もしも。
そう、もしもの話だ。
決闘をする中で、敗北した時こう思ったことはないだろうか。

あの瞬間に、戻れたならば。

そのあらゆる決闘者たちが一度は思ったことのあるもしもを叶える能力を持った男が、デュエルアカデミアで教師をしていた。
これは、もしもを叶える男がセブンスターズの一角、カミューラと対峙することになった時の話。

「なぜ、この能力を持っているのかは分からない。一つだけ言えることは、この能力を使うたび………」

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遊戯王の短編二作目です。

とある男の、とある決闘(デュエル)
時代はGXですが、ルールは現代に合わせています。
つまり、マスタールール3です。
また、カードプールも現代に合わせ、エクシーズも登場します。

全ての決闘者(デュエリスト)の願望の体現とも言える男の人生の一幕。
お楽しみください。


遊戯王 Another One Bites The Dust

もしも。

そう、もしもの話だ。

 

決闘(デュエル)の最中に、いくつか起きる敗北への分岐点。

最初の手札五枚が緑一色。

《大嵐》を発動したら《スターライト・ロード》で無効にされ、《スターダスト・ドラゴン》を召喚される。

フィールドに最上級モンスターを並べて攻撃したら、《聖なるバリア ミラーフォース》を使われる。

出した切り札を、《奈落の落とし穴》で除外される。

最上級モンスターの攻撃を《オネスト》でカウンターされる。

次のターンでトドメが刺せるのに、エクゾディアを揃えられる。

満足ループにより、先攻ワンキルをされる。

等々、理由は数あれど、敗北への分岐点は確かにある。

 

もしも。

そう、もしもの話だ。

 

その分岐点へと戻ることができるのなら?

 

もしも。

そう、もしもの話だ。

 

その分岐点から、もう一つ(・・・・)の未来へと進めたら?

 

もしも。

そう、もしもの話だ。

 

その力を持った人間がいたとしたら?

 

もしも。

そう、これは『もしも』の話だ。

 

 

 

 

 

 

      遊戯王

Another One Bites The Dust

 

 

 

 

 

 

 

私の名前は…いや、それはいいか。

私を語る上で、私自身の名前はそれほど重要ではない。

職業は教師だ。

海に浮かぶ孤島にある、決闘者(デュエリスト)養成学校である『デュエルアカデミア』で教師をしている。

『デュエルアカデミア』はその土地柄全寮制であり、在籍する寮によって格付けがなされている。

一番最下層の『オシリス・レッド』、中堅の『ラー・イエロー』、そして最上級の『オベリスク・ブルー』。

私はこの内、『ラー・イエロー』で寮監を務めているが、なるほど。

確かに決闘者(デュエリスト)として、一歩突き抜ききれない子供たちが多い。

だが、そんな子供たちに道を示し、教えを授けるのが(教師)の仕事だ。

実際、私自身はこの仕事にやりがいを持てているし、何人かの生徒を『オベリスク・ブルー』の生徒にすることができた。

 

好きな動物は猫であり、レッド寮の寮監である大徳寺先生の飼い猫であるファラオに餌付けをすることが日課だ。

ああ、好きなブランドはヴァレンティノで、身に着けるものはスーツを始め靴やネクタイ、小物まで全てヴァレンティノで統一している。

デュエルディスクも、貯金をはたいて購入したヴァレンティノのオリジナルデザインのモデルだ。

一教師という薄給の身ではあるが、ヴァレンティノでの買い物は私の人生の中でささやかな楽しみの一つになっている。

 

そんな平凡極まりない私だが、教師である以上は学園内に異常が起きたり、生徒の身に危険が迫っているときには、駆けつけなくてはいけない。

 

例えば、そう。

我が校の実技担当最高責任者であるクロノス先生、更に生徒最強であり『カイザー』と呼ばれ持て囃されている丸藤兄もまた敗北し、人形へと変えられたとあれば、誰にも知られないように、一人で敵の城に乗り込むくらいのことをしなくてはいけないだろう。

 

 

「あら、結構良い男じゃない?先生?」

 

「お褒めに預かり光栄といったところだが、生憎私はあまり女性に興味はなくてね」

 

「あら、若いのに枯れてるのね?」

 

 

私の目の前に立つ女が、そんなことを言い出す。

確か、カミューラとかいったか?

この女が二人を人形に変えた敵で、しかも吸血鬼だというがまったくもって不可思議極まりない状況だ。

こんな存在が現れるだなんて、私の平穏はどこに行ったというのだろうか。

 

…いや、こういう日が来ることは、薄々感づいてはいた。

私に人とは違う、特別な力があると理解したその日から。

 

 

「分かってはいるでしょうけど、一応先に言っておくわ。貴方が負けたら、貴方は前の二人の様に人形になってもらうわ」

 

「ああ、構わないよ。その代り、私が勝った時には二人を元に戻してもらおう」

 

 

デュエルディスクを構え、女と相対する。

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

LP:8000

手札:5枚

フィールド:なし

 

カミューラ

LP:8000

手札:5枚

フィールド:なし

 

 

「私のターンからよ!まずは《おろかな埋葬》を発動!これでデッキから《ヴァンパイア・ソーサラー》を墓地に送るわ」

 

「ふむ、話に聞いた、ヴァンパイアデッキか」

 

 

たしか、吸血鬼をモチーフとしたカードで構成されたデッキだったかな?

