───ダンジョン(6階層) ───
「はー…はー……!な、何とかここまで来れたね……」
「俺の的確な支援と指示のお陰だな。感謝しろよ?ベル」
「………ぶっ飛ばすよ?」
「すいませんでした」
三階層で謎にフォルスファイアを発動し、頭のおかしい量のモンスター達との地獄のマラソンレースがスタートした俺とベルは、他の冒険者達を巻き込まない為、定期的にデコイを発動しゴブリン達の視線を釘付けにしながら、潜伏や支援魔法、スティール狙撃ドレインタッチでベルをサポートしながら数百匹のモンスター達を何とか全滅させる事に成功した。
その際大量のドロップアイテムと魔石が落ちたが、流石に持ち帰れる量ではなかったので、魔石はドレインタッチで限界まで吸い込み砕いて、ドロップアイテムは持てるだけ持って隅の方へ隠しておいた。
運が良ければ後で回収出来るはずだ。ダンジョン内のマップは頭に入ってるしな。
因みにドレインタッチ乱用のせいで俺もベルも体力や
まあその分支援魔法をかなり重ねがけしてるので問題はないのだが。
「それにしても6階層ってことは初心者殺しのウォーシャドウさんが出てくるって事だよな。……この前お前結構苦戦してたけど、今なら余裕なんじゃないか?ステータス上がってるし。なんなら新スキルもあるしな」
「う、うーん…油断はあんまり良くない気もするけど……正直、負ける気はしないかな」
「おっ、言うじゃないか。頼りにしてるぞ?ベル」
「任せて!もう何も怖くないって感じだよ!!」
「おいフラグ建てんのやめろ!首チョンパ系のやつは俺にとって洒落にならないから!!」
「ご、ごめんっ!?」
かつて冬将軍様にスパッとイかれた記憶が蘇る。
……だ、大丈夫だよな?ベルの手前ミノタウロス程度ならどうとでもなるとか格好付けちゃったけど、俺普通にしょっちゅう死んでるからな……き、気を引き締めていくか。
「ベル!俺の命はお前に懸かってるからな!ちゃんと守れよな!!死んだら二度と彼女が出来なくなる呪いをかけてやるから覚悟してろよ!!」
「僕の責任重くない!?て言うかカズマは僕より強いんじゃ……」
「ふざけんな!冷静に考えてみろ、俺はヘスティアのツインテール何たらで瀕死になる程貧弱なんだぞ!?つまり俺のステータスはほぼ飾りなんだよ!具体的にはレベル5のベートさんには勝てるけどゴブリンに殴られたら死ぬレベルの弱さなんだぞ俺は!!」
「あ、相変わらず強いか弱いかよく分かんないねカズマって……」
何処ぞの貧乳盗賊団のお頭と似た様な評価を下してくるベルさん。
「それよりほら、
モンスター百人組手の間はそんな余裕もなかったので、この六階層で効果の確認をするしかない。
敵感知に反応はないので今の内に済ませておきたいところだ。
だが張本人のベルは困った様な顔で。
「…………ど、どうやって発動したらいいのかな?」
そんな事を……。
「……いや、普通に英雄になりたいって強く思えば発動するんじゃないか?」
「ふ、普通にって言われても……」
……確かにいきなり英雄になりたいって強く思えってのはちょっと無理があるか?
「……ベル、お前は英雄になりたいんだよな?」
「え?う、うん……僕は英雄になりたい。そして誰よりも速く、強くなりたいんだ。…
申し訳なさそうにするベルを見て俺は───。
「しょうがねえな。俺の命、お前に預けてやるよ」
割と分の悪い賭けだが……まあベルなら大丈夫だろ。
「え?ど、どういう……」
「『フォルスファイア』!」
ベルの言葉を遮るように俺は再びモンスター寄せの魔法を発動した。
「!?か、カズマ!?何してるの!?」
ドドドドドドド………!!!!
モンスターが押し寄せてくる音が聞こえてくる。
恐らく三階層とは訳が違うだろう。ウォーシャドウさんとやらも居るはずだ。
だが───。
「ベル!お前の英雄になりたいって思いは本物なのか!?いつも英雄になりたいって言ってる奴が大量のモンスター相手に逃げ腰とかみっともないぞ!」
「!」
「それともお前が憧れた英雄ってのは、あの程度の奴等も倒せない様なへなちょこ野郎か?」
敢えて嘲を混ぜた声色と表情でそう言ってやる。
「っ違う!僕が憧れた英雄は!僕がなりたい英雄はっ!!こんな時に逃げ出したりなんかしないっ!!」
───そうだ、僕がなりたかった英雄は世界も自分もお義母さんも全部救って笑顔に出来るそんな英雄なんだ。
………英雄になりたい。
……………………英雄になりたいっ!!
