってきます……」

最後までまともに挨拶も出来ずに、俺はアリアに愛想も向けずにそう言いながら今度こそ外に出た。

 

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