この素晴らしいダンジョンにカズマさんを!   作:ぽーぴー

26 / 33
この素晴らしい水の女神の祝福を!

 

────神の宴により伝説が巻き起こされるより数時間前────

 

犬人との交渉を無事に終えたベル・クラネルとサトウカズマは、只今現在ダンジョン探索へと赴く道中だった。

 

「何とか無事に終わってよかったね!流石カズマだよ!!」

 

「はは、そう褒めるなよベル。あれはお前の人徳が成せる技だったんだからな、自信持て!!」

 

「そ、そうなのかな?でも最後は結局カズマのお陰だったし……」

 

「いや、あのナァーザさんって人がこの美味しすぎる話を疑わず受け入れてくれたのは、間違いなくお前の人柄の賜物だ。日頃の行いって大事だよなー」

 

俺が話を持ち掛けた場合、なんやかんやあって警戒されるのが目に見えてる。……そもそも初対面だしな。

 

「…確かにカズマがこの話を持ちかけて来たら僕も疑っちゃうかも。……うん、日頃の行いって大事だよね!」

 

「あっこいつ!言いやがったな!?俺の仲間達みたいな事言いやがって!」

 

「ご、ごめんっ!?で、でも…日頃の行いが碌でもなさすぎるカズマも悪いと思う!もうちょっと碌な行いをしてよ!!」

 

中々言う様になりやがったなベル・クラネル!?

 

「うるせー!俺はな、かつて何処ぞのマイナー女神を崇拝する性悪女に良心や常識、我慢と道徳を捨てろと諭された過去がある。つまり俺がこうなのは俺のせいじゃなくてそのクソバカ崇拝者が悪い。結論俺は悪くない」

 

「君から良心や道徳を取ったら世界滅びないっ!?その女の人は何考えてるの!?馬鹿なの!?」

 

失礼な。俺から良心や道徳を取っ払ったところで世界なんて別に……。

 

……ほ、滅ぼさないよな?大丈夫だよな?

 

…でも確かにあの時の理性やら倫理やらぶっ壊れてた状態なら色々欲望の限りを尽くしても全然おかしくは……。

 

「……な、なあ俺ってさ、そんなにやばそうな奴に見えるか?」

 

若干不安になったので、偏見で人を見る事はないお人好しヒーローベルさんに問い掛けてみる。

 

……決してバニルに『あの領主が消えたことでこの街随一の鬼畜男になった男よ!フハハハハハハ!!!!』的な事を言われた事を思い出してしまった訳ではない。

 

俺は別にそこまで鬼畜では……!

 

ベルは普通に真顔で。

 

「うん。結構やばいと思うよ?神様の下着は盗むし、僕を謎の教団の教祖様に仕立て上げようとしたし、初対面のエルフさんの下着は剥ぎ取るし、人の大事な本盛大に濡らすし、神様の下着を戦利品に他のファミリアのホームに泊まりに行こうとするし、なんなら売りに行こうとするしね?割と頻繁にうわぁ……てなる行動とってるし。…カズマに人間の心があってよかったって心底思うよ。優しく生まれてきてくれてありがとうね!カズマ!!」

 

とてもいい笑顔でサムズアップしながらそんな事を嬉しそうに……。

 

「おいこらベルお前!人が下手に出てたら好き放題言いまくりやがって!そんな事思ってたのか!?ちょっとショックなんだが!!人の心ぐらいあるに決まってんだろ!舐めんなっ」

 

謂れのない誹謗中傷を放ってくる年下の少年にお説教を敢行しようと俺はドレインタッチを。

 

「…………僕別に嘘は言ってないよね?真実しか語ってないよね?僕の大切な本汚したよね?ねえ」

 

使用するのを断念するレベルの『雑音?くたばれ』モードのあの恐ろしい表情になってしまわれて。

 

「その件に関してはまことに申し訳ありませんでした」

 

俺は即座にDO☆GE☆ZA☆を発動した。ブチギレたベルは怖い。いや本当に怖い。

 

あの本はヴァーサタイルエンターテイナーで何とか修復したのだが、その間の『雑音奏でないでくれる?不愉快だから』モードのベルさんは心底震えが来るくらい恐ろしかった。

 

「…ぷっ、あはは!ごめんごめん!もうそこまで怒ってないから大丈夫だよ!揶揄ってごめんね?」

 

土下座敢行中のサトウカズマの頭上から、あっけらかんと笑うベルの声が辺りに響き渡った。

 

「お、お前…結構タチ悪いな……」

 

少し引きながらそう呟く。

 

……もしかしてこれ、俺の影響じゃないだろうな?

