散々おちょくられて心底ムカついた俺は、このノンデリ無乳壁神にとって最も地雷であろう言葉を言い放った。
男神と見分けのつかない女神様はちょっとチェンジで……と。
……勘違いしないで欲しいのは、別に貧乳を悪いと思っているわけではないのだ。実際エリス様やめぐみんは胸がアレでも十分魅力的なのだから。
だがこの壁神は違う。断じて違うっ!公衆の面前で恥かかせやがって!
覚悟しやがれ!お前にも味わわせてやるよ、自身の恥ずかしい歴史を暴露される屈辱をなっ!!
「壁神…壁神やと……!?んなこと言われたのは神生始まって以来初めてやわ!何処ぞの色ボケ女神ですら言わへんで!?」
おっと、女神様の初めてを頂いてしまった様だ。これは光栄ですね。
まあ容赦はしないわけだが。
「しょうがないだろ?実際俺からしたらあんたは可哀想な胸をした女神様(笑)なんだから。壁を司る神に鞍替えしたらどうですか?うちの母性溢れるバインバインな女神様を見習ってくださいよ」
「んぎっ…い、言ってくれるやないか……!そこまで言うんやったら教えてもらおか!あんたの主神は一体誰や!?言うてみい!!」
「ヘスティア様ですけど?」
「んなっ!?よ、よりにもよってあのドチビやと!?ウチがあいつに劣ってるって言うんか!?」
どチビ?何だ知り合いかよ、しかしロリ巨乳と性格終わってる壁無乳じゃどう考えても勝ち目ないのによく張り合えるなあこいつ。
もしかして馬鹿なんだろうか。
「胸の大きさ的には完敗じゃないですか、現実を受け入れましょうよ壁神様」
「壁神って言うのホンマにやめてくれへん!?マジで心折れそうなるわ!」
「………壁神様(笑)」
「ぶふっ!?」
「…はっ!?し、シル?一体何が……お腹を抱えてどうかしましたか?」
「っ…な、なんでもっ…なんでもないよ?それよりリューはもう大丈夫なの?」
「え、ええ。……不覚にも気を失ってしまいました、これもお酒の影響でしょうか……」
「誰が壁神や!ウチはこれでもかつてはトリックスターとも呼ばれた偉大な神様なんやで!?凄いんや!恐れられてるんや!!神ロキとは恐怖の象徴なんや!断じて壁神なんかやないで!」
「…………フッ」
「あがーっ!?鼻で笑うのやめろや!胸か!?胸の大きさで全てが決まるんか!?ウチの母性も中々のもんやで!?現にこの都市最強のファミリアの主神様やからな!ドチビと違って子供達に沢山慕われとるんや!需要あるんや!!」
ふむ、確かに多くの団員がいるってことは慕われてはいるんだろうが……母性かあ……よりにもよってそこでヘスティアと張り合うとは……持たざる者は平静さを失うんですね、可哀想に。
あと需要の話をしだすとマジで勝ち目ゼロだと思うんですけど……いやエリス様みたいに癒し系美少女女神様なら兎も角、こいつはなぁ……。
俺は顔を真っ赤にして捲し立てる可哀想な女神様を諭すように。
「はぁ…一般的観点から考えてみろよ、胸が大きくて性格の良いロリ巨乳と、性格の悪い断崖絶壁壁神女、果たしてどちらに需要があるのか?何ならこの都市に在中する神様連中にアンケートをとってみてもいいぞ?どうする?」
「んぎっ!?……こ、こんのクソガキがぁ……!!」
「(サトウカズマ…あのロキをここまで手玉に取るとは……やはり侮れないな。……しかし流石に断崖絶壁壁神女は言い過ぎではないだろうか?言い得て妙ではあるが…止めるべきか?いやだが先に煽り倒したのはロキの方だ。……あと口を開けば吹き出してしまいそうになるからね、ここは傍観といこう。すまないロキ)」
「(ロキに母性…いつもアイズたんアイズたんって変なことしてくるロキに母性……?…………リヴェリアの方があると思う…………)」
「サトウカズマ…胸が大きい方が好みなのか……ここは色仕掛けと呼ばれる禁断の秘術を実践してみるべきか……?」
「絶っ対にやめてくださいリヴェリア様!?ダンジョン攻略どころじゃなくなります!!世界四大クエストが始まっちゃいます!!エルフ族がぶっ壊れちゃいます!!」
「(…………………そ、そういえば私は意外と胸があると言われましたね……い、いえだからどうだという話でもないですが……!)」
「(だ、断崖絶壁壁神女っ……!だ、駄目っ、笑っちゃ駄目よシル・フローヴァ……!今の私はしがないウェイトレス……!耐えないと……!)」
俺は最後にとどめの一言を放つ。
「俺を勧誘したいんだったらもっと一目で女神だって分かるようになってから出直してくるんだな!この悪知恵しか芸のない壁女神めっ!!」
「ぶっはっ!?」
「シル!?どうしたのですか!?」
「うがーっ!!もう許さへんでクソガキ!飲み比べや!もうこうなったら飲み比べで勝負やー!ぶち潰したるわ!そんでゲロまみれになってミア母ちゃんにボコられたらいいんや!」
「えっやだよ面倒くさい」
「急に梯子外すなや!?」
俺は知っている。調子に乗った女神は心底酒癖が悪くなるということを。
と言うかこの面子で飲み比べって流石に気まず過ぎるだろ……初対面の人しかいないんだが?あと自分でやっといて何だが、彼らの主神をこれでもかと煽った状態で酔い潰れるのが怖い。闇討ちとかされそうで。
フィンと話せないのは残念だったが、ぶっちゃけもうあのバーサクキャスターと関わるのがかなり面倒だったので、良い感じにこの酒場からフェードアウトしようと画策……。
「待ってくれカズマ、私もお前ともっと話がしたいと思っている。だから共に飲もう!なっ!いいだろう?…まあ私は飲めないのだが……」
「!?」
しようとした俺の直ぐ後ろに例の頭のおかしい錯乱娘が……。
何でだ!?あの山吹エルフさんにステイされてた筈じゃないのか!?
