フィン・ディムナは後悔していた。彼に好き放題飲み食いしてくれと軽々しく言ってしまった事に。
「(ああ…月が綺麗だな……いや、あれは月じゃなくて天井か……はは、疲れてるのかな)」
…冷静に考えれば分かった筈だ。あのリヴェリアやロキとやたら波長が合いそうな彼が、まともな人間である筈がないと。
"あっち側"の人間であると。
遠い目をしながら、彼は目の前で巻き起こっているカオスに目を向ける。
「さ、流石に飲み過ぎではないか……?」
魔法さえ絡まなければ割とまともな感性をしている為、少し引き気味なハイエルフ。
「うるさいぞアホリア!それよりロキ、もっと飲め飲め!壁神ならぬザル神の力を見せつけてやれ!」
やたらテンション高く神ロキと酒を煽り合う男、サトウカズマ。
「誰が壁神やねん!でもええで!ウチのザルっぷり見せつけたるわ!カズマ、着いて来れるか!?」
神の威厳は何処へやら、覚醒した飲兵衛女神ロキ。
「いけるいける!何処ぞの駄女神に鍛えられたからな!酒は無限に入りますわー!ついでにあとで俺の必殺技を見せてやるよ!」
「必殺技やと!?なんやそれは!?」
「下着を剥ぎ取る最強スキルです」
「最強すぎるやろ!?あっひゃっひゃっ!さすがカズマや!略してサスカズ!!」
「スティールとは幸運の女神直伝の喜びの鎮魂歌!相手は泣くっ」
「きゃーステキ!ウチも泣かせてやエロマさーん!」
「誰がエロマさんだ!喜んで!!」
「「あーはっはっはっは!ひーっはっはっ!!!!」」
本格的にやりたい放題飲み始め、すっかり出来上がった状態の馬鹿二人がそこにいた。
「君達は…本当に仲が良いね……(打ち解けすぎだろ……)」
呆れた表情でちょっと引きながらロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナがそう溢す。
「当ったりまえやろ!?カズマはダチやで!初めて出来た人間のダチや!!なあカズマ!!」
「胸の欠片もない壁神様はちょっと……」
「まだ言うかゴラァ!人の心とかないんか!?泣くでウチ!」
泥酔した時特有の情緒不安定さから本気で泣きはじめようとするロキ。
恐らくガチ泣きするだろう。酔っ払いとはそう言うものだ。
それに巻き込まれるのにかなりの面倒臭さを感じた彼は、適当な事を言って慰めることに決めた。
自分で招いておきながら面倒くさいとか感じるサトウカズマは中々にゲスである。
だが酔っ払いに倫理や理性を期待する方が無駄、無駄なのだ。
特にこの男は何処ぞのお酒大好き駄女神と波長が死ぬほど合ってしまう屈指のダメ人間。酒を飲ませてはいけない究極の酒カス候補その一、アクセル随一の酒カスコンビの名は伊達ではない。
久方振りに波長の合う酒カス女神と出会ってしまった事により、泥酔モンスターサトウカズマがオラリオの地に誕生した。
「おいおい落ち着けよロキ!冗談に決まってるだろ?」
「せやかてカズマ、その心は?」
「俺にそれを語らせるか?長くなるぞ?なんせロキ、お前はとっても魅力的な女神様なんだからな!」
「ホンマか!?具体的には!?詳細プリーズや!」
「………おっ、この酒美味いな!」
「おいゴラァ!」
何も思い付かなかったカズマは露骨に話を逸らす事に決めた。
その余りのクソッタレっぷりに胸倉に掴み掛かる酔いどれ女神、ロキ。
このままでは揺らされて記憶に新しいゲロインエルフさんの様になってしまうと壊れた頭で瞬時に察したカズマは、己の中にある貧乳ヒロイン達に感じていた思いの丈をぶちまける作戦に出た。
