この素晴らしいダンジョンにカズマさんを!   作:ぽーぴー

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この下劣男に制裁を!

「今回も無事終わってよかったわぁ…はよ飲もやー」

 

「無事…まあ予期せぬ異常事態(イレギュラー)はあったけどね」

 

「死者が出ていないのは不幸中の幸いではあったが…我々の不手際には違いない」

 

「あー…ベートが不機嫌なんもそれ関連なんやろ?ボコボコにされたらしいやん」

 

「されてねえ!足止めくらって煽られただけだ!!」

 

「余計惨めじゃない?」

 

「みじめみじめ!」

 

「うっせえぞバカゾネスどもっ!!」

 

「(…………やっぱり居る…………………)」

 

楽しげな狂騒が巻き起こるその空間を遠目からひっそり見ている者達が四人。

 

最弱の冒険者、佐藤カズマ。

 

憧憬に焦がれる者、ベル・クラネル。

 

酒場の''普通''のウェイトレスさん、シル・フローヴァ。

 

酔いが醒めてきて情緒が色々大変な事になっているエルフ、リュー・リオン。

 

個性豊かな四人組である。

 

「なあシル、シルさん!あの人達ってもしかして結構凄い人だったりするのか!?」

 

「?カズマさん知らないんで……す、凄い体勢ですね!?リュー大丈夫なの!?」

 

「…………………へ、平気です」

 

「本当に!?まあっ」

 

「色々事情があるんだよ!それでどうなんだ!?」

 

「え?…ええと…彼等はロキ・ファミリア。都市最強派閥の一つですよ」

 

「都市…最強!?最強だと!?……ベル、今まで楽しかったよな。またどこかで会おうぜ」

 

「いきなりどうしたの!?えっ、まさか……あの後何かしたの!?アイズさ……ロキ・ファミリアに!!」

 

「金髪さんはドレインして狼さんは目潰しした後びしょ濡れにしただけだよ」

 

「本当に何やってるの君!?」

 

「!?そ、それは本当ですかサトウカズマ?よく生きてましたね……」

 

「これから死ぬかもしれないけどな……」

 

遠い目をしながら彼等の方を見据えるカズマ。無論読唇術スキルも忘れてはいない。

 

「そんじゃ取り敢えずダンジョン遠征ごくろうさん!今日は祝いや!飲めや歌えや大騒ぎや!あっはっはっは!!!!」

 

「おいおいロキ…もしかしてもう飲んできてるのかい?」

 

「飲んでへんでー!ふっへっへっへ」

 

「……ダウトだ」

 

「おい!んなことよりあのクソッタレ冒険者をだな……!!」

 

「あーもう!うっさいわよベート!!空気読んでくれる!?その耳は飾りかなにかなの!?空気くらい読めないの!?」

 

「あははー!言えてる!」

 

「だからうるっせえぞこのバカゾネスどもがっ!」

 

「(………あの時の人、居た……でも隠れてる…………見つかりたくないのかな?………あの時も強引に迫って怒られちゃったし…………知らないふりしてた方が……いいよね?……………あっ、白髪の子も居る…………え?一瞬目があっ……逸らしちゃった………………やっぱり私が怖い?………………白い髪と赤い目…………ふふっ…兎さんみたいで可愛い………………また見てくれないかな)」

 

酒場の中心でロキ・ファミリアが楽しそうに宴を敢行(尚一名ソワソワしてるが)している一方、それを見ている隅っこの方では。

 

「あ、あの狼野郎しつこすぎだろどんだけ根に持ってんだ!?確かに俺も悪かったかもしれないが……おいリュー!壁役として奴らの視線をしっかり遮るんだぞ……リュー?おーいリューさーん?」

 

「………………………」

 

「(あ、アイズさんだ……!アイズさんが直ぐそこにっ!?………い、今一瞬目があったような気がしたのは気のせいだよね!?)」

 

「べ、ベルさん?どうかされましたか?」

 

「…………………………」

 

リュー・リオンの腰にしがみつき潜伏スキルを発動している男が一人、憧れの人が唐突に現れ挙動不審になっている男が一人、状況がよく分からず困惑している女が一人、キリッとした顔のまま無言のエルフが一人。

 

結構カオスだった。

 

「しっかし未だに信じられへんわー。アイズたんとベートを瞬殺できる冒険者なんてほんとにおるんか?」

 

「瞬殺じゃねえ!足止めされただけだ!!」

 

「瞬殺やんけ」

 

「ああ!?」

 

「……私も瞬殺………」

 

「怪我させられとったらウチも黙ってなかったんやけどなー、そういうわけでもないんやろ?」

 

「うん…それに私は多分……自業自得。………しつこかったから」

 

「んー…僕としてはもう少し詳しく聞きたいところではあるけどね。ギルドで聞いた話によると、その人達はもしかしたら僕達の恩人……いや尻拭いをしてくれた可能性もあるしね。……一度会って確かめたいものだが………その実力も含めて、ね」

 

「私もフィンの意見に賛成だ。……そもそもベート、なぜお前はそこまで憤っている?確かに可哀想なほどびしょ濡れではあったが……」

 

「びしょ濡れだったねー」

 

「びしょ濡れだったわね」

 

「繰り返すんじゃねェ!あの野郎馬鹿にしやがって……!!」

 

一方隅っこ。

 

「(おや?もしや俺に恨みを持ってそうな奴はあの狼さんだけでは?てっきり仇討ち的なアレで全員やばいと思ってたが……意外と理性的なのか?しかも恩人……あのミノタウロス、あいつらが逃したんじゃないだろうな?もしそうだとしたら……あれ、俺悪くなくね?)」

