「絶好調も絶好調、久方振りに俺の本気を見せてやるっ」
回復魔法により与えられたダメージ全てが全快してしまった魔王、サトウカズマ。
対するは────。
「……アイズさん、貴女の魔法で僕を飛ばす事は出来ますか?カズマを気絶させるには速攻しかありません。……初撃が躱されても貴女なら追撃出来るはずです、どうですか?」
カズマをよく知るが故にその厄介さを身に染みて理解している未来の英雄候補、ベル・クラネルが彼を倒せる唯一の策をアイズ・ヴァレンシュタインに話す。
そして────。
「……うん、ベルが私を信じてくれるなら出来るよ。ううん、やってみせる。……ベルこそ、私の風に乗れるの?」
そう挑発的に笑いながら愛用の剣を手に取り彼に向けて掲げるアイズ。
彼女の魔法は
ベルの言う様に風を放出して、ましてや他者をその風に乗せることなど本来ならば不可能だろう。
少なくともかつてリヴェリアに提案された時は無理だった。可能かどうかも分からない。
だがそれでも、彼女は彼となら何だって出来る気がしていた。
不可能なんて存在しない、ベル・クラネルとなら何処までだって走っていける。常識なんて、打ち破ってしまえばいい。
彼が自分の風を信じ、その身を託してくれるのなら、アイズ・ヴァレンシュタインはどんな無理難題でもこなしてみせよう。
そんな彼女の気丈な姿勢を見て、ベルは愚問だったかと苦笑しながらも、彼女がまだまだレベル1で弱い自分を信じてくれている事が分かり、その身に戦意が満ちていくのを実感する白兎。
心なしか、背中に刻まれた
「……はい、絶対に成功させて見せます。……僕を信じてください!」
「!うん……!一緒にカズマさんを倒そう…………!!」
彼らが強い信頼と共に戦意を高めているのを遠目に眺めながら、覚醒したサトウカズマは口を開く。
「ほう…俺を前にしてよくもまあ意気揚々と作戦を語れるものだな。……それを聞いて俺が対策しないとでも?」
「……君には盗聴スキルがあるからね、どうせバレるんだったら態々警戒するのも馬鹿らしいでしょ?」
笑いながら若き少年がそう返していく。
それを聞き。
「ふ、ふふ……フハハハハハハッ!!!!見事、見事だベル・クラネル!それでこそ世界を救う英雄の卵っ、相手にとって不足無し!!」
大いに高笑いしながら両手に魔力を集中させていくサトウカズマ。
それを瞬時に察知した二人が警戒体制を取ると、相対していた男はニヤッとしながら。
「まずは『ブレッシング』『プロテクション』『スピードゲイン』『レジスト』……どうした?向かってこないのか?ならばついでに『パワード』!!」
迂闊に飛び込めば一瞬でやられる、そう判断した二人は着々と支援魔法で力を高めていくカズマを前に動かない事を選択した。
そんな彼らを挑発する様に男は更に自身に魔法を行使していく。
一見隙だらけに見える彼、だが不用意に近付けば石化、催眠、麻痺、ドレインなどなど……厄介過ぎる速攻魔法が飛んでくるのが目に見えている。
だが剣姫アイズ・ヴァレンシュタインは今が好機だと感じた。
「……ベル、風の放出ちょっと試してみるね」
「!……はい!」
「……
「(アイズさん……!やっぱり凄い……!!)」
遠距離であるならそこまで危険もないと考えた彼女は、瞬時に魔法を発動し未だ動かない彼に向かって纏わせた風を解き放っていた───!!
