この素晴らしいダンジョンにカズマさんを!   作:ぽーぴー

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この幸薄犬人さんに交渉を!

──ギルド前──

 

地獄のハードコアスケジュールを終えてたっぷりの惰眠を貪った俺達は、何だかんだ所持金がほぼゼロな事に気づき、今日もダンジョンで荒稼ぎしてやろうとホームを飛び出したのだが……。

 

「…遅いな、ベルのやつ……」

 

どうやらダンジョン探索に行く前に担当アドバイザーさんに挨拶とやらをしなければならないらしい。

 

……エイナさんが初日から五階層まで下りた俺に対してブチギレてるであろう事は容易に想像出来たので、俺は断固拒否させて貰った。怖いし。

 

その結果、ギルド前で潜伏を発動しながらベルを待つという中々に怪しい行動を取らざるを得ない状況が出来上がってしまった。

 

……ベルさん、早く来てくださいお願いしますっ。

 

そんな俺の願いが届いたのか、漸く入り口から見覚えのある白髪の少年が出てくるのが目に入った。

 

…なんか凄く疲れた顔してるなあ……すまんね、ベルさん。

 

「ようベル、随分遅かったじゃないか」

 

「待たせてごめんカズマ。……まあ半分くらい君が原因なんだけどね。……て言うか本来なら君もダンジョン探索前にエイナさんに挨拶しなきゃいけないんだよ?怖がってないでちゃんと行きなよ」

 

お断りします。

 

「……俺の事なんか言ってなかったか?それ次第では検討の余地も……」

 

「うーん…普通に五階層まで下りたのは怒ってたけど……僕がカズマを付き合わせたって事にしたから、君に対してはそこまで怒ってないんじゃない?」

 

「お前相変わらずいい奴だなベル……!よし、仲間がそこまでやってくれたんだ。そろそろ俺も覚悟を決めて怒られに行くとしますかね!」

 

「……『ベル君がカズマ君を?……カズマ君がベル君を(・・・・・・・・・)の間違いじゃない?』って笑顔で笑ってたから気をつけてね」

 

「行くぞベル!俺たちのダンジョン探索はこれからだ!!」

 

「変わり身早すぎない!?ちょっ、待ってよ!」

 

お断りします!鬼と化したエイナさんの目の前にのこのこ姿を現すほど俺は馬鹿じゃない!!

 

ある程度ギルドから離れたところで、俺はもう連行されることはないだろうと逃走スキルを解除して歩き始める。

 

「はぁ…はぁ……か、カズマのその謎の逃げ足の速さはなんなの?僕速さにはそれなりに自信あったんだけど……」

 

「まあそう気にするな。……男ってのはな、怒り狂った女から逃げる為にはどこまでも速くなれるもんさ」

 

「お祖父ちゃんと似たような事言ってる……」

 

「おっ、マジか。ベルの爺さんとは話が合いそうだな」

 

「…うん、死ぬほど合うと思うよ。……お祖父ちゃんとカズマ、何か似てるし……ひたすら性欲に忠実なところとかそっくりだよ」

 

「人を性欲モンスターみたいに言うんじゃねえよ!……そう言えばベルの家族の話って聞いたことなかったな。どんな人たちなんだ?」

 

ふと気になった事をダンジョンに向かう暇つぶしがてら尋ねてみる。

 

美人な義理の母親がいるってのは知ってるが…どんな人なのかは聞いた事なかったしな。

 

「え?…そうだね……お祖父ちゃんは僕に『酒池肉林は素晴らしいぞベル!お前も男なら、あのハーレムの極致を目指さんとな!オラリオとかどうだ?美人な女が沢山おるぞ!!全世界穴兄弟化計画とかどうじゃ!?』とか吹き込んできて、よくお義母さんにゴスペられたあと畑の肥やしにされてるような、そんな人だったよ」

 

「お前の爺さん馬鹿だろ」 

 

全世界穴兄弟化計画ってなんだ?アクシズ教でもやらな…いや普通にやりそうだなアイツらなら。頭おかしいし。

 

「あ、あはは…でもね、僕が一番最初に憧れた英雄はお祖父ちゃんなんだ。モンスターに襲われてた僕を助けてくれたお祖父ちゃんの姿が物凄く格好良くて……僕もああなりたい、とか思ってたっけ」

 

そう家族の事を語るベルの顔は本当に嬉しそうで──。

 

