この素晴らしいダンジョンにカズマさんを!   作:ぽーぴー

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この素晴らしい下着に祝福を!

「「「………」」」

 

嵐のように過ぎ去った現場は、それはそれはもうお通夜状態だった。

 

「…お、おい何か喋れよ……いや喋ってくださいお願いします」

 

あの佐藤カズマが余りの居た堪れなさについ口を開いてしまうぐらいには。

 

それに対し。

 

「はは…うん…まあ……い、良いことあるって!元気出しなよ!!」

 

「僕も頑張るから…大丈夫だよカズマ……」

 

心底同情したかの様な眼差しで、慈愛の目を差し向けてくる二人。

 

「お、おいやめろ!そんな可哀想な奴を見る目で俺を見るな!慣れてるから!こんなスキル効果慣れてるから!!何ならちょっとマシになってるぐらいだから!!だからその目を……!」

 

やめろと口に出す前に、肩にぽんっと手を置かれて。

 

彼等はそう、仏みたいな優しい顔で。

 

「うんそうだね…慣れてるよね……ボクは分かってるぜ……カズマ君」

 

「……僕もちゃんと分かってる。だから大丈夫だよ、カズマ」

 

しみじみと……。

 

「って分かってねえじゃねえか!くっそ、俺を可哀想な子を見る目で見るんじゃねえ!『クリエイト・アース』!からの『ウィンドブレス』!」

 

「ぷぎゃっ!?め、目があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?」

 

「か、神様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?」

 

「ふはははは!魔法とスキルが解禁された俺に勝てると思うなよ!!『クリエイト・ウォーター』!更に『フリーズ』!」

 

「つ、冷たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!!!!??!!?!!!??」

 

「はーはっはっはっはっ!!!!今宵は、俺の本気を見せてやる!!」

 

「「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

 

── ── ── ── ── ── ── ──

 

決着は案外早く着いた。……俺の魔力、いや精神力(マインド)切れで。

 

「はぁ…はぁ……け、汚された……!ボクは汚されてしまったよベル君……!!」

 

「神様……そんな事ないです!神様は全然汚れてなんかいませんよ!少なくとも僕にとってはずっと綺麗な神様のままです!!」

 

「べ、ベル君……!!」

 

「神様……!!」

 

あの…イチャついてるとこ悪いんですけど早く起き上がらせてくれないですかね……床が冷たいです。

 

あっ、どうもありがとうございます。すいません。

 

「ところでカズマ。さっきのがその…魂に刻まれてる魔法ってやつなの?」

 

俺をソファに運びながらそうベルが問いかけてくる。

 

「ああ、まあな。…ちゃんと使えて安心だよ」

 

これは実際その通りである。十中八九使えるとは思ってたが、試してみるまでは分からなかったからな。

 

「そうなんだ…消費精神力アップって言うのはどうだった?結構撃ってたように見えたけど……」

 

「まあ正直そこまでではなかったな。初級魔法っていうのもあるんだろうが……」

 

体感的には以前の二倍…とかそこら辺だった気がする。ドレインタッチと併用すればそこまで致命的なデバフではないな。……要らない効果なのは間違いないけど。

 

これからどう使っていこうか思考を回している俺に、ベルは何か不安そうな顔をしながら口を開いて詰め寄ってくる。

 

「初級魔法……ね、ねえカズマは一体何処か「待った!」ら……神様?」

 

それを遮って止めたのはヘスティアだった。

 

「その事について話したいことがあるんだ。……カズマ君と二人だけで」

 

…あれ?もしかしてこれ、バレてる?いやまあ別に隠してた訳じゃないから当然だが……。

 

「えっ、で、でも……」

 

「すまないベル君。だけどこれは神として聞いておかなければならない事なんだ。……別に仲間外れにしてる訳じゃないぜ?ただ、ボクの予想が正しければ……今の君には少し衝撃が大きすぎると勝手に思ってるだけだ。……だから」

 

あっ、これバレてますね完全に。

 

「…分かりました。神様がそう言うのなら従います。……ごめんカズマ、僕少し外すね」

 

「お、おお…後でな」

 

どう見ても納得してない様に見えるベルだったが、それを抑えて部屋の外へ出ていく。

 

扉が閉まるまで、ヘスティアはずっとベルの方を見ていた。

 

物悲しげな表情で。

 

しかし彼が外へ出て、声が届かない事を確認すると、彼女は俺の方へ向き直って目を覗き込みながら。

 

「さて、カズマ君。単刀直入に聞こうか。君は……」

 

──この世界の人間じゃないね?

