「なあ、ヘスティア・ファミリアの拠点ってどんな感じなんだ?結構デカい?」
「えっ!?ええとそれは…み、見たら分かるよ!ははは!!」
ううん?何だその反応……怪しい、俺の危機感知センサーが反応してしまっている。
そう身構える俺に念押しするようにベルは言った。
「…ところでカズマは僕たちのファミリアに入ってくれるって事でいいんだよね?」
「それはまあこっちからお願いしたいくらいだが……一応聞いとくけどまともな住居なんだよな?」
「……す、住めはするよ?」
…………本当だろうな?
無言で睨み付ける俺を見て慌てたのかベルは焦りながら。
「そ、それにほら!住めば都って言うじゃない?だから大丈夫!安心して!!」
…………。
「やっぱ帰ろっかな……」
「!?ま、待って!せめて見てから判断して!!」
そんな会話を繰り広げながら歩いた先には。
──廃教会──
「……嘘だろ」
「……こ、ここが僕たちの家だよ。カズマ」
そう目を逸らしながら紹介するベルは何処か居心地が悪そうで……。
…ここに来る途中家の話になるとやたら動揺してたのはそう言うことか。
へー、ふーん。
……成る程な。
「よっしベル!お前たちもこれから大変だろうけど頑張れよ!俺も一人で頑張って見るよ!じゃあな!!」
「待って!?お願い待って!!一緒に頑張ろう!?僕たちもう仲間でしょ!?」
「ふざけんな!こちとら屋敷住みの成金冒険者だぞ!!こんな所に住めるか!!」
「屋敷!?そ、それは凄いけど……い、いいの!?行く宛ないんでしょ!?」
「ここに住むよりマシ」
「うわあぁぁぁぁ!!!!待って、待って!見捨てないで!!」
「お、おまっ…は、離せ!助けてくれた事も色々教えてくれた事にも感謝してるが離せ!!俺は一人で頑張るから!!」
そう叫びながらしがみついて来るベルを引きはが…引き剥せない!?
こ、こいつ…意外な力を……!
………なんかこの展開覚えがあるな!?
嫌な予感がした俺はとにかくベルを引き剥がそうと。
「わ、分かった!分かったから!!検討して考えてみるから一旦離してくれ!!」
「ほ、本当!?絶対、約束だからね!!」
「ああ分かった分かっガチャ「おーいベルくぅん…家の前で何騒いでるん……だ…………い?」……た……」
女神が居た。ロリ巨乳が居た。意味不明な装飾物(紐)を付けた女神が居た。
その女神は俺の腰にしがみ付いて半泣きになっているベルを眺めて、目を見開いた。
そしてプルプルと震えながら大声で。
「べ、ベル君が男に目覚めたーっっっっっっっっっっっ!!?!?!?!?!?!?」
「「違う(います)!!!!!」」
何人聞き悪いこと言ってんだこの紐神!?
── ── ── ── ──
「成る程ね…そう言うことかい」
あの後必死になってベルと説得を続けて何とか誤解が解けた。
ヘスティアは腕を組みながら安心した様に納得を……。
…デカいな、うん。かなりデカい。下手したらうちのクルセイダーよりも……。
ゴクリッ、と思わず生唾を飲み込む。
「……カズマ君?と言ったかな」
「ひゃひっ!」
「……視線が、正直すぎるんだけど」
「すいませんでした!!」
俺は即座に故郷に伝わる奥義DO☆GE☆ZA☆を敢行した。
「え!?カズマ!?」
「お、おぉう…これが極東に伝わると言われる土下座かい。別にそこまでしなくてもいいぜ?ボクは怒ってるわけじゃないからね!ほら、顔をあげてごらんよ」
な、なんて…なんて事だ……!目の前に居るのは紛れもない女神様だ……!うちのなんちゃって女神様とは違う本物の女神だ……!!
もしアクアにあんな視線向けよう物なら『あらー?なーにーカズマさん?その視線、もしかして……プークスクス!私のことヒロインとして見れないとか言っておきながらしっかり反応してるじゃないの!無理しちゃって!まあ?この私のグレートでスイートな肢体を眺めていたら無理はないわよね!……ちょっと、いつ土下座解いていいって言ったのよ?……謝って!今まで私のこと女として見れないとか言ってたの謝って!!じゃないと街中に広めるわよ?……カズマがこの私、水の女神アクア様の熟れた身体に興奮しちゃったって!!いいの!?バラされたくなかったら謝って!後ついでにお酒も買って!!』とかくそ面倒くさい事言って来るだろうに。
女神ヘスティア。ベルの主神。そんな彼女の優しさに触れて俺は…俺は……!
