「フハハハハハハハッ!!!!これで邪魔者は全て消えた!完全に俺の勝ちだ!!ここには俺を止められる爆裂狂も筋肉娘も宴会芸の神様も存在しない!へっぽこ店主やカラススレイヤーのバニルさんもなっ!!今からフレイヤ様は俺が建国するハーレム帝国の王妃になるのだ!!当然王様はこの俺佐藤カズマです!!……オラリオ?ダンジョン探索?世界の救済?知らない子ですね!ハーレム、ハーレムこそが全てを凌駕するっ!!ベルのお祖父さんを誘ってやるのも良いかもしれないな!楽しくなってきやがったぜ!!」
都市最強にしてフレイヤ様一の戦士、猛者オッタルを下しテンションが最高潮まで高まった
そんな様子を少し離れたところから戦々恐々としながら見守る二柱の神様たち。全ての元凶どもである。
「おいフレイヤァ!このままだとマジでやばいことになるで!?何とかせんと世界がカオスに包まれてまう!!……てかハーレム帝国言うたやんな?そうなると……あかん!?多分ウチの副団長も引き抜かれるに決まっとるな!?ハーレム要員の立場をリヴェリア自身が望んだとしたらあの一族がどう出るか……下手したら世界中のエルフ&カズマ色ボケ帝国vs責任問題デカすぎファミリアのウチとの頂上決戦が始まってしまうんちゃうか!?世界壊滅秒読みやんっ!?」
その明晰な頭脳で、サトウカズマが欲望のまま本気でハーレム帝国を建国した場合に起こる数々の問題を瞬時に弾き出したロキは、
何せ相手は魅了によって良心や倫理が外れたサトウカズマ、あらゆる手段を用いてまずは戦力的にも立場的にも有利を取れるリヴェリアを陥落させるだろう。
彼女が本気で命令すればそれを聞くエルフ達も居るはずだ。例えそれが受け入れ難い程に不敬であったとしても。
……しかも何度も言うが相手はカズマや。死ぬほど口の回るあいつならリヴェリアを通じてエルフ族を説得する事も不可能やないかもしれん。
……いや詰んでへんかこれ?実際カズマがどれ程の手札を持っとるかウチらは全く把握出来てない……今分かっとるだけでも強制睡眠魔法、強烈な光による目眩し、水や氷による氷結、相手の物を奪うスキル、あらゆるダメージを全快させる回復魔法、
真の絶望とはこの事を言うのか、神ロキは神生において初めて心の底から震え上がり、その瞳から涙を溢れさせていた。
「ちょ、ちょっとロキ?大丈夫?」
全ての元凶その2の神フレイヤがかつてないほど震え上がっている知神に対して、思わず背中を摩りながらそんな事を口にする。
「……これが大丈夫に見えるんならお前の頭はホンマに色ボケたお花畑なんやろうな……羨ましいわ」
「……酷くないかしら」
流石のフレイヤも今回ばかりは自身が盛大にやらかしてしまった自覚があるので、ロキの皮肉を受け入れる事しかできない。
そして盗聴スキルでバッチリ盗み聞きしていたこの男────。
「おいおいロキ、フレイヤ様に対して随分な言い草じゃないか?もし仮に彼女の脳内が色ボケたお花畑だとしてもそこもまた魅力的だろ?クールビューティーに見えて実は中身がぽんこつって言うのも可愛らしくてまた乙だとは考えられないんですか?フレイヤ様の持つ魅力を一片たりとも理解出来ない可哀想な女神様は黙ってて下さい!俺の女神は可愛いんですよ!!美人で色気があって何でもできそうに見えるけど、割と残念な所もお茶目な一面もあるって最高じゃないか!流石フレイヤ様!結婚してください!!」
愛しの我が主神に対する壁ロキの侮辱を聞きつけ即座に言い返しに彼女達の元へ馳せ参じていた。
「か、カズマ……お前聞いとったんか……」
ロキはその地獄耳に恐れ慄いていたがフレイヤは───。
「………………………(何かもうこのままでも良い気がしてきたわ、彼がハーレムを作ると言うのなら私も作っても良いわよね?透明で眩い程に輝く魂を持つあの子と、魅了を受けてもちっとも思い通りにならない彼との共同生活……あら?結構幸せな未来じゃない?)」