 

もしそうなら……あっ、不味い、こいつのお母様に殺される未来しか見えないんだが!

 

「べ、ベルさん?その…あなたのお母上様は怒るとどれくらい怖いんですか?」

 

恐る恐る自らの未来に恐慌した俺がそう尋ねるとベルは。

 

「え?…………………………あはは」

 

汗をダラダラ垂らしながら愛想笑いをかましやがって。

 

「おい!その反応一番恐ろしいんだが!どんだけ恐ろしいんだよお前の母ちゃん!!」

 

思わず詰め寄るとベルは青ざめながら目を逸らし。

 

「そ、そんなに……怖くない……ですよ?」

 

誰だお前は。

 

「はいダウトだ!正直に吐け!!俺の今後の命の為に!!」

 

「だ、大丈夫だよ!カズマは僕が守るからっ」

 

嬉しい事を言ってくれるが、その悲壮な表情でそんな事言われるとより恐怖が増すんですが!

 

「おいやめろよそう言うの!不安になるだろ!?やっぱ殺されるのか俺!?」

 

「…………だ、大丈夫だよ、多分」

 

「お前ナァーザさんのとこ行く前は殺される事はないんじゃないかな?とか言ってたじゃねえか!意見コロコロ変えてんじゃねえぞ!」

 

「意見コロコロ変えるなって君が言うのっ!?」

 

「昨日の自分を振り返るなよ、未来だけを見て生きていこうぜ」

 

「相変わらずそれっぽいこと言うの得意だね……」

 

溜め息を吐きながら、呆れた様にそう溢すベル。

 

……な、なんか日に日にベルからの評価が下がっている気がするんだが気の所為だよな?

 

「…まあ僕は、カズマのそういう所が好きなんだけどね。何だかんだ凄く優しいところとかさ」

 

……………………………。

 

「わ、悪いベル…俺はそっちの気はないんだ……ごめんな。でもほら、お前ならすぐ良い男が見つかるって!だから安心しろよ!!」

 

「!?ちちちち違ーっ!?恋愛系のアレじゃなくて仲間や友達としてのアレだから!僕が好きなのはアイ……な、何でもないよ気にしないで!?と、とにかくね!?僕はカズマの事は好きだけど、あくまで家族とか仲間とか友達としてであって……!そっちの意味じゃ……!!ほ、本当だからね!?」

 

わたわた慌てて弁解するベルを一通り眺めて満足した俺は一言。

 

「うん、知ってた」

 

「!?か、カズマーッ!!!!」

 

即座に逃走スキルを発動してダンジョンの入り口まで全力疾走を開始する男と、それを追い掛ける白髪の冒険者の姿がこの日オラリオの地にて目撃された。

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

「ぜえ…ぜえ……や、やっと追いついた……」

 

地味にベルにクリエイト・アースからの目潰しコンボを決め、スピードアップを図った俺は一足先にダンジョン入り口前の広場に到着していた。

 

「よう、遅かったじゃないかベル。探索前にそんなに疲れてて大丈夫か?」

 

「き、君が…それ言うの?……ふぅ、カズマは全く……」

 

「はは、過去の事はそう気にするなよ。俺達冒険者は未来に生きてる、そうだろ?」

 

「だから君がそれ言うの!?」

 

「……そう言えばヘスティア、マジであの名乗り上げやる気なんだろうか……お前はどう思う?」

 

憤慨するベルを宥める為に露骨に話を逸らすことにする。

 

「え?あの名乗りって……アルティメットなんたらってやつ?さ、流石にやらないんじゃ……」

 

「だよなあ…でもあいつ変な所で律儀だからな……案外マジでやっちゃうかもしれないぞ?」

 

流石にやらないとは思うが、もしもって事があるからな……いややらないとは思うが。……そこまでアホじゃないだろ、あいつも。

 

「……も、もしやっちゃってたら……神様のメンタルダメージ凄そうなんだけど……だ、大丈夫なのかな?」

 

やはりベルにとってヘスティアはとても大切な存在なのだろう。

 

俺に対する怒りは何処へやら、今のこいつの頭の中はあの女神の事で一杯らしい。

 