「うっ…くっ……!」
「「ええっ!?」」
涙が目から零れ落ちていた。
「な、泣いているのかいカズマ君!?ご、ごめんよ!脅かすつもりはなかったんだ!!」
「良い!良いんです神ヘスティア、いえヘスティア様。……あなたは本物の女神だ。俺の知っているなんちゃって女神とは違う本物の女神様だ!是非俺を、あなたの眷属に!!」
もう迷う事はない。例え拠点が廃教会だろうが、貧乏だろうが関係ない。ああ、俺はなんて欲深だったのだろう……雨風凌げるだけで十分幸せじゃないか。それにこんなに美しい女神様まで居る。……始まったな、俺の時代が!!
「おおっ!?本当に眷属になってくれるのかい!?」
「はい!俺はもう、ヘスティア様の眷属です!!」
「くぅぅぅぅっ!!!!何て信仰深い子なんだ!!ベル君、お手柄だぜ!こんな良い子を連れて来るなんてさ!!」
「神様…はい!僕もカズマに会えて良かったと思ってます!!神様も気に入ってくれて嬉しいです!!」
「ベル君……」
「神様……」
…あれ?なんだろうこの雰囲気。本当になんだろうこの雰囲気。
もしかしてこの二人って出来て…い、いやいや!そんなわけないよな!ヘスティア様がそんな……!
「ヘスティア様!俺を眷属として認めてくれますか!?」
「おうっ!認める認める認めるともさ!!…いやー最初はカズマ君から今まで感じたことのない様な気持ち悪い視線を受けてどうしようかと思ったとこだけど……うん、君はちゃんと良い子だね!!」
……………。
「か、神様!?そんなこと思ってたんですか!?」
「だ、だって仕方ないだろう!?ベル君と違って不純の塊みたいな視線を受けたんだからさ!!」
………………………。
「不純の塊、ですか!?」
「そうだよ!純粋なベル君とは違って舐め回す様な不埒な視線だったんだぜ!?そう思っても仕方ないだろ!?」
……………………………………。
「そ、それはまあ…はい……」
「納得してくれたかい?……ああ、悪かったねカズマ君!放ったらかしにしちゃって」
「いえ…別に構いませんよ。それより……俺の視線はそんなに気持ち悪かったですかね?」
「応ともさっ!君の視線はかなりのものだったとも!!正直うわぁ……とも感じたけど今はそんな事ないから安心してくれて良いぜ!!」
「……そうですか。それは良かったです。ははは」
「うん!良かった良かった!!」
「「あはははははは」」
「…………ってふざけてんじゃねえぞこの紐神が!人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって!!ぶっとばしてやる!!」
「ひ、ヒモ神っ!?」
我慢の限界を超えた俺は目の前の紐神に掴みかかる。
誰の視線が気持ち悪いだ!…いや確かに俺が悪いけど!寧ろ俺が悪かったんだけどさぁ!?
それにしたって言い過ぎだろ!!このっ、まともな女神だって期待させやがって!!
目にもの見せてやる!!
「う、うわぁ!?べ、ベルくぅん!ベル君助けてくれ!!襲われる!!」
俺に掴みかかられたヘスティアが変なことを言い出す。
い、いや襲わないよ?ちょっと過激な仕返しするだけだよ?
「えぇっ!?わ、分かりました!か、カズマ落ち着いて!!」
紐神の指示を受けたベルに背後から羽交い締めにされる。
「離せベル!止めてくれるな!!俺の人生全てを賭けてその紐神を地獄に叩き落とす!!」
「君の人生本当にそれで良いのっ!?」
「ヒモ神はやめてくれ!ボクにも世間体があるんだっ」
「知るかっ!……おいベル離せ!俺の本気を見せてやる!!……魔王をも倒せるかもしれないカズマさんと噂された俺の力、見たくないのか?」
「えっ」
英雄譚に憧れているベルはこの問い掛けに一瞬揺れ、力が少し弱まった。
これは……行けるな。
「!?だ、駄目だベル君騙されるな!!それは悪魔の契約だ!!ボクの事が大事じゃないのかい!?」
くそっ、こいつ余計な事を……!
「はっ…そ、そうだ……!僕は神様を……!!ごめんカズマ、離せない!!」
弱まった力が強くなり、俺を絶対逃さない様に包囲される。
だが……!