魅了を受けている状態での発言とはいえ、彼の余りにもクリティカルな口説き文句に彼女は割とかなり心が揺れ動き脳内お花畑状態になっていた。
そもそも彼女が彼に魅了を罹けた際に溢した言葉は本質を魅せてというものだけである。
その結果、カズマは我慢や理性を取っ払った本心垂れ流しモンスターとなってしまった。
だが逆に言えば今のサトウカズマが発する言葉は全て嘘偽りの無い本心という事になる。
「………………(仮に私がシルだと知っても、彼は何も変わらないのでしょうね……寧ろ一人で二人分の可愛さを味わえるなんて最高じゃないですか!流石フレイヤ様!とか……ふふっ、本当に面白い子ね)」
美の女神として強大な権能を有するが為、何であろうと自身の思い通りになってしまう自分の神生に強い孤独感と虚無感を抱いている彼女にとっては、魅了を受けても欠片も思い通りにならず、美の女神としてではなくただのフレイヤとして扱ってくれる彼は正に理想の伴───。
「じゃあフレイヤ様!今から貴女の魅了と俺の頭脳でオラリオ……いえ!世界中の女性を陥落させて行きましょう!全世界穴兄弟化計画のスタートですね!!あっ、何なら女体化薬とかも探してみましょうよ!ベルとかかなり良い線行くんじゃないかなとか思うんです!さあ───喜劇を始めましょう!フレイヤ様!!」
「お前ホンマ欲望に忠実やな!?ベル坊可哀想すぎんやろ!あとアルゴノゥトファンに怒られるから最後のそれはやめいマジで!!」
───ええ、やっぱりこれはないわね。何を血迷ってたのかしら私……ちょっと落ち着きましょう。
一瞬だけカズマに惹かれて一瞬で引いた女神様がそこにはいた。
流石の彼女も全世界穴兄弟化計画とか、仲間の男を女体化してハーレムに組み込もうとか言い出す最低さが止まるところを知らないクズマさんにはトキめかなかった様だ。
「……ねえカズマ?少し目を瞑っててくれないかしら?……私の物になるのなら、証を付けておきたいの。……駄目?」
彼の頬をその美しい手で撫でながら妖艶に囁きかける彼女の言葉に。
「喜んでお受けしますよフレイヤ様」
一切の迷いなく従い瞳を閉じるカズマ。
その状態を確認してフレイヤはロキに目配せを送る。
「(分かってるわね?ロキ)」
「(!そういう事か……任せい!やったるわ!!)」
彼女の作戦を理解した策略の神はゆっくりと神威を拳に集中させていく。
それに目の前の彼が勘付かない様にする為に、今まで美の女神として培ってきた全てを総動員し、彼の頭を優しく撫でながら耳元で甘く蕩けるような声色を発し吐息を吹きかけ。
「暫くそのままでね?……私も少し緊張するもの、伴侶となる相手との接吻はね」
まるで初めてキスをする生娘の如く、か細い声で呟いた。
「勿論ですよフレイヤ様、いつまででも待ちます。……待たされた分代償は払って貰いますけどね」
「(だ、代償って何かしら?)……そ、そう、ありがとうね?優しい夫で助かるわ」
少しでも時間を稼ぐ為、彼が喜びそうな言葉を掛けていくが……。
「そんな事は良いから早くしてください、胸揉まれたいんですか?」
欲望に忠実な今のカズマにとっては無駄なものでしかないようだった。
「ご、ごめんなさい……じゃあ行くわよ?」
「待ってました!優しくお願いします」
「……………(今よロキ!)」
完全にキス待ち状態で油断し切っているカズマを見て、フレイヤがロキにサインを送る。
そして────。
「(いい加減目醒せやカズマ!おら喰らえ!ゴッドロキパンチ!相手は死ぬっ)」
魅了状態のカズマに散々してやられた恨みを込めた女神の悲しみの鎮魂歌が放たれた────!!