「いいかロキよく聞け!まずスレンダーボディってのは男からすると守ってやりたくなる儚さがあって大変素晴らしい!華奢でまさに女の子って感じさせてくれるのも凄まじく堪らない、正直ムラムラします。……貧相な自分の身体に実はコンプレックスを感じてるのもギャップがあってドキドキするしな!無駄に豊満なだけの身体に胡座かいて調子にのってる女よりよっぽど魅力的なんだよお前ら貧乳は!……あと色々コンパクトで環境にも優しいエコ仕様だし」
「お、おお…そか、そこまで言われるとチョイ照れんなー!……ん?お前今最後なんて」
「何も言ってないよ」
因みに脳裏に浮かんでいたのはパッド大好き茶目っけ女神と胸囲のおかしい爆裂娘だ。
『パッド大好き茶目っけ女神!?わ、私は別にパッドが好きなわけでは……!ゆ、許しません!ぶっ飛ばしてやりますっ』
『誰が胸囲のおかしい爆裂娘ですか!いいでしょういいでしょう!その喧嘩受けて立ちますとも!穿て!エクスプロー……!』
『お、おい!いきなりどうしたのだ二人とも!?い、今はそれどころでは……!めぐみんは街中で爆裂魔法を放とうとするな!クリスも落ち着け!』
『あら二人とも随分面白い事してるじゃない!いいわ、ここは私も女神の本気を見せてあげるべきね!…この世に在る我が眷属よ……水の女神アクアが命ず……!』
『アクアも何をしようとしているのだ!?ああもうっ、カズマ!早く帰ってきてくれ!このままではアクセルが崩壊してしまう!!これ以上は私の胃が持たんっ!……あっだがこの痛みも中々悪くないな……』
何処か遠い世界で謎の電波を受信した者たちが暴れているのもつゆ知らず、彼等は再び酒盛りを始める。
「まあいいから飲もうぜロキ!ほら、どうせならリューもこっち来いよ!お酌してください」
「おっ、ええな!ミア母ちゃーん!頼むわー!」
「!?…ミ、ミア母さん……?」
「はっはっは!行ってやんな!あの坊主が飲めば飲むほど売り上げは爆上がりするからねっ」
「…わ、分かりました……」
「リュー!頑張って!」
「シルは何を言っている!?が、頑張ることなど……い、行ってきます!」
何だかんだと押しに弱いポンコツエルフさんが、泥酔状態の危険な男の元へ馳せ参じていく。
「…お、お待たせしました」
カズマとロキの間に開けられたスペース椅子を置きに、リューが所在なさげにポツンと座る。
「よく来たなポンコツエルフ!だが少し遠いのでは?リュー!もっとこっちにちこうちこう!」
「ポンコツ!?こ、このっ!お酌はこの席からでも十分出来るだろう!調子に乗るなサトウカズマ!」
激昂するリューの頭にカズマはぽんっと手を置き。
「まあそう怒るなよ、可愛い奴だなお前は!ほれ、よーしよーし」
「!?」
「(あっカズマこれ死んだな…安心せい、骨は拾ってやるわ)」
頭を撫で回していた。完全に酔っ払い男のセクハラである。
普段のリュー・リオンであればこんな事をしてくる男は即成敗、場合によっては二度と立ち直れないほどボコボコにするのが通常だ。
だが今日のリューさんは一味違う、色々ありサトウカズマに対する距離感やら何やらがバグりにバグり散らかしていた。
その結果。
「あぅ…あ、あの……こういう事をされるのは……その……こ、困る」
「「「!?!?!?」」」
赤面しながらもその行為を受け入れている乙女なエルフさんが誕生していた。
「(きゃー!リューが可愛い!凄く可愛い!!ナイスですカズマさん!!)」
それを見て興奮しているウェイトレスさんが一人。多分、この酒場で最も良い空気を吸っているのは彼女である。
シル・フローヴァ、今日はとっても楽しいです!