「……本当か?本当に良いんだな?今しか出せない必殺技もあるのに、本当に見なくて良いんだな!?」
「……くっ!」
「やめるんだカズマ君!ボクのベル君を誑かさないでくれ!!」
あともう一押し!!
「今なら誰も知らない英雄譚もついて来るぞ!?俺を離すだけで全てが救われるんだ。それなのに…本当にこのままで良いのか、ベル・クラネル!!」
「!!!!」
「鬼か君はっ!?」
今の俺が出せる手は全て尽くした。これなら…どうだ!?
数秒程沈黙するベル。だが俺を止めるその力は弱まらない。
寧ろ……。
「ごめんカズマ。それでも僕は神様を守りたい!守らなきゃいけない!!だから、離せないっ」
「べ、ベル君……」
くっそコイツら、俺をダシにイチャつきやがって!
「うぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!!!守りたいんだったらちゃんと守ってみろ!守れるならな!!」
「くっ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「痛い痛い痛い痛いっ!?わ、分かった!俺が悪かった!降参、降参するから!!」
肩が外れそうなその力に降参宣言が口から飛び出すも、熱中しているベルには聞こえていないのか力が強まり続ける。
「べ、ベル君っ……頑張ってくれ!ベル君!!」
「頑張らすなっ!?おいベル!聞こえるか!?降参!降参したから離してくれ!!」
「神…様……!僕、頑張りますっ!!」
「何で俺の声だけ聞こえてないんだよ!どんな都合の良い耳してんだっ、舐めんな!」
俺の抗議を物ともせず、一際強まるベルの力。
そして。
決着は訪れる。
「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇベルくうぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
酸欠による、俺の失神によって。
── ── ── ── ──
「「……………」」
「……」
俺の目の前で二人が縮こまりながら正座をしている。
漸く頭が冷えた様だ。
「そ、その…ごめんカズマ!僕頭に血が昇ってて……!ほ、本当にごめんなさい!!」
「ボクもその…ごめん。悪ノリしてたと言うか、眷族が増えて調子に乗ってたと言うか……と、とにかくごめんよ!すまなかった!!」
二人はそのまま土下座をする。
良い奴らだなー……反省の色を見せない俺の仲間達とは大違いだ。
さて…どうしようか。
「……はぁ」
「「っ」」
思わず吐いた溜息に二人がビクッと反応するが……。
別に俺は怒っちゃいない。先に仕掛けたのは俺の方だしな。
て言うかずっとこのままだと悪者みたいで嫌なんだが……よし。
「あー、良いよ別に。寧ろ俺も悪かったよ、調子に乗って。だからもうこれで手打ちにしようぜ。仲間なんだからさ」
小っ恥ずがし気な台詞を吐きながら未だ正座状態の二人に手を差し出す。
それを見て、意味を理解した二人は嬉しそうに目を見開き握り返して来る。
……な、なんか照れるなこれ。
「よっしっ!じゃあ早速、恩恵を授けよう!!ボク達は、仲間だからね!!」
「そうですね!僕達はもう、仲間ですからね!!」
そう満面の笑みで楽しそうにしている彼等に、仲間って連呼するのやめて貰っていいですかとはとても言えなかった。
そんな俺の気分を払拭するかの様に、ヘスティアは寝床を指差しながら。
「さあさあカズマ君っ、上を脱いでここにうつ伏せで寝そべっておくれ!まあ恥ずかしいだろうけどさ……」
「喜んで」
何か言っているヘスティアを無視して、一切の迷いなく上裸になり、寝そべった俺に対して彼等は何か言いたげに口元をむにむにとさせていた。
「お、おぉう…迷わないんだね……まあ楽でいいけどさ……」
「か、カズマ…凄い……!」
そしてそのまま寝具の外から女神様は恩恵を授けようと……。
「……っておい待て」
「?なんだい?」