────リィン────リィン──────
英雄存在への切望、明確な想いの丈により英雄の資格を世界に示す鐘の音がベル・クラネルから響き渡った。
想いの丈により効果は増減する。
いや、
「……カズマ、僕の姿を見てて」
───そこからは圧巻だった。英雄証明によって高められたベルのステイタスは、ウォーシャドウや他のモンスターを目にも止まらないスピードで狩り尽くし、気付いたら辺り一面魔石とドロップアイテムで溢れかえっていた。
「……いや、凄すぎないか?チートじゃねえかこんなの」
思わずドン引きしてしまうほどのパワーアップにそんな言葉が溢れる。
…しかもあれ、チャージって事はどんどん強くなっていくって事だよな……あいつ、マジであっという間にアイズなんたらとか超えるんじゃないか?
「はあ…はあ……!お、終わった……!」
全てのモンスターを討伐して気が抜けたのか、鐘の音が鳴り止むと共にベルがその場に座り込む。
「お、おい!大丈夫かベル!?」
慌てて駆け寄りドレインタッチで体力と精神力を分け与える。
大量の魔石があって良かったな……。
「あ、ありがとうカズマ……僕、強くなれてたかな?」
「見てて引くぐらい圧倒的だったぞ!チートだチート!!やるじゃないかベル!!」
俺の賞賛にベルは嬉しそうに微笑み。
「そ、そうかな?でもカズマやアイズさんに追い付くのはまだまだだけどね」
「いやだから俺に追いつくのは一瞬だって言ってるだろ?」
「……そういう事にしておくよ」
何処か納得行かなそうなベルは一旦置いといて、改めて
「で、どうだったんだ?基本的な性能はともかく、
「え、ええと…
「なるほどな…じゃあ
見ていた感じ、極集中の方は英雄証明を解かない限り継続して発動され続ける様だった。
実際、こうしてへたり込むまでベルの持つ剣はチャージと思われる光を纏い続けていたしたな。
……これでもし全開放が俺の予想通りの能力だったとしたら、継戦能力と短期決戦、両方を備えた最強の冒険者が誕生するんだが……。
「う、うん。カズマのドレインタッチで体力や
そう言いながらベルは大きく息を吸い込み目を瞑って。
───リィン───リィン───。
白き光を纏い、再び英雄証明の鐘の音をダンジョン内に鳴り響かせた。
そして───。
「
極集中とはまた違うスキル効果、全開放の文言を口にする。
しかし……。
「どうだベル?なんか変わったか?」
カズマが思わずそう問い掛けるほど、ベル・クラネルに大した変化は起こらなかった。
若干チャージの光が強まった感はあるが、本当にそれだけだ。
「う、うーん…分からないや。……力が上がった感じもしないし……」
拳を握ったり開いたりしながら不思議そうに自身の身体を見回すベル。
「……もしかしたら攻撃時に効果を発揮するスキルなのかもな、極集中もそうだったし。……おっ、丁度敵感知に一体引っかかったぞ、多分ウォーシャドウさんだな。やってみろよベル」
「え?……うん、分かった」
俺の言葉を受け、剣を構えながらモンスターを待ち構えるベル。
暫くすると俺のスキルの感知通り、全身がくまなく真っ黒で恐ろしく鋭利な爪をした初心者殺しさんが現れた。
『…………』
普通なら絶望するのだろうが、今のベルからしたらウォーシャドウさんはゴブリンと同レベルの雑魚モンスターだ。
複数対ならともかく、一体であるならば何の問題も憂いもない。
そしてベルはノコノコと襲いかかって来ようとするウォーシャドウさんに剣を構えて突撃し。
「はあっ!!」
───桁違いの威力の一閃でヤツを魔石ごと吹き飛ばした。
……いやなんだあの威力!?ダンジョンの壁までぶった斬れてるんだが!