なるほど、吸血鬼である彼女のデッキとしては、ぴったりだろう。

 

 

「墓地の《ヴァンパイア・ソーサラー》の効果を発動するわ。このカードをゲームから除外して、このターンヴァンパイアモンスターを召喚するのに必要なリリースがなくなる!」

 

「む、ということは上級以上のモンスターを召喚するのか」

 

「そういうことね。来なさい!誇り高きヴァンパイア達の盟主!《ヴァンパイア・ロード》!」

 

ヴァンパイア・ロード

攻撃力:2000

 

大仰な素振りと口上から現れたのは、青い肌をした青年の姿のモンスター。

姿は人間の様だが、その本性は残忍なヴァンパイア、といったところだろうか。

攻撃力だけを見れば大したことはないのだが、問題はその効果だ。

あのモンスターが私にダメージを与えた時、私はデッキからあの女が選ぶ、モンスター、魔法、罠の三種類の中からカードを一枚選んで墓地に送らなくてはいけない。

つまりは、こちらの戦術を狭めてくるのだ。

まあ、先行1ターン目ではそんなことは大して意味もないのだが。

 

 

「そして私はカードを二枚伏せて、ターンエンドよ」

 

 

LP:8000

手札:5枚

フィールド:なし

 

カミューラ

LP:8000

手札:1枚

フィールド:ヴァンパイア・ロード、伏せカード2枚

 

 

「私のターンだ。ドロー」

 

 

…ふむ、攻め手に欠けるが、これで戦うしかないだろう。

 

 

「私はカードを三枚伏せ、永続魔法《強欲なカケラ》を発動。更に《カードカー・D》を召喚。そして効果を発動し、デッキから二枚ドローして強制的にターンエンドする」

 

 

LP:8000

手札:3枚

フィールド:強欲なカケラ、伏せカード三枚

 

カミューラ

LP:8000

手札:1枚

フィールド:ヴァンパイア・ロード、伏せカード二枚

 

 

一瞬だけフィールドに現れ、即座に消えたカードでできた車。

その効果で私の手札が二枚増え、そしてターンが終了する。

戦況次第では使えない、ドローカードの中でも中々に扱いが難しいカードだ。

 

 

「…確か、そこの壺のカケラもドローカードだったわね?もしかして、エクゾディアデッキかしら?」

 

「そんなわけないだろう?…まあ、確かにそう思われても仕方ないがね」

 

 

だが、エクゾディアパーツは貴重過ぎて手に入らない。

それに、私には必要ではないしね。

 

 

「それより、君のターンじゃないかい?」

 

「おっと、そうね。私のターン、ドロー!…まずは《ヴァンパイア・ロード》をリリースして、《シャドウ・ヴァンパイア》をアドバンス召喚!」

 

シャドウ・ヴァンパイア

攻撃力:2000

 

彼女が召喚したモンスターは、巨大な()の様なモンスター。

これは、ヴァンパイアの影なのかな?

…む?

 

 

「わざわざ同じ攻撃力のモンスターをリリースして、アドバンス召喚しただと?」

 

 

となるとアドバンス召喚時に何らかの効果があるのだろう。

でなければ、今の行動は無意味になる。

いや、あの伏せカードの一枚が《リビングデッドの呼び声》等の蘇生カードであり、《ヴァンパイア・ロード》を蘇らせて二体で攻撃してくる可能性もあったな。

他にも、レベル5同士でのエクシーズ召喚もあり得るか。

なるほど、厳しいな。

 

 

「アドバンス召喚された時、《シャドウ・ヴァンパイア》の効果を発動が発動される!手札かデッキから《シャドウ・ヴァンパイア》以外のヴァンパイアモンスターを一体特殊召喚できる!…まあ、このターン攻撃できるのは、この効果で特殊召喚したモンスターだけなんだけどね……」

 

「なるほど…。そのためにか」

 

「だけどその効果にチェーンして、トラップカードを発動!《ヴァンパイア・シフト》!私のフィールドにアンデッド族のモンスターしかいない場合のみに発動できる!このカードの効果で、フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》をデッキから発動!!」

 

「デッキからフィールド魔法だと?」

 

 

《テラ・フォーミング》の様なデッキからフィールド魔法を手札に加えるカードもあるが、直接発動させるカードがあるとはな…。

私もまだまだ勉強が足りないらしい。

これでは、生徒たちのことを言えないな。

 

 

「さらに、《ヴァンパイア・シフト》のもう一つの効果を発動するわ!墓地の闇属性『ヴァンパイア』モンスターを1体守備表示で特殊召喚する!《ヴァンパイア・ロード》を守備表示で特殊召喚!」

 

ヴァンパイア・ロード

守備力:1500

 

「そんな効果まであるだと…!」

 

 

再び現れた、青い顔の吸血鬼の盟主(ロード)

随分と便利なカードを使うな…。

これはまた、厳しいことになりそうだな…。

 

 

「そして《シャドウ・ヴァンパイア》の効果で《ヴァンパイア・デューク》をデッキから特殊召喚!!」

 

「…ッ!なるほど…ッ!」

 

 

一度に攻撃力2000のモンスターが3体並ぶか。

いや、それ以上にレベル5のモンスターが並んだことの方が問題か?

 

 

「《ヴァンパイア・デューク》が特殊召喚された時、効果が発動!モンスター・魔法・罠カードのいずれかを宣言して発動できる!相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地へ送らなくてはいけない!私は魔法カードを選ぶわ!さあ、デッキから一枚、魔法カードを墓地に送りなさい!!」

 

「何!?」

 

 

クソ…ッ!

このデッキには魔法カードはそれほど入っていなくて貴重なんだぞ!