「……尊敬してるんだな、その爺さんのこと」

 

俺の口からは自然とそんな言葉が溢れてきていた。

 

「うん!……普段はおちゃらけた事しか言ってないのに、いざって時は頼りになるところとか凄く格好良くて憧れるんだ。……だからなのかな、カズマの事も同じくらい尊敬してるし憧れてるよ」

 

相変わらずベルからの過大評価が凄いです。

 

…あの……そんなキラキラした目で見られても困るんですが……。

 

「…俺はそんな大した存在じゃないんだけどなあ……ちょっと搦手が上手いだけの貧弱冒険者だぞ?」

 

あまり俺に期待しないで欲しい。そんな思いからベルにしっかり現実を伝えてやることにするが……。

 

「…カズマって意外と自己評価低いよね。直球で褒められると照れるタイプ?」

 

少し笑いながらそんな事を……。

 

「う、うるせー!それよりほら、俺の事は良いからお前の美人お母さんの話を聞かせろ!!詳しく!!」

 

「ご、ごめんっ!?…え、えっとお義母さんはね……優しくて強くて格好良くて、僕なんかの母親には勿体ないくらい立派な人だったよ。……だけどたまに何かを諦めたみたいな顔で寂しく笑うんだ」

 

「…勿体ないって事はないと思うが……」

 

「あはは…ありがとうカズマ。……でもね、僕はお義母さんに笑顔になってほしくて、一度全部を救える英雄になりたいって言ったことがあるんだ。そしたらお義母さんが笑ってくれる気がしたから。……でもその時お前には無理だって否定されて、哀しそうな顔でただただ抱きしめられて…普通に生きてくれるだけで十分だって言われちゃってさ。……頼って貰えないのが悲しくて、情けなくて悔しくて……その時の事が辛くてずっと忘れてるような薄情な奴なんだよ僕は。……ううん、忘れてると思い込みたかったの方が正しいのかな」

 

「……どういう事だ?」

 

「お義母さんにね、言われたんだ。…僕は英雄にはなれない、冒険者としての才能もないし、ましてや全部を救えるような凄い存在になんてなれやしないって。僕が生きてればただそれだけで笑っていられるって。それだけで幸せなんだって。……そんな訳ないのにね。…でも話はそれで終わりって言われて……だから忘れた、忘れようとした。……だけど多分、心の奥底ではずっと燻ってた願いがあるんだ」

 

息を深く吸い込み、原初の願いを口にする。

 

「お義母さんを安心させてあげられるような───────そんな英雄になりたいって」

 

両目を瞑りながら、何処か擽ったそうな顔で天を見上げてそう溢す彼の姿に、カズマは未来の英雄の姿を幻視した。

 

……きっと、ベルみたいな奴が英雄って存在には相応しいんだろうな。

 

「それが僕が一番最初に明確に抱いた理想の英雄像…だった気がするな」

 

「そっか。……だからオラリオに来たのか?」

 

「…うん、強くなりたかったから」

 

何処か気負ったようにそう溢すベルを俺は少しだけ茶化すように。

 

「あと女の子と出会ってハーレム三昧だろ?ダンジョンで可愛い女の子と巡り会いたかったんだもんな」

 

そう言ってやった。

 

「う…は、はい……飛び出して来た時はそんな浅ましい欲望もありました……」

 

飛び出して来たのか…あれ?待ってくれ……こいつの母親って聞いた限りじゃ相当な親馬鹿と言うか過保護なんだが……俺、大丈夫か?

 

「……なあベルさん、お前の母さんに見つかったら俺殺されそうなんですけど……いつかここに来たりするんですか?」

 

「こ、殺されるって…それはないと思うけど……それにお義母さん、オラリオには事情があって入れないんだって。よく分からないけど指名手配?的なアレがそれしてるらしくて」

 

滅茶苦茶危険人物じゃねえか!指名手配だと!?俺とは縁遠い危険な存在……いや冷静に考えると俺も銀髪盗賊団として指名手配されてましたね。

 

「……じゃあその人はここには来ないんだな?」

 

「う、うん多分…あっ、そういえば……『頭のおかしい狂人エルフに会いたくないからオラリオには近づきたくない』ってよく分からない事を言ってたから来ないってよりは来たくないんじゃないかな?」

 

………………………………。

 

「それと『私を無理矢理都市外に逃してベルと会わせてくれた事には感謝するが、二度とアレとは相対したくない。会うとしても黒竜討伐が行われる時だけだ』とも……そんなエルフさん、いるのかな?」