 

そう、口にした。

 

その目は、嘘は許さないと言っている様で……。

 

俺はそれにどう答えるべきか少し悩んだが。

 

…まあいいか……ヘスティアなら。ベルと同じでお人好しっぽいし……元の世界に帰るために一人ぐらいは協力者が欲しかった所だ。

 

神様だしな、情報的にも有り難い。

 

……いや正直協力してくれる保証はないけど…もしかしたら厄介だからどっか行けって言われるかもしれないけど……まあその時はその時だ。

 

そう結論づけ、今の境遇を話しておく事にした。

 

「ああそうだよ。俺はこの世界の人間じゃない、異世界人だ。俺のステイタスの文字が読めないのも当然だな。あれは俺の世界の文字だし。

……魔法やスキル云々もそう言う事だ」

 

「……やっぱりね」

 

「……いつから気付いてたんだ?もしかして最初から?」

 

「いや、最初は分からなかった。少し変わった魂だなとは思ったけど…確信したのは君に恩恵を授けて魂との繋がりを強固にした後だ。……その時改めて君の魂を視て、強い違和感を感じたんだ。この世界の子供たちの魂とは根本から違うその形にね。

…後は君のスキルの内容さ。……女神エリスや女神アクアなんて神はボクも聞いたことがない。いや女神エリスは知ってるけど幸運の女神じゃないしね。……だからもしかしてって思ったのさ」

 

最後に目配せをして、茶目っ気たっぷりに語り終えたヘスティアは、紐神でも何でもなく、本物の女神様だった。

 

「はぁ…俺の負けだ、全部当たってるよ。……それでどうするんだ?ファミリアから出て行ったほうがいいのか?」

 

「ええ!?そんな事思ってないともさ!寧ろ逆だよ!……ベル君と一緒にいてあげて欲しいんだ」

 

……えっ。

 

「……良いのか?」

 

「ああ、勿論だとも。…君と一緒に居る時のベル君はとても楽しそうだったしね。君さえ良ければ一緒にいてあげて欲しい。……これはボクもそう思ってる」

 

「ヘスティア……」

 

「ふふっ、そんな嬉しそうな顔するなよ。君も結構可愛いなぁ」

 

何でも分かってますみたいな顔してるヘスティアが少しムカついて、思わず照れ隠しの様な言葉が口をついて出る。

 

「……俺と一緒に居るとベルが染まるかもしれないぞ?自分で言うのも何だが、俺は巷じゃクズマさんだのカスマさんだの呼ばれてるからな」

 

広めたのは大体どっかの駄女神だが。

 

「あまり自分を卑下するものじゃないさ。……確かに、君の魂は一見するとヘドロみたぃぃぃ!?いひゃいいひゃい!?ふぁにふるんだいっ!?」

 

とんでもない事を言い出した目の前の女神の両頬を引っ張りあげる。

 

「おっ、おまっ、おまえっ……!人が折角真面目に聞いてたってのにお前っ……!!」

 

「ひやひがうんだ!?ふぁいごまでひひてほひい!!ふぉねふぁいだ!!」

 

弁明しながらあまりに可哀想な顔になっていく目の前の女神の姿に、俺は少々哀れみを抱き、その手を離していた。

 

「……言ってみろよ」

 