というか、1ターンでレベル5を3体並べるとはね…。

正直、最初からだいぶ苦しい戦いを強いられそうだ。

 

 

「…私は《サイクロン》を墓地に送るよ」

 

 

あえて汎用カードである《サイクロン》を墓地に送り、デッキの内容を分かり辛くする。

これも、一つの戦術だ。

 

…あまり使いたい戦術ではないがね。

 

 

「この瞬間!《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》の効果が発動されるわ!!相手のデッキから墓地にカードが送られた時、フィールドのカードを1枚破壊できる!《強欲なカケラ》を破壊するわ!」

 

「何ッ!?…クッ!」

 

 

私の目の前で緑色のカケラが砕け散り、墓地へと置かれる。

 

あのフィールド魔法には、そんな効果があったのか…。

確かに、『ヴァンパイア』にはデッキから墓地に落とすカードが多い。

そんなカテゴリーのフィールド魔法なのだから、そのくらいの効果はあってしかるべきか…。

 

 

「それじゃあいくわよ?《ヴァンパイア・デューク》でダイレクトアタック!」

 

 

攻撃力2000の吸血鬼が、全身を蝙蝠に変えて私に襲い掛かる。

このままではダメージを受けてしまうな。

 

 

「まあ、そんな益体のないことを考えても、防ぐカードはないんだがね」

 

「勿体ぶってないで早く言いなさいよ!この時、《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》のもう一つの効果が発動される!フィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力は、ダメージ計算時のみ500ポイントアップするわ!」

 

ヴァンパイア・デューク

攻撃力:2000→2500

 

「もう一つ効果が!?」

 

 

彼女の怒りと共に《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》蝙蝠の群れが覆いかぶさり、見る間に血が吸われていく。

まあ、確かに彼女の言う通りではあるな。

 

LP:8000→5500

 

「攻撃が終わったことで、《ヴァンパイア・デューク》の攻撃力が下がるわ」

 

ヴァンパイア・デューク

攻撃力:2500→2000

 

「私はこれでターンエンドするわ!」

 

 

LP:5500

手札:3枚

フィールド:伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:8000

手札:1枚

フィールド:シャドウ・ヴァンパイア、ヴァンパイア・デューク、ヴァンパイア帝国、伏せカード1枚

 

 

「それでは、私のターンだ。ドロー。…ふむ」

 

 

このカードは…。

よし、このターンから動き出そうか。

 

 

「まずは《インヴェルズ万能態》を召喚するよ」

 

インヴェルズ万能態

攻撃力:1000

 

「…インヴェルズ!」

 

 

フィールドに表れた、小型の蓑虫の様な悪魔。

このカードを起点とし、展開していこう。

 

 

「このカードは『インヴェルズ』モンスターをアドバンス召喚する場合、2体分の生贄となる」

 

「ダブルコストモンスター!?…で、でもこのターン、貴方はもう通常召喚はできないわ!」

 

 

そう、彼女の言う通りではある。

このターン、私は通常召喚はもうできない。

だが、

 

 

「それはどうかな?」

 

「なんですって!?」

 

 

それを覆すカードはある。

 

 

「《二重召喚(デュアルサモン)》を発動!このカードを使ったターン、私はもう一度通常召喚ができる!!」

 

「しまった!」

 

 

以前は《血の代償》という永続罠カードがあり、1ターンに何度も通常召喚できたのだが今はもう禁止されてしまった。

下級のステータスが低く、そしてアドバンス召喚ができなければ成り立たないインヴェルズデッキには、このカードはもう必須と言ってもいいだろう。

 

 

「《インヴェルズ万能態》を生贄…いや、リリースし………」

 

【ギイィィィィイイィィィッッッ!!!】

 

 

私が宣言をするのと同時に、万能態の足元から闇の塊の如き色をした触手が出現し、万能態を捕らえ地面に引きずり込み捕食を始める。

引き裂かれ、蝕まれ、食い荒らされる万能態の悲鳴が耳障りだが、そんなことを気にしていてもしょうがない。

手札から1枚のモンスターを決闘盤(デュエルディスク)に置く。

 

 

「……《インヴェルズ・ガザス》をアドバンス召喚!」

 

 

魔細胞が消えた闇の中から新たに出現したのは、コーカサスオオカブトの様な姿をした悪魔。

このカードの効果は、非常に有用かつ強力だ。

 

 

「ガザスの効果を発動。このカードがアドバンス召喚された時、このカード以外のフィールド上のモンスターを全て、もしくはフィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する」

 

「なんですって!?インチキ効果も大概にしなさい!!」

 

「…インチキカードを使ったとかいう、君に言われたくはないんだがね……。ガザスの効果で、このカード以外のモンスターを全て破壊するよ。『インヴェイジョン・ウェーブ』!!」

 

「キャッ!?」

 

【アアアアァァァアァァァァアアアァァァァァッッッ!!!!!??】

 

 

ガザスから闇の波動が放たれ、彼女のフィールドを侵略し蝕んでいく。

そしてその浸食が限界に達した時、モンスターたちが罅割れ砕け散って破壊された。

 

さて、後はどうしようか。

あの伏せカードが気になるが、私にもあのカードが伏せてある。

ここは、攻撃しても問題はないだろう。

 

 

「ガザスでプレイヤーをダイレクトアタック!!」

 

「甘いわ!トラップカード発動!《次元幽閉》!攻撃してきたモンスターをゲームから除外するわ!」

 

 

ガザスの目の前に現れた、次元の裂け目。

なるほど、除外は効果的な手段だ。

多くのデッキは除外されることに弱い。

除外をメインテーマにしたデッキに対して、一方的にやられることも少なくはないだろう。

 

だが、これを凌ぐ手はある。

 

 

「リバースカードオープン!《侵略の波動》!!このカードはアドバンス召喚した『インヴェルズ』モンスター1体を手札に戻して発動できるカードだ。このカードの効果でガザスを手札に戻し、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。今回は《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》を破壊する!」

 