 

すごーく心当たりがあるんだが……その頭のおかしい狂人エルフさん。

 

「……ベル、お前の母親の二つ名とかって分かるか?」

 

「え?たしか……お祖父ちゃんが静寂って言ってたような?そのあとお義母さんにしばき回されてたけど……」

 

『あんな魔法を見るのは生まれて初めてだ!"静寂"の魔法も中々に素晴らしかったが……お前の魔法はそれに勝るとも劣らない!この身で受け、魔法の仕組みを解明したい!研究したいのだ!!さあ撃て、撃ってこいミツルギキョウヤ!!』

 

『先程ベートに行使した魔法でも拷問魔法でも何でも構わない!とにかく未知の魔法を喰らわせてくれ!かの"静寂"、アイズ、レフィーヤ以来の期待の新星、それがお前だサトウカズマ!お前の欲望の赴くまま、私の身体を自由に……!』

 

完っ全にあいつじゃねえか!どんだけ人様に迷惑かけたら気が済むんだっ!!

 

「ど、どうしたのカズマ?急に頭抱えだして……」

 

「い、いや気にしないでくれ……それよりベル、お前強くなりたいんだよな?」

 

「!そ、それは…うん、強くなりたいよ。他の誰よりも速く」

 

「そうだろうな。…じゃあさ、ダンジョンギミックとやらが仕掛けられる一歩手前、九階層辺りまで降りてみないか?」

 

「!?きゅ、九階層!?あ、危なすぎるんじゃ……!!」

 

「問題ない。ミノタウロスレベルに隔絶してなかったらスティールで一発だしな。俺のスキルや魔法、そしてお前の''英雄証明''とやらがあればどうとでもなるだろ。……いざって時は逃げればいい、''ミノタウロス程度''なら逃げに徹すれば余裕で撒ける」

 

だからどうだ?と尋ねる俺にベルは。

 

「…カズマはどうしてそこまでしてくれるの?僕の夢とカズマは関係ないでしょ?なのに……」

 

不安そうにそんな馬鹿なことを……。

 

はぁ…アホだなあ……。

 

「あれだ、俺とお前はその…仲間だろ?だからまあ手伝うのは当然って言うか……拾って貰った恩もあるしな。俺は悪意には悪意で返すが、好意には好意で返すタイプなんだよ。ベルが本気でやりたいってんなら、その手伝いくらいするさ」

 

「……ほ、本当にいいの?多分、凄く危ないよ?……カズマ、危ないの嫌いでしょ?」

 

…やっぱこいつ、アホだなあ……。

 

「意味なく危ない目に遭うのは当然嫌いだが、仲間の馬鹿げた夢に付き合って危険な目に遭うのはそこまで嫌いじゃないよ。……世界とやらに見せつけてやろうぜ。─────お前が最高の大英雄になれるって」

 

「!か、カズマ…僕……!」

 

「……まっ、ある程度の打算もあるぞ?俺の目的の為にもベルには強くなって貰わないと困るしな。……あともしお前のお母様と遭遇した場合、ある程度真っ当に成長してないとマジで殺されそうってのもある。アウトだった場合俺を守れるのはお前だけだ。……ちゃんと守れよ?未来の英雄様」

 

「う、うんっ…うんっ……!!カズマの事も守れるくらいに僕強くなってみせるから!!だから───」

 

────僕の事をちゃんと見ててね。

 

そう言い放つベルに俺は何処か眩しいものを感じながら。

 

「しょうがねえな、ちゃんと見ててやる。……だからさっさと強くなって精々俺を楽させてくれよ?ベル」

 

「あはは!任せて!!カズマがかつての自分に戻れるくらい僕強くなるからね!!」

 

「……おい、かつての自分ってのはなんだ?どう言う意味だ?」

 

「え?だってカズマって元々引き篭もりのヒキニートってやつだったんでしょ?」

 

「おい!誰だそんなふざけた事お前に吹き込んだのは!!」

 

「……か、神様が『その道の大先輩だからこそボクには分かるぜ!カズマ君は最強のヒキニートだったってことがねっ!!ベル君、カズマ君が家から出たくないって言い始めたら要注意だぜ?かつての自分に逆戻りだからね!!』って……言ってたから……その……」

 

あんのクソ神がっ!!ベルに妙な事刷り込みやがって!!帰ったらぶっ…ああくそっ!あいつそういえば今夜から数日家開けやがるんだったな……!逃げやがって……!!

