この素晴らしいダンジョンにカズマさんを!   作:ぽーぴー

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この素晴らしい世界に英雄を!

あの後俺の追い打ちを受け意識を失った、アルティメットゴッドヘスティウェスタストライクアタックさん(笑)は、ベルの懸命な呼びかけにより、その意識を再び下界に浮上させた。

 

「ボク復活だよ!ベル君の愛のエールのお陰だねっ!!響いたぜ?君の『僕の大好きなヘスティア様!とっても可愛いヘスティア様!!最高の女神のヘスティア様!!!!目を開けてくださいっ!!!!!』って本心からのプロポーズ!!ボク困っちゃうなぁ!!」

 

「あ、はは……(カズマにそう言えって言われたから言っただけとは言えない……確かに本心ではあるけど……)」

 

「幸せそうに微笑みながらクネクネしてるとこ悪いんだが……俺は途中からこっそり困り果ててるベルの方をチラチラ見て楽しんでたの知ってるんだからな」

 

「!?」

 

「えっ、神様そうなんですか?」

 

「そそそそそそそんなわけないじゃないか!ボ、ボクがそんなカズマ君みたいな事するだなんて……!ベル君!信じてくれ!!ボクは無罪だ!!」

 

「はいダウトだ!神名とベルに懸けて誓えるんですかヘスティア様!?出来るんだったら信じてやるよ!出来るんならなっ!!」

 

「ふぐっ!?そ、それは……くっ、ボクの負けだ……!煮るなり焼くなり好きにしろい!!」

 

「おっ本当か?じゃあ丁度火を生み出す魔法も水を出す魔法もある事だし、女神のだし汁でも作ってその辺に売り込みにいくか!珍しいし高く売れるだろ」

 

「すいませんでしたカズマ様!わたくしヘスティアが悪かったでございます!!どうかお慈悲をっ!!!!」

 

女神の威厳は何処へやら、自身の子供に即座にDO☆GE☆ZA☆を敢行する残念な女神様がそこにいた。

 

流石のベルもフォローしきれないようで、困ったように笑っている。

 

俺はそんな哀れなヘスティア様に。

 

「いいよヘスティア。許すさ」

 

「……え?本当かい?」

 

優しい声色と表情で神に赦しを与える俺のことが信じられなかったのだろう。

 

喜ぶより先に困惑の方が先に出てしまっている。

 

罰を与えられないことが逆に不安を煽ってしまっているのかもしれない。

 

だから俺はそんな愛しの主神様を安心させるように。

 

「次ロキや知り合いの神様と会った時に『我が名はアルティメットゴッドヘスティウェスタストライクアタック!!三大処女神随一の大馬鹿にして、求婚魔法を操る者っ』とか言ってくれたらそれでいいよ」

 

「鬼か君はっ!?えっ、嘘だろう!?嘘だと言ってくれ!!」

 

泣きそうな顔で縋り付く神様に俺は一言。

 

「がんば」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?!?!?」

 

その場で崩れ落ちて発狂する駄女神様。

 

「か、神様!?大丈夫ですか!?」

 

死んだ目で『終わった…ボクの神生終わった……次のガネーシャの宴を切っ掛けにアルティメットゴッドヘスティウェスタストライクアタックさん(笑)って生涯に渡って呼ばれ続けるんだ……きっと略してアルゴッド、アルゴノゥトのパチモンだぜあいつ(笑)とかって後ろ指さされまくるんだ……』と悲壮感を漂わせながらブツブツとよく分からない事を溢し続けるヘスティアに駆け寄るベル。

 

…うむ、悪くない光景だ。

 

「冗談だよヘスティア。俺もそこまで鬼じゃないさ、次から気をつけてくれればそれで……」

 

満足した俺は、仕返しはこのくらいにして本当の意味で許してやることにした。

 

…流石に長い神生において、名前のおかしい爆乳娘とかあだ名付けられるのは可哀想すぎるしな……。

 