「おっと危ない、『フリーズ』」
「!?」
「にぎゃぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?つ、冷だァァァァァァァァァァッッッ!?!?!?!?!?」
確実に当たるであろうその一撃に二柱が安堵したのも束の間、普通に敵感知で察知したカズマが余裕で躱しカウンターとしてロキの首元に凍結魔法を放った。
更に───。
「『ヴァーサタイル・エンターテイナー』……ごほんっ、『ロキ、いつもいつもアイズたんアイズたんってセクハラしてきて凄く気持ち悪いよ』」
「ごふっ!?」
「ロキっ!?」
声真似による精神攻撃、余りの余剰ダメージに思わず吐血してしまう神の姿に、その身を案じた対カズマ討伐同盟メンバーその2のフレイヤが声を荒げながら駆け寄る。
そんな姿を眺めて女神達の絆は美しいなと感慨に浸りながら、更なる口撃を放っていくカズマ。
「『そもそも親として子供にセクハラしてくるってどうなの?変態なの?変態の神様なの?……今後は私とロキの洗濯物は別々にしてね、汚れちゃうから』」
「ハギャァッ!?ガッ……ア…………」
「ロキ!しっかりしてロキ!!今貴女が倒れたら全てが終わるのよ!?」
本気で動揺して錯乱する珍しいフレイヤの姿がこの日とある酒場で見受けられた。
やはりクールビューティー系ではなく割と感情が出やすいタイプの女神様だったかと、己の慧眼を称賛しながら慌てふためく愛しの主の姿を脳裏に焼き付ける。
「『そういえば酒場でウチの母性も中々のもんとか言ってたよね?…………ごめんね、ロキみたいな変態さんにはそんなもの欠片もないと思うよ。現実を見てね、因みに需要もないからね』」
「…………………ァァァァ」
「もうやめてあげてカズマ!ロキのライフは既に尽きているわ!このままじゃショック死しちゃうわよ!?」
「ごほんっ…そう簡単に神はショック死なんてしないから大丈夫ですよフレイヤ様、精々トラウマになって夜眠れなくなるかドMに目覚めるくらいのものですよ。なので安心してください」
「大問題じゃないの!」
若干涙目になりながらそう訴えてくるフレイヤ様の姿に底知れない庇護欲を感じながら、俺は最後にトドメの一撃を。
「ごほんっ……『もう二度とセクハラとかしてこないでね変態ロキさん。…………ううん、変態痴漢のエロキ様』」
「オゴッガッ!?ア………………ハヒ」
「ロキ!?」
完全に気絶してしまった壁神様の身体を揺する俺のフレイヤ様。
……うむ、やはり優しい神様である。
だが俺を騙し魅了を強制解除しようとした罰は与えなければならないだろう。
夫婦になるんだ、悪い事は悪いと教えてあげなければならない。
俺は彼女の伴侶としての勤めを果たすためにゆっくりと歩き始めた。
「……か、カズマ?何をするつもりなのかしら?」
少し怯えた様にフレイヤ様がそう尋ねてくる。
そこまで心配しなくていいと言うのに……愛する女性を痛めつけるほど俺もクズじゃない。
ただほんの少しだけ恥ずかしい目に合って貰うだけだ。
右手を前に差し出しながら近づいて行く俺を見て察したのか、彼女は目を見開きながら。
「しょ、正気なのカズマ?いくら何でもここで全裸に剥くなんてこと……しないわよね?」
「………愛の形は人それぞれ、お仕置きって大切だと思うんです。……フレイヤ様?覚悟してください」
ゆっくりゆっくりと歩み寄っていく俺を見て諦めたのか、彼女は目を閉じ顔を伏せ。
「…………分かったわ、貴方を騙してしまった私が悪いものね。……ただ、一つお願いしてもいいかしら?」
「何ですか?やめてくださいってお願いなら聞きませんよ、代償を払ってくれるなら別ですが」
「そんなのじゃないわ。……せめてもの罪滅ぼしとして、自分で脱ぎたいの。……美の女神の生ストリップショー、見たくはない?」
「とても見たいですフレイヤ様!お願いします!!」
その魅力的にも程がある提案に俺は即座に賛成した。
だってそうじゃないか、スキルで強制的に剥くより自分でエロい感じに脱いでもらった方が良いに決まってる。