俺は思わず少し後ろの方に居る山吹エルフさんに詰め寄り小声で。
「おい…何でちゃんと止めといてくれなかったんだ!?」
「す、すいません…でも私にはリヴェリア様を止めることは不可能です……!」
「諦めるなよ!もうちょっと頑張ってくれよ!」
「私なりに結構頑張ったんですよ!?もう諦めてください!それにこれはアイズさんを脳筋呼ばわりした報いです!ふんっ」
そう言って山吹さんはツンと顔を背けてしまった。
…ま、マジかぁ……。
俺はチラッと目を輝かせているエルフ…いやリヴェリアの方に視線を向ける。
「む?どうした?……ああ、安心しろカズマ。何も取って食うような真似はせんさ。ただ親睦を深めたいだけだからな。……我々には貴殿に謝罪する義務もある。どうか受け入れてくれないだろうか?」
誰だこいつ、さっきまで醜態晒してたバーサーカーとは思えないんだが。
……あー、そう言えばダクネスも貴族とのパーティーとかではそれなりに取り繕ってたな…この女もそれが出来るタイプの
…よく見ると見てくれはかなりいいよなこのエルフ。
恐らく胸も中々……よし、乗り掛かった船だ!折角だし楽しむか!
ロキ・ファミリアの連中も見た目のレベルはかなり高いし、コネ作りとしてはいい機会だ!金もふんだくれそうだしな!
大丈夫、頭のおかしい子の相手をするのは慣れてる。……悲しい事にな。
……と言うかリヴェリアの相手をしてると若干の安心感を感じる自分が嫌でしょうがないんだが。いつから俺は頭のおかしい子と接するのに安堵を覚えるように…あいつら、今頃何してんだろうなあ……考えても仕方ないか。
気を取り直し、俺は残念ハイエルフさんに。
「分かった。一緒に飲ませてもらうよ、ただしここからはそっちの奢りでお願いします」
「!あ、ああ任せろ!私が全て奢ってやる!……か、金を生み出す魔法とかはないのか?もしあるなら見せて……!」
「リヴェリア様!ステイ!ステイです!!」
あの山吹さん…大変だなあ……さっき責めたことあとで謝ろう……。
そんな俺をロキがニヤニヤと眺めながら。
「なーんやカズマ、ウチが飲み比べしようって誘った時と偉い態度の違いやないかい。もしかしてリヴェリアに惚れたんか?んー?」
なんて妙な事を……。懲りないなこの女神、マジでパッド入りって噂を広めてやろうか。
「(ロキ…君はもう黙っていた方が……彼の口撃力は恐らくこの都市でも随一……遠慮なく本音をぶちまければ大抵の人間は泣きを見るだろうな……)」
「(……………………やはり胸、胸なのだろうか……しかし一番のタイプは私とも……だ、だからなんだという話でもないのですが……)」
「……カズマ、私に惚れたのか?その…流石にそれは困るというか……す、すまない」
「(リヴェリア様…何で変なところで純情なんですか……さっきまで色仕掛けがなんだとか言ってたじゃないですか……)」
何で勝手に振られてんだ俺は!?くっそ、あの壁神マジで余計なことしかしねえな!