そう手を差し伸べてやる俺にヘスティアは。

 

「本当かいっ!?なんだ、意外と優しいじゃないかカズマ君!人の心とか何処に置いてきたんだろうとか鬼畜のクズマとか下着剥ぎ変態クズ野郎とか心の中で密かに思っててごめんよ!許しておくれ!!ごめーんねっ☆」

 

……………………………。

 

「上等だこのクソ神が!許してやろうと思ったけどやっぱやめだやめっ!!これから自己紹介する度にあの名乗りをさせてやる!そして人々や神々に名前のおかしい爆乳娘として後世に語り継がれる神生をプレゼントしてやるっ!!」

 

「名前のおかしい爆乳娘!?ふざけてるのかい!?」

 

「ふざけてんのはてめえだこの駄女神が!人の事鬼畜だのクズマだの下着剥ぎ変態クズ野郎だの呼びやがって!!ぶっ飛ばしてやる!!」

 

「最後のに関しては間違ってないだろう!?八つ当たりはよくないと思う!」

 

「うるせー!俺の国ではやられたらやり返す、やられなくてもやり返すって偉大な言葉があるんだ!泣く子も泣かすって言葉もな!!だから俺は悪くない。泣かせてやる!ヘスティア!!」

 

「何だその傍迷惑な格言はっ!?や、やめ…ヤメロー!!!!」

 

「か、神様…カズマ……そろそろステイタス更新とか色々しようよ……」

 

「「今それどころじゃないんで!!」」

 

──ああこれ、掃除が大変になるパターンだ……。

 

再びじゃれ合い始めた二人を見てベル・クラネルが遠い目をし始めたのは言うまでもない。

 

── ── ── ── ── ── ──

 

「じゃあベル君!君からステイタス更新をしようか!!」

 

ブチギレたベルによって『私は大切な本を汚してしまいました』と書かれたプラカードをぶら下げながら、ヘスティアが切り替えるように明るく言う。

 

原因は盛大な喧嘩の最中に放たれたカズマのクリエイト・ウォーターを、咄嗟に近くにあったベル秘蔵の英雄譚が綴られている本で防いだ事に起因する。

 

「そうだな!俺は後でいいよ!!ベル、楽しみだな!!あんだけダンジョンで死闘を繰り広げたんだ、覚醒しててもおかしくないんじゃないか!?」

 

直接クリエイト・ウォーターで被害を出したカズマは『私は神様やエルフの下着を剥ぎ取り、大切な本を汚した変態野郎です』ともっと酷い事が書かれたプラカードをぶら下げさせられている。

 

ブチギレたベルは本当に怖かった。普段の穏やかで優しいベルとは打って変わり、冷たい目をしながら静かに真顔で淡々と怒りを吐き出し続けるその姿は、もしかしたら魔王よりも恐ろしかったかもしれない。

 

思わず近くのヘスティアと抱き合ってしまう程恐ろしかったのだ。

 

そのあまりの恐ろしさに思わず反論して言い逃れようとしたが、『今雑音を吐き出さないでくれる?』と心底冷え切った声で言われ断念した。

 

「ヘスティア!俺たちはもう喧嘩なんてしないよな!」

 

「応ともさっ!ボクたちは仲良し家族だからね!!ボクもちょっと言いすぎてたよ!!ごめんよ!!」

 

手を繋ぎ合いながらもう俺たち喧嘩しませんアピールをベルにかます。

 

「気にするなよヘスティア!俺たちは家族だろ!?許すさ許す許す!!仲直りだな!!」

 

「さっすがカズマ君気前がいい!!愛してるぜカズマ君っ!!」

 

「俺も愛してますよヘスティア様!」

 

「カズマ君!仲直りってことはあの自己紹介はやらなくていいよね!?」

 

「いやそれはやって貰うけど」

 

「……えっ!?」

 

「……えっ?」

 