その場で黙して待つ俺にこの最高の女神様は。
「ねえカズマ、その代わりと言っては何だけど……貴方の
そんな事を……。
「……因みにですけど何でですか?まさか何か企んでるんですか?」
「そんな訳ないじゃない。……貴方には気配感知の様なスキルがあるのでしょう?そんなのがあったら目の前の私に集中してくれないかもじゃない。……今夜は私だけを見て欲しいの、駄目かしら?カズマ」
頬を赤く染め、上目遣いでそう懇願してくるフレイヤ。
そんな物を見せられてお断りなど出来る筈もなく。
「駄目じゃないです!駄目じゃないですよフレイヤ様!!そういうことなら男カズマ、貴女に全てを託させていただきます!!」
俺は即断で愛しの主神にドレインタッチで魔力を受け渡していた。
……ああ、一瞬でも疑ってしまった自分が恥ずかしい。
こんなイジらしいことを言ってくれる女神様に対して俺は何て酷い事を……これほど可愛い女神が俺を騙してくる訳ないじゃないか!
「はぁ…はぁ……こ、これで良いですか?」
もう一切のスキル使用が叶わないほど限界まで魔力を引き渡した俺はフラフラになりながらも何とか生ストリップを鑑賞するために意識を保ち続ける。
そんな俺にフレイヤ様は───。
「……ええ、本当にありがとうねカズマ?………貴方の全て、受け取らせて貰ったわ」
何故かとても満足気な顔で俺から少しずつ離れて行き……。
「ど、どうしたんですかフレイヤ様?早くストリップを……」
この俺の言葉が聞こえたのか否か、フレイヤは俺の背後にある店の扉を見つめて。
「……………………今よ!」
そう叫んだ───!!
同時に何かがこちらに駆け寄って来る音が聞こえ、気付いたら後ろから羽交締めにされていた。
……何が起こってる!?何でフレイヤ様が脱いでいないんだ!?生ストリップショーを見せてくれるんじゃないのかっ!?
突然の状況の変化に混乱渦巻く俺の脳内。
だがそんな混乱した思考の中でも一つだけ確かな事がある。
それは今俺を羽交締めにしているこいつは敵だと言うことだ!!
我が愛しの主神との愛の営みを邪魔してくる無粋極まりないクソッタレの顔を拝んでやろうと振り向くとそこには。
「カズマ……!もうなんか本当に色々最低すぎて見てられなかったよ君!!」
険しい表情でちょっと泣きそうになっている白髪と赤目が特徴の仲間兼家族と。
「……………………カズマさん、最低」
その想い人である金髪ゴリゴリセイバーさんが……。
「……ベルとゴリラ!?何でお前らがここに居るんだ!?」
「…………………ゴリラじゃないもん。ベルは可愛いって言ってくれたもん」
「ちょ、アイズさんっ!?」
「……………嘘だったの?」
「いえそんな事ないですアイズさんは可愛いです!!」
「……………………ふふっ、うんありがとうベル」
「い、いえ………」
「人の恋路邪魔して何イチャついてやがるんだ!舐めんなっ」
「(……………えっ、ベルって好きな子居たの?…………………えっ)」
金色の体毛を持つ珍しいゴリラと白髪のヒューマン野郎が俺を挟んで乳繰り合ってやがるその光景に思わず声を荒げる。
地味に何故かショックを受けてる女神の様子は目に入らなかった。
そんな俺の怒号で今の状況を思い出したのか。
「え、えっとね……何だか途轍もなく嫌な予感がしたからアイズさんにお店の場所を教えて貰って来てみたんだ」
「何だそのご都合主義極まりない理由は!ふざけてんじゃねえぞ!!」
「……………オッタルさんが石化されるところも見てた。……………闇雲に突入しても勝てないと思ったからずっと機を伺っていた。…………そしたら……………」
「丁度扉の奥からこっそり此方を覗いている二人に私が気付いたの。……流石の貴方もオッタルとの決闘、そしてロキと私を目の前にして彼等の気配を察知する事は出来なかったみたいね」
まるで悪人を追い詰めるかの様な口振りで彼等は次々と口を開いていく。
……何故だ、何故俺がこんな目を向けられなければならない?何一つとして悪い事はしていないと言うのに……!俺はフレイヤ様の愛に報いるため欲望に忠実に生きて行こうとしただけなのに……!