たった一度で未知の攻撃を成功させる彼女の天賦の才にベルが驚愕するのも束の間、向かってくる魔法攻撃に対しカズマは手を翳しただ一言。
「『リフレクト』」
そう呟いた。
「「!?」」
透明な障壁に衝突した風が反射され、彼らの方に襲い掛かってくる。
「くっ……!」
「…………迂闊…………!!」
何とか躱したアイズとベルだったが、その隙をあの男が見逃さない筈もなく。
「紅魔族直伝!『透明になる魔法』!!……潜伏」
至近距離まで近づかない限り姿を透明にする魔法と、気配を断つ潜伏スキルを同時使用。
カズマの存在は、酒場の中から完全に消えてしまった。
……あの
冷や汗を掻きながら余りにも危険なこの状況にベル・クラネルは。
「ま、不味いですアイズさん!一旦固まりましょう!!」
「!う、うん……!!」
慌てながらも的確な判断、アイズと背中合わせになる事でカズマが少しでも動きづらくなる様に陣形を組んだ。
そのままベルは背に居る彼女に対し、接触による即死攻撃を避ける為の策を提案する。
「……アイズさんの魔法で僕達を守る防壁の様な物を張る事は出来ますか?」
「………………で、出来ると思う。……ベル!私から離れないで!」
慣れないが故に
緻密な魔法行使による風操作、アイズはそれを叩き込んでくれた育ての親に感謝しながら、自身と彼を中心に渦巻く魔力のバリアを張る事に成功した。
「ありがとうございます。カズマは直接触れる事で甚大な被害を齎すスキルや魔法を多く使えます。……しかし遠距離ならば恐らくそこまでの威力の魔法はない……筈です。少なくとも瞬殺されることはないでしょう」
風のカーテンに包まれながら、ベルは冷静に戦況を判断し続ける。
そんな彼に対しアイズは───。
「……す、凄いねベル」
予想外の状況に陥っても一切思考を止めず即座に次の一手に移る彼の姿を見て、素直に感心していた。
彼女のそんな言葉を受けた張本人は少し目を見開きながらも嬉しそうに。
「そんな事ないですよ。……これは僕がカズマから学んだ事ですから、凄いのはカズマです」
学んだ事を即実践出来るのもまた才能、彼はそれに気付いているのだろうか?アイズはそう思いながらも口にはしなかった。
防壁の外を見守る彼の視線が余りにも真剣だったからだ。
……今は最大限の警戒をしなければならない、その事を如実に語っている彼の姿を見たからだ。
アイズも再び剣を構え辺りの気配に神経を尖らせる。
「(……カズマの潜伏は気配そのものを断ち切るスキル……おまけに今は透明状態で姿すら見えない……どうすればいい?どうすればカズマの姿を補足できる……!?)」
「(…………姿が消えても実態はある筈…………!少しの異変も見逃しちゃ駄目……………!!)」
焦りながらも周囲の空間に異常がないか、
──────コツンッ。
そんな彼らの耳に届く一つの音、思わず振り向くとそこには。
「!?今あそこから……いやあれは魔石のカケラ!?し、しまっ……!」
─────遠くから投げられたであろう魔石のカケラが落ちていた。
一瞬生じた隙、それを見逃さないかの男は即座に面倒な風を生み出す剣姫に向かって。
「『スキルバインド』!!」
スキル・魔法の使用を一時的に封じる盗賊職スキルを放った────!!
「!?ま、魔法が…………!」
風による防壁が消え、外界との繋がりを再び迎えたアイズを標的にサトウカズマが走り抜けて。
「すれ違いざまドレインタッチ!」
必殺の一撃を喰らわせようとする。
だが────。
「くっ!させるか!!」
魔石のカケラを目にした瞬間からカズマの策を断片的に見破ったベルが、アイズに近付くその気配に向かって蹴りを繰り出し。
「おっと危ない。深追いは厳禁だったか……」
何とか致命的な一撃を防ぐ事に成功する。
「ごめんベル……!私…………!」
「気にしないで下さい!カズマの手札の多さを甘く見た僕の責任です!!それよりも警戒をっ」
「!…………うん!もう油断しない!!」
「フハハハハッ!!汝らの信頼関係は中々に素晴らしいが無駄である!そこの女の魔法は厄介が故に封じさせて貰った!最早防壁を張る事は出来まいっ!!打つ手なしとはこの事だな!!……そして再び潜伏」
歯噛みしながらもベルは現状を受け入れる事しか出来ない。
確かにカズマの言う通りアイズさんの魔法がなければ攻撃力と防御力は格段に低下する……!打つ手だって……そもそも姿を捉える事すら……!!