…………………………………。

 

沈黙が流れる。

 

「い、いや…だって……ボ、ボクたち仲直りしたん……だよね?」

 

「それとこれとは話が別じゃないか?仲直りってんならケジメはつけるもんだろ?」

 

「い、いやいやいやいや!それを言ったらカズマ君だって何かしないとおかしいだろう!?君もたくさんやらかしてるじゃないかい!!」

 

「…………………落ち着けヘスティア、このままじゃまた泣かせ合いに発展してベルに怒られる。…あーなんか平和的な白黒ハッキリつけられる方法があればいいんだけどなー」

 

その言葉にヘスティアは我天啓を得たり!と得意げな顔をして。

 

「じゃあじゃんけんとかどうだい!?これなら平和に安全に即座に決着を付けられるだろう!?運勝負だしね!!平等だろう!?」

 

恐らくヘスティアは俺のスキル、『運が悪くなる』の重複が幸運や、超幸運を上回っていると思っているのだろう。

 

何故なら彼女はまだ一回のダンジョン探索で95000を稼いだ俺の豪運を知らない。

 

ノーパン状態でベルに迫られ気絶し、ベルのステイタス更新を行ったあと何故か不貞腐れたので、何だかんだと稼ぎを報告する機会がなかったのだ。

 

だからこそ、この俺にじゃんけん勝負を提案してきた。

 

かつて本物の女神にチート認定されたほどの、この俺佐藤カズマが保有する特殊能力(ユニークスキル)、それは──。

 

「いいぜヘスティア…だが覚悟するんだな。……俺、じゃんけんで負けた事、片手で数えるくらいしかねえから」

 

幸運の女神様以外には絶対にじゃんけんで勝てる最強能力(アルティメットスキル)

 

────負ける姿など、想像すら出来ない。

 

「い、言うじゃないかカズマ君……!神に運勝負で勝てると思うなよ!ボク意外と強いんだぜ!?」

 

「ふっ…やってみな、胸を貸してやるよ」

 

勝負の結果は、始まる前から既に決まっている。

 

彼に運勝負で勝てる可能性があるのは、未来を見通す大悪魔か、幸運を司る女神様ぐらいだろう。

 

それほどまでに埒外な幸運値、反則(チート)とまで呼ばれたその力。

 

 

────サトウカズマの幸運値は、世界を救えるレベルに達している。

 

「ぐっ…よ、よぉし……!行くぞー!」

 

その片鱗を神の勘で僅かに感じとったヘスティアは、その救界(マキア)すら果たせるであろう圧倒的な力に一瞬気圧されそうになる。

 

だがそんな挫けそうな心を意地で何とか必死に繋ぎ止め、勝負のリングに上がる事に成功する。

 

そして──。

 

「「じゃーんけーん……ぽいっ!!」」

 

カズマはグー、ヘスティアはチョキ。

 

つまり結果は──。

 

「俺の勝ちだな、ヘスティア」

 

幸運値の化け物、幸運の女神の次に運が良いとされる出鱈目な存在──サトウカズマの完全勝利だった。

 

「……も、もう一回、いや二回!いや三回!!勝負してくれ!!」

 

「はぁ…じゃあ十回連続でじゃんけんして俺が一度でも負けたら俺の負けでいいよ」

 

「えっ」

 

駄目元で頼んでみただけで、まさか受諾されるとは予想外だったヘスティアが、思わず困惑の声を溢した。

 

「……しょ、正気かいカズマ君?十回連続でじゃんけんして一度も負けないなんて確率的にほぼ有り得ないよ?本当にいいのかい?」

 

「さっきも言ったろ?……俺、じゃんけんで負けたこと片手で数えるくらいしかねえから。じゃんけんで俺に勝てると思うなよ」

 

「……ふ、ふふふ……ふははははっ!調子に乗ったねカズマ君!!確率論ってのを知らないのかい!?カズマ君が十回連続で勝てる確率なんて存在しないのさっ!!さあ、勝負を始めよう!!」