「……恩恵ってこう、背中に跨って授けるんじゃないのか?ベルからそう聞いたぞ」
「!…い、いやそれはほら……ボクって処女神だからさ!出会ったばかりの異性と密着するのは気が進まないって言うか……分かるだろう?」
指先をツンツンと突き合わせながらそう言うヘスティアは明らかに言い訳をしている様で。
「そうかヘスティア…俺は悲しいよ……」
俺は目元を覆いながら悲壮に呟く。
「へ?な、何がだい?」
「ヘスティアは俺とベルで…扱いを変えるんだな。仲間なのに」
「っ!?そ、そんな事は……!」
慌てながら弁解して来るヘスティアを俺は手で止める。
「いいんですヘスティア様。考えてみれば当然ですから。……まだ入ったばかりの俺をベルと同じ様に信用しろだなんて無理ですよね」
「……!!」
「……カズマ?」
目元を覆っているため様子は見えないが、恐らくは俺の予想通りだろう。
「だからいいんです。ヘスティア様、本当に良いんですよ……信用はこれからもぎ取っていきますから。……そう、''家族''として信用して貰える様に頑張りますから……だからどうか「家族だ!!」……え?」
その声と共に俺は目元を覆う手を退かし、如何にも意外そうにそちらを見る。
そこには瞳を潤ませながら、俺を案じる女神様が居た。
「ボク達は家族だっ!家族であり仲間だっ!!そこに差別も区別もあったらいけない!……ありがとうカズマ君、ボクに大切なことを気付かせてくれて。……背中、跨っても良いかな?」
そう不安そうに尋ねて来る女神様は本当に美しくて。
「ヘスティア様…いやヘスティア!その言葉が聞きたかった!!よろしくお願いします」
「ああ!任せておくれ!!……っと失礼するよ。重くないかい?」
「重くないですありがとうございます」
「?あ、ああ……なら良かったよ」
お、おぉ…これは……凄い!凄いぞ!?この世界の冒険者達はこれを合法的に味わえるのか!?
なにそれズルい!羨ましい!!……と言った感情を一切表情に出さず平静を取り繕うことに全力を尽くす。
そう、これはあくまで正当な行為なのだ。決していやらしい行為ではない。
俺がヘスティアを煽ったのも豊満なロリ神様と密着したいだとか下世話な理由ではなく、仲間であり家族なのに差をつけられるのが悲しかっただけなのだ。
だから緩む口元はただ家族との触れ合いが嬉しいからであってそう言う意味での笑みでは……って。
「……ど、どうした?ベル?」
色々な理論武装を固め大義名分を得た俺をじっと見つめる一つの視線。それはこの世界で初めて出会った仲間。
ベル・クラネルの物だった。
「…な、なんだよそんな顔して……俺がなんかしたか?」
「?どうしたんだいベル君?らしくないぜ?そんな怖い顔しちゃってさ。…あっ、もしかして嫉妬してるのかい?可愛いなぁもう」
平静…平静だ……俺は何も悪い事は……。
「カズマ」
「ひゃいっ!」
その声は冷たかった。
「……神様を本気で泣かせたら、僕も怒るからね」
「はいっ!滅相もございません!!」
こ、こわっ!?本気でブチギレてるときのダクネス並に怖いっ!?
「な、なんの話をしているんだい?二人とも」
そんな神の問いかけにベルはニッコリと笑顔を浮かべて。
「大した事じゃありませんよ神様。……ねっ?カズマ」
「はい」
俺は誓った。ベルを怒らせるのはやめようと。
「そ、そうなのかい?ならいいか…じゃあそろそろ恩恵を授けるけど……準備はいいかい?カズマ君」
そう言えば俺が覚えたスキルとか魔法ってどうなるんだろう?
この恩恵で使える様になるのだろうか?
そんな事を考えながらも、俺の返事はただ一つ。
「勿論っ!」
「良い返事だ!なら早速……ちょっと痛むよ」
背中にヘスティアの神血が染み渡り、僅かな痛みと共に己の可能性が引き出されていくのを感じる。
無限に続くかの様な時間だったが、それはヘスティアの一声によって終わりを伝えた。
「よし!終わったよ!これがき…み……の……ステイタス…………?えっ?」
背中の上から困惑した様な声が聞こえてくる。
……う、上手くいかなかったの?嘘だろ?