絶望に次ぐ絶望、ベルは次の一手を思いつく事が出来ないでいた。
どうすればいい……!どうすればカズマを……!!
思考がグルグルと巡って目の前の視界がフラフラと揺れ動いていく。
……もう、無理なのか?……いや駄目だ!諦めるな!!アイズさんの前なんだぞ!?約束したんだ!彼女と一緒に戦える英雄になるって!
だったら……!
「……………ベル」
何とか奮起しようと心を燃やす僕の耳に、不安そうに僕の名前を呟くアイズさんの声が届いてくる。
……僕は、どうしたら…………。
そのまま袋小路に入りそうなベルの思考を。
「ベル坊!これを破けぇ!!」
神の一声が打ち破った────!!
「!?ロキ様!?」
思わず振り向くとそこには、何かが入っている大きな袋を天高く放り投げているロキの姿が。
「(あれは……そうか!)」
ベルは先程の破けと言う言葉、そしてこの状況からロキの行動の目的を瞬時に理解する。
あの袋の中身は恐らく……!
「……はい!!」
天井高くまで飛び上がったそれを、同じく跳躍して追い越すベル。
そのまま手に持ったショートソードで……!
「させると思うか?『スティール』!」
切り裂こうとする彼より素早くカズマのスティールが袋を奪取した───!!
「そんな……!?」
その事に絶望するより早く、ロキは更に声を荒げ。
「読めとるでカズマ!アイズたんあの位置や警戒しとき!!」
「!うん……!!」
「…そういう事か、面倒臭えな……」
「おら色ボケアホ女神ィ!!責任取るで!!」
自身の眷属にカズマの位置を補足させつつ、真打である美の女神に第一作戦失敗、第二作戦開始のサインを送る。
「フレイヤと呼びなさい!ベル!!」
次弾として待機していたフレイヤが未だ宙に滞在するベルに向かって思いっきり袋を放り投げ……!
「ありがとうございます!はあっ!!」
今度こそそれを剣によって切り裂く事に成功、それと同時に酒場一帯に降り注ぐ真っ白な粉。
……やっぱり中身は小麦粉だ!!これなら……!!
「よしっ!流石ベル坊や!!」
「はぁ…はぁ……!き、筋肉痛になりそうだわ……でもこれで何とかなりそうね……やっちゃいなさい!ベル!」
「アイズたんもおるで?」
「……うるさいわよ」
立役者の女神達が喜び勇む中、天から地に舞い戻ったベルがアイズと共に、人型に降り積もった白き造形を睨み付けて。
「……これで透明化や潜伏は通じないよ、カズマ!」
「………魔法が使えなくても、やりようはある…………!!」
両者剣を構えながらそう宣言した。
「決めたれ!アイズたん!ベル坊っ!!」
「………………今だけは応援してあげるわ、決めなさい!ベル!剣姫!!」
余りにも眩しい彼等の連携、その信頼関係を見てカズマは。
「……ククク……フフフ………!ハハハハハハハッ!!!!やるじゃないかお前らっ!この俺をここまで追い詰めるなんてなっ」
透明化と潜伏を解き、最高に悪い顔で、最高に楽しそうに笑っていた。
もうなんか普通にラスボスである。
「……さてベル、お前はもう透明化や潜伏は通用しないと言ったが……果たしてどうかな?」
ニヤリとしながら右手を構えて何かを成そうとするカズマ。
だがそれを許す二人ではない、速攻で彼の方に向かい走り抜けて行くが……。
「……なっ!?これは……」
「…………くっ!」
アイズにドレインタッチを喰らわせることに失敗したカズマが、その後こっそりと使用したスキル、『罠設置』によって作成された罠により彼らは一瞬だけ足止めされる。