 

意気揚々と勝利が確定した勝負に挑むヘスティア。

 

────結果。

 

「なんでだあぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?」

 

十回連続、カズマの勝利。

 

「だから言ったろ?じゃんけんで俺に勝てると思うなよって。絶対負けねえから」

 

「なんだそれはっ!?チートだ!チートじゃないかい!!カズマ君の真のスキルはじゃんけんに勝てる能力だって言うのかいっ!?卑怯だ!卑劣だ!!チートだ!!!!」

 

「ははは、ウケる」

 

「くっそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「はーはっはっは!!運勝負で俺に勝ちたいんだったら幸運を司る女神様か未来を見通す悪魔さんでも連れてくるんだなっ」

 

「無理に決まってるだろう!?……あっ、不味い!叫び声が痺れた足に響くっ」

 

「実は俺もそろそろ辛いと思ってたんだ。……あの、ベルさん。そろそろ正座解いてもいいでしょうか?」

 

 

彼らはベルにまた怒られるのが怖くて、今までプラカードをぶら下げながら、正座で大騒ぎするという謎に器用な事を成していた。

 

しかし流石に限界が来て、足をプルプルさせながらベルに正座解除の申請を出す。

 

そんな家族兼仲間達の姿があまりにも見るに耐えなかったのか、ベルの怒りは既に収まっており。

 

「……あの、僕ももう怒ってないのでステイタス更新しませんか?僕もやりすぎました、ごめんなさい」

 

少しの申し訳なさと、呆れからそう優しく溢すのだった。

 

──────────────────

 

「や、やっとステイタスの更新ができる……つ、疲れた……!」

 

「いやマジでダンジョンより物凄く疲れたんだが……ヘスティア、早くしてやれ」

 

「君が言うのかい?まあいいか…さあベル君!ステイタスの更新と行こう!!」

 

ここに来るまでに何故かとても疲れ果てた彼等は、もう無駄な事はしないと決心して、さっさとこのクソダルイベントを終わらせる事にした。

 

「じゃあ神様、ステイタスの更新をお願いします」

 

「うん、任せておくれ!………!?こ、これは……!?」

 

ヘスティアの目に映るベル・クラネルのステイタス。そのアビリティの伸びもかなりのものだが、それ以上に──。

 

「(新しいスキルが発現している!?)」

 

そこには──。

 

ベル・クラネル

Lv.1

力: H 120→G 221

耐久: I 42→H 101

器用:H 139→G 232

敏捷:G 225→F 313

魔力:I 0

 《魔法》

 【】

 《スキル》

 【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

  ・早熟する。

  ・懸想が続く限り効果持続。

  ・懸想の丈により効果向上。

 

 【英雄証明(アルゴノゥト)

  ・英雄存在への切望によってチャージ開始。

  ・チャージ量に応じて全アビリティ上昇。

  ・限界突破(リミット・オーバー)により更にアビリティが飛躍、昇華。

  ・極集中(ウル・ポイント)、全開放(フル・バースト)可。

  ・効果は想いの丈により増減する。

 

 

神聖文字(ヒエログリフ)でそう書かれていた。

 

「(アビリティのトータル上昇値も中々に頭おかしいけど…それ以上に目を引くのはこの新スキルだ。全アビリティ上昇…これはまだいい、いや良くはないけど……問題はその下の文面、限界突破(リミット・オーバー)により更にアビリティが飛躍、昇華するってスキル効果。……飛躍はともかく昇華……ランクアップ(・・・・・・)にも等しいクラスの強化が成される可能性があるって事だ。このスキルは…伝えるべきなのか?どう考えても身体への負担が大きすぎる……!ベル君は絶対に無茶をするだろう。…やっぱり隠していた方が……でもこのスキルは格上相手でも勝ちの目を拾える可能性のあるレアスキルだ。……このスキルを使用しない事でベル君が死んでしまうかもしれない。……ダンジョンには常に異常事態(イレギュラー)が付き纏う、この前のミノタウロスの一件だってそうだ。……強くなりたい、英雄になりたい、これはベル君のそんな強い想いが形になったスキルとも言える。……だったら僕は……!)」