俺がその頭のおかしい高火力にドン引きしていると、ドサっと人が倒れる音が聞こえてきて、そちらに目を向けるとそこには英雄証明が解けたベルが仰向けにぶっ倒れていた。
「お、おいベル!?大丈夫か!?」
「ぜー…ぜー……!な、なんか物凄く疲れたんだけど……ち、力が入らないよ……」
近くに駆け寄り安否を確認するが、呼吸が乱れているだけで命に別状はなさそうだ。
「まああれだけの威力の攻撃をしたら無理もないか、ほれ『ドレインタッチ』」
「あ、ありがとうカズマ……」
ドレインタッチで力を分け与えながら、ベルの
デフォルトの
そして今までの様子を見るに恐らく、
逆に
…チ、チートだなあ……これで冒険者としての才能がないとか嘘だろ。
そんな事を思いながらベルに俺の考察を伝えてみる。
「……そっか、じゃあ基本的には
「まあ概ねそうだろうな。……もしお前が魔法とか使えたらより戦闘の幅は広がるんだろうけど……」
「?どういう事?」
「例えばだ、炎を生み出す魔法が使えるとするだろ?それを
そんな俺の言葉にベルは目をキラキラと輝かせながら。
「ほ、炎の炎剣……!格好いい……!!」
「更に言えばこの二つを併用する事で多分最強の一撃を放てる様にもなるぞ。
「お、おお……!それ凄く格好いいよ!全開放後はかなりふらつくけど……耐えられないってレベルじゃないしね!必殺技の名前とか考えないとね!!」
やたらはしゃいでるベルはやはり年頃なのだろう。
そんなベルにこんな事を言うのはかなり気が引けてしまうのだが……。
やはり現実というのは早めに受け入れた方がダメージは少ない。
俺ははしゃぐベルに一言だけ。
「……魔法が使えたらの話だからな?」
「あっ……そ、そうだよね……僕魔法使えないもんね……」
露骨に落ち込んでしまったベルを見て罪悪感に苛まれてしまうが、これに関してはどうしようもない。
……強く生きろよ、ベル。
「む?か、カズマ!カズマではないか!奇遇だな!!」
必殺技に憧れる少年の肩に手を置き、慰めてやろうとする俺の耳に突如として響き渡る声。
振り向くとそこには───。
「げっ、出やがったな頭のおかしいハイエルフめ!!」
狂人ハイエルフさんと、ベルの想い人である脳筋ゴリセイバーさんが居た。
「(頭のおかしいハイエルフ……ひ、否定しきれない………)」
「か、カズマ!?口悪すぎ……ってあ、アイズさんッ!?こ、こんにちは!!」
「え?……………こ、こんにちは」
「え、えっと……その……あ、あの時は助けて頂きありがとうございました!お陰で助かりました!!」
「あの時?………………あっ、うん。間に合ってよかった。……でも君のお陰で私達も助けられたからお相子様だよ」
「ぼ、僕のお陰……ですか?」
「うん。……君がミノタウロスに立ち向かってくれなかったら私達のせいで死人が出てしまうところだった。……だからありがとう」
「そ、そんな…僕はただ逃げ回ることしか出来なくて……褒められる様な事はなにも……アイズさんの方がよっぽど凄くて、格好良かったですよ」
「…………名前」
「……え?」
「君の口から、改めて名前を聞かせて欲しい。……駄目?」
首をこてんと傾げながら剣姫が少年に問い掛ける。
想い人のそんな可愛らしい仕草を受けた初心な彼がそれに動揺しない訳もなく。
顔を真っ赤にしながらわたわたと。
「も、勿論構いませんよ!?ぼ、僕の名前はベル!ベル・クラネルです!!」
「ベル……ベル・クラネル………そっか、いい名前だね。ベル」
「あ、ありがとうございます……!そ、その…あ、アイズさんの名前も素敵だと思います……!!」
勢いでそう宣言してしまったベルの顔は茹蛸の如く真っ赤に染まってしまっていた。
対するアイズ・ヴァレンシュタイン氏の頬も若干朱色に火照っている様に見えるのは気のせいだろうか。
「…………あ、ありがとう?」
そんな未知の感覚に戸惑いながらも何とかお礼の言葉を溢すことに成功するアイズ。
何故か胸の辺りがムズムズするので目を逸らしながらではあるが。
「い、いえ……こちらこそ………」
照れ臭さからか、ベルも虚空を見つめながら返答を返す。
「「……………………((ど、どうしよう…………!?))」」
チラチラと互いに視線を向けながら、もじもじしている彼等の姿はなんかもう完全にアレであった。
そんな非常に良い雰囲気の彼らを見て己の中の何かしらが耐えられなくなったのか、行き遅れ狂人ハイエルフさんが唐突にサトウカズマの首根っこを掴み。
