魔女を匿う代わりに、ヤらせてもらう事にした。   作:焚き火ゆらゆら

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絶望の霧

街の中にある冒険者が主に使用する転移装置を使い場所を瞬間移動し、森の前に立つ。

ちゃんと帰ってきて、なんて、

少し大げさな気もするが。

今日の達成しようとしている依頼だって慣れている依頼だし、そうそうへまはしない。

何かしらのイレギュラーがなければ

約束通りきちんと夕方までに十分間に合う。

 

そう思い森の中に入り、奥へ奥へと進んでいく。

すると、やはりいつもと同じ場所にやつはいた。

今回の討伐達成の数は全部で五体。

対象は炎を吐く魔法と凶暴な牙を持つ黒狼

きちんと注意しながら対応していけばいい相手だ。

いつも通りこなせばいい。

だが、ふと気づく。

周囲をもう一度よく見渡してみれば、数が思った以上に多い。

今までで経験したことのない数だ。魔物の様子も何処かおかしい……か?いつもよりも獰猛さが増しているような、そんな気がする。

これがいわゆるフラグというやつなのだろうか。

家の中に置いてある本の中の物語では、主人公がそんな事がないだろうと思えば思うほど、そんな事は起こりやすい、というのが定番だった。

主人公、か。

俺は自分のことを鼻で笑う。

なら俺は大丈夫だ。

 

数は多いが、対処できないことはない。

いつもよりも慎重に周囲を見渡し、集中し、気合いを入れ、俺は目の前の獲物に挑むことにした。

一歩もこちらは動かず、まずは相手の出方をひたすら最初は伺う。

動く体力も無駄にできない。

正面の魔物が、我慢ならない様子で俺に襲いかかってきた。

すかさず攻撃をかわし横に移動し、横腹を下から斬り上げる。

まずは一匹目。

伊達に勇者を目指して鍛錬を積み重ねてはいない。

それに、いつもより不思議と調子がいい。

うん、十分待ち合わせの時間までには間に合う。

大丈夫だ。

この胸のざわつきは神経質になっているだけで只の気の所為。

その後も順当に黒狼を倒していった。

途中、膝太ももを噛みつかれ怪我を負う。

額に脂汗が浮かぶ。

だが問題ない。

十分に自分の行使できる魔法で治せるレベルだ。

即座に噛み付いてきた魔物を切り落とす。

そして次の攻撃に備えるのと並行し、初級の回復魔法を自身にかける。

 

難しいが、同時に二つ以上のことを並行して行う技術は、

ソロで活動する冒険者には必須のスキルだ。

出来なければそのまま死に直結する。

昔の俺なら、こんな事も造作もなく出来ていたが……。

 

いや、もうこれ以上余計なことを考えるのはなしだ、

本当に足元を掬われる。

無心に近い状態になるため、より深い集中をするべく、俺は深呼吸をした。

その後は、目の前にいる獲物に全集中力を注いで、着実に数を削いでいった。

もうこの時には既にノルマの討伐数は達成していた。

数が減り、底が見えてきた時。

黒狼は他の標的を見つけたかのように別のところに視線を移す。

何だと思い、俺も一瞬だけ目線をそっちに向ける。

遠いところに、おそらく4人組のパーティが俺と同じように黒狼と連携して戦っている。

俺はそいつらに見覚えがあった。

いつも冒険者ギルドで楽しそうにガヤガヤと酒を飲んでいる、まだ十代の若い連中達だ。

受付嬢にナンパしていたりと、その軽率さが俺は苦手でなるべく関わらないように距離をとっていた。

まぁ今となっては彼らを軽蔑できる資格も何もないのだが。

 

全てを片付け、一呼吸を置く。

時間までまた十分にあるが、もう引き上げよう。

あいつらにこっちの存在を気づかれるのも何となく嫌だし。

それに時間に余裕はある方がいい。

討伐の証明にもなる、黒狼が落とした素材を取り敢えず手元にあるものから拾い上げる。

少し調子に乗りすぎたなと、一人で今から反省した。

やけに体の調子が良く、余計に戦闘を長引かせすぎた。

持って帰れる素材も一人では量が決まっている。

それ以外は放置して見つけたほかの冒険者に譲るしかない。

十分に素材を腰に装着した専用の袋に入れると、その場を後にしようと俺は引き返した。

霧も濃くなってきたし、あいつらも早めに引き上げたほうがいいだろうな、と他人事のように思う。

……………………ん?

霧?

違和感。

歩き出そうとした足をまたすぐに止める。

そして、考える。

なんだ?何かがおかしい、何だ。

何かを致命的に拾い忘れている。

それこそ、すぐにそれを拾わなければいけないような、すぐそこに死が差し迫っているような。

………

自覚しだしてから、なぜだか冷や汗が止まらない。背中に冷たい汗が流れる。不快だ。

今はそれらを意識的に無視するしかない。

取り敢えず、兎に角、考える、状況をもう一度認識する。

 

残り数匹のいつもよりも凶暴さがました黒狼、周囲を囲い込むだんだんと濃くなっていく白い霧、四人の若いやけに気分が高揚している様子を見せる冒険者連中。

何もおかしいところはない。

違和感を感じない。

なら過去の記憶を探って、手掛かりがないかを探す。

………………………

………………

「………………は」

 

一瞬だが、永遠にも感じた刹那の時間で俺は運良く答えにたどり着き、同時に今まで感じていた自分の直感を信じなかった事を酷く後悔した。 

だが、今はそれよりも

ばっと顔を上げ、連中のほうをみる。

しかし遅かった。

俺が自分のできる限りの声量であいつらに叫ぶ形で伝えようとするよりも先に、霧は明確な悪意を持って、向こうの連中をまるごとつつみ込んだ。

それから断末魔が聞こえてきたのはすぐ後のことだった。

俺は地面を思い切り蹴り上げ、全力で街まで逃げようとその場を後にした。

 

 

 

 




次の話は少し遅れます。
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