 

色々と考えたが、やはりちゃんと伝えるべきだと判断した。

 

アビリティの異常な成長速度による慢心や驕りも、サトウカズマ(最も身近な憧れ)が近くにいる限りは起こり得ないだろう。

 

「おめでとう、ベル君。……君の強くなりたいって願いが形として現れたみたいだ」

 

ヘスティアは、憧憬一途(リアリス・フレーゼ)の文面だけを消して、ステイタスが書かれた紙をベルに見せることに決めた。

 

「えっ?それってどういう……!?ス、スキルがっ、スキルが発現してますよ神様!?か、書き間違いとかじゃ……!!」

 

「そんな訳ないだろう?それは間違いなく、君のスキルだ。もう一度、よく見てごらんよ」

 

神様に言われてもう一度、自身のスキルスロットに記された英雄証明(アルゴノゥト)を凝視する。

 

…本当に、本当に僕にスキルが?しかもこのスキルの名前……アルゴノゥト(・・・・・・)……お祖父ちゃんのお気に入りの英雄の名前だ。

 

僕も、その英雄譚が好きだった。それが僕のスキルとして……。

 

そっか…そっか……!!

 

「神様!カズマ!!僕……!!」

 

成れるかもしれない。

 

世界も自分もお義母さんも全部救って笑顔にしてあげられる、そんな物語に出てくるような英雄に。

 

アルゴノゥトみたいに、喜劇を巻き起こして人々に笑顔を齎す英雄に。

 

アイズ・ヴァレンシュタインさんの隣に立って戦えるような強い英雄に。

 

カズマに信じて貰えるような、彼の仲間達と同じぐらいに頼って貰える凄い英雄に。

 

────お義母さんが安心して笑ってくれるような、そんな本物の英雄に。

 

僕は、成れるかもしれない。……いや違う、成れるかもしれないじゃ駄目なんだ。絶対になる、そのぐらいの覚悟を決めないと、発現してくれたこのスキルに申し訳ない。

 

"英雄証明"、このスキル名に恥じないような英雄になろう。

 

「しかしあれだな、確かスキルってそいつの人生観やらが影響して発現するんだろ?ベルにうってつけのスキル名じゃないか。……よかったな」

 

「!うんっ、ありがとうカズマ!僕頑張るから!証明するから!絶対必ず、英雄になれるって!!」

 

その眩しいくらいの真っ直ぐな宣言に、ヘスティアは目を細めながら。

 

「さて、じゃあちょっとだけこのスキルについて考察してみようか。……カズマ君はどう思う?」

 

恐らく自分やベルより、この手のことに詳しいであろう男に問いを投げる。

 

「どう…っていきなり言われてもなあ……シンプルに、英雄存在への切望……つまり英雄になりたいって強く思う事で発動するスキルなんじゃないか?限界突破は文字通り限界を超えた力を発揮出来るみたいな感じで。…極集中や全開放は使ってみない事には分からないが……俺の想像でいいなら、前者はチャージを何かに集約させる、後者は普通に全チャージを消費して威力の底上げをする的なアレだろ、知らんけど」

 

取り敢えず今思いついた事を適当にヘスティアとベルに伝えてみる。

 

すると二人は豆鉄砲を食らったかのようにポカンとした顔をして。

 

「カ、カズマ君……一瞬でそこまで思い至ったのかい?」

 

「や、やっぱカズマって凄いや……!」

 

そんな事を……。

 

普通に元ゲーマーとしての所感を述べただけなんですが…それでここまでヨイショされるとなんか気まずいな……まあいいか。

 

