戦いは──終わった。
愛に目覚めた欲望の戦士サトウカズマは、剣姫と英雄──更にロキやフレイヤによる超絶オーバーキル連携プレーで完膚なきまでに叩き潰された。
────そう、負けたのだ。
有り体に言えば完全に意識を失い、夢の中を彷徨っている様なふわふわとした状態なのが今の彼、サトウカズマである。
『……ば……べし……………!!」
そんな混濁した彼の意識下で、ちょくちょく聞こえて来る謎の掛け声。これは一体なんなのだろうか?
『カズ………………しば………………っ!!!!』
……………………いや、本当は何となく分かっている。
分かりたくないが、心底理解したくないが、数々のド修羅場を乗り越えてきたサトウカズマだからこそ分かる。分かってしまう。
この怒りに満ちた声、そして何処ぞの悪質な宗教団体が脳裏にチラつく様な文言。
………………まあ要するに彼女達(主にロキ)は。
『………カズマ……………しばくべしっ!!!!!』
────完全にお怒りですね、分かります。
……恐らくこれから俺は袋叩きにされて外に放り出されるのだろう。
まあ俺がやらかした事を考えれば十分納得も出来るし理解も出来る……これは仕方のない事なんだ。
うんうん分かる分かる……分かる……分か…………分………………。
「………………………って分かってたまるかーっ!!!!!!」
「「「「!?!?!?!?!?」」」」
突然の俺の叫びに、拳を握りながらこちらに迫ってきていたロキ含めベルやアイズ、そして諸悪の根源の愛しのクソッタレ女神様であるフレイヤ様も驚愕の表情を浮かべている。
……うむ、やはり俺のフレイヤ様は驚いた顔も可愛らしくて大変素晴らしい。流石は俺の美の女神様だ。
そんな事を考えながら、改めてフレイヤ様の肢体を舐め回すように眺めていると。
「な、何やカズマ意識戻っとたんかい!?それならそうとはよ言えや!」
何やら再び人型の壁が喚き始めた。
……こいつ、また俺と愛しの女神の逢引を邪魔しやがって!ぶっ飛ばしてやるっ!!
「うるせーっ!こちとら今目覚めたばっかりなんだよ!!お前のカズマしばくべし!とかふざけた宣言聞かされたお陰でなっ!!」
「…………………別にふざけてはないで?」
「いやふざけてんだろ!俺は何も悪い事はしてないんだぞ!?なのにしばかれるって理不尽にも程があるんじゃないですか!?それでも神様なんですか!?随分と自分勝手な神様ですね!」
「………まあお前の言っとることも分かるで?ただなぁ……一発神威パンチでもぶち込まんと色ボケ女神の魅了が解けへんやろ?やから一旦しばかれてくれや」
そう言い放ちながら、とてもいい笑顔で俺にとっては馴染み深い神聖な力を拳に集約させていく女神。
……いや何言ってんだこの壁!?く、くそっ……!こうなったらスキルでもなんでも使って脱出を……!!
そう考えフラッシュを放とうとする俺をベルが背後から羽交締めに……。
「……っておいこらベル!何やってんだ!俺達は仲間だろ!?仲間に対してこの仕打ちはどうかと思うんですけど!」
「ごめんカズマ……!でも今のカズマは擁護しきれないくらいの人類の敵なんだよ!!仲間としてこのまま見過ごす訳にはいかないんだっ!!」
「誰が人類の敵だ舐めてんのかっ!俺はただありのままの理想の自分として生きていこうと決心しただけだ!!そんな男の生き様を否定するだなんて……見損なったぞベル!!」
「あんなのがカズマの理想なのっ!?カズマは本当にそれで良いのっ!?滅茶苦茶最低だったよ!?」
「何言ってんだベル!お前は英雄色を好むって言葉を知らないのか!?いいか?真の英雄とは美女を侍らせ酒池肉林のハーレム帝国をこの世に生み出すもの……何故それが分からない!?ベル・クラネル!!」
「……………………うん、やっぱりちょっと黙ろうかカズマ」
「カズマさん…………最低……………………」
「(…………生まれて初めて反省という気持ちが芽生えたわ…………ごめんなさいねヘスティア…………)」
俺とベルがそんな言い争いをしている間にもロキがどんどんとこっちに近づいて来て……。
「さーてカズマ……覚悟はええな?魅了が解けるまで何発でも殴ったるからな?…………歯ァ食いしばれや!!」
恐ろしい形相をした道化の神が目を見開き拳を振り上げ殴りかかろうとして来る姿を前に俺は。
「い、いや!ちょっと待ってくれ!考え直せロキ!俺はもう魅了なんて物はとっくに解けてるんだ!殴る必要なんて何処にもないだろ!?」
「…………じゃあカズマ、お前にとってフレイヤってどんな存在や?」
「世界で一番美しい俺の女神様です………あっ」
し、しまった……!俺とした事が痛恨のミスを……!!