「おいベル!お前は英雄になりたかったんじゃないのか!?人の恋路を邪魔するのがお前の目指す英雄像なのか!?違うだろ、そうじゃないだろ!!皆を笑顔にする英雄になりたいんだろ!?だったら俺のハーレム帝国建設の夢を邪魔するんじゃねえよ!いいか!?俺の第一夫人はフレイヤ様!第二夫人はリュー!第三夫人はリヴェリアなんだよ!!そこに女体化したお前を入れてやってもいい!だからこの手を………!」
離せと叫ぶ前にベルはより強く力を込めて。
「……うんカズマ、君が魅了の所為でそうなってるのは分かってるんだけどちょっと黙ろうか。……アイズさん!」
俺を天高く放り投げた────!!
「お、おまっ、一体何を……!?」
天井高くまで放り投げられたカズマの視界に金髪の髪を靡かせた騎士、アイズ・ヴァレンシュタインが映ってくる。
まさか、と思い俺は咄嗟に。
「ま、待ってくれ!話を!話をしよ……!」
慌てて口を開くも、当のアイズは聞く耳持たず既に回し蹴りの体勢を取っており。
「………………反省して」
「がっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!?!?!?!?」
一言だけそう溢し、渾身の回し蹴りをカズマに喰らわせ店の壁まで吹き飛ばした─────!!
「……ベル、よね?あれ生きてるの?」
「あっはい大丈夫ですよ、ちゃんと手加減してくれる様には頼んでいたので。……これに懲りたらもうカズマを魅了なんかしないで下さいね、フレイヤ様」
「は、はい……すいませんでした………」
とてもいい笑顔で静かにブチギレながらそう語ってくるベル・クラネルの姿に思わず敬語で謝罪してしまうフレイヤ様。
「……………ベル、凄くすっきりした」
自身の声色を真似してロキに色々したり、女の敵そのものの発言だったり、育ての親として慕っているリヴェリアをハーレム要因にしようとしたり、ベルを女の子にして自分のものにしようと画策していた彼を見て、かなりフラストレーションが溜まっていた彼女も下手人を吹き飛ばせて大分スッキリとしたらしい。
「あ、あはは……それは良かったです。……フレイヤ様、次やったら僕は貴女に対しても怒りますからね」
「………ご、ごめんなさい」
笑いながら笑っていない彼の笑顔にひたすら怯え続ける事しか出来ない
普段怒らない様な人がブチギレると恐ろしいの典型である。
「(ベルを怒らせるのは止めた方が良さそうだわ……で、でも試練とかどうしようかしら?強くさせるための試練だったら……ば、バレても問題ないわよね?民間人に被害が出ない様に徹底して……)」
「フレイヤ様?何考えてるんですか?」
「ひゃひっ!?な、何でもないわよ?ふふふ、そう何でもないの」
「は、はあ……あっ!それよりロキ様は大丈夫なんですか!?アイズさん!」
未だ床に突っ伏したままブツブツと何かを呟いているロキに寄り添うアイズに向かってベルが駆けていく。
「…………ロキ、しっかりして」
「………ア、アイズタン…………ホンモノカ?」
「うん、本物だよ。……大丈夫、私はちゃんとロキの事好きだよ」