「さて、じゃあ俺のステータス更新もしてもうとっとと寝ようぜ。マジ疲れた」

 

ダンジョンに向かい酒場で暴れて、またダンジョンに行って朝帰り。

 

普通にクソ眠い。

 

「あ、ああそうだね…冷静にハードコアスケジュールすぎたもんね……よしっ!カズマ君のステイタスの更新をして皆で寝よう!!」

 

意気揚々とそう宣言するヘスティアを尻目に、俺はさっさとベッドで横になる。

 

ステータス更新のためにヘスティアが背中に……ふむ。

 

「ありがとうございますヘスティア様」

 

「相変わらず敬意の出し方が極端だね…っと終わったよ。……魔力はともかく、耐久が異常に上昇してるのは何でだい?瞬殺したんじゃないのかい?」

 

そう言いながら渡された紙を改めて見てみる。

 

サトウ・カズマ

 Lv.1

 力: I 15→ I 18

 耐久:I 3→ F 350

 器用:H 152→H 180

 敏捷:H 102→H 104

 魔力:G 215→C 602

 

……耐久と魔力が凄いことになってるんだが。

 

魔力はまあ分かる。格上相手にスリープしたり、スキルとはいえ魔力を消費してスティール使って勝利したし、アホみたいに跳ね上がるのはまあ納得はいく。

 

ただ耐久に関しては、数回リューにぶっ叩かれたのち頭突きされ、その上やたら強そうな女将さんの拳骨を喰らっただけなのにな……それだけでこんな上がるもんか?今後も定期的にリューにぶっ叩いて貰うべきか……うん、やめよう。ダクネスみたいになりたくはない。

 

「うわぁ…!凄いねカズマ!Gから一気にCまで成長するなんて凄すぎるよ!!これもリューさん相手にスティールして下着剥いたり、ベートさんに魔法使って瞬殺したお陰だね!!」

 

「ああなるほど…そのリューさんとやらの下着を剥ぎ取ってぶっ飛ばされたせいで耐久が急上昇してるのかい……全く、君ってやつは……」

 

「おい待て!待って欲しい!リューに関しては一度目は事故だったんだ!二度目はちゃんとした決闘でパンツを奪った挙句叩かれたわけで俺は全く悪くない!!八つ当たりしたあいつが悪い!!」

 

ゴミを見る目で俺を見てくるヘスティアに弁明しようと方を開くが、より一層視線が冷たくなっていくのを感じた俺は、話を逸らすことに決めた。

 

…だって三度目の頭突きと四度目のマジビンタの経緯話せないしな……ドン引きされるのがオチだ。

 

「て言うか最初から疑問だったんだが、俺のスキルのアビリティに補正ってこのステータスの数値には現れないんだな。超高補正な割には耐久とか力しょぼすぎるし」

 

「露骨に話逸らしたねカズマ君……まあそうだね、多分表には現れない隠れステイタスなんじゃないかな?だからアビリティの数値は君には余り関係ないのかもね」

 

よし、話は逸らせたな!感謝します、ヘスティア様!!

 

追求しないでくれた偉大な女神様の寵愛に、信仰の意を捧げる俺を尻目にヘスティアは少しだけ不思議そうな顔で唸り始めた。

 

「……どうした?」

 

「いや…うーん……カズマ君が倒した冒険者ってのはレベル5なんだろう?レベル1がレベル5の冒険者を魔法を使って打ち倒したんだ。正直、一気にSくらいにまで上がってても全然おかしくないと思っただけさ。……GからCも相当バグってるけどね」

 

ヘスティアのその言葉に俺は確かにと納得を覚えた。

 

ベートさん、アレで普通に超格上なんだもんなあ……Sまで行っても全然おかしくないのでは?寧ろ行ってないとおかしいのでは?