「くっ…カズマ!私と共に暫くモンスター狩りに赴くぞ!!お前の魔法を魅せてみろ!!ほら行くぞ!!さあさあ!!」
奥の方へと引きずり始めた。
「はあっ!?いきなり何言って……ちょっ、おい待てこのクソボケエルフ!!今いいとこ……ってどんな馬鹿力してんだっ!?女捨てすぎだろ!!」
「喧しい!いいから行くぞ!…………あ、あと流石に女捨てすぎはやめてください……お願いします……」
急に泣きそうになるハイエルフさん。
……気にしてるのか。
「急にしおらしくなるなよ俺が悪者みたいだろ!?あーくそっ、ベル!お前はそのアイズなんたらと宜しくやっといてくれ!また入り口辺りで落ち合おうぜ!!」
「えっ!?う、うん……き、気をつけてね!!あとありがとう!!」
見目麗しいハイエルフの女性に何故か連行されてるカズマに対して、咄嗟に出てくる言葉はカズマへの心配と、アイズさんとの気まずい雰囲気を打ち破ってくれた事への感謝の気持ちそのものだった。
「…………うちのリヴェリアがごめんね」
申し訳なさそうにアイズさんが頭を下げてきて……。
「い、いえいえ!気にしないでください!!カズマは本当に嫌だったら全力で抵抗して相手の人を泣かせるくらいはするので!寧ろあの感じは満更でもないって感じだと思います!!だから大丈夫ですよアイズさん!!」
「…………ふふっ、ベルは優しいんだね」
「………!」
ミノタウロスを一閃した時とも、酒場で一目見た時とも違う彼女の表情。
口元を緩ませ、綻ぶ様に笑う彼女の姿。
御伽話に出てくるお姫様みたいだと思った。見ている人を幸せにする様なそんな笑顔。守りたくなる様な、そんな笑顔。
それを見て、僕の内から溢れ出してくる思い。
……彼女の笑顔を守りたい、彼女の隣に立ちたい。
僕なんかより彼女の方が強いとか、そんな事は関係ない。
……分不相応だとしても彼女の力になりたいって僕の中の何かが叫んでいる。
────アイズ・ヴァレンシュタインさんには、笑っていて欲しいって。
……分かってる。今のままじゃ到底不可能だって事ぐらい。
だって僕はまだまだ弱い、彼女を助けられる英雄になんてなれやしない。
……でも、僕はもう決めた。誓ったんだ、世界も自分もお義母さんも全部救って、笑顔溢れる結末を齎す英雄になるって。
今の僕の理想の英雄像、それは───アルゴノゥト。
彼みたいな英雄になりたい。あらゆる悲劇を喜劇に変えられる様なそんな英雄に。
……カズマはきっと、もうなれてるんだろうな。
「?ベル、どうしたの?」
長考に入って黙り込んでいた僕にアイズさんが話しかけてくる。
……な、何をやっているんだ僕は!?せ、折角の話すチャンスなのに!!
「な、何でもありません!?そ、それよりアイズさん達はどうしてダンジョンに?やっぱり強くなる為ですか?」
「……えっと、リヴェリアがカズマさん?に会えるかもって……」
「…そ、そうなんですか……よっぽど気に入られたんですね、カズマの事」
「うん。………そういえば、ベルはどうして冒険者になったの?」
「え?な、何ですか突然?」
「…………カズマさんは女の人にちやほやされたいからなったって言ってたからベルもそうなのかなって思って」
「!?」
若干ジト目でそう尋ねてくるアイズさんに僕は慌てて。
「ち、違いますよ!?た、確かにその時はそういう願望もありましたけど……!今は違います!!」
お義母さんとの記憶にしっかり向き合った今なら、冒険者になりたかった理由もハッキリと思い出せる。
「…………あったんだ」
「う……はい、ありました」
「……じゃあどうして冒険者になったの?」
「…………英雄になりたかったんです」
「!……英雄に?」
「はい。……全てを救える英雄に」
真っ直ぐにアイズさんの目を見て宣言する僕から彼女は目を逸らし。
「…………………英雄なんて、いないよ」
何処か憎しみを込めた様な声色でそんな事を呟いた。
「………え?」
「………………………英雄なんて、この世界にはいない。だからその夢は諦めた方がいいよ」
そう溢すアイズさんの顔は、かつて僕に英雄になどならなくていいと諭したお義母さんの表情にそっくりで。
諦観と哀憫と寂寥と憎悪に満ちたそれを見て僕は────。
「アイズさんは英雄なんて居ないって思い込みたいだけなんじゃないですか?」
「!な、なんで…………」
「…すいません、生意気言っちゃって。……でも、アイズさんの顔が少し寂しそうだったので」
「!……英雄なんて、居ないよ。……だって、もし居るとしたらなんで……」
────あの時来てくれなかったの?