 

復讐の怒りに燃えながら、ホームから出る前の紐神との会話を思い出す。

 

『ベル君、カズマ君!いきなりだけどボクは数日家を留守にするぜ!!寂しいだろうけど君達の為なんだ!!カズマ君との共鳴によって蘇ったヒモ神としての力を全力でヘファイストスにぶつけてくるぜ!!じゃあねっ』

 

『えっ!?神様!?』

 

『……とうとう壊れたか…ヘスティア……』

 

今思えばよく分からない事を言いながら突然逃げ出してるようにしか見えない。

 

「クッソあの駄女神がっ、帰って来たら泣かせてやる!絶対泣かせてやる!!オラリオに名前のおかしい爆乳娘として爆誕させてやるっ……!!」

 

「…ほ、程々にしてあげてね……」

 

ベルがなんか言ってるが知らん。俺の全てを懸けてあの女神を泣かす……!

 

「…そ、そう言えばさ!下の方の階層でドロップしたアイテムや魔石はどうするの!?そのままギルドに持っていったらエイナさんが凄いことになるんじゃないかな!?」

 

女神ヘスティアへの復讐に燃える俺の気を逸らしたいのか、全力でベルはどうでもいい方向に話を逸らし……。

 

…いや、確かにエイナさん覚醒案件だなこれ。……五階層でもあれだったのに九階層まで降りたってなると……あっ、やばい。

 

『九階層?きゅうかいそう…キュウカイソウ?フ、フフフ…あははハハハハハは!!!!!!カ〜ズ〜マ〜く〜ん〜?コッチニオイデ』

 

その光景を想像した俺は、何とかバレずに換金する方法はないだろうかと思考を巡らせ、何とかたった一つだけ思いついた策をベルに伝える。

 

「なあベル。お前の知り合いにある程度金に困ってて普段ダンジョンに潜らずに地上にいて、尚且つレベルが1より上な冒険者って居たりしないか?」

 

自分で言っといて何だがこれは多分居ないだろう。条件が限定的すぎる、ただもし存在したら楽だなーと思って一応聞いてみただけだ。

 

そんな俺にベルは。

 

「い、いきなり言われてもそんな冒険者……あっ」

 

「居るのか!?」

 

「え、えっと…!ミアハ様の所のナァーザさんって人は確かレベル2の冒険者だった筈だよ!それにミアハ様のファミリアも僕たちと同じで結構な極貧ファミリアなんだって。本神様が言ってたから間違いないよ!」

 

ミアハ様…ポーション屋さん的なアレだったか?ヘスティアがチョロっと溢してたような……だがまあそんなことはどうでもいい。

 

「いいかベル、今からそのナァーザさんって人に会いに行くぞ。そしてお前は───」

 

俺の口から語られた抜け道のような策に驚いたように目を見開くベルだったが。

 

「そ、それなら確かにいけるかもしれない!お互い損をしない、完璧な作戦だよ!!」

 

「よしっ、頑張れよベル!!適正階層より下のモンスターが金になるかどうかはお前に懸かってるからな!!」

 

「任せて!でもいざって時は助けて欲しいな!!」

 

「トドメの一撃は用意してある。……完璧だ」

 

「流石カズマ……!恐ろしいよ……!」

 

「じゃあ早速行くか!!せーの……」

 

 

「「おー!!!!」」

 

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

 

「──────という訳で、下の階層で落ちた魔石やドロップアイテムを僕達の代わりにギルドで換金してくれませんか?取り分は手間賃や迷惑料も含めて5・5でどうでしょう?」

 

「……いきなり来て何を言い出すかと思えば………正気なの?ベル」

 

「はい!僕強くなりたいんです!!だから適正階層より下の方に潜りたくて!でも魔石とかを放っておく事も出来ないので……ナァーザさんが代わりに換金してくれると助かるんですけど……あっ、危険度的な事は大丈夫ですよ!こっちに居るサトウカズマはまだ冒険者になって一週間ですけど、ミノタウロス程度なら足止めして逃げられるくらいには強いので!実際この前もそれで助けられましたし!!僕も初心者殺しと呼ばれるウォーシャドウを倒せるぐらいには成長しています!!だからどうでしょうか!?ナァーザさん!!」

 