 

そのままブツブツと独り言を溢し続けるヘスティアの声を、俺の盗聴スキルが自動的に捉えていく。

 

「ランクアップ可能な程の偉業を複数回達成してもこの成長率……成長率の限界?……………………あれ、もしかしてカンス」

 

「『フラッシュ』!」

 

「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「か、神様!?いきなり何してるのカズマ!?」

 

盗聴スキルでバッチリ捉えた不穏な言葉を防ぐため俺は魔法を繰り出した────!!

 

 

──────────────────

 

あの後ベルにしっかり叱られた俺はもういい加減眠ろうとソファに向かう。

 

「ベル君、今日は疲れただろう?久しぶりに一緒に寝ないかい?」

 

「えっいいんですか?じゃあお願いします」

 

ベッドの方からそんな不思議な会話が聞こえて……。

 

「おいちょっと待て!一緒に寝るってどういう事だ!?しかも久しぶりだと!?おいベル!説明しろ!!」

 

まさか自分を慕ってくれている年下の少年が男としてワンステージ上に居るなど信じたくなかったカズマは、激情に駆られるがままベルを問い詰める。

 

「え、えっとね…僕の育ての親……お義母さんがね、僕が疲れてる時や怖い夢を見た時は一緒に寝てくれたんだ。……その事を神様に話したら『じゃあベル君が疲れてる時はボクが一緒に寝るぜ!親だからね!!』って……」

 

「お前本当に処女神かよ……」

 

「う、うるさいやいっ!親としての責任を果たしてるだけだもんねっ!!」

 

「……因みにベル、その義理の母親ってのは美人なのか?」

 

「……も、物凄く美人です」

 

なるほどなるほど…そうかそうか……美人な義理の母親と添い寝かあ……ふーん……。

 

「よしベル!お前は今日から敵だ!美人のお姉さんと添い寝とか羨ましすぎるっ、もう俺に話しかけるなよ!!」

 

「ええっ!?び、美人って言ってもお義母さんだよ!?恋人とかじゃないんだよ!?それでも敵なの!?」

 

「当たり前だろ!いいかベル、男にとって血の繋がってない義理の姉や妹、母親ってのはな、どんなヒロインにも勝る浪漫の塊なんだよ!なに油断してんだっ、しっかりしろ!」

 

「ご、ごめんっ!?」

 

「カズマ君…君ってやつは……そんなに義理の女家族が欲しかったのかい?」

 

「それはもう欲しくて欲しくて堪らなかったさ。……昔親に義理の妹が欲しいから、離婚して子連れの親と再婚してくれって頼み込むほどにな。親に殴られたのはあの時が初めてだったな……」

 

「「最低すぎるっ!?追い出されなかっただけマシだよカズマ(君)!!」」

 

………………………………。

 

「なあ、やっぱこの件って俺が悪いと思うか?」

 

「「どう考えても君が悪いよ!誰に聞いてもそう答えるよ!!」」

 

息ピッタリだなあ…この親子。

 

「はぁ…ベル君、あんな親泣かせのゲスマ君は放っておいてもう寝ようじゃないか。……カスマ君は一人で寂しく寝るんだねっ!!ぷーくすくす!!」

 

「え、えっと…ぼ、僕はカズマが一緒でも別に……」

 

ベル……!お前って奴は……!!

 

敵だと思っていたベルを味方だと再認識した俺は、ムカつく煽り方をしてきた女神にターゲットを切り替えて。

 

「『スティール』!!」

 

「!?」

 

下着を奪い去った。

 

そしてそれを天高く掲げ。

 

「よっしベル!俺はこの戦利品を片手にロキんとこにでも泊まりに行ってくるよ!また明日会おうぜ!!」

 

そのまま外に向かって走り出した────!!

 

「ま、待ってくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!冗談だ!冗談だから!一緒に寝ていいからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「神様…学習しましょうよ……」

 

「ベル君にまで呆れられた!?」

 

その後俺はロキのホームの場所が分からない事に気付き、渋々廃教会に戻るのだった。

 

 

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