「躱された!?」

 

 

ガザスが足元の闇の中に消え、消えた瞬間に溢れた波動が彼女の帝国を破壊する。

崩壊し、沈み消えていく帝国の姿が、彼女が目にしたであろうヴァンパイアたちの滅亡と被って見える。

 

まあ、私には関係のないことだがね。

私はただ、この決闘(デュエル)に勝利するだけだ。

 

 

「さて、このターンはもう何もできないな。ターンエンドだ」

 

 

LP:5500

手札:2枚(1枚はガザス)

フィールド:伏せカード2枚

 

カミューラ

LP:8000

手札:1枚

フィールド:なし

 

 

「クッ!私のターン!ドロー!」

 

 

彼女のフィールドにカードはなく、手札は2枚。

その2枚が怖いのだがね。

なにせ世界には、1枚の手札から逆転する決闘者(デュエリスト)だっているのだから。

 

 

「来たわ!《簡易融合(インスタント・フュージョン)》を発動!ライフポイントを1000支払うことで、エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚できる!私は《ナイトメアを駆る死霊》を特殊召喚!さらに今召喚した死霊をリリースして、手札から2体目の《ヴァンパイア・デューク》をアドバンス召喚するわ!」

 

カミューラ

LP:8000→7000

 

「2体目だと!?」

 

 

もう2体目か…。

だが、通常召喚だと?

あのモンスターの効果は、特殊召喚時のものではないのか?

 

 

「《ヴァンパイア・デューク》が通常召喚された時、私の墓地から闇属性の『ヴァンパイア』モンスターを1体表側守備表示で特殊召喚する!蘇れ闇の公爵!《ヴァンパイア・デューク》!」

 

「ということは…!」

 

「そう!墓地からデュークが特殊召喚されたことで、効果発動!また魔法カードをデッキから墓地に送ってもらうわ!」

 

「また魔法か…。…私はデッキから、《侵略の一手》を墓地に送る」

 

 

この女は、魔法カードに恨みでもあるのか。

…ああ、さっきの《二重召喚》か。

あれは恨まれてもしょうがないと言えばそうだな。

 

 

「…見せてあげるわ。2体のレベル5のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!これがヴァンパイアの帝国が誇る、気高き闇の騎士の姿!エクシーズ召喚!」

 

「エクシーズ召喚だと!?」

 

 

彼女のフィールドに宇宙の様な空間が現れ、そこにモンスターたちが吸い込まれる。

まさかやるのではないかと思ってはいたが、本当にやるとはな…。

私も使う(・・・・)とはいえ、まだエクシーズ召喚はそんなに普及していないのだがな…。

 

 

「忠節を尽くしなさい!《紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム》!!」

 

【フンッ!】

 

紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム

攻撃力:2500

 

宇宙の様な空間の中から、紅い鮮血の様な色をした紋章が施された装備を身に着けた吸血鬼の騎士が、剣を構えて彼女のフィールドに現れる。

あれが、ヴァンパイアのエクシーズ。

なるほど、ヴァンパイアの帝国の騎士か。

 

 

「効果は使わないわ。さあ、攻撃しなさい!ブラムで攻撃!『シュフェアット・デス・リッタース』!!」

 

「ク…ッ!」

 

 

ブラムがその剣を振りかざして、私に斬りかかってくる。

防ぎたいところではあるが、今の私にはその手立てがない。

苦し紛れに腕で身を守るも、ソリッドヴィジョンで形作られた騎士の剣は易々と私の身を裂いた。

 

 

LP:5500→3000

 

 

「私はこのままターンエンドよ」

 

 

LP:3000

手札:2枚(1枚は《インヴェルズ・ガザス》)

フィールド:伏せカード2枚

 

カミューラ

LP:7000

手札:なし

フィールド:紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム

 

 

…残りライフは3000、相手は7000。

このままでは厳しいな。

だが………。

 

 

「負けるつもりはない!ドロー!…私は今引いた《闇の誘惑》を発動!このカードは手札の闇属性モンスターをゲームから除外し、カードを2枚ドローできる!手札のガザスを除外し、2枚ドロー!!」

 

「またドロー強化!?貴方、どれだけいれているのよ?!」

 

「私の様なデッキでは手札が何枚あっても足りないのでね。それなりの枚数入れているんだよ」

 

 

手札は3枚。

手札の数は希望の数。

これでまだ戦える。

 

 

「私はまず、《ヴェルズ・カストル》を召喚する」

 

「ヴェルズ!?インヴェルズではなくて!?」

 

 

カミューラが驚いているが、何をそんなに驚くことがある。

 

 

「ヴェルズはインヴェルズから派生したカテゴリーだ。入っていても不思議ではないだろう?」

 

 

それに、ヴェルズは『ヴェルズ』モンスターに関する効果を持ったカードが多い。

イン『ヴェルズ』たちとも、相性は良いのだ。

 

 

「カストルの召喚時に効果が発動される。私はこのターンもう一度、『ヴェルズ』モンスターを通常召喚できる。この効果で、《インヴェルズを呼ぶ者》を召喚する」

 

「モンスターを2体並べたか…!でも、貴方のそのモンスターたちでは私のブラムを破壊できないわ!」

 

「…ああ、確かにね。だが、このモンスターたち以外でならどうだろう?」

 

「………まさか!貴方も!?」

 

「私はレベル4のモンスター2体で、オーバーレイ・ネットワークを構築する!侵食する闇よ!侵略の力を持って封印されし龍を飲み込め!エクシーズ召喚!!」

 

 

私のフィールドに現れた闇の中に、2体のモンスターが飲み込まれて消える。

もちろんそれで終わることはなく、徐々に、そう徐々にだが闇の中から漆黒のドラゴンがその威容を現してきた。

 