そんなお触りオッケーな可愛い女の子をかの神ロキが見逃す訳もなく。
「おっ、ええやん!ウチも……」
未だ抵抗なくカズマに撫でられている彼女に手を伸ばすが……。
「!?私に触れるなッ!」
瞬時に反応したリューによってその手は叩き落とされた。
「イッタイ手ガー!?な、何でウチだけ叩かれんねん!?……もう嫌や!飲む!飲むでー!アイズたんお酌してーや!頭も撫でさせてー!」
「………やだ」
ゴミを見るような絶対零度の視線で完全拒否。中々のダメージだ。
「はぐっ!?な、ならこの際リヴェリアでもええわ、お酌……」
「断る。何故私がそんな事をしなければならない?あとそれ以上は飲みすぎだ、諦めろ」
「なんでやっ!?じゃ、じゃあレフィーヤ……」
「お断りします!リヴェリア様の仰られる通り飲み過ぎです!諦めてください!」
「嘘やんっ!?ウチの味方ゼロか!?……なあなあ、やっぱ撫でさせてーやエルフたん!カズマだけズルイやん!ええやろ!?優しくするで!?」
「…お断りします。神であれど、私に触れる事は許さない」
鋭い眼光でちょっとだけ!ちょっとだけやから!と言い募ってくるセクハラ女神を睨み付けるリュー。
因みにこの間、彼女はずっとカズマに頭を撫でられているままであり恐ろしさは皆無である。
そんなリューに、泥酔して無敵の人になっているカズマは。
「おいおい駄目じゃないかリューさん、相手は壁の擬神化とは言え神様だぞ?謝りなさい」
「壁の擬神化!?」
聞き分けのない子供を諭すような穏やかな声色で優しく叱りつける。
「うっ…す、すいま……って違う!そもそも何故私が怒られている!?どう考えてもおかしいのは貴方でしょうサトウカズマ!何故私が悪いみたいになってるんですか!?あ、あといい加減頭を撫でるのをやめろ!」
「マジ断る。だってお前の髪サラサラで気持ちいいし」
流石エルフだよなー…あーこの感じ癖になるわ、堪らないですね!
「!?は、恥ずかしい事を言うなっ!このっ、下衆男!サトウゲスマ!」
「……………ふーん?」
「な、何だその目は…言いたい事があるならハッキリ言いなさい!」
やれやれ…この女は全く分かっちゃいない……言動と行動が一致してないじゃないか、これだから女ってのは困る。
俺はリューに言ってやった。
「そんなに嫌ならロキみたいに押しのければいいだろ?何でそうしないんだ?不思議ですね」
「!?…そ、それは……その……た、タイミングが掴めなかっただけです!今叩いてしまうと私の脳にもダメージが行ってしまうので……!」
「(リュー…流石にそれは……)」
よく分からない謎理論をぶちかますポンコツンデレエルフさん。
…ひゃほーい!これだからツンデレはやめられないぜ!
「ほーん?そんなに嫌ならもうやめてやるよ、ごめんな」
「あ……」
離されていく手を名残惜しそうに見つめるエルフは、誰がどう見てもアレだった。
「おっ、どうした?もしかして本当はもっと撫でて欲しかったのか?だったら素直にそう言えよ!可愛い奴だな!このツンデレエルフめ!」
ドSここに極まれり。酒で飛んでるカズマはもうなんか色々と最低だった。
「そ、そんにゃ…そんな事はない!もう知らん!一人で勝手に飲んで下さい!ふんっ」
顔を真っ赤にしながら去っていくリューの姿を肴に酒を嗜むカズマは、もう本当最低だった。クズマさんとはよく言ったものだ。
周りも普通に「うわぁ……」とかなりドン引きしている。
流石のロキも「マジかコイツ……」と若干酔いが醒めるぐらい結構引いている。
だが今のカズマにそんなゴミを見るような視線は通用しない。
彼は次なるターゲットに狙いを定め、ギリギリ許されるラインのセクハラ改め褒め殺しで可愛い反応を引き出す為に動き始めた。
「そう言えば喉乾いたなー…『クリエイト・ウォーター』!」
空になった自身のコップに魔法で新鮮な水を投入する。
それは当然、彼女を刺激し。
「お、おいカズマ!そ、それは……魔法か!?魔法だな!?く、詳しく聞かせ……!」
狙い通り激しくこちらに向かって詰め寄ってくる。
こうして見ると子供みたいで可愛いなあ…さて、仕掛けるか。
「はぁ…なあリヴェリア、お前ちっとも反省してないんだな」
「え?…あっ……す、すまない……お、怒らないでくれ」
流石に自分がやらかしすぎていた自覚があったのだろう。
申し訳なさそうにしょんぼりするリヴェリア。
その自制心、普段は働かないんですかね?まあ今は好都合だけどな。
俺の欲望の限りを尽くしてやる!セレナ様!俺に力を!!