その声が聞こえたのか否か、ベル・クラネルはアイズ・ヴァレンシュタインに対して再び口を開く。
「……アイズさんは英雄を求めていますか?」
「…………求めてない……」
「……もう一度聞きます。アイズさん、貴女は英雄を欲していますか?」
「…………何度も言わせないで。英雄なんて私は求めてない………」
「…………本当ですか?僕には、貴女が英雄を欲している様に見えます。……最後にもう一度だけ聞かせてください。……アイズさんは英雄を欲していますか?求めていますか?」
こちらの全てを見透かす様なベル・クラネルの瞳と声色。
そんな彼からの再三に渡るその問い掛けに遂にアイズは声を荒げて。
「っ……いらない!そんなものいらない……!!だって英雄なんてこの世界に……!!」
居るわけない!そう叫ぼうとする彼女を目の前の少年は静かに断ち切り、噛み締めるように一つの言葉を溢した。
「貴女が望むのなら、僕がアイズさんの────最初の英雄になります」
「…………………!」
「……ってまだまだレベル1の僕が言っても説得力ないんですけどね」
そうやって頭を掻きながら困った風に笑う彼の姿に先程までの激情は何処へやら、何故か胸の辺りが暖かくなっていき、気を抜くと笑ってしまう様な、そんな幸福感を感じていくアイズ。
「…………ベルは本当に、私の英雄になってくれるの?私の隣に居てくれるの?一緒に戦ってくれるの?」
溢れ出る衝動と共に、口は自然と開き言葉を紡いでいた。
「!……貴女がそれを望むのなら」
「…………本当に?」
「……それでアイズさんが、笑ってくれるのなら僕はなりますよ。……貴女の英雄に」
優しく微笑みながらも、その瞳に確かな覚悟を秘めた少年の誓いはアイズの心にしっかりと届き。
「……そっか。……そうなんだ」
「あ、アイズさん?」
「………ベル、だったら早く強くなってね」
「!は、はい!誰よりも早く強くなってみせます!!」
「……ふふっ、でも早く来てくれないと置いてっちゃうよ?ベル」
「す、直ぐに追いつきます!貴女を一人になんてさせません!!」
「…………ジャガ丸くん」
「……え?」
「今度一緒に、食べに行こう?美味しいよ」
「!?は、はい是非!楽しみにしてます!!」
「ふふっ……楽しみだね」
ダンジョン内とは思えないほど、非常に和気藹々としたいい雰囲気を醸し出す彼等を見守る二つの影が存在した。
それは───。
「ふっ…アイズ、良かったな」
実質的なアイズの育ての親と言っても過言ではない、魔法さえ絡まなければ非常にまともな一面を持つリヴェリア・リヨス・アールヴさんと。
「……お前、野次馬精神とか持ってたんだな」
何だかんだとベルの兄貴分的な立ち位置にいる様な気がしないでもない普通の冒険者、サトウカズマだった。
「野次馬精神とは失礼な。私はな、アイズがまだ小さかった頃からずっと面倒を見て来ていたんだぞ?言わば育ての親だ」
「お前が育ての親ってとんでもない子供が出来上がりそうだな……昔のアイズなんたらはどんな感じだったんだ?」
「そうだな……昔のあいつはモンスターをとにかく憎んでいた。奴等を殺し、強くなる事にしか興味がない様なそんなやつだった」
「……今は違うのか?」
「ああ。……そんなあいつに危うさを感じた私は、敢えてアイズに虐待とも言えるほどの魔法行使の懇願をし、アイズ自身が休息と休憩の重要さを理解出来るように努めたんだ。……更に比較的可愛らしい見た目のモンスターを惨たらしく殺させる事で、奴等に対する憎しみを少しでも軽減させようともしたな」
「……い、意外とまともなんだなお前……因みに惨たらしく殺させるってどんな感じでやってたんだ?」
「知りたいのか?ふっ、良いだろう聞かせてやろう!!アイズの魔法は応用が効いて素晴らしかったからな!実験には事欠かなかったぞ!剣を目に突き刺し内部で魔法を発動させたり、口腔内で敢えて暴発させたりもしていたな!……まあその結果としてモンスターへの病的なまでの憎しみは消えたが、代わりに私に対する恐怖心が爆増してしまった様だ。……流石に少し落ち込んだぞあの時は」
……なんか色々言ってるが、実はこいつアイズの更生とか言いながらただただ自分の欲望を満たしていただけなんじゃないだろうか。
「ふっ……たまには魔法狂いとやらも役に立つだろう?」
ドヤ顔でそんな事をのたまうリヴェリアさんに対し、俺は一言。
「……で本音は?」
「趣味9割実利1割ぃぃぃぃぃぃぃぃ!?な、何をするカズマ!?私はハイエルフだぞ!女の髪を引っ張るとは何事だ!!」
「おっ、おまっ、おまえっ……!人がちょっとだけ感動してたっていうのにお前っ……!!やっぱ普通に頭おかしいだけの狂人エルフじゃねえか!期待させやがって!舐めんなっ」
「私の頭の何処がおかしい!悪癖である自覚はあるが頭は別におかしくはないぞ!!寧ろ賢い方だと自負している!!」
「……頭大丈夫か?」
「なっ!?こ、この……!その哀れみの視線をやめろ!!私はこう見えてもエルフ族の中では神にも等しいハイエルフなん……!」
「…………フッ」
「!?は、鼻で笑うな!」