 

「侵食しろ!《ヴェルズ・オピオン》!!」

 

【ギャアアアァァァァァッッ!!!】

 

ヴェルズ・オピオン

攻撃力:2550

 

 

それは封印されていた伝説の龍の一角、《氷結界の龍グングニール》がヴェルズ化した姿。

邪悪な闇に侵蝕された、災厄を振りまく邪龍の一角。

 

《ヴェルズ・オピオン》。

 

 

「オピオンの効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、デッキから『侵略の』と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。私は《インヴェルズを呼ぶ者》を墓地に送り、速攻魔法の《侵略の汎発感染》を手札に加える」

 

「…悪いんだけど、その《侵略の汎発感染》の効果を教えてくれるかしら?」

 

「うん?ああ、良いだろう。このカードを発動したターンの間、自分フィールド上の全ての「ヴェルズ」と名のついたモンスターは、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けないという効果だ。それと、オピオン自身にはもう一つ効果があり、このカードがオーバーレイ・ユニットを持っている限り、お互いのプレイヤーはレベル5以上のモンスターを特殊召喚できなくなる」

 

 

皆あまり効果確認をしないから、珍しいな。

まあ、手札にサーチしたカードはちゃんと加えられるまでは公開情報だ。

教えないわけがない。

 

 

「…そんな効果が……!」

 

「ああ。…さて、それでは攻撃といこうか。オピオンでブラムを攻撃。『インヴェイション・オブ・アイス』!!」

 

「キャアアァァッッ!!」

 

カミューラ

LP:7000→6950

 

 

闇に侵蝕された、千の兵を氷像に変える氷のブレスがブラムへと放たれ、漆黒の氷像となったブラムが崩壊する。

これで彼女を場にモンスターはいなくなった。

そういえば、結局ブラムはどのような効果だったのだろうか。

彼女に聞くことも忘れてしまっていたな。

 

 

「では、私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

LP:3000

手札:1枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:6950

手札:なし

フィールド:なし

 

 

今伏せたのは《侵略の汎発感染》。

このカードがあるだけで、次のターンでの安心感が大きく違う。

なにせ先ほどの《次元幽閉》の様なカードを使われても、その効果を受け付けないのだから。

唯一の弱点とすれば、モンスター効果か単純に攻撃力で勝られるか。

 

さて、どう出る吸血鬼の姫。

 

 

「…私のターン、ドロー!……クッ」

 

「どうやら、余り良いカードは引けなかったみたいだな」

 

「…スタンバイフェイズ時に、墓地のブラムの効果が発動!相手によって破壊された場合、私のスタンバイフェイズに表側守備表示で墓地から特殊召喚される!!」

 

紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム

守備力:0

 

 

ふむ、蘇生効果持ちだったか。

確かに、エクシーズモンスターはレベルではなくランクで表されるから、オピオンの効果は適用されないな。

だが、守備力は0。

壁以外にはならないか。

 

 

「私はこれでターンエンドよ…」

 

 

LP:3000

手札:1枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:6950

手札:1枚

フィールド:紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム

 

 

ふむ、打つ手はなし…か。

だが、彼女のライフはまだ私の倍以上ある上に、何より彼女自身がまだ諦めてなどいない。

 

 

「まだ気を抜けないな。ドロー!」

 

 

…できれば相手に動きのないこのターン中にケリをつけたかったが、無理そうだな……。

まあ、仕方あるまい。

 

 

「まずは《ヴェルズ・ヘリオロープ》を召喚」

 

ヴェルズ・ヘリオロープ

攻撃力:1950

 

ヘリオロープは下級のモンスターだが、効果を持たない代わりに下級のラインでは高い攻撃力を持っている。

また、通常モンスター故に豊富な特殊召喚方法も魅力的だ。

《レスキュー・ラビット》が来ればこのターンでケリがつけられたのだが、まあしょうがあるまい。

 

 

「バトルフェイズに入り、まずはヘリオロープでブラムを攻撃するよ」

 

「…ブラムが!」

 

 

岩でできた邪悪な騎士たるヘリオロープの攻撃が、同じく騎士であるブラムを切り裂く。

ふむ、こうして見ると、戦士族同士の戦いに見えるな。

さて、それではいこう。

 

 

「続いて、オピオンでプレイヤーを攻撃。『インヴェンション・オブ・アイス』!!」

 

「キャアアァァァァッッ!!」

 

カミューラ

LP:6950→4500

 

 

邪悪な氷の息吹が彼女を襲い、ライフを削る。

それは確認できるのだが、今の攻撃で起きた粉塵のために彼女自身を確認できない。

随分な悲鳴を上げていたが、決闘(デュエル)は続行できるのだろうか。

 

 

「………よくも…」

 

「…む?」

 

 

粉塵の向こうから、声が聞こえる。

この声は、彼女のものか。

粉塵が晴れるのを待ち、彼女の姿を確認する。

その姿は、

 

 

「よくもやってくれたわね!!」

 

「…なるほど。ヴァンパイア、か」

 

 

口が耳元まで裂け、牙を剥き出しにして吼えるそれは、まさしく化け物(ヴァンパイア)そのものだった。

まったく、顔の造形が変わりすぎだろう。

しかし、どうしたものか。

ブラムは次のターンにまた蘇るだろうとして、そうなるとまた壁にされてしまう。

 

 

「まあ、なんにせよだ。私はこのターンはこれでエンドするよ。もう、できることもないしね」

 

 

LP:3000

手札:1枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:なし

 

 

「…許さないわ。絶対に葬ってあげる…。私のターン!ドロー!………スタンバイフェイズにブラムを表側守備表示で蘇生し、モンスターを1体裏側守備表示で召喚してターンエンドするわ…」