かつてアクアを本気で泣かせやがったクソ女だが、我慢と理性を取っ払った最高の状態を教えてくれた事に関しては感謝してやってもいい。
アクアを泣かせたことに関してはマジで許さないが。
……まあ今はいい、今重要なのは理性と我慢を取っ払い欲望の限りを尽くすあの感覚だ!思い出せ!今ならやれる、最高の酒をありがとう!ロキ・ファミリア!
俺は未だしょんぼりしているリヴェリアに。
「……なんてな、冗談だよ。俺はリヴェリアみたいなやつ好きだぞ?」
「!?い、いきなりどうした?怒っているのではないのか?」
唐突な好意宣言に、困惑した表情をみせるハイエルフ様。
本当、魔法が絡まなければまともなんだなあ……これは、いけるぞ!
可愛い反応を見せてください、リヴェリア様!そして俺に癒しを……!
「怒ってるわけないだろ?寧ろ、そうやって自分の好きな事に目を輝かせてるお前を見るのは心地いいよ。可愛いしな」
「…………!?なっ、何を言っている!?わ、私のこれが悪癖である事など自分でも分かっている!か、可愛いなどと……!か、揶揄うのはよせ!」
年上のお姉さんが赤面してる姿っていいよな、バニルの気持ちが少し分かった気がするぜ。……いやあいつはただ人をおちょくって楽しんでるだけか。
それにしても悪癖だって自覚あるのかあ…これは益々攻め甲斐があるな……俺の本気を見せてやる!丁度嘘発見器もいることだしな。
俺は追い討ちをかけるように更に言葉を紡ぐ。
「別に揶揄ってる訳じゃないぞ?俺は本気でお前の欲望に忠実な所が最大の魅力だって思ってる。なんせ自分に正直に生きてる奴は見てて気持ちいいからな!リヴェリア!お前は最高だ!最高に可愛いぞ!!自信持て!!」
「!?わ、私のこれが…最大の魅力だと?……そ、そんな事を言われたのは生まれて初めてだ……ほ、本当か?本当にそう思っているのか?」
やばい、こいつ可愛いぞ!素面の俺は馬鹿だった!残念系美少女って最高じゃねえか!実はちょっと自信ないところとかギャップがあって素晴らしすぎるっ。
……思えば俺の周りはいつも何処か足りない残念系美少女ばかりだった……!それに心地よさも感じていた……!つまり、俺の趣味はそれ系統の女だったって事だ!
俺の幸運値が仕事した結果の巡り合わせだ!間違いない……俺が会いたかったヒロインはこのタイプの女だったんだ!悪かったなアクア、めぐみん、ダクネス!お前らは俺のタイプど直球の最強ヒロイン達だったんだな!
まともなヒロインと巡り合ってもつまらないよな…ああ、そんな願いは間違ってる!寧ろ逆だ!
酒でぶっ壊れたカズマの脳みそは中々にぶっ飛んだ結論を出した。
残念系美少女との出会いを切望するのは間違っているだろうか?いや、間違ってない!