「…い、いやおいそういうのやめろよ怖くなって来るだろ……」
「!す、すまない不安にさせてしまって!!だがその…うん、これは見てもらった方が早いかな……はい」
そうして渡された紙には──。
サトウ・カズマ
Lv.1
力: I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
確かにステイタスが書かれていた。
……俺が転生した世界の言葉で。
「…なあベル、ヘスティア。これ、読めるか?」
紙をヒラヒラさせながら聞いてみる。
……まあ正直ヘスティアの表情で分かってるんだけどな。一応だ一応。
「……よ、読めない。見たこともない……!神様は読めますか?」
「う、ううん。それがボクにも読めないんだ……!数値は分かるけどそれ以外は……!ご、ごめんよカズマ君……役立たずな神で……!」
「神様……」
…いやあのそう悲壮になられても困るんですが。
「あーその…俺は読めるから別に気にしなくてもいいぞ」
「!?よ、読めるのかい!?この文字が!?」
「ほ、本当なの!?カズマ!」
「あ、ああ…読めるけど……伝えといた方が良いのか?ステイタスって」
何気なく尋ねたそれに対し、ヘスティアは。
「……うん、出来れば教えて欲しい。ボクにとってステイタスは、大切な家族の命を守る命綱みたいな物なんだ。……主神として、知っておきたい」
「…僕も知っておきたい。大切な、仲間のことを」
よ、良くそんな小っ恥ずかしいこと真剣に言えるなこいつら……。
「……わ、分かった。えっとじゃあ…口頭で伝えるぞ?」
「うん。頼むよ」
上から順に目を通していき伝えていく。
サトウ・カズマ
Lv.1
力: I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
「……特に目新しいものはないな」
俺の世界とは違って知力とかスキルポイントとかはないんだなって言葉を飲み込みつつ伝える。
「うーんそうだね…聞いた限りではベル君と変わらないね。……文字が読めないだけなのかな?」
《魔法》
【】
「魔法は…ないな。……なあ魔法ってさ、魔力を使って使うのか?」
ふと口をついて出た素朴な疑問。
「えーと…エイナさん、あっ僕の担当アドバイザーさんが言ってたんだけど……魔力は魔法の威力に関するもので、魔法を使うのは精神力(マインド)?を消費するらしいよ。僕もよく分かってないんだけどね」
「へーそうなんだな。まあ魔法が使えないなら関係ないか」
「……カズマ君。本当に変わった事は書いてないのかい?」
「変わった事ねえ…あっ、このスキルってやつ……」
「!スキルが発現してるのかい?」
「えっ!?本当!?幾つ!?」
ベルとヘスティアはそう尋ねながらも、多くて二つ、大穴で三つくらいだろうと思っていた。
だからこそ、カズマの口から出てきた数字に驚愕を示すことになる。
「………五つ」
「「!?」」
「…これって多いのか?」
「お、多いなんてものじゃないよ!凄いじゃないか!最初からスキルが五つもあるだなんて!!」
「凄いよカズマ!」
「お、おう…そうなのか。じゃあ上からよ…ん……で………」
「「??」」
「……いやなんでもない。読むぞ」
「う、うん‥…頼むよ」
《スキル》
【最弱の冒険者】
「「最弱の……冒険者?」」
「なんか…あんまり強くなさそうですね」
「こらっ!ベル君っ、なんてこと言うんだい!」
「す、すいません!?カズマもごめん!」
「気にするな。俺も全く同じこと思ったから。…えー効果は……」
・魂に刻まれた魔法やスキルを使用可能
・対人戦に限り、相手のレベルや耐性を無視して攻撃可
・幸運
・モンスターとの遭遇率超低下
・各スキルのデメリットをある程度打ち消せる
「…の五つだな」
……デメリット?デメリットって何だ?
「……神様、分かりました?」
「う、ううん…聞いたことのない効果ばかりだね……魂に刻まれた魔法やスキルって……なんか凄そうだけど……カズマ君は分かるかい?」
「……まあなんとなく」
十中八九俺があの世界で覚えた魔法やスキルのことだろうなあ……アビリティに幸運がないから生えてきたって感じか?三つ目は。
「……取り敢えず全部のスキルを聞いてみようか。考えるのはそれからでも良いはずさ」
「そ、そうですね…カズマ、続きお願いできる?」
「任せろ…えーと……【幸運の女神エリスの加護】?なんだこりゃ」
「め、女神の加護だって!?く、詳しく聞かせてくれ!!」
「め、女神……!?」
【幸運の女神エリスの加護】
・超幸運
・ブレッシングの効果上昇
・盗賊スキルの効果上昇
「お、おぉ!よく分からないけど凄いですね!神様!!」
「確かに!ブレッシングや盗賊スキルについては分からないけど……超幸運って言うのはなんだか良い感じがするね!!」
スキルの効果に二人がはしゃいでいる。
…うん、分かるよ?上三つは割と破格の効果と言うか、普通に有り難い。
でもなぁ……。
……俺は最後の一文を口にする。
「……モンスターに集られやすくなる」
「「……えっ?」」
…一個目のスキルのデメリットを打ち消すってまさかと頭によぎるが努めて無視する。
「スキル効果、モンスターに集られやすくなると言ったんだ。……なんだこれ、スキルってマイナスもあるのか?」
「……ば、場合によるんじゃないかな!?強力な力には代償が付き物だよ!つまりカズマ君のこのスキルはそれほど強いって事さ!それに超幸運だしね!!」
「そ、そうだよ!女神様の加護がスキルで手に入るなんて凄いよ!それに超幸運だし!!」
「おいやめろよ!超幸運超幸運連呼するなよ!それだと俺が運だけの男みたいだろーが!!」
「「………」」
二人はサッと俺から目を逸らし……。
ち、ちくしょー!スキルは他にも三つあるんだ!見返してやるぜ!!