大きな隙、カズマは魔力を右手に集中させ。
「『クリエイト・ウォーター』!『フリーズ』!!」
お得意の瞬間氷結魔法コンボを炸裂させ、ベルとアイズの身動きを徹底的に封じた。
「これは…ベートさんの時の………!?」
かつてダンジョンで初めて出会った時にベートに向けて行使していた魔法、下半身が氷によってガチガチに固められてしまい流石のアイズも即座に抜け出す事が出来ない。
「不味い……!アイズさん目を……!!」
次にカズマが繰り出す手を察知したベルが瞳を閉じながら何とか警告しようとするが……。
「そして『フラッシュ』!」
「!?目眩し…………!?」
「くそっ……!!」
───間に合わず彼女の視力は一時的に失われてしまった。
「更に『スティール』!」
「!?ウ、ウチの下着が……!」
「『バインド』!」
「こ、これは……カズマ!最低すぎるにも程があるよ!」
「ベル……!?何が起こってるの…………!?」
ロキの下着によって拘束された彼等を確認したカズマは、失われた魔力の回復と面倒な状況を作ってくれやがった神に対してお仕置きする為に歩き始めた。
───無論、笑顔で。
「……か、カズマ?何でそんな笑っとるんや?」
頬をヒクかせながら戦々恐々とそう尋ねるロキの質問を無視してカズマは口を開く。
「なあロキ、知ってるか?」
「な、何をや?」
「俺のドレインタッチってのはな、例え神の力であっても吸い取り魔力に変えることが出来るんだぜ?」
「!?ちょ、ちょっと待てや!早まったらあかんで!?」
「別に早まってないぞ?……もう分かるだろ?俺が何をするのか」
右手を向けニヤニヤとしながら近寄ってくるカズマに心底恐怖を感じた神様は、とうとう最後の手段に出る事にした。
「……ええ加減にせえよ?いくら何でもやりすぎや、ウチらの自業自得ではあるから使いたくはなかったんやけど……まあしゃあないわな」
───神威の開放による強制的な戦意の喪失。
人の子である限り抗えないその力を前にしてサトウカズマは───。
「なんだこんなもん」
「…………は!?」
一切怯まずロキの首根っこを掴んでいた。
それもその筈、何せカズマは本来の力には遠く及ばすとも、常に神威を垂れ流している様な痛い女神様とずっと一緒に生活してきたのだから。
今更神の力とやらでひれ伏したりなどするはずも無い。
「か、カズマ!?お、落ち着け!ちょ、ちょっと待っ……!」
「聞こえませんね!『ドレインタッチ』!!」
「ぬがぁぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
「……ロキ!」
「ロキ様!!」
神ロキの神威に当てられ多少意識を揺らしていた二人が、その叫び声によって強く自分を取り戻し、神の力を吸い取られているロキに対し声をかける。
「ふふふ……再びフルパワー絶好調のカズマさんだ!覚悟しろよ冒険者どもっ!!」
「あへぇ………」
何処か危ない表情で倒れ伏すロキを尻目にカズマは再び最高潮の状態に返り咲いてしまった。
「……アイズさん!魔法はっ!?」
「まだ無理みたい……!」
心苦しくも、自分達を拘束していたロキの下着と氷を切り裂く事で脱出した二人。
ベルが即座に今の状況を確認するが、かなり絶望的な答えが返ってきた。
「……本当に、強いね………流石だよカズマ」
思わず笑いを溢してしまいながら、ベルが彼を賞賛する。
味方であればこの上ないほど頼もしいが、敵に回るとここまで厄介を彼ほど体現している人間はいるのだろうか?