「…………待って、ちょっと情報量が多い……………整理するから………………」

 

「あっはい!大丈夫です!!因みに嘘は一切吐いてないので安心してください!!なんならミアハ様が帰られるまで待ちますよ!!」

 

「…………………………………………」

 

ナァーザ・エリスイスは考える。

 

我がミアハ・ファミリアは、借金があるにも関わらず、主神が無料でポーションを渡し歩いていたり何かにつけてオマケをしたりする為、かなりの極貧ファミリアである。

 

自身のせいで出来てしまった莫大な借金もあり、お金はいくらあっても足りないくらいだ。

 

………正直、この話は美味しい。ただ代わりにギルドに換金にいくだけで、ダンジョン探索の報酬を五割も貰えるのだから受けない手はない。

 

特に話を持ちかけて来た相手はベル・クラネル。この純粋無垢なお人好しがこちらを騙している可能性はゼロに等しいだろう。

 

もし仮にギルドにこれがバレたとしても、犯罪行為ではない為ペナルティなどは発生しない筈だ。

 

精々この二人が、担当アドバイザーさんとやらに長々と説教されるだけ。

 

ただ……。

 

「(本当に大丈夫なの?……まだまだ経験の浅いレベル1の冒険者二人が九階層なんて……"ミノタウロス程度"なら足止めして逃げられる……ベルが嘘を吐いてるとは思わないけど……とても信じられない……)」

 

ダンジョンをよく知る経験豊富な冒険者だからこそ、サトウカズマの規格外さを信じられない。

 

……ベル・クラネルが初心者殺しと呼ばれるウォーシャドウをもう倒せるようになっていると言う事実にも若干の不信を覚えていると言うのに、冒険者になって一週間の少年がミノタウロスを足止め出来るだなんて出鱈目にも程がある。

 

……やはり、彼等を思うのならこの話は断るべきだ。

 

ベルは大切なお得意様、その命が失われてしまうなどあってはならない。

 

……ミアハ様も悲しむだろう。

 

そこまで思い至り、この依頼を拒否する為に口を開こうとするナァーザを目敏く察したカズマは、ベルから聞いていた『ミアハ様のファミリアも僕たちと同じで結構な極貧ファミリアらしいよ』と言う情報を駆使して、最後の一撃を放つ事に決めた。

 

「因みになんだが、俺はこう見えて滅茶苦茶運が良いんだ。この前五階層に辿り着くまでに倒したゴブリンやコボルトやらのドロップアイテムがほぼ確定で落ちるくらいにはな。その時の換金額は確か……95000ヴァリスだったかな?」

 

「末長く宜しくお願い致しますカズマ様」

 

「ナァーザさん!?」

 

──────交渉は大成功したようだ。

 

 

 

───オマケ(宴に向かう神々の内心) ───

 

── ヘスティア(名前のおかしい爆乳娘)の場合──

 

「(よーし!ベル君とカズマ君のためにヘファイストスにボクの本気を見せつけてやるぞ!!…あの自己紹介、やらなきゃ駄目なのかな……くっ、カズマ君めぇ……!!ボクを舐め腐りやがってぇ……!!でも、ここで素晴らしい武器を授けてあげたらさしものカズマ君も『凄いですよヘスティア様!!尊敬します!!』ってベル君みたいに褒めてくれるはずさっ!!うんっ、頑張ろう!!)」

 

── ロキ(壁神様)の場合──

 

「(今回の宴…なんとなーくあのドチビも来る気がするんよなぁ……くくっ、カズマの事や。なんかおもろい仕掛けしとるかもしれへんで?楽しみやわー!!ついでに色々忠告しといたろか、あんの規格外のクソガキにステイタスのロックは必須やろうからなぁ……かー!全く、世話が焼ける奴らやで!!)」

 

── フレイヤ(フレイヤ様教御神体)の場合──

 

「(''彼等''の所属ファミリアについては既に分かっている…なら、態々行く必要もないのだけど……私の神の勘が囁いているわ。……物凄く面白いものが見れるって!恐らくは……ヘスティアね。ふふっ、ベルの輝きを引き出してくれるだけに飽き足らず、こんなに娯楽を提供してくれるだなんて……!サトウカズマ、貴方は最高よ。……一日一回ベルからのラブコールをお届けしてくれるのも素晴らしいわね、ええ。……ステイタスのロックの事教えてあげたほうがいいかしら?)」

 

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