上がりきったテンションのままサトウカズマは褒め殺しを続ける。
「本当本当可愛いよリヴェリア!可愛い可愛い、お前は最高のヒロインだ!ほれ、頭撫でてやるからこっちゃこーい!」
「(!?だ、誰にでもそうなのですかサトウカズマ!?)」
「…い、いやおかしい!絶対に揶揄っている!そうなんだろう!?」
何をおかしな事を……。
的外れな事を言い出すハイエルフ様に俺は真顔で言った。
「違うよ。そんなわけないよ」
「や、やはり揶揄っているんだな!?質が悪いぞ!少しだけ嬉しかったのに!」
嬉しかったのか……。
だがその反論は悪手だ、何せこっちには辱めにバッチリな機能を持った"アイツ"がいる。
「なあおいロキ、俺は今までの中で何か嘘を吐いたか?」
ロキも中々この状況を楽しんでいるようで、ニヤニヤしながら。
「いやあ?全然全くこれっぽちも吐いてへんで?よかったなぁリヴェリアー?んー?」
「なっ!?……そ、そうか…そうか……ふむ……そうか……!」
口元をむにむにさせながら嬉しそうに微笑んでいる彼女の姿は、とても可愛らしいものだった。
思わず弄りたくなるほどに。
「おやリヴェリア、もしかして照れているのかい?珍しいね」
フィンさん、楽しそうですね。
「!?て、照れてなどいない!私の本性に対してこんな事言ってくるやつが初めてで動揺しているだけだ!」
………………………。
「照れてるリヴェリアさん可愛いですね!最高です!」
やばいなんかテンション上がってきた!これだよこれ!見てくれいい美少女の照れ顔ほどそそるもんはないよな!なんか、とっても幸せな気分です。
お酒、飲んでてよかった!
「や、喧しい!黙っていろカズマ!」
「リ、リヴェリア様…!ちゃんと女性としての感情機微があったんですね……!感動しました!」
「おいレフィーヤ?それは一体どういう意味だ?私はこれでも女だぞ」
「褒めてるんですよ!今のリヴェリア様は大変可愛いらしいです!不敬かもしれませんがかなりグッときました!」
「んっ!?…お、お前まで変な冗談を言うな!そ、そもそも私は魔法以外に興味は……!」
「私も思った。……リヴェリア可愛い…………」
「!?あ、アイズまで何を言っている!?」
「うんうん!リヴェリアって意外と乙女なところあるんだねー、ちょっと意外だけどかわいい!」
「ティオナに同意」
「お、お前達まで……!わ、私は可愛くなど……!」
皆さん、楽しそうですね。
…よし、じゃあそろそろトドメの一言を……!
…あれ、何を言うんだっけか……やばい酔いすぎてセリフ飛んだ……!
こ、こうなったら勢いで……!
「いい加減認めろよリヴェリア!お前は可愛いんだ!美人系と可愛らしさが混じった究極系だ!魔法の事となると我を失うところもまた魅力的で可愛い!そうやって本気で生きてるとこ、俺は滅茶苦茶好きだぞリヴェリア様!可愛い可愛い!直球で褒められると照れるとこも最高に可愛らしいです!」
「あうぅ……や、やめてくれカズマ……!さ、先ほども言ったが私のこれが悪癖である自覚ぐらいは流石にある……!それが魅力的である筈が……!まして可愛いなどと……!」
酔いすぎて自分が何を言ってるのかもよく分からないが、リヴェリアの反応を見る限りそれなりの事は言えたのだろう。
俺はついでに。
「リヴェリア可愛い」
「はぐっ!?……か、カズマ…!後生だからやめてくれ……!暴走したのは謝るから……!これからは出来るだけ気をつけるから……!お、お願いしましゅ……!」
ヒャッハー!計画通り!赤面照れ顔ハイエルフ様頂きました!
これで俺、明日からも楽しく生きていけるよ!
ベル、お土産話楽しみにしてろよ!!
……てか今更だがあいつマジで何処いったんだ?やっぱ逃げたのか?