「はぁ…君は結構暴力的だね。……続けるよ?確かに、君の魂は一見するとヘドロみたいにドロッとしてたんだけど、良く見てみると奥底で輝いているものがあるんだ。……その輝きはベル君にだって負けちゃいない。君は優しい子だ、ボクが保証するよ!」

 

満面の笑みでそう言ってくるヘスティアを見て……。

 

「へ、へー…ま、まあ俺は世界を救った勇者様だし?優しいのは当たり前って言うか?……おい何だよその目は」

 

「いやいや、案外分かりやすい子だなぁって思っただけさ。(世界を救った勇者様、か。…もしかしてこの子は……ははっ、とんでもない子を連れてきたなぁベル君は)」

 

「分かりやすくねえしっ!?知った風な事言うなよ勘違いされるだろ!?……まあそっちが良いって言うなら一緒に居てやるよ、帰るまでだけどな」

 

「……やっぱり帰るのかい?」

 

「…まあ、な。…あの世界はどうしようもないほどふざけてるし、厄介事ばっかだし、仲間はポンコツだしで嫌になるけど……まっ、何だかんだで悪くない世界だしな」

 

「……そうかい」

 

「それに……」

 

「?」

 

「俺のスキル効果、見ただろ?あれほぼ俺の仲間の特徴抜き取ってる感じなんだよ。……だから早めに帰りたい、不安でしょうがない。帰った時に借金が国家予算並みになってても全然驚かない。寧ろマシまである」

 

正直こっちが一番怖い。俺が居ない間あのパーティーがどれ程の負債を叩き出すか不安でしょうがない。

 

アクアはどうせ借金作ってくるだろうし、めぐみんは近所の子供に喧嘩売って迷惑かけるだろうし、ダクネスは相変わらずだしでまともに機能するわけがない。

 

……不安すぎる。

 

「は、はは…それは……うん、帰ったほうが良さそうだね」

 

俺のそんな本気の心が伝わったのか、それともあのスキル効果を思い出したのかヘスティアは頬を引き攣らせながら笑っている。

 

「それで相談なんだが…どうやったら帰れると思う?神視点でなんかないか?」

 

「……うーん…君はこの世界に初めてきた時何処に居たんだい?」

 

「ダンジョンだけど……」

 

「ダンジョン、か。…これはボクの私見だけど、元の世界へ帰るためにはダンジョン攻略が一つの鍵になってくるんじゃないかなって思うよ。君が初めて転移してきた時、他の場所ではなくよりにもよってダンジョンだったって言うのは……ちょっと偶然とは思えないかな」

 

「…ダンジョンかー……はぁ、少しずつ頑張っていくしかないか、死んだら終わりだしな」

 

アクアが居ない弊害がこんな所で出てくるとは…プリーストとしては優秀だからなあアイツ。

 

「それはボクも是非お願いしたいね!安全第一で行っておくれ!!死んでほしくないからね。絶対に死んだら駄目だぜ!……(もし君が死んでしまった時、その魂がどうなるのか…考えただけでも……)」

 

「?何だよ」

 

「!い、いやなんでもないとも!!なんでもないともさっ!!」

 

「…何そんなに焦ってるんだ?」

 

「あ、焦ってないさ!そ、それよりそろそろベル君を呼ぼうぜ!おーいベルくーん!!もういいよー!!」

 

扉の奥からはーいとベルの声が聞こえてくる。

 

しかしこのヘスティアの慌て様、明らかに何か隠してる様な……何だ?

 

「……何か凄い慌ててないか?」

 

「あ、慌ててないとも!?慌ててないさ!!これは…そうっ!!君という未知に興奮しているだけさ!!未知なる必殺技とか、見てみたいなー!!」

 

…必殺技、だと?俺の必殺技……処女神とか言ってたけど大丈夫か?

