1年間ありがとうございました
結論から言えば、ローラン・ジレーヌは捕まった。
そして彼が率いる組織も解体された。
アメリカ連邦警察や、フランス当局の捜査やらでジェンティルのお父さんは忙しそうだった。
世間では、ジェンティル一族はローラン一派の悪事を突き止め、全て自ら公にし、"悪事を知らなかったとはいえ契約した"ことを謝罪した。
委細を知る者は少ないため、オレたちはもちろん、誰も真実を話さなかった。
オレにもいろいろとマスコミの方々が来たようだが、全て学園側とジェンティルの弟さんが率いる護衛部隊が守ってくれた。
ついでに言うと、ローランを殴ったオレも、おとがめなしだった。
噂によると、あの場に居合わせたウマ娘たちが口を揃えて。
「Il ne se passe rien」(何も起きていないです)
「I didn’t see anything」(何も見ていないネ)
「What a splendid pun――mmph!?」(なんて素晴らしいパン――むぐぐぐぐ!?)
「Ro—Roland ist vielleicht von selbst hingefallen?」(ロ、ローランが勝手に転んだんじゃないかな?)
と、証言してくれたそうだ。
オレとしてはきちんと罪を償うべきかと思っていたが、クラリス先輩に『良いから黙っておきなさい』と釘を刺されつつ『私も見たかったわ~』と褒めてくれた。
そして1年後――
オレはもう二度と担当ウマ娘を奪われないように、誰にも心配させないような力を身につけている。
「あ、おはようございます先輩」
「おはよう後輩くん、ジェンティルの弟さんが推薦したフランスの部隊と一緒に鍛えてるって聞いたわよ~。なんか爆発しそうなくらいパンパンに筋肉膨れ上がってるけど、それ筋肉痛?」
少し鍛えすぎたようだ。
スーツが合わなくなって、はち切れそうになっている。
だが今日は大事な日だ。
オレの担当する10人のウマ娘たちのうち。
2人も凱旋門賞に出場するのだから。
「あらトレーナー♪ 今日もいつにも増して素晴らしい筋肉ですわ」
「あまり鍛えすぎると、ジェンティルさん好みになりすぎて……、私はもっとスマートなほうが」
地下バ道へ行くと、すでに2人が待機していた。
オレの筋肉を見て、ジェンティルはウットリしているが、シーナはげんなりしている。
ちょっと鍛えすぎたかな。
もっと筋肉を圧縮しないと。
「まあいいです。今日は私が勝ちますから、待っていてくださいね、トレーナーさん」
「あら、聞き捨てなりませんわね。今日はわたくしが勝利を持ち帰ると約束しましたのに、ね、トレーナー?」
「あらあら、去年はわたしが勝ちましたから。2連覇をかけて、あなたには負けるつもりはありませんよ?」
「あらあらあら♪」
と、ジェンティルがシーナに小声で耳打ちする。
それを聞いた彼女はカァっと真っ赤になって叫ぶ。
「なんですってぇ!?」
「ホホホ♪」
2人のやり取りは確かに見ていて微笑ましいが、
レース前なのに。
「ではトレーナー。くれぐれも、わたくしから目を離さないように♪」
「わ、私! 私だけを見てくださいねトレーナーさん!」
オレは苦笑いしながら頷き返す。
いがみ合っていた二人だが、しばらくするとクスリと笑って。
二人の顔つきが一瞬にして変わった。
互いを見る目つきが、ライバルを見る目だ。
言わずもがな、それはウマ娘の矜持だろう。
「では、行ってきますね、トレーナーさん♪」
「では、行ってきますわ、トレーナー♪」
地下バ道の向こう側。
白い光の向こうへと、彼女たちは歩き出す。
2人の背中がまぶしく見えたが、オレはそこから目を逸らさず、最後まで見届けるのだった。
-fin-
スッキリしない方は、アマチュア素人映画をトレーナー、ジェンティルたちで撮影していたものと思っていただければ…w。
全部演技ということで、どうかご容赦くださいませ
活動報告に物語作成の裏話を記載しています