…まあいいか。
「見てださいよロキ様!おたくのハイエルフ様照れてますよ!滅茶苦茶可愛らしいですね!」
「ほ、ホンマやなぁ…カズマお前凄いわ……リヴェリアがこんなんなるの初めてやで……ええもん見たわ……リヴェたんかわええで!」
「ロ、ロキは黙っていろ!カズマもいい加減冗談はよせ!私も怒るぞ!」
「?一欠片も冗談なんて言ってないんだが……好きな事になると暴走しちゃうところとか最高だろ。何せ見ていて飽きないし、何だかんだ一緒に居ると楽しいだろうしな」
実際、アイツらといて退屈だった事なんて一秒たりともないしな。
このハイエルフ様も、きっと同じくらい俺を暇になんてさせてくれないだろう。
「!?そ、そんにゃ……ロ、ロキ!カズマは嘘を……!」
「吐いてへんでー?神名に懸けて誓ったるわ。よかったなぁリヴェリア」
「!?!?!?!?」
頭のおかしい狂人エルフかと思いきや、そこに居たのはただの初心なハイエルフ様だった。
その小動物の様な可愛さに、理性がぶっ飛んでいるカズマは普通に手を伸ばし。
「ははっ、ほーれよしよし可愛いぞリヴェリアー」
リューにしたのと同じように頭をヨシヨシと撫で回していた。
思考回路が酒でぶち壊れすぎた影響により、一周回って下心は完全に消え失せていた。
今のカズマは娘を可愛がる父親のような気持ちで、リヴェリアの頭を撫でている。
だからこそ、そう言った感情の機微に聡いエルフである彼女は手を振り払うことが出来なかった。
「…あ、頭を…な、撫でないでください……!」
羞恥からくる頬の熱さに耐えながら、か細い声で懇願するのが精一杯だった。
「マジ断る」
「……か、勘弁してください……っ!」
「(むぅ…何故か胸の辺りがムカムカします……これは一体……)」
「(あらあらリューたらまあ……ふふっ、面白い♪)」
「(リヴェリア様…!いえエルフ族としては男に誑かされている様に見えるこの状況に対して色々思うところは多分に有りますが……これを機に魔法ジャンキーから卒業してくれる可能性も……!)」
「(リヴェリアが可愛い…頭撫でたい……ずるい……)」
「(サトウカズマ…いや本当に仲間になってくれないかな…酒癖はかなりの物だが…ベートやアイズの悪酔いよりかは遥かにマシだ。胃痛の種が一つ完全に消失しそうだしね……更に実力的にも申し分ない上に頭も回ると来た。ファミリア内外の衝突も彼がいれば緩和出来そうだ。…これほどの有良物件、何故今まで無名だったんだ?少し、調べてみる必要がありそうだな……しかしリヴェリア、君の年齢的に遥か年下の彼に赤面しているのは少しばかり犯罪臭が……)」
「フィン」
先程までの乙女の顔から一点、凍えるような真顔でリヴェリアはフィンの名を呼んだ。
「!?な、何だいリヴェリア?」
「今何か妙な事を考えなかったか?」
「…はは、考えてないとも」
「……ロキ」
「(頼むロキ!)」
「あー…嘘は言っとらんで、うん」
「ほう、神名に懸けて誓えるか?」
「!?そ、それは…えぇとな……」
「やはり…!おいフィン貴様一体何を……!」
「おいおいリヴェリア、そういきり立つなよ。ゴクッ…ぷはっ……可愛い顔が台無しですよリヴェリア様!」
「んぐっ!?か、カズマもうそれはやめてくれ……!」
「(感謝するサトウカズマ……!また借りが出来てしまったな……しかしリヴェリア、君も静寂に対しておばさん呼ばわりしていなかったか?……いや、あれは確か静寂の方が先に年増呼ばわりしていた気も……うん、女性に対して年齢系の思考を巡らせるのはやめよう)」
フィンが懸命な判断をしている中、遂にあの男が動き出す。
「んがっ…あァ?一体何が……」
「あっ、起きたんかベート。……いや、発情犬(エロスティック・ドッグ)」
「あァ!?んだそのふざけた呼び方は!?」
「やっと起きたのね、エロスティック・ドッグ」
「おはよー、エロスティック・ドッグ!」
「ぶちのめすぞバカゾネスどもっ!誰だ!その舐め腐った名前付けやがったのは……!」
憤る彼に俺は優しく。
「はは、そう怒るなよ。いい名前じゃないか。……エロスティック・ドッグ(笑)」
「てめェかあァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
因縁の対決が再び始まる──!!
次こそは…次こそは酒場回を終わらせてストーリーを進めます……!ベル君とコンビで冒険するカズマさんが描きたいんです……!