その勢いのまま目を下に滑らしたカズマ。
そこには。
「…【水の女神アクアの加護】……だと!?」
「「また女神!?」」
どう考えても、デバフしかつかない様な女神の加護がスキルとして発現していた。
女神エリスですら、一つデバフが付いた状態だったのだ。
それがアクアになると……。
「……俺冒険者辞めて商売で生きていくよ」
一体幾つのデバフがつくのかカズマは考えたくもなかった。
「ど、どうしたんだいカズマ君!?そんなに酷いスキルだったのかい!?仮にも女神の加護だろう!?」
「いやまだ見てないけど…なんかもうオチが読めるって言うか……どうせ碌でもないスキルなんだろうなあって」
「諦めないで!?僕も気になるし、読んでみてよ!女神様のスキルだよ!?」
「……はぁ。じゃあ読むけどあんま期待すんなよ。えーと一つ目……『運が悪くなる』」
「「……えっ」」
開幕マイナス方面のスキル効果に揃って呆けた言葉を溢す仲良し親子。
だがカズマにとってこの効果はまああるだろうなと思っていたもの。
大した動揺を見せず、次の文を目に入れる。
「まあこれは予想通りだ。…おっ、これは意外と良いんじゃないか?水・支援・回復魔法に高補正・宴会芸スキルに超高補正……宴会芸スキル?まあいいか。その次が、器用のアビリティに超高補正……あれ、普通に良くね?」
二つ続いてプラス効果な事に思わず驚嘆するカズマ。
「二つ目はよく分からないけど…三つ目は凄いじゃないか!アビリティに干渉するスキルだなんて結構珍しいんじゃないかい?やったね、カズマ君!!」
「宴会芸スキル…宴会芸スキル?って一体何なんだろう……?でもよかったねカズマ!羨ましいよ!!」
二人の明るい反応を目にし、カズマはもしかしたらこのままプラス効果だけで終わるかもしれないと淡い期待を抱いた。
「そ、そうだよなー!一つのスキルでマイナスが複数つくなんて有り得ないよなー!よーし、どんどん読んでい…く……ぞ?」
「……ど、どうしたのカズマ?」
いきなり急停止したカズマを案じるベル。だがその声はもう彼の耳には入ってこなかった。
何故なら……。
「ふぅ…もう一気に行くぞ?…モンスターに集られやすくなる、厄介事に巻き込まれやすくなる…で次が……トイレ掃除が上手くなる」
「「……うわぁ」」
余りにも可哀想なそのスキル効果に思わずドン引きしてしまった二人は決して悪くないだろう。
「……トイレ掃除が上手くなるってなんだ。舐めてんのかっ!」
「「ああっ!?」」
衝動のままに床にステイタスが書かれた紙を叩きつけた俺を見て二人が変な声をあげてるが知るか!
あの駄女神絶対許さねえ!泣かせてやる!帰ったら必ず泣かせてやる!!泣いて謝っても許してやらねえからな!!
さあてどうしてやろうか……!!