 

エルフの腰に抱きつきながら長々と思考を回し始める佐藤カズマ。普段であればこの状況に割と下心を感じる彼であったが、今はそれどころではないので真面目に潜伏している。

 

そして件のエルフ、リュー・リオンさん。

 

先ほどまで度重なる飲酒、馬鹿みたいに強い酒の一気、からのフルリバースにより頭がほわほわしてポンコツエルフになっていたが、今はそこそこ酔いが醒めて元のクールでカッコいいリューさんに戻っていた。

 

そんなリュー・リオンさんは顔をキリッとさせたままではあるが、内心は色々と大変なことに……。

 

「(………わ、私は一体何を!?そ、そもそもこの状況……!異性が、私の腰に抱きついていると言うこの状況っ!!おかしいのでは!?い、今すぐ引き剥がさなければ……!し、しかし背中をさすってくれとお願いしたのも不快感がないのもまた事実……!?わ、私は何を考えて!?れ、冷静になりなさいリュー・リオン!この男は、初対面なのにも関わらず、わ、私の下着を盗み取った卑劣男なのですよ!?何という外道っ、女の敵が!!そんな下劣な男が私に触れている……!!到底許せることでは……!)」

 

「あのクソ野郎が…見つけたらタダじゃおかねえぞ……!!」

 

「ひぃ!?やっぱあいつだけキレすぎだろ!」

 

「んっ!?」

 

さ、さらに抱き付く力が強く……!ひ、一言強く言っておかねば!!

 

「サ、サトウカズマ…そ、その……さ、流石にずっとこの格好は恥ずかしいと言いますか……」

 

何を言っているのですか私は!?

 

「はあ!?何急に純情なヒロインぶってんだ!さっきまでゲロインだったくせに!」

 

「ゲロっ!?そ、その言い方はやめろサトウカズマ!」

 

と怒鳴りつつも実力行使に出られないでいる…何故だ!?

 

『リュー……!』

 

こ、この声は…まさか!?

 

『…来たのね……!』

 

アリーゼ!?な、何故!?……はっ!?もしや至らぬ私に助言を!?友よ!!何が来たと言うのですか!?

 

『ついに…来たのね……!!』

 

だから何が!?

 

『リューに……春が!!!!』

 

!?!?!?!?!?!?!?

 

「き、来ていない!!何を馬鹿なことを……!」

 

「おまっ!?急に騒ぐな気づかれちゃうだろ!?」

 

「う、うるさい!私に触れるなこの下劣男め!!」

 

「誰が下劣男だ!さっきまで『背中さすってくださいカズマさま』とか甘えてたくせに!!」

 

「!?そ、そんな言い方はしていない!言いがかりはやめろ!!」

 

あ、甘えてなど…甘えてなどないっ!!私はリュー・リオン!こ、こんな…こんな男にっ。

 

「『ヴァーサタイル・エンターテイナー』!……ごほんっ、『カズマ様!背中をさすって頭をよしよしと撫でてください!リューは貴方様に甘えております!!』」

 

「!?!?!?!?!?!?!?」

 

なっ、なんっ!?なにっ!?はっ!?

 

「わっ!カズマさん凄いです!!リューの声にそっくりですよ!?」

 

「これが……宴会芸スキル!?凄い……ていうか凄すぎない!?」

 

「まだまだいけるぞ?……『カズマ様!好き!結婚して!!リューはメロメロになってしまいました!!』」

 

「…………………………っ」

 

「あはは、すごーい!」

 

「……か、カズマ?ちょっと自重した方が………」

 

「『カズマ様!リューは…「わっ……!」……リュー…』……は…あ、あの……リューさん?」

 

プルプルと震え、顔を真っ赤にして俯く彼女を見て「あっこれ不味い」と思うカズマであったが時既に遅し。

 

この後起こる惨劇を察したシルさんはベルを連れてひっそりとその場を離れた。

 

そして。

 

「わわわわ私の声で変な事を口走るなーっ!!痴れ者がっ!!!!!」

 

サトウカズマに対して思いっきり頭突きをかます。

 

こ、この男は危険だっ!私の心を惑わす卑劣男め!い、今この場で息の根を……!!

 

「いった!?お、おい待て!いや待ってください!!暴力、暴力反対!!そういうの良くないと思います!!」

 

「黙れ!き、貴様が妙な事を口走るのが悪い!!この場であの世に送ってやる!!」

 

「あの世!?ま、待て落ち着けリュー!お前はもっと優しい子だ!!話をしようぜ!?」

 

「話などない!今素直に顔を差し出せばビンタ一発で済ませてやる!!さあ早くしろ!!」

 

「くっ……い、いいのか?俺はたとえ自分が悪くてもやられるんだったら反撃する男。俺のスティールを再び喰らいたいのか?」

 

悪足掻きなのか、右手を差し向け指をわさわさ動かすサトウカズマを見て私は……。

 

「……ひっ」

 

思わず悲鳴が。

 

す、スティール…スティールはダメだ……!スティールは……!!

 

「うぅ……ぐすっ」

 

「マジすいませんでした」

 

土下座を敢行するサトウカズマ。

 

そしてここまで騒げば当然かなり目立つわけで。

 

その自慢の耳でかの狂騒をバッチリ聞きつけた未来の凶狼(ヴァナルガンド)は。

 

「見ィつけたぜェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!!!」

 

最高の笑みをこちらに向けて狂喜乱舞していた。

 

………わ、私は悪くないですよね?さ、サトウカズマが悪い……じ、自業自得だ!!

 




次回、ベートvsカズマさん。多分一瞬で終わります
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