 

 

LP:3000

手札:1枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム、裏側守備1体

 

 

裏側守備表示…。

この状況で考えられるのは、1ターン目に出た《ヴァンパイア・ソーサラー》か、アンデット族デッキ定番の《ピラミッド・タートル》か。

はたまた《馬頭鬼》や《ゾンビ・マスター》もあり得るな。

 

 

「いくぞ、ドロー!」

 

 

…《侵略の一手》か。

…モンスターカードは引けなかったか。

ここで追撃もしたかったのだがね。

 

 

「まずはヘリオロープでブラムを攻撃する」

 

 

先程と同じ様に、ヘリオロープがブラムを切り裂く。

さて、そうなると次だ。

裏側守備表示のモンスターを除外する《抹殺の使徒》でもあればよかったのだが、そもそもデッキに入れていないからな。

無い物強請りをしてもしょうがあるまい。

ここは素直にオピオンで攻撃しよう。

 

 

「オピオンでセットモンスターを攻撃。『インヴェンション・オブ・アイス』!!」

 

 

セットされていたカードが表向きになり、凍結されたモンスターが露わになる。

あれは…。

 

 

「破壊されたのは、《ピラミッド・タートル》!」

 

ピラミッド・タートル

守備力:1400

 

 

やはりあの亀か。

余計に《抹殺の使徒》を入れていなかったことが悔やまれるな。

 

 

「戦闘で破壊された《ピラミッド・タートル》の効果を発動!守備力2000以下のアンデットモンスターを特殊召喚する!私はもう1体の《ピラミッド・タートル》を守備表示で特殊召喚!!」

 

 

再び現れる、背中にピラミッドを背負った亀。

このモンスターは効果の基準が守備力だから、そこが厄介なところだ。

オピオンの効果でレベル5以上の特殊召喚を封じていなければ、容易く上級以上のモンスターを召喚してくる。

 

 

「私はこれで、ターンエンドだ」

 

 

LP:3000

手札:2枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、伏せカード3枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:ピラミッド・タートル

 

 

さてさて、どう来るか…。

 

 

「私のターン、ドロー!…スタンバイフェイズに、再びブラムは蘇るわ。そして《サイクロン》を発動!フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊するわ!私は貴方が一番最後に伏せたカードを破壊するわ!!」

 

「…汎発感染が!?…仕方あるまい!リバースカードオープン!《侵略の汎発感染》!このターン、『ヴェルズ』モンスターたちは魔法・罠カードの効果を受け付けない!」

 

 

まさか《サイクロン》とはな…。

どのデッキに入っていてもおかしくはない汎用カードの一つだが、ここで汎発感染を使わされたのは痛いな。

実質、無駄打ちさせられたようなものだ。

 

 

「これでターンエンドよ」

 

 

LP:3000

手札:2枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、伏せカード2枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:ピラミッド・タートル、紅貴士(エーデルリッター)-ヴァンパイア・ブラム

 

 

再び墓地から現れたブラム。

そして邪魔な亀。

まったく、安定した展開力と爆発力がアンデットのウリだが、やり辛いな。

 

 

 

「私のターン、ドロー。…《インヴェルズの先鋭》を召喚する」

 

インヴェルズの先鋭

攻撃力:1850

 

 

現れたのは、蜂を模した姿の悪魔。

さて、やるとしよう。

 

 

「バトルフェイズだ。まずは先鋭で《ピラミッド・タートル》を攻撃!」

 

「《ピラミッド・タートル》が戦闘で破壊されたことで、最後の《ピラミッド・タートル》をデッキから呼び寄せるわ!守備表示で特殊召喚!」

 

「続いてヘリオロープで《ピラミッド・タートル》を攻撃!」

 

「破壊された《ピラミッド・タートル》の効果で、《ヴァンパイア・ソーサラー》を守備表示で特殊召喚!」

 

「……ッ!そいつか!」

 

 

ここでソーサラーを破壊すると、次のターンに奴の効果で上級以上のモンスターが出て来かねない…。

となれば、オピオンが破壊されたりしてもおかしくはないな。

なら、ここは次のターンで追撃する手を一つ潰すことが最善か。

 

 

「オピオンでブラムを攻撃!『インヴェンション・オブ・アイス』!!」

 

 

またしても凍り付き、そして砕け散るブラム。

これで次のターンに何かあっても、ブラムによる攻撃は防げる様になった。

召喚したターンには、表示形式を変えられないのだから。

 

 

「これで私のターンはエンドだ」

 

 

LP:3000

手札:2枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、インヴェルズの先鋭伏せカード2枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:ヴァンパイア・ソーサラー

 

 

 

奴のフィールドにあるのは、ソーサラー1体のみ。

このターン何事もなければ、おそらく次のターンで勝ちに持っていけるだろう。

だが、このターンがある。

 

 

「私のターン…」

 

 

彼女が絶対に勝つ(・・・・・)と決意して、強く念じカードを引く、このターンが。

 

 

「デスティニー・ドロー!!」

 

 

一瞬、彼女のドローしたカードが深い闇の輝きを放つ。

これは、まさか…?

 

 

「………アハハハハハハッッッ!!!来たわ!!まずはスタンバイフェイズに、墓地のブラムを蘇生させる!そして発動するわ!」

 

 

彼女が決闘盤(デュエルディスク)に置いた、1枚のカード。

そこから奔流する闇の力が、私にその(・・)カードだということを教える。

クソッ!ここで来たか!

 

 

「《幻魔の扉》を発動!」

 

 

彼女の背後に現れた、大きく、そして禍々しい闇を放つ扉。

あれが話に聞いたあのカードかッ!!