「笑ってないですよ(笑)とっても賢くて頭が正常なハイエルフのリヴェリア様(笑)」
「!?こ、この!調子に乗るのも大概にしろ!!私も怒るぞ!!」
「はっ、やってみろよ頭のおかしいハイエルフめ!!俺のスティールを喰らわせてやるよ!!ここはダンジョン内、目撃者なんて居ないだろうからなっ」
「……ス、スティールとはあの下着を剥ぎ取るスキルの事か?……そ、その……さ、流石にそれは……やめてください……!」
「お、おい!急にしおらしくなるなよ!?俺が悪者みたいだろ!?」
「……何やってるの?カズマ」
「…………リヴェリア、大丈夫?」
例え離れていたとしても、これだけ大騒ぎしていればベルやアイズも彼らの存在に気付くのは当然であり、即座に現場に駆けつけた。
そこには右手を差し出し怪しげに指をわさわさと動かす
「ち、違うぞベル!?俺は悪くない!こいつの頭がおかしいのが悪い!!」
慌てて弁明するカズマを何処か冷え切った目で見つめながらベルは口を開き。
「……………カズマ、女の人の下着を剥ぐのって駄目なんだよ?それに頭おかしいとか言うの良くないよ、失礼でしょ?」
諭す様にそんな事を静かに語り始めて。
「前者は確かにそうだが、このエルフの頭のネジがぶっ飛んでるのは事実なんだよ!魔法の為なら指名手配犯でも都市外に逃す狂人だぞ!?」
「え?それってどういう……!?も、もしかしてお義母さんが言ってた頭のおかしい狂人エルフって…………!?」
「そうだこいつだ!魔法狂いの残念な子がこのエルフ様だ!!分かったか!?」
「おい待てカズマ、私は魔法が好きなだけで別に残念な子ではないぞ」
「がっかりエルフさんは黙っててください」
「がっかりエルフ!?……ふ、ふん。私はこう見えても世界中のエルフ族に慕われているハイエルフなんだぞ?断じてがっかりエルフなどでは……」
「そうなんだ!すごいね!!」
「そ、その反応はやめてくれ!私でも傷つく時は傷つくのだぞ!?」
がっかりエルフさんが何か言ってる気がするが、努めて無視する。
「くっ…そ、それよりベル・クラネルだったな?貴公の母親は元気にしているか?」
俺が耳を塞いで彼女の話を聞く気が一切ない事をアピールしていると、諦めたのかリヴェリアはベルに向かって唐突にそんな事を……。
「え!?ぼ、僕のお義母さんですか?……え、えっとその……や、やっぱりお知り合いだったりしますか?」
「先程カズマが言っていただろう?あの色々やらかしてくれた女を都市外へ無理矢理逃したのは私だ。……あの時ほどハイエルフであってよかったと思った事はないぞ」
「!そうですか、貴方がお義母さんを……あ、ありがとうございました!お義母さんはとっても元気ですよ!ゴスペルパンチでお祖父ちゃんを畑の肥やしにするくらいピンピンしています!!」
「ゴスペルパンチ!?な、何だそれは!?新たな魔法か!?く、詳しく!詳しく聞かせてくれると嬉しいのだが!!」
「へ!?ちょ、ちょっとあの顔が近いですっ!?」
「そんな事よりゴスペルパンチを……!ゴスペルパンチを喰らわせてくれ!!」
「こ、困りますっ!?か、カズマ!助けてカズマ!!」
「あー、しょうがねえなあ……」
また例の発作が発動してしまったハイエルフさんからベルを救出する為、動き出そうとする俺の目の前を金色の影が通り過ぎていった。
そして───。
「リヴェリア。………ベルから離れて」
「あ、アイズ!?い、今私は大切な話を……!」
「離れて」
「……は、はい」
恐ろしく低い声で金色の影、改めアイズ・ヴァレンシュタインさんが、ベルに詰め寄る彼女の首根っこを掴みベルから引き離していた。
…これって普通に脈アリなのでは?……くそっ、羨ましいぞベル!!
「ア、アイズさん……!ありがとうございます!!」
「……気にしないで。それよりうちのリヴェリアがごめんね、ちょっと残念なところがあるから」
「!?あ、アイズ……お、お前まで………」
愛娘にして愛弟子の彼女のそんな言葉を受けて、若干しょんぼりとしたらしいリヴェリアが俺の側まで来て。
「……カズマ、私はそんなに頭がおかしい残念な子なのか……?」
小声で囁きながらそんな事を言ってきた。
……悪癖だって自覚あるならこんな事で落ち込むなよ……。
「世間一般で見るとまあ残念ではあるだろうな」
「うぐっ……や、やはりそうなのか……」
「……まあ俺は嫌いじゃないけどな」
「……え?」
「酒場でも言ったろ?欲望に忠実なやつは嫌いじゃないって。見てて退屈しないし、何だかんだ一緒に居ると楽しいからな」
「!………そ、そうか……ふむ、そうか…………!」
口元をむにむにとさせながら喜んでいる彼女は普通に可愛らしかった。
…これで頭がまともだったらなあ……天は二物を与えないって本当なんだな。
「よしカズマ!そしてアイズとベル!!今から私達でチームを組んでダンジョン探索を行おうではないか!安心しろ、何かあっても私とアイズが守ってやる!……まあお前達であるならば問題はないだろうがな」
……この人は一体何を言っているのだろうか?もしかして馬鹿なんだろうか?