「ウッ……ホンマカ?ホンマニソウオモットルンカ?」
「本当だよ、好きだよ」
「…………もう一回言ってくれへん?出来れば耳元で………」
「そう言うところは嫌い」
「あふぅっ!?……あ、あれなんか悪くないかもしれへん……あ、アイズたんもう一回罵倒………」
「……………ベル、ロキは大丈夫みたいだから行こう」
「は、はは……そうですね」
「アイズたん!?ベル坊!?」
「ざまあないわねロキ、そのまま送還されれば良かったのに」
「何や急に口悪いな!?」
気になる子にお説教された美の女神様は大変不貞腐れていた。
しかもその子はロキの眷属とかなりいい感じなのだ。
フレイヤのご機嫌ゲージは最低値を下回り続けていた。
「にしてもベル坊、ホンマ助かったで!ヒーローは遅れてやってくる言うけどガチやったんやなー、流石やで!!」
「ひ、ヒーローだなんて……!お、恐れ多いですよ!!」
「…………ロキ、ベルは私の英雄だから」
「アイズさんッ!?」
「おっ、なんやなんや?えらいええ感じやないか!こりゃ飲みながら色々聞かんとなっ!!」
「……………(何かこれもう無理じゃないかしら……い、いえまだよ!まだ何とかなる筈よ!!)」
大きな戦闘が終わり、和気藹々とした空気に包まれる酒場。
だがラスボスと言うのは得てしてしぶとい物で。
ガラガラ……!
「「「「!?」」」」
サトウカズマが吹き飛ばされた結果、崩壊した壁の破片が徐々に崩れ落ちていく音が聞こえてきた。
四人が思わずそちらを振り向くとそこには───。
「はぁ…はぁ……!覚悟は出来てるんだろうな、お前ら……!!」
ボロボロになりながらもしっかりと両の足で立ち上がる最弱で最強の冒険者が居た。
「か、カズマ!?な、何で……!」
「……はっ!そうか!!防御力向上の魔法効果がまだ残っとったんや!だからギリギリ気絶せず耐えられたんや!!」
「……その通りだ……!言ったろ?俺は運だけは良いってな……!」
「…………でも、その身体で私達と戦うのは無理。諦めて」
「これを見てもそう言えるか?」
そう言いながらカズマが懐から取り出したのは、彼が緊急時用に持ち歩いている魔石だった。
「!?ま、不味いです!今すぐカズマを……!!」
瞬時にこの後の行動が読めたベルが速攻しようとするがその前に。
「遅えよ!『ドレインタッチ』!!」
魔石から全ての魔力を吸い取り砕きながら。
「くっ…間に合わなかった……!アイズさん!警戒体制を!今のカズマは恐らくフルパワーに近いほど回復してしまっています!」
「!分かった……!」
「さあ、ラウンド2だ!冒険者どもっ」
とても悪い顔でそう口にした。
「……フレイヤ、面白そうやからって短絡的な行動とるの今後は控えような……いやマジで」
「……そうね、心底反省したわ。……やっちゃいけない事ってやっちゃいけないのね」
流石の神々も反省したらしい。
「フハハハハハハッ!!!!『セイクリッド・ハイネスヒール』!!」
「……カズマ、君を倒して元に戻してみせる……!!」
「…………カズマさん、倒す…………!!」
─────第二ラウンド開始!!