 

 

「《幻魔の扉》の効果で、まずは貴方のフィールドのモンスターを全て破壊する!!」

 

「ヌアァァッッ!?」

 

【ギャオオオァァァァッッ!!!?】

 

 

扉が開き、そこから放たれた闇のエネルギーが私のフィールドを蹂躙し、破壊し尽くす。

見る間にモンスターたちの肉体が裂かれ、吹き飛ばされ、断末魔の雄叫びを上げて消えていく。

その強大な力に、必死で踏ん張り吹き飛ばされない様にするも、それだけでやっとの状態だ。

これが、《幻魔の扉》の力か!

 

 

「まだよ!破壊が終わった後、墓地からモンスターを1体召喚条件を無視して特殊召喚できる!!」

 

 

そう、この効果だ。

事前に聞いていたが、やはり強力極まりない効果だ。

何せ、禁止カードである《サンダーボルト》と、制限カードである《死者蘇生》の効果を併せ持っているのだ。

強力で当然だ。

だが、強力な力には、デメリットも付き物だ。

なにやら、《幻魔の扉》を使用して敗北するとその魂を幻魔に捧げることとなるらしい。

敗北が死へと直結する、お揃いデメリット。

しかしそれに見あった強力な効果。

それが、《幻魔の扉》というカードらしい。

 

しかし、待て。

この状況は、まさか…。

 

 

「《幻魔の扉》の第二の効果で、私の墓地より《ヴァンパイア・ロード》を蘇らせるわ!」

 

 

この状況はまさか…!

 

 

「そして《ヴァンパイア・ロード》を生贄とし、我らがヴァンパイアの始祖!最初の吸血種たる真祖の王!《ヴァンパイアジェネシス》を特殊召喚!!」

 

【ガアアアァァァァアァァァッッッ!!!】

 

ヴァンパイアジェネシス

攻撃力:3000

 

 

ロードの肉体が膨張し、狂気を撒き散らしながら現れた紫の巨体。

全てのヴァンパイアの祖にして、最初から吸血鬼であった真祖。

その攻撃力は、かの有名な《青眼の白龍》と並ぶ3000。

私の残りのライフポイントも、丁度3000。

つまり、この瞬間。

 

 

「《幻魔の扉》を使ったものが敗北すると、その魂を幻魔の生贄にされるのだけど……。もう関係ないわね。貴方の負けよ!負けて死になさい!!」

 

 

私の敗北が決定した。

 

 

「《ヴァンパイアジェネシス》で攻撃!『ヘルビシャス・ブラッド』!!」

 

 

ジェネシスの巨腕が私へと迫り、残ったライフポイントを全て奪い去ろうとする。

これで、私のライフポイントは0となるのだろう。

 

ああ、確かに絶望的だな。

だから…、

 

 

時間を戻そう(・・・・・・)

 

 

紫の巨腕が私に当たる瞬間、私だけの特別な能力(・・・・・)が発動した。

 

 

「『Another One(もう一度だ)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デスティニー・ドロー!!」

 

 

一瞬、彼女のドローしたカードが深い闇の輝きを放つ。

 

この光景を見るのは、二度目だな。

つまり、私の能力は成功したということだ。

 

 

「まずはスタンバイフェイズに、墓地のブラムを蘇生させる!」

 

 

またしても蘇るブラム。

そして、そう。

このカードを使うのは、今しかないだろう。

 

 

「スタンバイフェイズにトラップカードを発動!!《マインドクラッシュ》!!カードの名前を宣言し、そのカードが相手の手札に存在した場合墓地へ送る!!私が宣言するのは…」

 

「………え?」

 

 

一瞬起きる、彼女の惚けた声。

まるで、心を砕かれたかの様(・・・・・・・・・)だ。

 

 

「《幻魔の扉》だ。さあ、手札にあるならば捨ててもらおうかな」

 

 

私の宣言の直後、彼女の手札から墓地へと送られた《幻魔の扉》。

おや、どうしたんだ?

彼女の顔は今、吸血鬼ということを差し引いても、

 

 

「随分顔色が悪いじゃないか」

 

「…ど、どうして……」

 

 

震える声。

まるで、怯えた少女の様だ。

見てくれは口の裂けた化け物のままだがね。

 

 

「どうして私の引いたカードが分かったのよォォッッ!!!」

 

 

なに、ただの偶然だよ。

…と、言いたいところだがね。

 

 

「君には教えよう。私はね、時間を戻ることができるのだよ」

 

「……時間…を…?」

 

「そう、時間を。まあ、限定条件下ではあるがね」

 

「条…件……?」

 

 

震える声で、彼女が聞いてくる。

他の誰でもなく、彼女ならば教えてもいいだろう。

 

 

「その条件とは、決闘(デュエル)に敗北すること。そして私の能力とは正確には、その敗北の挽回可能な分岐点まで時間を戻すことだ」

 

 

それが、私の人とは違う特別な能力。

何故か世界で私だけが持つ力。

まあ、負けることが許されない時、例えば今などでしか使わないがね。

《幻魔の扉》ではないが、強力な効果にはそれなりのデメリットもあるのだ。

 

 

「そ、そんな能力!勝てるわけないじゃない!!」

 

「私にそんなことを言われても困るな…。さて、どうする?まだ、君のターンなんだがね」

 

「…クッ!………ソーサラーを守備表示にして、ターンエンドよ…」

 

 

LP:3000

手札:2枚

フィールド:ヴェルズ・オピオン、ヴェルズ・ヘリオロープ、インヴェルズの先鋭伏せカード1枚

 

カミューラ

LP:4500

手札:1枚

フィールド:ヴァンパイア・ソーサラー

 