少なくとも僕は知らない。
「さあラウンド3だ!!」
「………ああもうっ、面倒臭いなあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「ベルっ!?」
余りにもしぶとすぎるサトウカズマに対して、ベルがそう叫んでしまうのも無理はないだろう。
「神様のツインテールでやられるのに何で今日はそんなにしぶといのさっ!?いい加減にしてよ!何回蘇ってきたら気が済むのっ!?何がゴブリンに一発殴られたら死んじゃうだよ!嘘吐きにも程があるじゃないか!!」
普段の百倍面倒臭い性能をしているカズマを相手にして遂にベルがブチギレた。
「べ、ベル!落ち着いて!冷静にならないとあの人には勝てない……!!」
そんな彼の急変にわたわたと慌てながら何とか宥めようとするアイズ。
「…………すいませんアイズさん、もうなんか色々我慢出来なくなってしまって……大丈夫です、もう落ち着きました」
想い人の必死な形相を見て、ギリギリの所で呼吸を整え頭を冷やす事に成功するベル。
そんな一連の流れを目の前にしてカズマは。
「何アレチョーキレててウケるんですけど!ぷーくすくす!かーわーいーそー!!」
「カズマァァァァァァァァァァ!!!!!」
「ベルっ!?」
水の女神直伝のクソムカつく笑い方でベルを嘲笑いブチギレさせながら、魔力を込めた右手を差し出し。
「『ボトムレス・スワンプ』」
巨大な沼を発生させる魔法を行使した。
「!?こ、こんな魔法まで使えるなんて……!」
「手札が…………多すぎるっ………………!」
……酒場の中はもう目も当てられない状態になっているのだが良いのだろうかとか現実逃避気味に考えている美の女神様がいたが、それは誰も知らない事である。
「フハハハハハッ!!なあ知ってるか?電気ってのは沼みたいな不純物が混じった水の方が良く通るんだぜ!」
「!?アイズさん!魔法は……!」
「【
「!……はい!!」
「無駄だ!『パラライズ』!!」
今更魔法を発動した所で脱出には間に合わない、そう判断したカズマが即座に麻痺魔法を沼に向かって放つ。
それを遠目に見ていたロキやフレイヤが、サトウカズマの完全勝利の未来を幻視する。
実際このままでは二人とも麻痺を喰らって終わりだ。
……そう、
しかし───彼等は英雄だ。
不可能を可能にする英雄の卵たちだ。
────リィン────リィン────
逆境を覆す英雄存在の証明、全てを救うと決意した
「!?くそっ、ベルの野郎!何てしぶとい奴だ!!」
「飛んで!ベル!!……信じてるから」
アイズは魔法を自身の為ではなく、最初から彼の為だけに使うと決めていた。
……アイズさんの信頼を裏切らない様な強い英雄になりたいっ!!
そんな想いが形となり、確かな力を
「アイズさん!思いっきりお願いしますっ」
「うんっ、頑張って!私の英雄……!!行って!!」
「!……はい!後は僕に任せてください!!」
全てを彼に託す事に決め、そのままベルを風に乗せて天井近くまで吹き飛ばす事に成功するアイズ。
彼はそのまま天井に捕まり、両足にチャージを集約させていく。
そんな眩しすぎる彼らを見てカズマは。
「イチャイチャしてんじゃねえぞクソどもがっ!!パラライズパラライズ!!」
八つ当たり気味に麻痺魔法を連発していた。
「あうぅ……!ベル、あとは…………!!」
「アイズさん……!」
眼下で行われているそれに怒りを感じながらも、天井に両足を付けて、いつでも飛び出して行ける体勢を作り出すベル。
……今向かっても恐らくは躱される、当てるためには何とかカズマの気を逸らさないと。
両足に
……カズマが好きなもの……今の本能剥き出しの彼が思わず見てしまうもの……カズマが大好きなもの……………そうだ!!