そんな気持ちのままチラッとベルを見てみると割と乗り気な顔をしているのが目に入った。
…そうだよなあ……あいつ、強くなりたいんだもんなあ……それに、結局は9階層辺りまで下りる予定だったんだ。
そこに辿り着くための超強い仲間が出来たと思えば寧ろこの話は非常に美味しいとも言える。
……よし、行くか。安全にレベリング出来る事に越したことはないしな。
「別にいいけど俺とベルは9階層までしか下りないからな?元々その予定だったし」
「ああ構わない。……アイズもいいか?」
「…………うん」
「ベルもいいだろ?」
「う、うん!……迷惑じゃないなら」
「よしでは決まりだな!さあカズマ、約束通り未知の魔法を沢山見せてくれ!!これは絶好のシチュエーションだ!!」
「やっぱそっちが目的かよ!まあいいけどなっ!!」
「…………ベル、よろしくね」
「は、はい!足手纏いにならない様に頑張りますね!!」
──────即席で結成されたパーティーが9階層に向かって前進していく。……否、蹂躙劇のスタートである。
『あれがキラーアントってやつか!よしベル、英雄証明でぶった斬ってやれ!!』
『任せて!
『!……ベル、その剣でキラーアントを斬れるなんて……凄いよ』
『そ、そうですかね?……はっ!」
『敵感知に大量の反応有りだ!多分その虫の仲間だな、よしっ!パワードスピードゲインプロテクションブレッシング!!』
『!?こ、これは……!素晴らしい!素晴らしいぞカズマ!!やはりお前は最高だ!!』
『本当に凄い……!力が溢れ出してくる……!!
『これがアイズさんの……!僕も負けていられない……!!」
───過剰とも言える彼等の戦力にモンスター達は手も足も出ず。
『おっ何だあのモンスター?やたら綺麗だな』
『ブルー・パピリオ……!あんなにたくさん現れるなんて……!』
『へーあれの事知ってるのか?アイズなんたらさんよ』
『滅多に現れない希少種……それがこんなに…………』
『希少種だと!?よしベル!乱獲だ!全部ぶっ飛ばして金に変えるぞ!!俺の運ならドロップアイテムは確定だろうしな!!念押しにブレッシング!!』
『流石カズマだね!超幸運なだけはあるよ!!』
『ブレッシング……良い、凄く良い……何やら神聖な力を感じるのもまた心地よい……幸せだ……私は今とても幸せだぞカズマ!!』
『浸ってないでお前も戦えよアホリア!!』
『やあっ!……す、凄いよカズマ!本当にドロップアイテムが落ちた!!』
『ブルー・パピリオの翅……こんなに一杯見た事ない…………』
『ふははははは!!大量大量、大稼ぎだ!!行くぞお前ら!!この調子でどんどん行こうぜ!!』
『うん行こう!……あっカズマ!後ろ!!』
『ん?うわっ、何だこいつ』
『そいつはパープル・モスだな。毒の鱗粉を撒き散らすが、即効性はない。だから心配はいら……』
『あばばばばばばばばばば!?!?!?!?』
『!?か、カズマ!?大丈夫!?』
『い、一回浴びただけで毒状態になるなんて……カズマさんってもしかして弱い……?』
『う、うるせー!くそっ、セイクリッド・ハイネスヒール!!』
『その魔法私も喰らいたい』
『お前は全然無傷で元気だろうが!無駄に魔力使わせんな!!』
『………………ア、アーワタシモドクヲクラッテシマッタヨウナー』
『よしベルアイズ、このバカは置いて先に進むぞ』
『!?ま、待ってくれ!私を置いていくな!!副団長だぞ私は!!』
『そうなんだすごいねー』
『くっ…!あ、アイズ!お前からも何か言ってやってくれ!!』
『……………そうなんだすごいね』
『!?あ、アイズ………!?』
『あ、あはは……取り敢えず進みましょうか、リヴェリアさん』
『ベル・クラネル……!お前は優しいな……!!アイズの事を頼んだぞ!!』
『!?な、何を言ってるんですかあなたは!?』
『あっまたブルーなんたらが出たぞ。ほーれスティール』
『………カズマさんのそのスキル、凄いね』
『俺の必殺技だからな、パンツ剥ぎ取るだけのスキルじゃないんだよ!』
『ねえカズマ、またブルー・パピリオの翅落ちたけど、これどうやって持って帰るの?多くない?魔石は何とかなるんだろうけどさ……』
『ふっ、案ずるなベル。私達も今回はお前たちと共に帰還するつもりだからな、四人も居ればどうとでもなるだろう』
『え?そうなんですか?ありがとうございます!』
『分け前は四等分でいいよな?』
『……………いいの?多分、カズマさんの運のお陰だと思うけど………』
『こんなに楽々倒せてるのはお前らのお陰でもあるからな、全然構わないよ』
『寧ろ私は最高の魔法を見せてくれたカズマにお金を払いたいのだが……』
『結構です。魔法で金取るとどっかの爆裂狂やら宴会芸の神様辺りがうるさそうだからな』
『爆裂狂!?宴会芸の神様!?な、なあその話詳しく……』
『あー聞こえない聞こえない!行くぞベル!アイズ!!』