 

「それじゃあ、私のターンだ。ドロー!」

 

 

本当はもう、カードを引く必要もないんだがね。

最初から伏せていた、2枚のカード。

その内の1枚はさっき使った《マインドクラッシュ》。

そして、もう1枚のカードでこの決闘(デュエル)は決着がつく。

 

 

「これで終わりだ。最後のトラップカードを発動!《墓荒らし》!!」

 

「は、《墓荒らし》ですって!?」

 

 

《墓荒らし》は有名なカードだ。

伝説の決闘者(デュエリスト)の一角である、『城之内(じょうのうち) 克也(かつや)』も使用していたカードなのだから。

その効果は、

 

 

「相手の墓地にある魔法カード1枚を選択し、ターン終了時まで自分の手札として使用する事ができる!そして2000ポイントのダメージと引き換えに、そのカードを発動することができる!!」

 

【キャキャキャキャキャ!!】

 

 

小さな墓荒らしが、笑いながらカミューラの墓地から現れる。

その手に握られたカードは、今は裏側を向いている。

そして、徐々に、ゆっくりとそれが表向きへと変えられ、その姿を現す。

 

 

「私が選んだのは《幻魔の扉》!!」

 

LP:3000→1000

 

 

私の背後に出現する、禍々しい闇を放つ扉。

先程は…おっと。

前の時間軸では私の前にいたこの扉だが、今は背後に(そび)え立ち私のカードとして発動している。

さあ、決着の時間だ。

 

 

「まずは君のモンスターを全て破壊する!」

 

【ギャアアアアァァァァァァッッ!!!?】

 

 

断末魔を上げ、闇に飲まれ消滅するモンスターたち。

そして、扉が開く。

 

 

「《幻魔の扉》第二の効果!さあ、墓地より現れろ!《インヴェルズ万能態》!!」

 

 

深き闇から現れた、ちっぽけなモンスター。

オピオンの効果でレベル5以上のモンスターは召喚できないからな。

これで良い。

私の手札にある、最後のモンスターのためにも。

 

 

「……特別だ。君にはこのデッキの、最強の切り札を見せよう」

 

「…あ、あぁ……」

 

 

目を見開き、恐怖で震える彼女に見せつける最後のカード。

 

 

「《インヴェルズ万能態》と《インヴェルズの先鋭》をリリースし、現れろ侵略者の王!!」

 

【ギャキキィィィッッ!!?】

 

 

上空、いや、城の天井に出現した深い、深い闇。

そこからいくつもの触手が出現し、2体のモンスターを捕らえ引き摺りこみ、捕食する。

 

モンスターたちの断末魔の後に、闇から雷鳴と共に巨体が降り立つ。

 

 

「《インヴェルズ・グレズ》を召喚!!」

 

【ガアアアァァァァッッ!!!】

 

インヴェルズ・グレズ

攻撃力:3200

 

 

ヘラクレスオオカブトの様な姿の悪魔の王者が、侵略を開始する。

これが、インヴェルズの王。

侵略者たちの覇者。

 

 

「さあ、いくぞカミューラ」

 

「……あ、あぁあぁぁぁ…。そんな…許して…。ほ、ほら!人形にしていた二人も元に戻すから!!」

 

 

クロノス先生と丸藤兄の人形を差し出し、命乞いを始めるカミューラ。

おそらく、ヴァンパイア一族復興のために形振りかまえないのだろう。

自分が最後の一人なのだから。

 

だが、

 

 

「…君は私の生徒や同僚を傷付けた。だから、そう…」

 

 

これで終わりだ。

 

 

「『Bites The Dust(負けて死ね)』」

 

「い、イヤアアァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」

 

カミューラ

LP:4500→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談、という奴だ。

カミューラを倒した時、生贄を欲した《幻魔の扉》の奥にいたであろう幻魔たちが、敗北したカミューラの魂を奪い、その肉体は灰となって朽ちた。

そのため彼女の存在により存在できていたらしい城が崩れ始めたため、大の男二人を担いで逃げなくてはいけなかったのは災難だった。

だが、なんとか全員無事に脱出することができた。

その代わりと言っては何だが、折角のヴァレンティノのスーツが一着台無しになったがね。

 

 

うん?私の能力は、結局どうして手に入れたのかって?

私が何故この能力を持っているのかは分からない。

生れ付き持っていたんだ。

一つだけ言えることは、この能力を使うたびに私の魂が天国から遠ざかるという実感があるだけだ。

 

故に、この能力の名は。

 

 

 

 

 

 

 

Another One Bites The Dust(地獄へ道連れ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遊戯王 Another One Bites The Dust、いかがでしたでしょうか!

今作において、『私』には特別名前をつけることはしませんでした。
全ての決闘者(デュエリスト)の願望という記号としたかったので。
『私』のモデルになったのは、ジョジョの奇妙な冒険に出てくるラスボスの一人、『吉良吉影』です。
彼のスタンドの最後の能力が、時間を一時間戻す『バイツァ・ダスト』でしたので、今作の主人公のテーマと重なることからモデルとしました。
今作のタイトル、そして能力名も『バイツァ・ダスト』の元ネタとなった『Queen』の『Another One Bites The Dust』からとりました。

なぜ、相手がカミューラだったのか。
それは『私』に《幻魔の扉》を使わせたかったからですね。
正確には、『時を戻すこと』の優位性をただ勝つよりも強く象徴したかったからです。
だからこそ、《マインドクラッシュ》と《墓荒らし》という組み合わせにもなりました。

それでは、遊戯王 Another One Bites The Dustはこれにて幕引きとなります。
読んでくださり、ありがとうございました!

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