そんな復讐の怒りに燃える俺に向かってヘスティアが。
「あ、あの…カズマ君……気持ちはよーく分かるんだけど……本当によぉぉぉく分かるんだけど……まだ、最後まで終わってないだろう?……気持ちを鎮めて、出来るだけ冷静に、読んでみてくれないかな……」
おどおどと怯えながらまだ読んでいない所に指を指す。
…いやだなあ……。
「……もう嫌な予感しかしないから読みたくないんだが」
「いや…まあ…うん。分かるよ?分かるんだけどさ?……自分のスキルについて理解しておいた方がいいだろう?ボクも知っておきたいしね」
……ですよねー。
「分かった。じゃあ読むぞ?……不運になる。可哀想に……プークスクス…………ははっ」
「……あ、あの、カズマ?大丈夫?」
余りにもあんまりなスキル効果に怒りの臨界点を超えて笑いが出てしまったカズマに、びくびくしながらもベルが問い掛ける。
本当にいい子である。
……不運になる?可哀想に?プークスクス?だと?…………あ。
「あんの駄女神がァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
「「ええっ!?」」
思わず紙を両断した俺は絶対悪くない。
── ── ── ── ──
「なあもう良くないか?エリス様とアクアが出てきたんだ。どうせあと二つは火力馬鹿と耐久馬鹿だよ」
カズマはもう続きを読む気が一切無くなっていた。
プラスもマイナスも容易に想像出来るためである。
「う、うぅん…いや、ここまで来たのなら最後まで読もうじゃないか。逆に気になってきたよ」
「ぼ、僕もその…気になる……かな……」
「…はいはい分かった分かった。えーとスキル名は…【最強の魔法使い】……ですよねー」
「「おおっ!!」」
盛り上がらないカズマと比べて二人は大いに盛り上がった。
「今度のスキルは凄く強そうじゃないか!やったね、カズマ君!!」
「最強の魔法使い……!いいなぁ!憧れちゃうなぁ!!」
二人は文面の強さから盛り上がって目を輝かせているが、俺は正直全く期待してない。
だって…なあ?
「……取り敢えず読むぞ」
・運が悪くなる
「またかっ!」
「「……」」
・魔力のアビリティに超高補正
「おおっ!また来たね!ステイタスに超高補正!!これはいいんじゃないかい!?」
「僕もそう思います!」
・魔法の威力超絶上昇
「超絶上昇!?どれだけ上がるんだいっ!?」
「本当に凄いよ!カズマ!!……カズマ?どうしたの?」
「あ、ああいや…多分この後どうせ碌でもない効果が来るんだろうなあと」
「あはは、それはないだろ?なんたってスキルなんだぜ?マイナス効果がそうぽんぽん起きるわけないじゃないか!怯えすぎだよ!!」
「………全攻撃魔法の消費精神力(マインド)絶大アップ」
「「……………えっ」」
「……もう一度言うぞ?全攻撃魔法の消費精神力絶大アップだ」
「「…………」」
最早もう言葉も出てこない二人。
因みに最後のスキル効果は。
・魔法の威力超絶上昇は【爆裂魔法】にのみ適用される。カッコいい詠唱により更に威力増大。眼帯を着けると更に上昇。
「馬鹿にしてんのか!」
再び床に紙を叩きつけるカズマ。今度はもう何も言われない。
いや予想してたけど!予想はできてたんだけどさ!!なんだこのスキル効果!?使えないにも程がないか!?
「……ば、爆裂魔法?なんだいそれは?」
……おっと。そうかこの世界にはないのか。
まあ一言で言うなら……。
「馬鹿みたいな威力の魔法だよ」
「そ、そうなんだ…で、でも!そんな高威力の魔法がもっと強くなるなんて凄いんじゃない!?これはいい効果なんじゃ……」
ベルがそう慰めてくれるが、正直あまり響かない。
だってなぁ……。
「強化無しでも頭のおかしい威力だって言ったら?」
「「えっ」」
「しかもダンジョン内で撃つとほぼ間違いなく自分も仲間も巻き込んで死ぬ。なんなら消費精神力とやらが追い付かなくて撃った瞬間自分が死ぬ。おお!凄いな!魔法を撃つと同時に死ぬなんて最強の一発芸じゃないか!?これがほんとの一発芸……じゃねえんだよアホかっ!!」
「「…………」」
掛ける言葉が見つからない二人を尻目にこのスキルを纏めてみる。
「……結果的には魔力のアビリティは上がるが、全攻撃魔法消費精神力大幅アップと運が悪くなる…か」
つ、使えねえ……。
初級魔法も一応攻撃魔法だもんなあ…どうするんだこれ、ダクネスみたいな人間マナタイトが居ないとどうしようもなくないか?