『わ、分かった!』
『…………うん』
『!?ま、待ってくれ!!』
────そしてダンジョン9階層までの道中蹂躙の限りを尽くした彼等は、大量のドロップアイテムと持ち運べるだけの魔石を持って地上へと帰還した。
「はー、こんだけあればそれなりに小金持ちにはなれそうだよな」
「あはは……ナァーザさんもびっくりしそうだよね!」
「む?お前達はバベルで換金していかないのか?」
「……おいベル、ギルドじゃなくても換金って出来るのか?」
「………わ、忘れてました」
「……まあいいか、じゃあ今日は色々ありがとな。リヴェリア、アイズ」
「それはこちらの台詞だ。……また共に冒険したいものだな」
「……………楽しかった。……ベルも楽しかった?」
「!は、はい!……い、命懸けのダンジョン探索でこんな事を思っちゃうのも良くないんでしょうけど……楽しかったです」
「………そっか、よかった。………………強くなったらまた一緒に潜ろうね、ベル」
「は、はい!直ぐに追い付きますから!!待っててください!!」
「……うん。待ってるね、ずっと」
ベルとアイズが何だか物凄く良い雰囲気なんだが……。
せ、青春してるなー……やばい、何だかとても辛いです。
「ではそろそろ帰るとするか。……カズマ、ベル。何かあったらいつでもホームを訪ねてきてくれて構わない。その時は私の名前か、ロキの名を出せば通れる様にしておく。……因みにだが何もなくても来てもいいぞ?寧ろ来い、絶対に来い」
念押しする様にリヴェリアさんがそんな事を言ってくる。
「いいのか?確かファミリアのホームって他派閥厳禁なのでは?」
ヘスティアの下着を戦利品として泊まりに行こうとした俺が言うのもなんだが。
「お前達なら構わんさ。……ファミリアの副団長、そして主神が許可しているんだ。誰にも文句は言わせない」
「………………ベルが来てくれたら、私も嬉しい」
「!?あ、ありがとうございます……!」
クソッタレめ!隙あらばラブコメ展開みたいな事しやがって!!
何の拷問だこれ!?
「あーそう言ってくれると助かるよ。じゃあまたな二人とも!ほら帰るぞベル!!」
これ以上この場に居るとなんかもう色々辛くなりそうだったので、もう今日はとっとと帰ることにした。
「え!?う、うん!さ、さようならお二人とも!!」
「ああ。……まあまた直ぐ会えるとは思うがな」
「…………またね、ベル。……カズマさんも」
共に''冒険''を行った彼らの姿は、他者から見たらとても他派閥とは信じられないくらいに和やかな雰囲気だった。
────ミアハ様のお店────
「あっナァーザさん!これ今回のドロップアイテムとかです!!換金お願いしますね!!」
「………………ブルー・パピリオの翅が大量に見えるんだけど……………気のせいかな?」
「気のせいじゃないですよ?カズマの豪運は凄いので!じゃあお願いしますね!!」
「…………………………分かった」
思考停止状態に陥ったナァーザ・エリスイスさんがそのままギルドに換金に行き、その余りの額に白目を剥いて気絶しかけたのはここだけの話である。
「……………………………レアドロップってなんだっけ」
────ロキ・ファミリア────
「〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
「おやリヴェリア、随分とご機嫌だね。何か良いことでもあったのかい?」
「!ふっ、よくぞ聞いてくれたなフィン!今日私とアイズはダンジョンへと赴き、たまたま出会したカズマとベルと共に9階層まで大冒険をしたのだ!!」
「………………待ってくれ、何だって?」
「?だからカズマとベルと冒険を……」
「いやそこじゃないんだけどね……まあいいか、それでどうだったんだい?彼らの実力は」
「ふむ……まずカズマは大量のブルー・パピリオに巡り合いほぼ確定でドロップアイテムが落ちるほどの豪運を持ち合わせていたな。そしてベルはギルド支給の剣でキラーアントを一閃する程の実力を備えていた。……アレでレベル1とは俄には信じ難いが、流石と言ったところか?恐るべき成長速度だ」
「………………ふー、なるほどね」
「?どうした?フィン」
「……何でもないさ、ただ本当に彼等との敵対だけは心底避けたいと思っただけだよ」
恐らく後方支援型だが、例え前線に出てきても搦手などで第一級冒険者すら一蹴する実力を持つサトウカズマと、シンプルに強く成長速度の早いベル・クラネル。
彼等を同時に相手取るのはかのヘラ・ファミリアやゼウス・ファミリアですら厳しいだろう。
「……全く、彼らが友好的で助かったよ」
「因みにいつでもホームに遊びに来てくれと言ってあるからな。そのつもりで頼んだぞ」
「……………うん、分かったよ」
ああ、空が綺麗だな……いやあれは天井か。
────フィン・ディムナさんはそれはそれはもうお疲れだった。