 

「……使っていいの?マジで?」

 

「!お、応ともっ!!ボクに使ってくれてもいいぜ?」

 

…ふむ、なるほど。……この世界の法律は知らないが、恐らく勝てるだろう。合意の上だしな。

 

俺はヘスティアに最終勧告を突きつける。

 

「……言ったな?後悔してもしらないぞ?怒るなよ?」

 

「こ、後悔なんてするもんかっ!さあ、さあっ!!」

 

「……そこまで言うならやってやるよ!」

 

何故かやたらと必死なヘスティアを見て、俺の中の良心の壁は容易く消えた。代わりに悪戯心が溢れ出してくる。

 

恐らくこの神は、俺の必殺技がさっきの魔法みたいな割と痛いけどそこまでではないジョークグッズの様な技だと思っているのだろう。

 

だがそれは違う。俺の必殺技は後にも先にもこの技一つ。例えこれを使用して再び精神力切れしようとも関係ない。

 

記憶に刻みつけてやる。見せてやるぜ、俺の必殺技!!

 

「いくぞヘスティア!!」

 

「こ、来いっ!!」

 

俺は右手を目の前に突きつけ、魔力を集中する。

 

そして。

 

「『スティール』!!」

 

「!!!!」

 

俺の十八番、窃盗スキルを使用した。

 

「……?い、今のが必殺技かい?光っただけで大した……こ………と…………は…………っ!?」

 

…ふむ、握り締めた手のひらの中に何やら生暖かい感触…そしてヘスティアの反応。これは……間違いない。

 

「ちょっ、なっ、嘘だろう………っ!?」

 

「か、神様!?どうしたんですか!?今何か凄い光が……!!」

 

「べ、ベル君!?来ちゃ駄目だ!!」

 

やり遂げた俺は今にも飛びそうな意識を必死に繋ぎ止め、それを見るためにゆっくりと手のひらを開く。

 

そこには。

 

「淡い青、か。……清楚で良いじゃないか、なあベル」

 

「……えっ」

 

「……………っっっ」

 

ベルは俺の手の上に鎮座するその存在に思考がショートしてしまった様で身動き一つとらない。

 

だが、''その存在''を認識するとともに徐々に顔が赤くなっていって。

 

「えっ!?なっ、パッ!?えっ!?か、かみっ……!?」

 

何やらよく分からない言葉を発し始めた。

 

……何をそんなに慌てているのだろうか?これはただの布地、本体から離れてしまった時点でそれはもう高値で売れる布地でしかないと言うのに。

 

だが俺はそんなことはしない。俺を受け入れてくれたヘスティア様を裏切ることなど有り得ない。

 

だから俺はちゃんと目の前のヘスティア様に。

 

「ヘスティア、これ返すよ。……ヘスティア?」

 

売り飛ばしもせず、隠しもせずしっかりと返そうと右手を差し出していると言うのに、彼女は全くそれを取ろうとしない。

 

何なのだろう、何故取らないのだろうか。

 

……もしかしてアレなのだろうか?『ボクの下着を受け取って欲しい』と言う遠回しなプロポーズなのだろうか。

 

なるほどなるほど、それなら仕方ない。

 

たくっ、乙女心ってやつはこれだから難しいよな。

 

だが紳士な俺は目の前の女神様の気持ちをちゃんと理解している。

 

だから俺は、ヘスティアの気持ちをしっかり受け取り開かれた手を再び握りしめてポケットに持って……。

 

「…………ボ」

 

行こうとする寸前で、ヘスティアがプルプル震えながら顔を真っ赤にして俯いているのが見えた。

 

……やはり愛しのベルの前でプロポーズするのは恥ずかしかったのだろう、愛い神様である。

 

少しでも目の前の女性の羞恥を緩和しようと、俺は口を開いた。

 

「その、なんだ。ヘスティアの気持ちは全部分かってるから心配すんな。これは売り飛ばさず我が家の家宝として奉られる事に……」

 

そこまで言った所で──ヘスティアが爆発した。

 

「ボボボボっ……ボクのパンツを返せぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!??!?!?!?」

 

「うわぁぁぁぁっっっっっ!?!!?!?!?神様!?カズマーっ!?!?!?!?!?」

 

ヘスティア・ファミリアは、それはそれは騒がしかった。

 

 

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