「よし分かった。……ベル坊、ちゃんと抑えといてな?」
「はい」
「ちょ、ちょっと待っ……!」
「オラァァァァァ!!!!!喰らえや!散々煽られたウチらの激情の鎮魂歌!『ゴッドブロー!!!!!!』」
「ぐっはあああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!?!?!?!?」
神威を込めた全力パンチによりサトウカズマは再び吹き飛ばされ宙を舞った。
因みにベルは寸前でカズマから離れ事なきを得ている。
そしてカズマは────。
ち、畜生!あの壁女本気で殴りやがって……!絶対後で泣かせてやる……!!アイズの声使って徹底的に心を折ってやる………!!!!
俺とフレイヤ様の愛を邪魔しやがったベルとアイズもだ……!!絶対に許さな…………あれ?
…………フレイヤ様?愛?…………………………。
「カズマ。……お前にとってフレイヤはどういう存在や?」
思考がフリーズし固まった俺に対し改めてロキがそう尋ねて来る。
……フレイヤが俺にとってどういう存在かだって?そんなの決まってるだろ。
俺は静かに立ち上がり、件の女神様の元まで行き────そして。
「こんの色ボケクソ女神がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!」
全力でこのクソボケアホ女神の頬を思いっきり引っ張って捏ねくり回していた。
「痛い痛いいひゃいいひゃいっ!?!?!?ちょ、ちょっとやめ……!ロ、ロキ!何とかしてちょうだい!!」
「……………自業自得やろ、甘んじて受け入れーや色ボケ」
「ひょんなっ!?」
「てめえの所為で身体はボロボロだわ俺の評価は地の底だわ店の弁償はしなきゃだわで不幸のオンパレードじゃねえか!ふざけんなこの駄女神がっ!!」
「ま、待ちなさい!私はただ貴方の本質を見せてって言っただけなのよ?それ即ちこの惨状の責任は全てサトウカズマ本人の物だと思うのだけれど?」
性懲りも無くそんな事を宣う自称美の女神様のしたり顔を見て若干ムカついたので。
「……………………『ドレインタッチ』」
割と本気のドレインをお見舞いしてやった。
「んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!?!?!?!?!?」
思わずその場にへたり込む見た目だけはいい神様に俺は笑顔で。
「何か言う事があるんじゃないですかフレイヤ様?」
両腕を差し向けながらそう言ってやると。
「…………………………ご、ごめんなさい」
若干涙目になりながら上目遣いで謝ってくる女神様の姿が……。
…………………………うむ。
「それだけですか?」
「……え?」
「それだけですかと聞いているんです。……まさか言葉だけの謝罪で済むとは思ってないですよね?」
「………カズマ?」
後ろの方からベルの声が聞こえて来た様な気がしたがきっと気のせいだ。
「もっとこう、あるんじゃないですか?仮にも美の女神なんですよね?男が喜びそうな事くらい分かるんじゃないですかー?」
「……ベル坊、あれお前の仲間やで」
「…………そうですね」
「……………カズマさん………最低…………」
「…………な、何を要求するつもりかしら?」
「俺は忘れてませんよ。……美の女神様の生ストリップショーを見せてくれるって約束を!さあ分かったら早く脱いで下さい!!はようはよう!!」
「やっぱあいつあかんわ!ベル坊アイズたん出撃や!!」
「もういい加減にしてよカズマ!いや今回は向こうも悪いんだけどさ!少しは自重してよお願いだから!!」
「
「僕に任せてください!……!!はぁっ!!!!」
嫌な予感がビンビンしていたベルが一足先にカズマへと走り出しその頭を引っ叩く。
「いったっ!?何すんだベル!今大事なとこなんだぞ!?邪魔すん………!」
「…………………カズマ、それ以上雑音を奏でるなら僕もそろそろ本気で怒るよ?」
「調子に乗ってすいませんでしたベル様」
かつて味わったブチ切れベルの恐ろしさを思い出し即座に土下座を敢行する最弱の冒険者がそこに居た。
「(いやベル坊こっわ……ヘスティアんとこイカれた奴しかおらんのかいな……しかし雑音かぁ………そういやちょっと似とる気も……いやまさかなあ……)」
「(ベル…………凄い…………………本気で怒ってる時のリヴェリアみたい……………こ、怖い………………)」
「(……………今後は面白半分に誰かにちょっかいかけるの辞めようかしら……………ええ、それがいいわね……………怖いものね…………)」
………酒場の崩壊を代償に。
「因みに何だがベル、ここの弁償金って誰持ちなんだ?」
「………………壊したの、殆どカズマだよね」
「……………………おいフレイヤ!そのオッタルとか言う奴を石から戻して欲しければ………分かるよな?」
「カズマそれはいくら何でも最低過ぎるよ!!」
「うるせっー!元はと言えば全部アイツらが悪いんだろうが!せめて半分くらいは出させないと割に合わないんだよ!!ロキも連帯責任なっ」
「言うてもカズマ、暴走したのはお前やで?魂がエロに染まっとるカズマにも非があるんちゃうか?」
「よっし分かった!今からヴァーサタイル・エンターテイナーを使って『ウチの名前はロキ改めカベや!趣味は壁紙の張り替えを眺める事や!!壁のストリップ……むっちゃ興奮するでー!!』って潜伏と透明で叫びまくって来てやるよ!!」
「ホンマにやめて!?マジで切実にお願いやからやめて!?分かった!分かったから!!ウチもちゃんと支払うから勘弁して下さいカズマ様!!」
次回はお話し合いでいよいよ飲み会編が終わります。多分。