……やってしまっていた場合、か。

 

白い目で見られるんだろうなあ……。

 

「そうだな…よしベル、今度ヘスティアが帰ってきた時、やってしまってそうだったら神様じゃなくてアルティメットゴッドヘスティウェスタストライクアタック様って呼んでやれよ」

 

「!?えっ、よ、余計傷つけちゃうんじゃ……!」

 

「いいかベル。こういう時はな、変に気を使ってやるんじゃなくて逆に笑い飛ばしてやった方が相手も楽になるもんなんだよ。……だからあいつが帰ってきたら『お帰りなさい!アルティメットゴッドヘスティウェスタストライクアタック様!略してアルゴッド様!!』って出迎えてやれ」

 

まあ十中八九やってはないだろうから大丈夫だろうが。

 

……やってないよな?そこまで馬鹿じゃないよな?

 

「う、うん!分かったよ!神様の為なら僕やるよ!!」

 

この瞬間、女神ヘスティアの天界送還は確定した。

 

「あっ、そろそろダンジョン前だね!じゃあカズマ、いつものいくね!」

 

「?いつもの?」

 

「カズマが言ってたでしょ?願掛けみたいなものだって。君がエイナさんと講習してる間も僕はダンジョンに潜ってたんだから。ほら、フレイヤ様教のさ!!」

 

喜色満面にそう語るベルの言葉を聞き、俺は漸く思い至った。

 

……こいつ、毎日ダンジョン前でアレやってたのか。

 

「じゃあいくよ?あのバベルの塔に向かって愛を叫ぶよ!!」

 

「お、おう」

 

何故かやたらとやる気になっているベルに若干引き気味になりながら、俺はかの美の女神フレイヤ様に媚び売りを全力で行う為に気合を入れて息を思いっきり吸い込み叫んだ。

 

「「フレイヤ様は美しい!!!!」」

 

「「「「「!?」」」」」

 

唐突な都市最強派閥主神へのラブコールに、周りの冒険者達が面食らった様な顔をしているのが目に入るが関係ない。

 

……ベルはこれを毎日一人でやってたのか。

 

…これ、意味あるんだろうか?なかったら悲しすぎるんだが……

 

「よし!じゃあ早速ダンジョンに入ろうか!カズマ、行こう!!」

 

「あっはい」

 

 

因みに意味はしっかりとあった。何故なら───。

 

───バベル頂上───

 

『『フレイヤ様は美しい!!!!』』

 

「ふふふふふふふふふっ……!良いわねえフレイヤ様教、凄くいい……」

 

かの女神はバッチリと気になる子からのラブコールをしっかり受け取ってご満悦だったからだ。

 

心なしか肌が艶々している。実に楽しそうである。

 

「オッタル、貴方もどうかしら?フレイヤ様教」

 

「……お、恐れ多いです」

 

「堅いわねぇ……まあいいわ。その反応もまた、面白いもの。面白いものは好きよ、ふふふふ。笑い死にとか、乙なものよね」

 

「!?フ、フレイヤ様!?」

 

「冗談よ」

 

彼女は知らない。今夜笑いすぎて二度も天界送還の危機に陥る事に。

 

───ダンジョン(三階層) ───

 

「じゃあベル、九階層近くまで潜る前に色々試しておこうぜ。まずは俺の支援魔法の効果の挙動からだな」

 

基本的にミノタウロスレベルでなければどうとでもなると俺は思っている。

 

だが、油断は禁物だ。

 

比較的安全な三階層辺りで支援魔法、及びベルの英雄証明の効果の程を確かめてから向かうつもりである。

 

「支援魔法…うん、お願い」

 

「任せろ。……敵感知スキルに反応あり、あっちに三体……多分ゴブリンかコボルト、若しくはダンジョンリザードとかだな」

 

「分かった。……行こう」

 

スキルで知り得た情報をベルに伝え、潜伏を使いながらゆっくりと近づいていく。

 

『『『ギャッ!ギャッ!』』』

 

……ゴブリンか。

 

「ベル、行けるよな?」

 

「当然」

 

「よしその意気だ。……『パワード』!」

 

シンプルに力を底上げする支援魔法をベルにかける。

 

すると。

 

『『『!?ギャッギャーッ!!!!』』』

 

既に潜伏スキルを解いていたため、ゴブリン達は当然気付きこちらに向かってくる。

 