───おまけ───
「……ひうっ!?」
「?どうしたのよヘスティア、急に変な声出して……や、やっぱり頭おかしくなったん……」
「ち、違うよ!?ただちょっと猛烈な程嫌な予感がしちゃってさ……ま、まあ気のせいだよね!うん!!」
「そ、そう?あんたが良いならいいけど……」
「(…………何もしてくれるなよ、カズマ君……!本当に頼んだぞカズマ君っ!!ベル君、ちゃんと彼の面倒を見てあげるんだぞ!!)」
───更におまけ(魔王軍ごっこをしたかっためぐみん達) ───
「我が名はめぐみん!魔王軍随一の大魔法使いにして、爆裂魔法を操る者っ!そして何れ、世界を爆炎の彼方へと消し去りし者っ!!さあ覚悟して下さい人類の皆さん、悪い魔法使いが来ましたよ」
「わ、我が名は……だ、ダスティネス・フォード………っや、やはり無理だ!やめようめぐみんっ、なっ!わ、私はエリス教徒なのだ!遊びとは言え魔王軍の名を騙る事は許され……!」
「喧しいですよダスティネス・フォード・ララティーナッ!!聖騎士でありながら世界を蹂躙する悪の組織の一員とか最高ではないですか!さあ名乗るのです!我が名はダスティネス・フォード・ララティーナと!!何ならララティーナだけでも構いませんよ!!」
「あうぅ……!ら、ララティーナララティーナと連呼するのはやめてくれ!やるから!ちゃんとやりますからぁ!!」
「最初からそう言っていればいいんですよ、全くこれだから頭の固い筋肉娘はぁぁぁぁっっっ!?な、何をするのですかララティーナ!?我が眼帯を引っ張るなど……!やめるのですララティーナ!!」
「こ、このっ!人が黙って聞いていれば調子に乗りおって……!しかもここぞとばかりにララティーナララティーナと……!おのれめぐみんっ、ぶっ飛ばしてやる!!」
「ちょっ、や、やめ……ヤメローッッッ!?!?!?!」
「…………楽しそうだなーあいつら」
「ねえカズマさん、最近魔王より魔王らしいと噂されてるカズマさん。あなたはあそこに加わらなくていいの?魔王が倒された事で、世界で最も次代の魔王になる可能性が高くなっちゃったと街で噂されてるカズマさん」
「おい待て!何だその根も葉もないような噂はっ!?誰が流しやがった!!」
「………ヒュー♪ヒュー♪」
「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!」
「いひゃいいひゃい!?ほ、ほほをひっはらないでっ!!?」
「うるせーっこの駄女神が!一体誰の為に魔王を倒してやったと思ってんだ!?やっぱ今から返品してエリス様と取り替えてやる!!帰れ帰れこの宴会芸と借金作る事しか能のない穀潰しがっ」
「う、うわああああああああんっ!!!!めぐみん、ダクネス!カズマが言っちゃいけない事言ったーっっっ!!!!!」
「………やはりカズマが最も魔王に近しい存在ですね、我々では到底あの悪辣さは出せませんよ」
「うむ、カズマこそ真なる魔王だったのだな。アクアの流した噂は本物だったらしい」
「魔王軍より生態系崩してる頭のおかしい爆裂魔と存在が18禁のエロセイダーさんに言われたくないんですけど!ちょっとは自分たちの行いを反省しやがれこのポンコツどもがっ!!」
「な、何ですとっ!?名実ともに最強の魔法使いの名を欲しいままにした我にまだそんな事を言うのですか!」
「そ、存在が18禁はやめてくれ!流石に傷付くのだが!」
「……………ハッ」
「この男!……ダクネス、アクア!!協力です!今日こそはこのどうしようもない男を完膚なきまでに打ち負かしますよ!そして泣いて謝ってくるまで縛り上げて庭に放置しておきましょう!!」
「賛成よ!カズマさんはね、もう少し私達を敬った方がいいと思うの!!誰のお陰で今まで生き返ってこれたと思ってるのよ!?分かったらちゃんと謝って!あとアクア様ありがとうございますってお礼も言って!!」
「カズマ、今ならば謝罪すれば許してやっても……」
「うるさいぞ腹筋バキバキバキセイダーのバキネスさん(笑)」
「ブッ殺ッ!!」
───最終的に精魂尽き果てた四人組をたまたま遊びに来たクリスが介抱することでこの騒ぎは治った。
……因みにアクアは泣かされ、めぐみんは剥かれ、ダクネスは縛られ悶えていたらしい。
その光景を目撃したクリスがドン引きしたのは言うまでもない。