「おい壁神、お前は何も分かっちゃいないな」
「壁神呼ばわりやめろや!いやホンマ、やめてくださいお願いします」
お断りします。
「お前の誘いを断ってリヴェリアの誘いに乗る理由なんて簡単だろ?」
「………一応聞いといてやるわ」
俺は一旦息を吸い込み、当たり前の事を理解していない無知な女神に。
「無乳女神の誘いと頭がアレだが有乳エルフ様のお誘いだったら後者を取るに決まってるだろ、バカか」
「無乳やないわ!?少しくらいあるで!?」
周りの視線が絶対零度の如く冷え切っている気がするがきっと気のせいだ。俺は間違った事は言っていない。
「そもそもロキって何の神様なんだ?壁を司る神様?その身で体現してるのか?凄いですね!」
「「ぶふっ!?」」
「ちゃうわ!道化や道化!……いや司っとるわけでもないけどな!」
「そうなんだ!すごいね!」
「ムッカつくなああんた!てかお前らも笑ってないで少しは庇えや!主神が侮辱されとるんやで!?」
「い、いやすまないっ…これが謂れのない罵詈雑言であったのならば僕達としても黙ってはいられないんだが……今回非があるのはこちら、それに先に仕掛けたのはロキだろう?」
「くくっ…カズマ、私の隣に座れ。なに、誰にも文句は言わせんさ」
「(胸の大きさってそんなに重要なんだ……戦いの邪魔にしかならないと思ってたけど……あの兎さんはどっちが好きなんだろう……)」
「くうぅ…!ウチのファミリアやのにこのアウェイ感はなんなんや!?」
「………自業自得だと思う」
「アイズたんまで!?ウチもうあかんかもしれへん……」
さ、流石にそこまで落ち込まれると若干良心が痛むんだが……俺が悪いのか?……仕方ない。
「なあロキ、そう落ち込むなよ。なにも胸の大きさだけが女の魅力を決めるわけじゃないだろ?」
「あんたがそれ言うか!?どうせウチはあの胸も心もドデカいドチビには勝てへんのや!ウチは壁を司る壁神様なんや!ロキ・ファミリア改めカベ・ファミリアに改名したるわ!」
それは流石に俺が殺される!何とか止めないとやばい!
「ロキ、知ってるか?世の中にはな…貧乳はステータスって言葉があるんだ。時に貧乳ってのは条件次第で巨乳の魅力を遥かに凌駕する」
「……………詳しく」
「そうだな……ただデカい肉袋ぶら下げてさも当然のように「私は魅力的な女性です!」ってイキッてる女と、スレンダーで控えめな身体をしているけど、そんな自分の発育を気にしながらも頑張って魅力的になろうと努力してる女性、どっちの方が男心を掴むと思う?」
「!………そ、それは……!」
「………ロキならなれるよ、巨乳を凌駕する魅力的な女神に」
「か、カズマ……!お前天才やな!そや!胸の大きさが全てじゃないんや!最高の気分や!今日は飲むでー!ほれカズマも一緒に乾杯や!今日は全部ウチの奢りやー!!」
一気に上機嫌になった単純な女神様は、それはそれはもう楽しそうだった。
「(サトウカズマ…やはり相当頭が回るな……酒の席で、出来るだけ情報を引き出せればいいが……やれやれ、とんでもない冒険者が現れたものだ。……あの状態のリヴェリア相手に普通に会話が成り立つ稀有な人材…仲間になってくれると、有難いんだけどね……まあ無理だろうな)」
「(貧乳はステイタス…私は……って何を考えているのですか私は!?不純です!不純極まりない!こんな下劣な思考……!『行くのよリュー!』アリーゼ!?何故また……!)」
──おまけ(かつてのリヴェリア)──
「……【
「────────や、はり…素晴らしい魔法だな……!もっと撃ってこい!まだまだこんな物では私は満足出来んぞ!静寂!!」
「(血塗れになりながら何故そうピンピンしているんだこの狂人は……ジェノス・アンジェラスを喰らわせても死なんのではないか?頭おかしすぎるだろこのエルフ……)」
──おまけのおまけ(本編より昔に飛んだ場合のギャグ時空) ──
「暴喰だか静寂だが知らないが、まずはあいつの剣を奪ってやる……!喰らえっ『スティール』!」
「…………………!?」
「……これ、返します」
「カズマ!?あなたはこんな時まで何をやっているのですか!?」
「【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪……!」
「アルフィア!?落ち着け!今はまだその時では……!」
「ひぃ!?やばいやばいやばいやばい!リュー!リューさん!助けてくれ!!」
「ああもうっ!取り敢えず支援魔法をかけてください!逃げますよ!」
「よし任せろ!パワードプロテクションスピードゲインブレッシング!ついでに相手にスキル・バインド!」
「禊(みそぎ)はなく…!?魔法が中断されただと!?」
「更にフラッシュ!逃げるぞリュー!」
「相変わらず強いか弱いか分からない人ですねあなたは!」
おまけは完全に遊んでます