「……は、はは…えっと……」
「……神様、スキルがこんなにマイナスに働くことってあるんですか?僕、怖くなってきたんですけど……」
「だ、大丈夫…じゃないかな……うん、多分……ほ、ほら!スキルってさ、その人が歩んできた人生や経験に裏打ちされて出来上がるものらしいからさ!ベル君ならきっと大丈夫さ!」
「で、ですよね!」
そうなのか。スキルってその本人の人生や経験によって出来上がるものなのか。
…それはつまり、俺のスキルに出てくるほどアイツらの存在がデカいって訳で……。
「……よし!次行こうか!」
「そ、そうだね!ここまできたらもう何が来ても驚かないさ!……あれ?カズマ君……なんか顔赤いけど……大丈夫かい?」
「ああああ赤くねえし!?大丈夫だし!?それより最後行くぞ!…まあだろうな。スキル名【最硬のクルセイダー】」
「…つ、強そう……だね!」
「そ、そうですね!」
「……二人とも、無理しなくていいぞ」
「「うっ」」
「一つ目の効果……運が悪くなる」
…もうこの時点で読む気がなくなって来たんだが……。
あいつらどんだけ運悪いんだよ……はぁ。
「か、カズマ!元気出して!」
「そ、そうだよ!今更不運がなんだって言うんだい!?ここまで重複してるんだ!実質無しと捉える事も出来るぞ!」
い、居た堪れない…異世界に来てまで人様に迷惑かけるなよあいつら……。
「………力・耐久のアビリティに超高補正」
「こ、これは……!?」
「こ、今度こそ!今度こそだよカズマ!!今度こそプラスだけで……!!」
「……器用のアビリティ超低補正」
「「………あっ」」
察した。二人はもう察した。このスキルも駄目だと言うことを。
「…剣による攻撃がほぼ確実に当たらなくなると……モンスターに集られやすくなるか。……ははっ、また重複したな」
「……なんか、ごめんよ」
「気にするなよヘスティア。予想は出来てた……これで最後だと思うと元気も出るってもんさ」
「カズマ……」
「さーて最後は…なっがっ!?ええと……公共の場で辱められることにより、力・耐久値が大幅にアップする。体力も回復する。痛みによっても上昇する。相手が醜悪なモンスターやオークなら尚良し。ああ!もっと私を痛めつけてくれ!!……は?」
「「……えっ」」
とんでもないスキル説明文にドン引きした視線を向けてくる二人。
慌ててカズマは弁明する。
「違う!違うから!別に俺がドMって訳じゃないから!仲間の性癖に影響されてスキルが出てるってだけだから!!」
「う、うんそうかい…はは、分かってる。分かってるとも」
「お、おお分かってくれたか……」
「……ただその」
「ん?」
「……ベル君の前ではそう言った事は控えてくれればボクはそれで…良いよ……!」
そう言うヘスティアの目は何処か悲壮めいた慈愛の色に満ちていて……。
「って分かってねえじゃねえか!だああぁぁぁぁくっそアイツらこんな時まで足引っ張りやがって!!このポンコツパーティーどもがあああぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
【ステイタス】
サトウ・カズマ
Lv.1
力: I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【最弱の冒険者】
・魂に刻まれた魔法やスキルを使用可能
・対人戦に限り、相手のレベルや耐性を無視して攻撃可
・幸運
・モンスターとの遭遇率超低下
・各スキルのデメリットをある程度打ち消せる
【幸運の女神エリスの加護】
・超幸運
・ブレッシングの効果上昇
・盗賊スキルの効果上昇
・モンスターに集られやすくなる
【水の女神アクアの加護】
・運が悪くなる
・水・支援・回復魔法に高補正・宴会芸スキルに超高補正
・器用のアビリティ超高補正
・モンスターに集られやすくなる
・厄介事に巻き込まれやすくなる
・トイレ掃除が上手くなる
・不運になる。可哀想に……プークスクス
【最強の魔法使い】
・運が悪くなる
・魔力のアビリティに超高補正
・魔法の威力超絶上昇
・全攻撃魔法の消費精神力(マインド)絶大アップ
・魔法の威力超絶上昇は【爆裂魔法】にのみ適用される。カッコいい詠唱により更に威力増大。眼帯を着けると更に上昇
【最硬のクルセイダー】
・運が悪くなる
・力・耐久のアビリティに超高補正
・器用のアビリティ超低補正
・剣による攻撃がほぼ当たらなくなる
・モンスターに集られやすくなる
・公共の場で辱められることにより、力・耐久値が大幅にアップする。体力も回復する。痛みによっても上昇する。
相手が醜悪なモンスターやオークなら尚良し。ああ!もっと私を痛めつけてくれ!!
隠れスキル?……有ります
追記・全魔法の消費精神力絶大アップを全攻撃魔法の消費精神力絶大アップに変更しました。回復と支援使い難くなるのはちょっとキツかった……あと魔法とスキルは別枠です。