だが───。

 

「はあっ……!」

 

今のベルからしたら雑魚同然、瞬く間にゴブリン達は一閃され、その姿を塵へと変えた。

 

「…あいつ凄えな……おーいベル!支援はどんな感じだー!?」

 

「……か、カズマ!これ凄いよ!力が比べ物にならないくらい上がってる!!これが支援魔法なの!?」

 

高揚しながらテンション高めにこちらに詰め寄ってきて。

 

「お、おい落ち着け!そんな大したもんじゃないだろ?本職じゃあるまいし……」

 

「そんな事ないよ!だってちょっと斬り付けるつもりが魔石ごと吹き飛ばしちゃったし……やっぱカズマは凄いよ!!」

 

魔石ごとやっちゃったのか……。

 

だが流石にそこまでの効果が出るのは疑問が残るところだ。

 

だって俺はあくまで冒険者、全ての職業の魔法やスキルを使えるが本職には及ばない器用貧乏になりがちな……待てよ?

 

そこまで考えて俺はふと、この世界で芽生えた新たなスキルの効果を思い出した。

 

 

 【水の女神アクアの加護】

 ・運が悪くなる

 ・水・支援・回復魔法に高補正・宴会芸スキルに超高補正

 ・器用のアビリティ超高補正

 ・モンスターに集られやすくなる

 ・厄介事に巻き込まれやすくなる

 ・トイレ掃除が上手くなる

 ・不運になる。可哀想に……プークスクス

 

 

他のクソ効果はともかく…水・支援・回復魔法に高補正か……そういえばクリエイト・ウォーターの威力もそれなりに上がっていた様な気が…消費魔力も他の初級魔法に比べて少なかった気も……もしやこの高補正っていうのは単純な威力、効果増加だけではなくて、消費魔力も軽減してくれるって捉えてもいいのか?

 

もしそうならかなり破格のスキル効果だが、恐らく間違っていない。

 

だってあいつは女神だ。それはそれはもう強い力を持った女神様だ。

 

魔王の力すら封印する強力な力を持った本物の女神だ。

 

現にエリス様だって───。

 

『先輩はそれはもう強い力を持った女神なんですよ?』

 

魔王戦の時にそんなことを言っていた。

 

……水の女神アクアの加護、か。

 

……たくっ、あいつは。

 

「……カズマ?どうしたの?」

 

「いや、何でもないよ。……ただ、世界を越えても力になってくれる女神様がついてる俺は心底幸運だなって思っただけさ」

 

「!世界……うん!やっぱりカズマの仲間は凄いね!!」

 

「だろ?なら次はお前の英雄証明の挙動チェックだな!」

 

「分かった!頑張るね!!」

 

ここに来てアクアの存在を強く感じ、何だか途轍もなくテンションが上がった俺は。

 

「よしじゃあモンスター呼んでやるよ!『フォルスファイア』!!」

 

ついモンスター寄せの魔法を……。

 

…………ドドドドドドドド!!!!!

 

「……ね、ねえカズマ、そのスキルって一体どんな効果があるの?」

 

「……モンスターが沢山寄ってきます」

 

「へ、へーそうなんだ……って何やってるの!?カズマってたまに馬鹿なの!?僕でも分かるくらいとんでもない量のモンスターが来てるんだけど!!」

 

「だ、大丈夫だ!俺の気配察知によると近くに冒険者はいない!ここで倒せば何の問題もない!!だから頑張れベル!!」

 

「丸投げじゃないか!カズマも手伝ってよ!?」

 

「支援は任せろ!!」

 

「戦え!!何僕一人に押し付けようとしてるの!?やっぱりニートなの!?」

 

「おいベル!今は言い争ってる場合じゃないぞ!しっかりしろ!!」

 

「それはそうだけど、君が言うなよぉ!!」

 

『『『『『『『『『『ギャッギャッギャッギャッー!!!!!』』』』』』』』』

 

──────大量のゴブリンとコボルト、ダンジョンリザード達との死闘が今、始まる!!

 

「よしベル!英雄証明だ!!未来の英雄の力を見せてやれ!!」

 

「ああもうっ、しょうがないなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」




本編で入れられない捕足情報

めぐみんのスキルの魔力に超高補生は魔力のアビリティだけではなく実は精神力(マインド)にも影響を及ぼしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。