「
使用後の
「……………!!」
「チッ!『プロテクション』『ブレッ………!」
彼が幸運値を底上げする魔法を使用する前に。
「カズマ!美の女神様であるフレイヤ様が物凄く扇情的なポーズをしながら徐に脱ぎ始めたよ!」
ベルは声高々にそう叫んだ。
「なんだと!?」
予想通り即座に振り向くカズマを尻目に。
───砲弾の様な勢いでベル・クラネルが飛び出した────!!
「!?く、くそ!『スリー……!」
咄嗟に睡眠魔法を放とうとするカズマだったが、もう遅い。
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
ベル・クラネルの渾身の拳が彼の顔面を殴り飛ばし、その衝撃で吹き飛ばされたカズマが凄まじい轟音と共に壁を崩壊させていく。
…………静寂が流れる。
「…………やったん……か?」
「……………流石にやった……わよね?」
二柱の神が思わずそう口に出すほど、現場の惨状は酷いものだった。
「はぁ…はぁ……!こ、今度こそ……!」
───終わった、そう口にする前に瓦礫の山が風と共に吹き飛ばされ。
「ぜー…ぜー……!殆どの魔力を込めたウィンド・ブレス……!死ぬかと思ったぜ……!!」
───サトウカズマが再び立ち上がってきた。
「………あ、はは………本当、しぶとすぎるでしょ………」
そう笑いフラフラになりながらも、何とか自身も立ち上がりカズマを迎え打つ意思を見せるベル。
そんな彼にカズマはゆらゆらと歩み寄って行きながら口を開く。
「見事だったな…ベル、だがここまでだ。気付かなかったのか?俺が防御力向上魔法を使用していたのを!幸運の女神が最後に微笑んだのは俺だったみたいだな!!……終わりだ、ベル・クラネル!!」
自分をここまで追い詰めた英雄を讃えながら、なけなしの魔力でスリープを……。
「……カズマこそ、気付いてないの?」
「……何?」
「君が戦ってる相手は僕だけじゃないって事に」
「!?」
その言葉と同時に白髪の英雄の背から金色の髪を靡かせた剣姫が飛び出してきて。
「はっ!」
当たったら確実に穴が空きそうな威力の飛び蹴りをお見舞いしてくる。
「あっぶなっ!?」
それを何とか咄嗟に後ろに飛び退く事で回避に成功するカズマ。
「アイズ!?なんでお前が……!麻痺はどうなった!?」
連発して喰らわせた麻痺魔法がこの短期間で解けるはずがない、そう詰め寄る彼の言葉にアイズはただ一言。
「……………気合い?」
そう溢した。
「舐めんなっ、この出鱈目冒険者どもがっ!!」
……実際は彼女も猛者オッタルと同じく、身を蝕む状態異常をベル・クラネルの隣に立ちたいが為に、限界を超えて吹き飛ばしていた。
───彼女もまた、英雄の素質を持つ強き存在である。
「………アイズさん!」
「うん!
残った最後の
「く、くそっ!卑怯だぞお前ら!格下相手に二人がかりとか!そういうのよくないと思います!!」
「……いや君がそれ言うの?」
「うるせっー!!俺は悪くないだろ!?間違った事は言っていない筈だ!!」
最後の最後に物凄く格好悪い事を言い出すカズマに、思わずベルが呆れ果てながら突っ込みを入れるが、それに対して更に格好の悪い返しをしてくるカズマ。
……もう終わらせてあげよう。
そう決心したベルが、アイズに。
「……お願いします!」
「うん!行って……!!」
風の放出を指示し、それに乗って急加速したベル・クラネルが再び拳を握りながら。
「ち、ちくしょーっ!『か、カースドぺト………!」
「これで…終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?!?…………………」
彼の最後の足掻きすら置き去りにする速度で、今度こそサトウカズマを完全に吹き飛ばした───!!